2014年4月22日 (火)

フジツボさん、青森の海で育ちました。

2014年4月21日~2014年4月27日放送
青森放送 ラジオ編成制作部 山本鷹賀春

【番組概要】
青森県の陸奥湾では巨大なフジツボが獲れます。 フジツボとは、海岸の岩などに付く富士山の形をした、あの小さなイボイボのことです。それが青森では、女性の握りこぶし程の大きさにまで育ちます。しかも、珍味として食べられるのです。巨大フジツボも二十年前まではホタテ貝などに付着する「粗大」ゴミでした。それを和食の食材として初めてメニューに出したのが、日本料理人の浪打通さんです。「食べてもおいしくないよ」という漁師さんのひとことに職人魂が燃え上がったそうです。フジツボは活発な生き物です。店に運ばれてきても元気に爪や触角(蔓脚)を動かしています。青森の珍味が元気に動いている音を、まずはお聴きください。

【制作意図】
 「初めて食べた人は勇気がある」といわれる海の珍味はいろいろありますが、その初めての人が誰なのかはっきりしているものは、このフジツボのほかにないでしょう。ふるさとを愛し、新しい郷土料理に挑戦し続けたいという浪打さん。その前向きな想いを伝えたいと思いました。「フジツボにマイクを向けても音はしないよ」という彼の言葉にこちらの職人魂も燃えました。取材では超小型マイクを使い、無口なフジツボさんの元気な音の収録に成功しています。

【制作後記】
仕入れ値0円のサービス品だったフジツボは、今や高級食材です。魚市場では1市場にあるわけではありません。取材では入荷待ちのため1週間待たされました。キロ3,000円もするそうです。しかも、養殖があまり進んでいないため、いつでもゆでたフジツボは殻の底に残る汁がとてもおいしいのですが、ストローで飲むのがおすすめです。フジツボの口がいろんな角度を向いてくっついているので、そのまま手に持って傾けると、衣服を汚してしてしまうからです。

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道後温泉花盛り

2014年4月14日~2014年4月20日放送
南海放送 メディア情報センター 下村章子

【番組概要】
日本最古の温泉といわれる道後温泉。まちのシンボルである道後温泉本館は回収120年の大還暦をむかえました。大還暦を記念してイベントが開催される中、地元商店街のおかみさんたちが自らを「美しく商いをする女性」「美商女(びしょうじょ)」と名乗り、合唱団を結成するなど明るく楽しく道後の街を盛り上げています。そんなおかみさんたちを見てきて息子さん達、商店会青年部もまた母に続きこれからはまちを自分たちが盛り上げていこうと頑張っています。おかみさんたちの明るい笑い声が響く道後温泉はまさに今、花盛りです。

【制作意図】
「私達びしょうじょなんよ~。あ~っはっは。」と話をしているおかみさん達、道後を盛り上げるために集う婦人部の会合はまるで女子会。そんなおかみさんたちのパワーと明るさ、まちを思う気持ちを伝えたいと制作しました。また、最近まちづくりに参加しはじめたという青年部も取材をしました。おかみさんたちが花をさかせたあと、その種がまた立派な花をさかせる、そうして古い歴史をつないできた道後のまちをたくさんの方に知っていただけたらと思います。

【制作後記】
今回、何度も道後のまちにお邪魔し、商店街のこの店が誰の店だ、と覚えてしまうほどおかみさん達に会いにいきました。いつ伺っても笑い転げて、元気になって帰る、の繰り返し。誰にあっても楽しむ気持ちやまちを思う気持ちが強く、おかみさんたちを通して道後のまちの虜になってしまいました。あなたも是非、美商女に会いに道後にいらしてください。

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2014年4月 2日 (水)

生まれ変わるくだものの木

2014年4月7日~2014年4月13日放送
山形放送 報道制作局 制作部 芹川紗希子

【番組概要】
山形県は一年を通して様々な果物が獲れる果樹王国。蔵王山麓の上山市にその果物の木々で器を作る職人がいます。建具職人の鈴木正芳さんです。建築様式の変化の中で建具の需要が無くなりつつある中、鈴木さんはある人との出会いがきっかけとなり、周囲の山々に目を向けます。役目を終えて捨てられる果物の木に着目したのです。番組では、様々な果物の木がもつ木肌の色の違いなど木の特性を見事に活かした器が出来るまでを果樹園に吹く風や初春の残雪の音、工房の工作音、鈴木さんの温かみのあるインタビューを通してお届けします。

【制作意図】
初めて工房を訪れた時、果物の器の美しさと温かさに息をのみました。長年、山形の四季折々の果物を食しながら、果物の実と同じように果物の木にも色があるということに出会った発見と、鈴木さんの自然の恵みを余す所なく存分に活かすというシンプルでありながら豊かな想いをお伝えしたいと思い、制作しました。

【制作後記】
果樹の間伐は、葉が落ちてから新芽が出るまでの間、概ね雪解けが進む3月に行われます。器作りの材料となる木を集める大切な時期に取材に伺いました。「面白い木が手に入ったんだよ」と、電動のこぎりで木を割り、新たに手にした木の肌の色を目にした時の鈴木さんの笑顔はとても印象的でした。

2014年4月 1日 (火)

別府名物!流しのはっちゃんぶんちゃん

2014年3月31日~2014年4月6日放送
大分放送 ラジオ局 ラジオ制作部 富田 浩史

【番組概要】
大分県別府市の温泉街に、今では珍しい“流し”のコンビがいます。「アコーディオンのぶんちゃん」こと日浦文明さん(82歳)と、「ギターのはっちゃん」こと二宮誠さん(62歳)。2人は高校の先輩と後輩で、ぶんちゃんはこの道50年以上になるベテラン流し。はっちゃんは、先代のはっちゃんが亡くなった6年前に2代目を襲名しました。レパートリーはなんと「1万曲」!(…ただし昭和歌謡専門) お客さんのリクエストに即座に応える姿は圧巻です。別府の夜を盛り上げようと、はっちゃんぶんちゃんは今夜も湯けむりに包まれたネオン街に繰り出します。

【制作意図】
ぶんちゃんが流しを始めた1960年頃は流しの最盛期で、毎晩スナックや宴会から引っ張りだこ。しかし、その後のカラオケの出現や観光客の減少などで仕事は激減。別府市内に20数人いた同業者は次々と廃業に追い込まれてしまいました。そのような苦境の中でも「流しの灯を絶やすまい」と奮闘する2人の貴重な歌声を記録したいと思い取材しました。ごきげんな顔で熱唱するはっちゃんぶんちゃんの表情、またお客さんの満面の笑顔を想像してお聴きください。

【制作後記】
別府では知らない人がいないほど有名な「はっちゃんぶんちゃん」。2人の歌声が聞こえると、ほろ酔い気分の通行人から「はっちゃ~ん!」「ぶんちゃ~ん!」と声援が飛ぶほどの人気ぶりです。今ではぶんちゃんが高齢になり、かつ冬場は痛風が疼くとの理由でかつてほどその姿を見ることは出来ませんが、20歳年下のはっちゃんが、ぶんちゃんの背中を懸命に押しながら息がぴったりの演奏を披露しています。いつまでも別府の夜の温泉街にはっちゃんぶんちゃんの歌声が響きわたることを願うばかりです。

2014年3月20日 (木)

ゴットン ゴットン 路面電車がゆく

2014年3月24日~2014年3月30日放送
高知放送 ラジオセンター 久保英弥

【番組概要】
高知市のはりまや橋を中心に、東西南北に延びる電車の軌道。土佐電機鉄道の路面電車は親しみをこめて”土佐電””とでん”と呼ばれている。交通の流れが速くなっていく中で、常に1車両で走る”とでん”には緩やかな時間と人々の暮らしが乗っている。番組では、日本最古の路面電車の「音」をおりまぜながら”とでん”の持つ意外な(?)日本一も紹介していく。

【制作意図】
近年の鉄道ブームの中で、路面電車にもファンの人気が高まっている。その中で”とでん”は、わざわざ沿線まで見物に来る小さい子供がいるなど、市民の生活に溶け込んでいる。日頃、余る気にした事のない路面電車の「音」をクローズアップすることで、路面電車の持つ“ゆるやかさ”や”あたたかさ”が感じられたらと考えた。

【制作後記】
わずか63mと言えば、次の停留所からこちら側に声をかければ通じる距離である。実際、乗車・録音して、改めて短いなと実感させられた。点検・整備はそれこそ毎日ひっきりなしに電車が車庫に入ってくる忙しさで、日ごろ聴くことのできない「音」が安全を支えていることを、しみじみ感じた。”とでん”の協力に感謝したい。

2014年3月13日 (木)

北山杉の未来をつなぐ

2014年3月17日~2014年3月23日放送
京都放送 ラジオ編成制作局制作部 永田和美

【番組概要】
京都市右京区京北、同じ京都市内でありながら、京都駅などがある中心地とは5度以上低い山に囲まれた自然豊かな地です。北山杉の産地として有名なこの地では毎年この冬の時期になると北山杉の加工作業が最盛期を迎えます。以前は磨き丸太が高値で売れたものの、現在は建築様式の変化などから需要は激減していきました。それでも、この京北の資源である北山杉を守り、伝えていこうとしている人がいます。一方、新しい北山杉の活用法をという思いから、捨てられていた杉の枝葉を使ってアロマを抽出し、京北の魅力を発信していこうとする人がいます。手段は違っても北山杉を思い、京北を思う気持ちは同じであるこの2人の思いを取材しました。

【制作意図】
木のぬくもりのある生活。日本人が忘れかけている暮らしを今一度思い出してほしい。それを北山杉を通して作っていきたい。そう語る米嶋さんはこの道32年の林業家。一度京北を離れ改めて京北の魅力、北山杉の活用を模索し、京北を元気にしたいと語る村山さん。守り続けてきた伝統を伝えることも大事です。そしてまた、それだけでなく新しいものを作り出していくこともその地域が・産業が活性化していく重要な要素です。北山杉の取組は今後の京北の未来を大きく前進させるものではないでしょうか。

【制作後記】
インタビューさせていただいていて、お二人とも本当に北山杉を愛し、京北を愛していることがとても伝わりました。番組の最後に、二人のあの言葉を持ってきたのは、本当にあの言葉の中にすべての二人の思いが込められているように感じたからです。6分20秒という短い時間の中では、北山杉の奥深さをなかなか表現できませんでしたが、それでも、北山杉の魅力を、そこで頑張っている人たちの思いを知っていただき、興味を持っていいただけたら幸いです。

2014年3月 7日 (金)

おりんの音って奥が深~い!

2014年3月10日~2014年3月16日放送
北日本放送 報道制作部 小林淳子

【番組概要】
富山県高岡市のシマタ二昇龍工房は、お経を読む時などにならす仏具の「けいす(おりん)」に製造に携わっています。おりんは、特別に配合された真鍮の板を何万回と叩いて、形を作っていきます。そして最後の腕の見せ所が、調音作業。「ゴーン」という音の中には「カン・オツ・モン」という、3つのリズム(波長)があり、それを聞き分けながら、音の調律していきます。厳かな音色を作りだすためには、最低10年はかかるという職人の世界。全国に10人といない、磨き上げられた職人の技と音をお届けします。

【制作意図】
大量生産・大量消費の時代にあって今なお、手仕事にこだわり続ける職人の皆さん。先人の技を受け継ぎ、地道な努力の積み重ねによって製作された商品は、日本人の感性から生まれた芸術作品とも言えます。おりんもその一つ。手仕事で作りあげられる心地の良い音色を沢山の方に聞いて頂きたいと同時に、日本人の感性の鋭さ、能力の高さを改めて実感して頂ければと思っています。

【制作後記】
おりんの音の高さ・周波数は約400~4000ヘルツ。実はこれ、人間が年をとって、高い音が聞きづらくなっても、聞き取れる音の高さだと言います。また、おりんの音のリズムは、波のリズムとよく似ているという説があります。普段、何げなく聞いているおりんの音色ですが、大変奥が深いことがわかりました。先人の知恵の結集ともいえる「もの」をこれからも多く取材し、たくさんの方に聞いて頂きたいと思っています。



石垣島 白保 さぶぴとぅの豊年祭

2014年3月3日~2014年3月9日放送
ラジオ沖縄 制作報道部 阿利貴子

【番組概要】
八重山諸島石垣島。毎年旧盆の前、7月頃各地域で豊年祭がおこなわれます。その中で芸能が盛んな白保村。他の地域とは異なる独特の風習を取り上げ、3日間あるうちの2日目オンプーリンを中心に、村で三線教室を主催している横目親子に村人の豊年祭への思いを聞いた。

【制作意図】
白保の豊年祭と言えば県内外からもたくさんの観光客が訪れ、特に3日目のムラプール仮装行列の稲の一生が有名だが、2日目のオンプールでの五穀豊穣を願う”あやぐ”と”巻踊り”の音源が少ない為、収録しつつ番組を通じて紹介したかった。

【制作後記】
芸能が盛んな地域とあって、白保出身の唄者も多数輩出している。新良幸人やサンデー、大島保克、BEGIN。皆にインタビューしたかったが、今回はあえて地元に住んでいる横目さんに話を聞いた。白保はもっと取材すべき素材がある。しならく通わねばと思った。

2014年2月24日 (月)

懐かしの蓄音機コンサート

2014年2月24日~2014年273月2日放送
東海ラジオ放送 制作局 報道部 井出勝也・前野沙織

【番組概要】
一宮市木曽川資料館。そこには今なお現役で動く「ゼンマイ式蓄音機」がたくさんあります。その音色は半世紀以上たった今でも,深みと力強さをもったものです。資料館では,このゼンマイ式蓄音機を使って,高齢者施設や資料館で,SP盤レコードのコンサートを行っています。資料館で行われたコンサートの様子やコンサートで懐かしい歌声に触れたお年寄りの声,寄贈された貴重な「ゼンマイ式蓄音機」の音色や,それを寄贈した方のお話などを,ゼンマイ式蓄音機から流れる昭和初期の名曲とともにお届けします。

【制作意図】
ラジオ局にとって,音楽,とくに時代の流れを映す流行歌は欠かすことができません。音楽のジャンルが増え,変化し,数が増えるのと同時に,私たちが音楽を聴く方法も多様化しました。楽曲のダウンロードは好調でも,CDの売り上げは減少し,もはや音楽は「曲」のみが求められ,「どうやって」聴くかを気にする人はほとんどいません。そんな現代に生きる我々は,お年寄りたちが聞きたいのは,「若いころの曲」,例えば「リンゴの唄」そのものだと思い込んでいます。しかし,木曽川資料館の「ゼンマイ式蓄音機」のコンサートは,単なる「昔の音楽を聴くだけ」に止まらない,私たちの思い込みを崩すものでした。

【制作後記】
実際にゼンマイ式蓄音機でレコードを聞いてみて,その音色がCDなどにはない魅力を今なお持っていることや,蓄音機ごとにすこしずつ個性があることが実感できました。また,コンサートの最中,蓄音機から流れる懐かしいメロディーに,高齢者たちが元気になっていくのがわかりました。音楽が流れる度にお年寄りたちは「懐かしい」とつぶやいて,歌詞カードなどが配られているわけでもないのに,自然と歌を口ずさんでいました。また、「この光景を見れるのが一番の幸せ」と語っている資料館の皆さんの笑顔が印象的でした。この取り組みは寄贈のレコードとゼンマイ式蓄音機のみで行われています。また、寄贈された蓄音機の修理もボランティアです。音楽に関わるものとして,できるだけのお手伝いをしようと,全国に伝えるための番組を制作しました。

2014年2月19日 (水)

笑顔は介護のエネルギー~アマチュア落語家すわこ八福神~

2014年2月17日~2014年2月23日放送
信越放送 ラジオ局編成制作部 小森泰夫

【番組概要】
諏訪市城南に寿司店を構える小平晴勇さん(63才)は本業の他にアマチュア落語家「すわこ八福神」として各地で古典から創作まで落語を披露。最近は自ら家族を介護した経験を踏まえて制作した”介護落語”を福祉施設などで披露、「介護するにも、介護を受けるにも笑顔が大切」と考え、「落語で笑いを届けたい」と各地を巡っています。番組では小平さんの活動を追いかけ取材しました。

【制作意図】
長野県下でも高齢化社会が進行する状況にあって、介護を受ける高齢者の皆さんに対して、更に介護にあたる皆さんに対しても落語で癒しと活力を届けたいと精力的に活動する小平さんの人柄を多くの皆さまに知っていただくと共に、介護を実践する上で様々な可能性を考察していただくきっかけになればと制作しました。

【制作後記】
小平さんの活動を支えている寿司店の常連さん、地元社協や介護福祉業従事者の皆さまと取材を通じて、様々な地域の皆様と知り合うことができ、それぞれが抱える福祉面での課題や将来への展望など「現場」のお話を伺う中で、大いに今後の番組制作へのヒントをいただきました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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