2024年4月26日 (金)

静岡の茶染め職人 ― ひと味ちがう、お茶の文化の楽しみ方

2024年4月29日~2024年5月5日放送 
静岡放送 ラジオ局 オーディオコンテンツセンター 村上修哉

【番組概要】
「立春」から88日数えた5月2日の前後は「♪夏も近づく八十八夜~」と歌われているとおり、お茶農家さんやお茶好きな静岡県民にとって…大切で特別な“1年に1度訪れる新茶の季節”がやってきます。
そんな私たちが大好きで日頃から慣れ親しんでいる静岡の名産品「お茶」と静岡の伝統工芸「駿河和染」とを見事に結び付け、“ひと味違った”かたちでのお茶文化を世に伝えようとしている職人さんが静岡市内にいらっしゃるということで、静岡市駿河区丸子にある国内最大級の伝統工芸を体験することができる施設「駿府の工房匠宿」にある「竹と染」の工房長、静岡市出身の駿河和染職人鷲巣恭一郎(わしず・きょういちろう)さん(44歳)と弟子の前田結嬉さん(22歳)の工房にお邪魔し取材しました。

【制作意図】
お茶と聞くと皆さんはどんなものをイメージするでしょうか。飲んだり、たまに食べたり、パウダー状にして料理やお菓子に使ったりと…ほとんどの方がそう思い浮かべると思います。お茶の名産地、静岡市にはひと味違うアプローチでお茶を楽しむべく、ものづくりをされている職人さんがいるという事を知り、その方と取り組みをたくさんの方に知ってもらいたく取り上げ取材しました。伝統工芸の職人さんと聞くとご高齢の方が…というイメージを勝手に持ってしまう事が多いと思いますが、師匠の鷲巣さんは44歳、そして弟子の前田さんは22歳の女性です。お茶が身近で普段から飲んでいる地域だからこそ気付ける”お茶を無駄にしない想い”や”若い職人さんだからこそ創ることができる作品作り”への想い、また、お茶業界が様々な角度でより盛り上がってほしい!という職人さんの願いをこの番組を通じて感じ取って頂きたいなという思いで制作しました。

【制作後記】
私もナレーションを担当した影島亜美アナウンサーは静岡県出身でお茶は本当に身近な存在で、ここまで成長できたのもお茶のおかげかなと思っております。そんなあまりにも身近過ぎて「灯台下暗し」なお茶を八十八夜の直前にひと味違った切り口でどう取材するか、どう表現するか非常に悩みながらの企画、構成、取材、編集でした。お忙しい中工房での取材に応じて頂きましたが平日ということで工房内が静かで、もう少しお客さんでにぎわっていたり実際に作品作りをしている様子を音で伝えることができればより臨場感が増したのかなと反省しています。そんな中ではありますがこの番組を通じて「お茶染め」の事を皆さんに知って頂ければ嬉しいです。

地域で伝える豆腐づくり~繁多川の豆取祭(マーミドゥイフェスタ)~

2024年4月22日~2024年4月28日放送 
ラジオ沖縄 報道部 小橋川 響

【番組概要】
豊富な水量の湧き水からかつては豆腐づくりが盛んだった沖縄県那覇市繁多川。「豆腐と言えば繁多川」といわれ、戦後の最盛期は地域の3軒に1軒が豆腐屋だったと言われましたが、現在では3軒の豆腐屋が残るのみ。地域でもその歴史を知らない人が増えた状況で、19年前から豆腐作りの町・繁多川の記憶の継承に取り組む繁多川公民館の南信乃介館長。在来大豆の栽培と豆取り、豆腐作り体験を通して記憶の継承活動をおこなう南館長の思いと3月におこなわれた豆取祭(マーミドゥイフェスタ)での豆腐作り体験の様子を音で紹介する。

【制作意図】
沖縄の人々にとって熱々の島豆腐は昔から親しまれている県民食。かつての豆腐の町・繁多川で3月におこなわれた豆取祭(マーミドゥイフェスタ)の豆腐作り体験には地域のお年寄りから親子連れ、観光客などが豆腐作り体験を楽しんだ。その様子を音で紹介し、記憶の継承が楽しくにぎやかにおこなわれていることを伝える。また南館長の声で繁多川地域への温かなまなざしを紹介したい。

【制作後記】
豆取祭にはたまたま通りがかったという60代くらいの観光客の女性4人もいた。ゆし豆腐の存在を初めて知ったそうで、食べると「美味しい!」と声を上げていた。放送で流れたゆし豆腐を食べた人たちの最初の声が彼女たちのものである。話を聞きたいとマイクを向けると恥ずかしがって逃げてしまったが、県外の方の声でゆし豆腐という沖縄独特の豆腐料理についてもっと聞きたかった。残念である。
残念と言えば石臼での豆挽きも。もっとごりごりと音が出るかと思ったが、予想以上に滑らかに回転するので、放送を聞いている人が石臼挽きの様子を想像しにくくなってしまった。会場でゆし豆腐を食べた人はみんな笑顔で、本当に楽しそうにしていた。沖縄の豆腐料理は熱々のものが多いが、なかでもゆし豆腐は格別である。ぜひ沖縄に来た際にはゆし豆腐を味わってほしい。

 

2024年4月11日 (木)

ここはふるさと~ゴッタンが奏でる島立ちの唄~

2024年4月15日~2024年4月21日放送 
南日本放送 ラジオセンター音声メディア部 岩佐清太郎

【番組概要】
鹿児島県の西部、東シナ海に浮かぶ甑島列島。この島で幻の楽器「ゴッタン」を復活させ、島に音楽文化を根付かせようと活動している人々がいる。そのグループ「ゴッタン甑の会」のオリジナル楽曲「ここはふるさと」は島を離れる子どもとその親の気持ちを歌った曲である。甑島には高校がなく、島の子どもたちは中学校を卒業すると実家を出て、鹿児島市などの本土で暮らしながら高校に通うことになる。この別れは「島立ち」という。15の春に新たな一歩を踏み出す子どもと送り出す親の気持ちを素朴で優しいゴッタンの音色とともにお届けする。

【制作意図】
島立ちは離島の多い鹿児島県だからこそ起こりうる巣立ちの儀式だが、15の春に故郷を離れ、親元を離れるのは子どもにとっても親にとっても寂しいこと。そして甑島には音楽文化が根付いていなかったため島の事を思い出すことのできる島唄がなかった。ゴッタン甑の会のオリジナル楽曲「ここはふるさと」は甑島の島唄として島立ちを経験する子どもたちの支えになってほしいと思うと同時にゴッタンで奏でるこの唄を甑島の住民に限らず、同じように故郷を思う人々にも聴いてほしいと思い制作しました。    

【制作後記】
はじめての1人取材、はじめての離島、さらに取材日の鹿児島は春の嵐が吹き荒れており、船の欠航もちらつき・・・始まる前からどうなるかわからないドキドキの状態でした。ゴッタンを通しての交流の場・演奏の場は年々増えており、島の文化として着実に根付き定着していると感じました。多くの人が癒されている素朴で優しいゴッタンの音色を生の演奏で聴いてほしいです。4月に島立ちを控える親子にインタビューをさせていただきましたが、生まれ育った故郷を離れなければならないという過酷な現実を決して悲観することなく前向き捉えており、新しい生活を楽しみにしていると答えてくれました。私も微力ながら何らかの形で甑島出身の子どもたちを応援していければと思います。
                                        

新宿の“どん底”で轟く声

2024年4月8日~2024年4月14日放送 
文化放送 制作部 目黒ほのか

【番組概要】
東京都新宿区・新宿三丁目。
末廣亭という寄席と数々の飲食店が並び立つ、文化が根を張る街です。そんな新宿三丁目の中でも、赤レンガにツタが生い茂る洞窟のような建物がひときわ目を惹く、老舗酒場「どん底」。黒澤明や三島由紀夫も通ったという、70年以上も続くこの酒場で、脈々と受け継がれてきた”声”に迫りました。お酒をつくる氷の音を背景に轟くのは、お客さんも店員さんも、思いおもいに歌う声。現在お店を切り盛りする宮下さんにもインタビューを行い、お店の歴史や、歌う声への想いなども語っていただきました。


【制作意図】
大学進学を機に上京した私にとって、新宿は不思議な街です。大都会でありながら、寂しさや苦しさを受け止めてくれる土壌が確かにあると感じるからです。新宿三丁目を通るとときどき聞こえてくる「どん底」の歌声は、そんな新宿の豊かさを表すシンボルでもあるように感じ、今回のテーマでの制作を決めました。都市の生活はせわしなく回っているけれど、人の心が集う場所は変わらず存在している。「どん底」という酒場が持つそんな魅力を、力強い“声”から少しでも伝えられるようにと制作いたしました。

 【制作後記】
お客さんも店員さんも、取材に伺った私を一人の仲間として迎えてくださったように感じ、「どん底」という酒場がいかに生き生きとした集いの場であるかを実感しました。
今回初めて企画から編集までを一人で制作しましたが、各制作段階で「次はこうすればもっと伝わりそうだな」という反省と気づきがたくさんあり、今後のために不可欠な経験となりました。

響け、太鼓は我らの誇り

2024年4月1日~2024年4月7日放送 
北陸放送 ラジオ開発部 中川留美

【番組概要】
能登半島の北部に位置する輪島市名舟町には、昔から人々が大切に受け継いできた「御陣乗太鼓」があります。450年以上にわたって受け継いできた太鼓は、名舟町に生まれた男子のみに打つことが許された門外不出のもの。太鼓を打つときにつける面は名舟町の先祖が手彫りしたものです。鬼のような面や亡霊、だるまなどの面をつけ、海藻の縮れたような髪を振り乱し、太鼓の独特なリズムと所作は異様な雰囲気と迫力を感じます。故郷に受け継いできた太鼓の音色、リズムは、聴いている人に感動を与え、明日を生きる勇気までも与えているように感じます。

【制作意図】
今年(令和6年)、元日に起きた能登半島地震で、能登に住む人々の中には故郷を離れ、見知らぬ遠い場所で避難生活をされている方々がいます。輪島市名舟町も集団避難となりました。被害が大きかった中で、名舟町の先祖が作った面や太鼓が無事だったという奇跡がありました。毎日のように観光客に向けて太鼓を打っていた日常が変わってしまいましたが、避難生活を続けながらも太鼓を打ち続ける姿が、聴く人の心に響き、気持ちを支えてくれるように感じ、制作しました。

【制作後記】
御陣乗太鼓を約一か月半ぶりに叩く保存会の練習を見た時に、一番初めに叩く太鼓の響きに、なぜか涙が溢れました。太鼓の音が身体の奥に響き渡り、その音が哀しみも喜びも、苦しさも全てを抱えたような魂の叫びのようにも感じました。「御陣乗太鼓」の精神は「意気地(いきじ)」にあると言います。逆境に立っても、くじけずに真っすぐ泥臭く生き抜く力をいうそうです。故郷を離れた人たちにとって、名舟町を復興にするには「御陣乗太鼓」の音が絶対に必要なんだと言っていた打ち手の方の言葉が心に残ります。どの人にもある故郷の音、聴く人の心に響く太鼓の音が前を向いていこうという気持ちにさせてくれます。

2024年4月10日 (水)

伝統のバトン~四代続く茅葺工房~

2024年3月25日~2024年3月31日放送 
熊本放送 ラジオ制作部 清水葉子

【番組概要】
熊本県の高森町にある「阿蘇茅葺工房」。阿蘇の草原から材料となる「茅」を刈り、屋根として仕上げるまでを一貫して行っています。初代の本田末保さん(97)が立ち上げ、今は三代目の植田龍雄さん(48)が中心となり、九州各地の現場を回っています。
龍雄さんは最初は家業を継ぐつもりはありませんでした。しかし、高齢の祖父が仕事に向き合う姿を見て、サラリーマンを辞め、この道に入りました。番組では龍雄さんを中心とした茅葺作業、そして四代目となる龍雄さんの息子・龍貴さん(19)の思いなど取材しました。

【制作意図】
茅を扱う時の音、茅葺作業の音、茅が風に揺れる音などを通して、阿蘇の空気感、草の香りなどを思い起こしてほしいです。

【制作後記】
屋根の上での収録やインタビュー。翌日は全身が筋肉痛になりました。しかし、茅の香りには癒し効果があるのか、体は痛くても、心はすごく元気になりました。
今、茅葺職人は全国で200人ほどとのこと。途絶えそうになっている伝統のバトンが、ここ熊本ではしっかり引き継がれていることを誇りに思うと同時に、この技術を失わせてはならないと思いました。

2024年3月14日 (木)

音を紡ぐ~おとつぶハープの夢~

2024年3月18日~2024年3月24日放送 
山形放送 制作部 佐藤嘉一

【番組概要】
プロのアーティストも絶賛する、小さなハープ「おとつぶハープ」を作った工房は、山形県山形市の一軒の民家。 工房を主宰する芹沢朋(せりざわ・とも)さんは、元は横浜に住む音楽家。アコーディオンやピアノ演奏、作曲も手がけ、70人もの生徒を抱える人気ピアノ教室を開いていた。
しかしコロナ禍で状況は一変。何もすることが無くなった芹沢さんは、かねてから思い描いていたハープに取り組んだ。しかし、小さくてプロの音楽家の演奏に耐えられる楽器は無く、パキスタンから輸入したハープのフレームを生かして試行錯誤の末、オリジナルハープを作り上げた。
その音色は手指を病んで失意の底にいた1人のアーティストを救い、そのワクワクは多くの仲間を生み出している。山形から世界をキラめかせる「おとつぶハープ」が広がっていく姿を描く。


【制作意図】
温和で知性溢れる女性、芹沢朋さんが命を吹き込んだ「おとつぶハープ」原理はとても原始的な楽器が、人びとの心を鷲づかみにしている地方移住の推進が叫ばれている中、ここまで条件が合致し、作曲やハープ制作という芸術部門で躍進する人は決して多くない。深く静かにゆっくりと広まる心の癒しを、おとつぶハープの音色でリスナーに届けたい。

【制作後記】
主人公の芹沢朋さんは、明るくて機転も効き、動じない性格が表面からにじみ出ていて、インタビューも面白く本当に丁寧に受け答えしていただき、演奏と合わせて3時間半をゆうに超えた素材になってしまった。プロ奏者の上松さんのパートもあり、お二人の心底小さなハープが好きだという姿を存分に写し取れたか?質問の仕方、スポットの当て方、構成など工夫の余地はまだまだ大きい。



~300年続く守りたい味、おきゅうと~

2024年3月11日~2024年3月17日放送 
RKB毎日放送 オーディオコンテンツセンター 大場敬一郎

【番組概要】
福岡の朝ごはんにはおきゅうとが添えられます。おきゅうととは、ところてんのような食べ物でエゴ藻と言われる海藻を裏ごしして、薄く手のひらサイズに延ばした食べ物です。 おきゅうとは300年の歴史があり、記録によれば江戸時代に初めて現在の福岡市東区、 箱崎で作られたそうです。福岡市博多区の老舗おきゅうと店「林隆三商店」ではエゴ藻にこだわり、作り続けて90年余りになります。おきゅうとは朝ごはんのお漬物の代わりとして昔から食べられており、九州の甘い醤油をかけて頂きます。塩分が控えめでおきゅうとによく合う醤油が、福岡市に隣接する糸島市船越にあります。「北伊醤油」という老舗醤油店で、創業127年になります。お店の裏山から美味しいお水が採れ醤油作りには欠かせません。

【制作意図】
おきゅうと作りにスポットを当て、おきゅうとには欠かせない九州独自の甘い醤油を取り上げました。おきゅうとの材料のエゴ藻は養殖ができない為、収穫量も年々減少しています。20年ほど前までは博多湾でも採れていましたが、現在は石川県能登を中心に収穫されています。しかし、今年1月1日に起こった能登地震の影響で、海底の地形が変化し、エゴ藻の収穫に影響が出ています。「林隆三商店」ではエゴ藻にこだわりおきゅうと作りをしている為、エゴ藻が採れなくなるとおきゅうとの生産を終了せざるをえません。300年続いている博多の朝の伝統食文化を、後世に引き継ぎたいけれど 自然災害には逆らえないもどかしさを滲ませており、博多の朝の伝統食文化おきゅうとを少しでも多くの方に知っていただければ幸いです。

【制作後記】
福岡生まれ福岡育ちの私は、おきゅうとを幼い頃から食べており、身近な食べ物でした。       おきゅうとは一般的に醤油をかけて頂きますが、味があまり無く海藻の風味を感じられるため、海藻サラダにして青じそドレッシングなどをかけて頂く事も出来ます。また、胡麻と相性がいいので、胡麻ドレッシングでも美味しく頂けますが、やはり私は、おきゅうとに胡麻と薬味を添えて九州醤油をかけて頂くのが一番好きです。ごはんを何倍もかき込む事ができます。

2024年2月27日 (火)

幻想的な氷の美術館~青い湖が魅せる輝き

2024年3月4日~2024年3月10日放送 
北海道放送 オーディオビジネス局編成制作部 横山佳菜絵

【番組概要】
札幌からも、新千歳空港からもアクセスしやすい、人気観光スポット「支笏湖」。11年連続で透明度日本一に輝いたこともある、その湖の青さは「支笏湖ブルー」と呼ばれています。北海道を代表する冬の祭典「千歳・支笏湖氷濤まつり」は今年で46回目。支笏湖ブルーが作り出す幻想的な青の世界は、多くの人を魅了します。その美しさの背景には、24時間体制で、夜通し行われる氷像制作がありました。「氷の美術館」はどのようにして完成するのか。37年間、氷像制作に携わり続ける制作部長、小林さんの熱意とこの幻想的な空間にやってきた人たちの声を、氷の世界でしか聴くことのできない音とともにお伝えします。

【制作意図】
札幌で生まれ、札幌で育った私にとって一番身近な湖は「支笏湖」です。よく晴れた日に、ブルーに輝く湖の周りをドライブしているだけで、とても癒され、すがすがしい気持ちになるのです。透明な湖の上で漕ぐクリアカヤック、全身で感じる風は気分爽快。6月~8月にだけ漁が行われる「チップ(ヒメマス)」のお刺身は絶品。自然に囲まれた支笏湖の温泉は「ととのう」以外のなにものでもありません。そんな私が、実は訪れることができていなかったのが「千歳・支笏湖氷濤まつり」でした。ここにしかない音がきっとあるはず、そう思ったのがきっかけです。


【制作後記】
小林さんは、「こんなに追い込まれた年は初めて」と話してくれました。準備期間に例年よりも気温の高い日が続き、作業が遅れ気味だったそうです。2月初旬、開幕した会場に訪れると、幻想的な青の世界が出来上がっていました。氷だけで作られる、その美しさに「わっ」と声が出ました。2月中旬、またも気温の高い日が続いたことで氷像が崩れ、予定していた終了日より10日以上も早く中止となってしまいました。厳しい自然との闘いがあってこそ成り立つ「氷の美術館」。来年、さらに美しく、さらに幻想的に輝く「支笏湖ブルー」の世界が楽しみです。

 

津軽の雪とずぐり回し

2024年2月26日~2024年3月3日放送 
青森放送 ラジオ制作部 田村啓美

【番組概要】
青森県の津軽地方では雪が積もると、子どもたちが「ずぐり回し」をして遊びます。「ずぐり」とは野菜のカブの形に似た大きめのコマ。雪の上でもよく回るように足の部分が太くなっているのが特徴で、雪上で回転する時間を競い合います。黒石市の「津軽こけし館」などでこけしを製作している工人たちが、津軽こけしと同じ手法で今もずぐりを作っています。冬になると子どもたちはずぐり回し大会にむけて、自分のずぐりに色付けをし、練習に励みます。回し方をおしえているのが地元で生まれ育った相馬大輔さん。長時間ずぐりを回すのに重要なのはコマが接する雪の「バン」作りだと言います。子どもたちが練習を始めると、レジェンドと呼ばれる祖父たちの世代も集まってきました・・・。

【制作意図】
今は民芸品としても人気が高い「ずぐり」ですが、本来は雪の上で回して楽しむ身近な遊び道具でした。しかし近年は津軽でも屋内でゲーム機に夢中になる子どもたちが大多数です。そんな中、黒石市周辺では、学校でずぐり回し大会が行われたり、ずぐり回しのイベントが開かれるなど、故郷の遊びの伝承がすすめられています。地元の職人が作る伝統工芸品をいまの子どもたちに遊び道具として広め、次の世代へ受けついで行きたい・・・そんな地域の人たちの思いを伝えようと考え、この番組を制作しました。

【制作後記】
黒石市は藩政時代の面影が残る古い街です。そのためか、シルバー世代の話す言葉は昔のままの津軽弁。いろいろインタビューをしましたが、全国のリスナーには理解できない難易度だったため、今回は残念ながら割愛となりました。また、上手な人のズグリ回しは動きが止まっているように見え、それを「寝た」状態というそうですが、まったく音もしないので録音には思わぬ苦戦をしました。
今年は青森県も記録的な暖冬小雪で心配しましたが、黒石市では予定通り2月に全日本ずぐり回し選手権大会が行われ、レジェンドたちは5分近い記録を出しています。ちなみに優勝タイムは70代男性の4分44秒です。


半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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