2015年3月30日 (月)

ここは無人駅じゃない ~理容師夫妻の20年

2015年3月30日~2015年4月5日放送
福井放送 ラジオセンター 前田智宏

【番組概要】
福井県の南西部、若狭湾をのぞむ小浜市には、JR小浜線というローカル線があります。その駅の1つJR加斗駅には、駅を示す看板の横に、理髪店の軒先でよく見る赤・白・青3色のサインポールが。塚本久夫さん(71)と、妻の朝子さん(67)夫妻は、かれこれ20年間、加斗駅の舎内で、理髪店を営みながら、駅の業務を一手に引き受けて利用者を見守り続けています。毎日毎日掃除を欠かさず、駅を訪れる人を笑顔と優しい言葉で迎える塚本夫妻。加斗駅を支える2人の思いをお届けします。

【制作意図】
電車を利用する上で、駅は単なる通過点のひとつになっていることが多いと思います。しかし、加斗駅を訪れたときに感じた、日常のコミュニケーションの豊富さ!塚本夫妻が理容師と駅員を兼任しているというユニークさもさることながら、夫妻と利用者の会話のあたたかさに胸を打たれ、駅での会話を通してこの駅の魅力を伝えたいと思い、制作しました。福井県内にも無人駅はたくさんありますが、そこに人がいることの意義、そして、駅は自分たちが守っていくのだという塚本夫妻の熱意を感じていただければ嬉しいです。

【制作後記】
20年、単純に365日をかけると、その日数は7300日。ひとくちにいうのは簡単ですが、それだけの期間、来る日も来る日も駅に通うというのは相当なご苦労でしょう。しかし、そんなことを微塵も感じさせないお2人の明るさに、取材をしながらパワーをいただきました。若狭小浜は、人のぬくもりにあふれ、時間がゆっくり流れているような気持ちになる素敵なところです。ぜひ、小浜線に乗って、加斗駅を訪れてみてくださいね。

広がれ裾野!伝統芸能の挑戦

2015年3月23日~2015年3月29日放送
四国放送 ラジオ編成制作部 松島史佳

【番組概要】
400年の歴史を誇る阿波人形浄瑠璃は国の重要無形民俗文化財で、徳島が全国に誇る伝統芸能です。しかし義太夫三味線奏者・鶴澤友輔さんは、現状に危機感を覚えています。とにかく色んな人に足を運んでもらいたい、その中から後に続く人に出てきてもらいたい。そこで取り組んだのが特殊詐欺の被害防止を訴える脚本作りでした。

【制作意図】
お堅いイメージの伝統芸能で、パロディともいえる取り組みに興味を持ちました。批判を恐れない覚悟と、前に進もうとする強い意志を感じたからです。しかし新たな挑戦の場として、なぜ伝統芸能にこだわり続けるのでしょうか?また、受け継がれた芸を磨き、極めるだけでは駄目なのでしょうか?そんな素朴な疑問から制作しました。

【制作後記】
伝統芸能と呼ばれるためには、絶えず変化して生き残らなければなりません。義太夫三味線奏者の鶴澤さんも、「師匠はみんなチャレンジャー」とおっしゃっていました。伝統芸能のスピリットは「挑戦」だったのです。鶴澤さんの挑戦する姿を見て後に続こうと思う人が、きっと現れると思いました。

2015年3月19日 (木)

まちなか・豆まき・水ようかん

2015年3月16日~2015年3月22日放送
茨城放送 業務局営業部 鹿原 徳夫

【番組概要】
霞ヶ浦の南に位置する、稲敷市江戸崎地区では、ちょっと変わった節分の豆まきを行います。ます。豆を持った人たちが、町内にある神社や寺をめぐり、境内から拝殿や本堂に向かってて豆をまき、終わった後は、「水ようかん」を食べるのです。このため、町内の和菓子屋では、この日のために水ようかんを大量に作ったり、店先で販売する様子が見られます。さらに、「あんぺらぽん」なるお菓子も登場し、稲敷市江戸崎地区に伝わる節分の独特な雰囲気をお伝えします。

【制作意図】
茨城県内でも他に類を見ない、独特の豆まきを行っている江戸崎地区。町内を走り回る子どもたちの足音と元気な声を通じて、賑やかな節分の風景を伝えようと思いました。また、「水ようかん」を食べる風習は北陸地方(福井県との説もあり)から持ち込まれたとの説が有力ですが、このような全国ネットの番組でお聴きいただくことで、手がかりをつかめるのではないかとの期待も込めて取り上げました。

【制作後記】
何より、子供たちの元気な掛け声と笑い声が響き渡る街に、好感を持ちました。動きがある豆まきだけに、録音も子供たちと一緒に走り回って行いました。地域の人たちが受け継いできた風習と、イベントとして楽しむ人たちのわくわく感で春を待つ江戸崎地区の様子が伝えられればと思います。それにしても、豆まきの〆が何故「水ようかん」だったのか?同様の風習がある地域のラジオ局の方、ぜひご一報ください…


2015年3月 9日 (月)

いい氷あります!青森のカーリング

2015年3月9日~2015年3月15日放送
青森放送 ラジオセンター ラジオ編成制作部 山内千代子

【番組概要】
青森市にある室内カーリング場のアイスメイクを担当しているのは中島潤さん。選手たちがアイスを利用する2時間ほど前からアイスメイクをします。いくつかある工程の中で氷の表面に水の玉をうちつける「ペブル」の作業に注目し、選手を想うアイスメーカーの姿に迫ります。

【制作意図】
カーリング選手の活躍の裏側に迫りたい。選手の経験のあるアイスメーカーが青森から活躍する選手を送り出すために日々努力を重ねているアイスメイクに魅力を伝えたいと感じ制作しました。

【制作後記】
カーリング場に初めて入った時に感じた選手の皆さんの躍動感を伝えたいとスタートした取材。いいアイスを保つため冷房機や空調の音に悩まされながらアイスメイクの”音”を収録させていただきました。選手を支える方々の笑顔に囲まれ、4℃の室温野中で心温まる時間を過ごさせていただきました。

2015年2月24日 (火)

春の能登をご一緒に~のと鉄道・語り手列車~

2015年3月2日~2015年3月8日放送
北陸放送 制作局ラジオ放送部 田村七瀬

【番組概要】
北陸新幹線の開業に期待が高まる石川県。およそ40分の乗車時間中、ずっとしゃべりっぱなしだった山崎さん。県庁所在地の金沢はもちろんのこと、2011年に世界農業遺産に選ばれた能登の里山と里海も石川県民の誇りです。そんな能登の自然をたっぷり味わえるのが、今回ご紹介する「のと鉄道・語り手列車」です。始発の七尾駅から、終点穴水駅まではおよそ33キロ。名物ガイド、山崎研一さんのお話は能登の歴史や風習、時にはダジャレも飛び出し、お客さんを飽きさせません。そして、景色を堪能した後は、穴水駅のホームでおいしい能登ガキが待っています。この時期ならではの能登の魅力がぎゅっとつまった「のと鉄道・語り手列車」の様子をお楽しみください。


【制作意図】
「のと鉄道」は以前、過疎化による乗客数の減少により、路線や本数が削減され、厳しい経営が続いていました。能登全体の魅力をPRし、もっと多くの観光客に来てほしい…。そんな想いでガイドを始めた山崎さん。3年前は「自称」だった名物ガイドの肩書ですが、少しずつ評判が広がり、観光ツアー客は4年前の4倍近くまで増えました。多くのお客さんを惹きつける、能登の魅力たっぷりの列車をラジオでも体感していただけたら…そんな想いで今回番組を制作しました。


【制作後記】
およそ40分の乗車時間中、ずっとしゃべりっぱなしだった山崎さん。たくさんの人に能登の魅力を知ってもらいたいという、地元への深い愛情が感じられました。列車に乗っている気分を少しでも味わってもらえればと試行錯誤したのですが、とても難しかったです。電車の音やカキを焼く音、その場の雰囲気が感じ取れる音の録り方など、今後の番組作りにも活かしていきたいと思います。

草原のある風景 ~音で綴る秋吉台の四季~

2015年2月23日~2015年3月1日放送
山口放送 ラジオ制作部 大谷陽子

【番組概要】
日本最大のカルスト台地、秋吉台。毎年2月頃、およそ1,500ヘクタールの草原は一斉に火に覆われます。山焼きによって、秋吉台は、長い間草原が保たれてきました。その台地には、四季折々に、千種類以上の花が咲きます。日本の各地から草原が姿を消す中、絶滅が危惧されているものも少なくありません。山口市の中沢妙子さん(75)は、年間300日近く秋吉台に通って16年、花が開花した日にちを記録し、写真に収めています。個性ある花の生き様に魅せられました。「自分は宇宙の長い歴史の中で、ほんの瞬きの間しか生きていないけれど、その間だけでも、守るべきものは守っていきたい。」中沢さんは、秋吉台の花を通じて自然を慈しみます。長い年月をかけて作り上げられ、人の手によって守られてきた草原。秋吉台の草原が作る四季の風景をお届けします。

制作意図】
かつて日本の各地に見られた草原。生活環境の変化に伴い、その姿は減ってきました。明治時代には国土の約3割以上を占めていましたが、現在では数%に減少したとも言われます。秋吉台の草原は、長い間、地域の人たちの手で守られてきました。自然の恵みを受け、自然を守るためです。多様な生物が暮らす豊かな環境と、人が草原と共に生きてきた文化を持つ秋吉台の草原から、自然との付き合い方を考えたいと制作しました。


【制作後記】
山口県民にとって、全国に誇れる観光地である秋吉台。ですが、展望台から広大なカルスト台地を見て、カルストロードを車で走って、観光は終了~…という方も多いようです。でも、一歩、草原に足を踏み入れてみると…見たことの無い花が目に入ります。フラワーショップで売られているお花のような艶やかさは無くとも、万葉集に詠まれているような古来の日本各地で見られた花が、自然の姿で咲いているのです。

そんな草原の花に会ってみたい!という方は、中沢妙子さんの写真と記録で綴られた本『秋吉台で出会った花』を片手に草原へ踏み入ってみてください!心から癒されること、間違いなし!です。



2015年2月20日 (金)

今生きる港町の教え~シャチに乗る小学生たち~

2015年2月16日~2015年2月22日放送
静岡放送 ラジオ局編成制作部 原田 敏幸

【番組概要】
全国有数の水揚げ量を誇る、遠洋漁業の基地、静岡県焼津市焼津港。この焼津港の近くにある焼津市立東小学校には、子供達にうたい継がれている港町ならではの誓い「黒潮っ子の誓い」があります。「黒潮っ子の誓い」は、海の王者シャチに乗って大海原を行く少年少女をモチーフに38年前に作られました。歌詞の示す港町の独特のたくましさ、威勢の良さ。それは、焼津港が誇る子供たちの魂です。しかし時代とともに焼津の町の風景は変わりました。そこには、遠洋漁業の環境の厳しさで漁業形態が変わり、さらに少子化も追い打ちとなり、結果かつてのような港町の盛り上がりはなくなりつつあります。しかし時代が変わっても、その魂は「黒潮っ子の誓い」の根底に活き続けています。番組では、焼津市立焼津東小学校を訪ね、児童や先生、OBの言葉から、港町の魂を伝えます。

制作意図】
私自身、焼津東小学校の卒業生で、焼津港を遊び場として育ちました。港の周りには、仲卸業・水産加工業・商店などが賑い、生活にとても近かった時代でした。漁師は、漁場を開拓すべく大海原を沖へ沖へと向かって行った時代でもありました。焼津市立東小学校の「黒潮っ子の誓い」には、そんな時代ならではのフロンティア精神のようなものを感じてなりません。この港町の財産です。未来へつなぎたいという願いを込め制作しました。

【制作後記】
黒潮っ子の誓いが出来たのは38年前の事ですが、今も尚大切に歌い継がれている事を再確認しました。そして、久しぶりに子供たちの口から元気な「黒潮っ子の誓い」を聞いて、私自身が元気をもらいました。これからも、焼津東小学校の子供たちには高く広くのびる黒潮っ子で有り続けて欲しいです。


究極の球の追求~けん玉発祥地の職人技

2015年2月9日~2015年2月15日放送
中国放送 RCCフロンティア 制作営業部 ラジオGr. 馬越弘明

【番組概要】
広島県廿日市市は、現在のような形のけん玉が最初に作られた、けん玉発祥の地。ここに、60年以上けん玉を作る職人がいます。西村保宣さん。77歳です。廿日市最後のけん玉職人として、けん玉を作っていたものの、1度は廃業。しかし周囲の声、そしてある理由から再び生産を始めました。番組では、けん玉職人復活の舞台裏、そしてけん玉作りに欠かせない工程の音を届けます。

【制作意図】
けん玉が若者のストリートカルチャーとして注目され、ブームとなっている今、ブームに関係なくけん玉を作り続ける、けん玉発祥の地、廿日市の職人の声、そして音を残したいと感じ、制作しました。

【制作後記】
取材前は、「ウィーン」という木を削る音がメインになると思っていました。しかし最初に収録した音は、ハンマーで機械を叩く音。木材を削る機械は、西村さんが少しずつ改良を重ねたオリジナルの機械。その刃の調整こそが職人の技でした。取材後、私は西村さんが作ったけん玉で毎日遊んでいます。けん玉は、ずっと残したい日本の玩具です。


2015年2月 4日 (水)

神の魚がやってきた~県民魚ハタハタの季節~

2015年2月2日~2015年2月8日放送
秋田放送 ラジオセンター ラジオ制作部 鈴木 聖子

【番組概要】
ハタハタは、秋田県民の冬の食卓には欠かせない魚で、鍋、塩焼き、なれずしのひとつで郷土料理としても知られる「ハタハタ寿司」などさまざまな料理方法で食べられています。ハタハタの別名はカミナリウオ。雷が鳴り、寒さが厳しくなる11月の終わりから12月頃にかけて秋田では産卵のため岸に近づいてきたハタハタを獲る季節ハタハタ漁が行われます。活気付く男鹿市の港の賑わいや市場の買い物客の様子を取材しました。

【制作意図】
季節ハタハタ漁は、資源の減少などにより平成に入ってから3年間漁が禁止されました。漁を我慢してまでも県民が資源の回復を待った魚でもあります。原田隆徳さんは、男鹿市の港で20年ほど漁に携わっています。「この漁が終わらないとお正月が来ない」と話す原田さん。原田さんの季節ハタハタ漁への思いを伝えるとともに、秋田の冬の風物詩・ハタハタをラジオの音で味わってもらえたらと思います。

【制作後記】
漁業関係者はもちろん、県民に愛されている魚だということを改めて感じました。取材した日はハタハタが大漁でした。寒いなか、白い息を吐きながら休むことなく黙々と作業していた原田さんが大漁の話になると笑顔になったのが印象的でした。番組の冒頭にハタハタの卵・ブリコを食べる音が出てきますが、プチプチとした食感を音で感じてもらおうと、さまざまな焼き加減のブリコを食べて試行錯誤を重ね録音しました。

川尻刃物は人をつなぐ

2015年1月26日~2015年2月1日放送
熊本放送 ラジオ編成制作部付 宮川理佳

【番組概要】
熊本県の伝統工芸品・川尻刃物は、室町時代に起源があるといわれています。鋼と鉄を手打ちで鍛え上げていく刃物は切れ味もよく、「一生もの」と言われます。熊本市南区川尻の「林昭三刃物工房」は、最も古い川尻刃物の職人、林昭三さんが営む店です。以前は鋤や鍬などの農具を中心に作っていましたが、今では包丁を主体に作っています。時代の流れとともに昔ながらの手作りを買う人は少なくなり、職人も林さんを含めて2人。しかし年末には切れなくなった包丁や剪定ばさみを砥いで欲しいと持ってくる人が多くなります。そこには長く愛用される林さんの刃物がつなぐ人の縁がありました。そして、いいものを作る林さんの喜び、憂いとは・・・。

 

【製作意図】
林さんは65年以上、川尻刃物を作ってこられました。長年の経験が培った職人の勘で作り上げられる包丁は3日で10本。なかには3日がかりで仕上げるものもあります。「いいものを求める人のために作りたい」と刃物を作る林さんの姿は、大量生産で安いものを求めがちな現代に、「自分にとっていいものとは何か?」と問いかけてきます。伝統工芸・川尻刃物の職人が少なくなる中、手作業で作る刃物のよさや、職人を頼ってやってくるお客さんとの切れないつながりを伝えたいと思いました。

 

【制作後記】伝統の製法を守り継いできたこと、後継者育成に力を入れているということが評価され、去年、林さんは伝統的工芸品産業大賞の功労賞を受賞しました。また取材を進めている最中に「くまもと県民文化賞」を受賞するなど、嬉しいニュースが続き、「いい年になった!」と林さんの笑顔も倍増!ますますパワフルに刃物作りに取り組んでいらっしゃいます。私も林さんの包丁を買って嫁入り修行に励もうかと思案中です。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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