2022年11月 8日 (火)

いくつになっても夢を追え!石狩のひつじ飼い

2022年11月7日~2022年11月13日放送 
北海道放送 オーディオビジネス局編成制作部 横山佳菜絵 

【番組概要】
北海道のソウルフード「ジンギスカン」。ですが、私たちが口にしている羊肉のほとんどが輸入でまかなわれているのをご存じですか?北海道札幌市の中心部から車でおよそ40分のところに、「石狩ひつじ牧場」があります。そこで「ヤンボー!」と叫ぶのは、ひつじ飼いの山本知史さん。
36歳からチーズ専門店を営む山本さんは、ある時「ひつじのチーズ」のおいしさに感動し、53歳になって、自らひつじのチーズを作ると決意!55歳で牧場をつくり、58歳でチーズ作りを始め、60歳でひつじのお祭りを開催。いくつになっても夢を追い続ける山本さんの次なる夢は?この夢が叶った時、「北海道産のジンギスカン」が当たり前になるかもしれません。・・・ところで「ヤンボー!」って何?

【制作意図】
山本さんと初めて出会ったのは、テレビディレクターとして牧場にお邪魔した2年半前。それから、会うたびに新しいことを始めているパワフルさに驚くばかりでした。
ある日、話を聞いてみると…「理想のチーズができた!」「フランスに輸出するんだ!」「ひつじのお祭りもやるよ!」「ひつじのマチを作りたいな!」その他にもたくさんの叶えた夢とこれから叶えたい夢を教えてくれました。山本さんの夢を聞いていると、自分もなんだか頑張れそうな気がしてきます。
この物語を聴いた皆さんにもそんな気持ちになってほしいと思い、制作しました。

【制作後記】
「どうして、新しいことにチャレンジし続けられるんですか?」と私。「自分よりも先にやっている人が必ずいる。だったら自分にもできる。」と山本さん。何をするにも、一歩立ち止まってしまう私は、その言葉にハッとしました。私は20代。人生まだまだこれから!
山本さんに負けないくらいのチャレンジ精神とあたたかさを持って生きていきたいと感じました。
是非一度、北海道の石狩で、山本さんとかわいいひつじたちにパワーをもらいに来てほしいと思っています!

 

朝日差す丘からサミットへ~3セクワイナリーの挑戦~

2022年10月31日~2022年11月6日放送 
山形放送 制作部 佐藤嘉一

【番組概要】
山形県朝日町は、町の中心を流れる最上川沿いの河岸段丘を生かした、果樹栽培が盛んな地域です。この町のブドウでワイン作りが始まったのは、太平洋戦争末期の1944年。ワインの滓や樽の内壁に結晶化する酒石酸が、潜水艦や魚雷などを探知する水中聴音機の部品の原料として軍需物資になりました。このため国は、ワイン作りを奨励。このとき全国で新たに作られたワイナリーの1つが、のちの朝日町ワインです。敗戦で、軍需物資は不要になり、大手メーカーにポートワインの原料として買い取ってもらうなどしましたが、ワインブームの盛衰により会社も大きく左右されます。町内のブドウ農家を守るため、町と地元農協の出資で第3セクター方式に転換。高品質なワインを作るため、町ぶどう生産組合と話し合い、研さんを続け20年。品質の向上で数々のワインコンクールで入賞。2016年の伊勢志摩サミットでは、各国首脳に提供する赤ワインに選ばれました。毎年10月、町の未来を担う中学生と保護者がブドウを収穫。6年後の成人の集いで出来上がったワインが手渡されます。

【制作意図】
軍需物資の増産という、いわば国策から始まった山間の小さな町のワインが、サミットのひのき舞台で、先進各国の首脳に飲んでもらう日本を代表するワインの1つにまでなった。町のワイナリーの草創期を知る人たちが、どんどんいなくなる中、貴重な本人のインタビューと、町の未来を担う子供たちの取り組みを通じて、「まじめで、ひたむきなモノづくり」の大切さを感じてもらいたい。

【制作後記】
報道制作の現場でも、主に報道、しかもテレビが中心の部署で仕事をして来たので、音だけで伝える難しさを改めて感じる取材現場となりました。収録の場所や、マイクなど機材を変えみたり、ワインの仕込みの工程ごとに通って収録し、分かりやすい音を探して見たりと、時間の許す限りやってみましたが、まさに「沼」の状態を体感させていただきました。ワイン仕込み最盛期の一年で最も忙しい中、お付き合いいただいた朝日町ワインの皆様、生産者の皆様には、感謝の言葉しかありません。中学生たちには、6年後の成人の集いでワインを受け取った時に、この番組が、思い出の一コマになっているといいなと思っています。

松江の隠れ名物・カツライス~音で感じる歴史の味~

2022年10月24日~2022年10月30日放送 
山陰放送 制作局制作部 森谷佳奈

【番組概要】
ご飯の上に揚げたてのトンカツを載せ、デミグラスソースをたっぷりとかけたご当地グルメ。「松江カツライス」をご存知でしょうか。「カツ丼」でもなく、「とんかつ定食」でもない、島根県東部に伝わる松江市発祥のグルメです。このカツライス、最近新たなご当地グルメとして、人気急上昇中なのですが、その歴史を調べてみると…なんと90年も前から親しまれていた味でした。洋食店では、牛タンシチュー、オムライスに並ぶほどの人気。では、なぜ今になって人気が再燃したのでしょうか。それは地元民では気づくことのできないある理由がありました。この松江カツライス、知れば知るほど奥深いものでした。音で味わえるようにカツライスを作る音にもこだわりました。どうぞお腹を空かせてお聴きください。

【制作意図】
ここ2~3年で、島根県松江市では「松江カツライス」というグルメをよく耳にするようになりました。ただ、松江市出身・在住の私なのですが「松江カツライス」の存在は知りませんでした。そこで「松江カツライスとはなんだ?」と思ったのが制作に至ったきっかけです。調べてみると、歴史的に貴重な食文化であると知り、多くの方に知っていただきたく制作に至りました。

【制作後記】
今回は「音で味わうカツライス」を裏テーマに収録し、編集しました。よりおいしそうな音、表現を工夫しながら制作していると、どうしてもお腹が空くテーマでした。放送後には、すぐに食べに行こうと思います。みなさんにもこの気持ちが伝われば嬉しいです。また、今回取材で伺った西洋軒以外にもいろいろな松江カツライスがありますので、お気に入りの一皿を探してみてください!

きてみさいや 迫力満点 「宇和島闘牛」

2022年10月17日~2022年10月23日放送 
南海放送 メディア編成局メディアセンター 百合田彩

【番組概要】
愛媛県の西南部にある宇和島市には「宇和島闘牛」という伝統行事があります。2頭の牛が角を突き合わせて戦う「闘牛」は全国6県9つの地域で開催されていますが、四国では唯一の開催地。正月やお盆といった人が集まりやすい時期に大会は開催され、相撲と同じように番付された牛たちが熱き戦いを繰り広げます。しかし、大会に出場する闘牛、牛主はピーク時の5分の1に減っています。後継者不足に悩む中、宇和島の観光の目玉として地域を盛り上げようと活動しているのは、宇和島市営闘牛場のスタッフで、大会の実況を務める、坂本健二さん。「牛が戦う姿を闘牛場に来て、体感して欲しい」と語る坂本さん・・・その魅力とは。8月に開催された、お盆場所の模様をお届けします。

【制作意図】
「宇和島市民の80%が宇和島闘牛は知っていても、大会を見たことがないんじゃないですか。」
坂本さんの言葉にドキッとしました。私は高校を卒業するまで宇和島市で過ごしましたが、宇和島闘牛を見たのは去年が初めてでした。1tを超える牛の迫力、勢子(せこ)と呼ばれる人が牛と一緒になって戦う光景に感動し、虜になりました。大会の模様は生配信されたり、YouTubeにUPされたりしていますが、坂本さんは「生で見ること」にこだわっています。その理由は、今は私も理解できます。
番組を通じて、一人でも多くの観客やファンが増えたらと願っています。

【制作後記】
牛はこれまでの取り組みを覚えている為、同じ相手ともう一度戦うことはありません。なので、闘牛場では「一度きりの本気の勝負」が繰り広げられています。土俵では力強く、激しい戦いを見せる牛たちですが、試合を終えると落ち着いていて、毛並みも綺麗で可愛らしいんです。そのGAPも感じて欲しいです。次回の場所は10月23日です。(全国闘牛サミット in宇和島 記念闘牛大会という名称)気になった方は、是非、宇和島に‟きてみさいや!”

2022年10月 5日 (水)

市電の呼吸に全集中

録音風物誌2022年度番組コンクール 最優秀賞作品
再放送

2022年10月10
日~2022年10月16日放送 
熊本放送 ラジオ制作部 中村レン

【番組概要】
熊本市電が登場したのは98年前。地元の私たちには欠かせない交通手段のひとつです。
コロナで外出自粛になるまでは、この市電に年間300日以上乗ってきたという中村弘之さん(85)は、毎回独自の「乗車メモ」を取り、運転士の名前とともにその運転技術やアナウンスなど「勤務評定」的なものをつけています。この中村さんがある日出会ったのが「いつ止まったか分からないくらいのブレーキ技術」をもった江崎運転士。他にも「カーブの帝王」や「新幹線並みのスムーズな発車」など職人肌の運転士が揃っています。およそ100人いる運転士は、乗客の安全と快適さのために日々技術を磨いていました。日頃気づくことがない「当たり前の安全」に力を尽くす運転士。100年近い歴史のなかで脈々と受け継がれている運転士の誇りが垣間見えます。

【制作意図】
きっかけは地元新聞の読者の投稿欄。番組にもご出演いただいた中村弘之さんの「びっくりするほどブレーキがうまい運転士がいる」というものでした。市電に乗るお客さんの事情は様々。お年寄りはもちろん、その日具合が悪い人もいます。足が悪くても席がなく立っている人もいます。そんな人たちのために可能な限り優しい運転をしている運転士と、そこに気づいた乗客。見えない交流が素敵だなと思いました。中村さんの投稿が載った後、別の高齢女性からも「その運転士は私も知っています。本当に静かに止まるのです。」というメッセージが新聞に掲載されました。これはホンモノだ!と思って取材しました。


【制作後記】
市電に慣れ親しんでいる熊本市民にとっては、空気ブレーキの音にはなじみがあり、情景がありありと浮かぶのですが、市電が走っていない地域に暮らす人たちにどこまで想像してもらえるだろう?という点に悩みました。乗客の命を預かっている運転士が目指しているのは「安全であたりまえ」を超える快適さ。それが一か所ごとの停留所や信号での優しい停車や揺れのないカーブ、それに静かな加速につながっています。取材後、すっかり市電のファンになった私は、休日など日に3~4回乗車し、そのたびに運転士の名札を確認するようになってしまいました(笑)

豪雪地の雪下ろし~空から冷蔵庫が降ってきた!

録音風物誌2022年度番組コンクール 優秀賞作品
再放送

2022年10月3
日~2022年10月9日放送 
山形放送 アナウンス部 門田和弘

【番組概要】
≪これが豪雪地の雪下ろし!≫                                                                                                                                                                                                                                                                                        山あいに、20件もの旅館が肩を寄せ合うように立ち並ぶ肘折温泉。上を見上げると屋根には2mもの雪の塊が・・・。昨年12月25日から連日のドカ雪となった大蔵村肘折では、今年1月4日には積雪が2m超に。氷点下4℃、この日も もっさもっさ と雪の降りしきる中、朝から夕方まで 「雪下ろし職人」に密着しました。ここでは地元の有志によるいくつかのグループが、旅館や民家の雪下ろしを行っています。肘折では雪下ろしに使う特有の道具があります。それは、ノコギリ!                                         ①ノコギリを使い、屋根に積もった2mの雪を切り出しスノーダンプで運んでいく。                        ②安全確認後、1つ200kgもの雪の塊を、軒先から下に放り出す。                      この作業が何度も何日間も繰り返され、肘折の冬の暮らしが守られています。豪雪地・肘折の雪下ろし現場、その最前線に潜入です!

【制作意図】
≪豪雪地ならではの音風景の発信≫                                  初めて冬の肘折を訪れたのは30年前。温泉街に入ったとたん、一瞬目を疑いました。「空から冷蔵庫が降ってきた」 のです。そのイメージが強く、タイトルに入れました。肘折を訪れると雪下ろしのイメージが覆ります。音風景も豊富です。「どっしゃーん」「ずばばばーん」 と耳をつんざく雪の落下音 
○ ノコギリを使い、雪を切り出す音                                  ○ 雪を運ぶ職人の息遣い                                        いずれも厳しい自然と闘っている中で生み出される音なので、緊迫感があります。いつかこの音をラジオで番組にしたいと思っていました。冬の関東地方は太平洋高気圧に覆われよく晴れます。一方、肘折はまるっきり違う世界です。このあと雪は2月下旬まで増え続け、必死の雪下ろし作業は春先まで続きます。                                                                                                                                                                                                                                      

【制作後記】
≪過酷な取材でした≫                                                      雪が無ければこの取材は難しくなります。去年の暮れから天気予報を気にしてソワソワしていましたが、年末から年始にかけて寒波が来襲、順調に雪が増えました。今年の私は「雪下ろし」 が仕事始めです。肘折に着くといきなり雪塊しぶきの洗礼が!雪まみれになりながら、まずはこの迫力ある爆音をどう収録するのか?悩みました。200kgの雪塊は大変危険です。落ちてくるギリギリの所にマイクを立て、上手く職人にコントロールしてもらい、収録に臨みました。あまりにも激しい音なので、ひずみが生じ、半分以上が使えませんでした。旅館の屋上では、ノコギリ音に挑戦です。高さ15mの屋上は風も強く、体が芯から冷え、雪の積もったマイクはぶるぶる震え、いい音が録れているか不安でした。そして、氷点下の凍て付く世界から40℃のポッカポカ温泉へ。入浴シーン収録後も皆 「あ~」「う~」「ふぅ~」。過酷な取材も全て忘れ、最高の1日となりました!

2022年9月16日 (金)

おばあちゃんの肉玉そば

録音風物誌2022年度番組コンクール 優秀賞作品
再放送

2022年9月26
日~2022年10月2日放送 
中国放送 RCCフロンティア 馬越 弘明

【番組概要】
広島市民のソウルフード「お好み焼き」。
57年前からお好み焼き店を営む梶山敏子さん(80)は、スタンダードなお好み焼き・肉玉そばを500円で提供しています。有名店では1000円近くするお店もある中で、それは広島市民でも驚きの価格。
敏子さんは、35年以上その値段を守り続けています。しかし、原材料費の高騰が襲いました。
それでも値上げをしたくないという敏子さん。なぜ敏子さんは500円の値段を守り続けるのか?
そして、「値上げをするくらいならお店をやめようかな…」そんな敏子さんの一言を聞いた常連さんがとった行動とは?8人が入ればいっぱいになる、小さなお店の物語です。

【制作意図】
「この時代、500円で肉玉そばが食べられるお店があるの!?」
そんな驚きが、取材をスタートさせるキッカケでした。取材をしてみると、店主がその値段にこだわる理由には、広島とは切っても切れない背景がありました。そして、そんな店主の思いを共有した常連さんの行動力がありました。戦後を生き抜いた、1人の広島市民の思いをお伝えできればと思い、制作しました。

【制作後記】
広島には本当にたくさんのお好み焼き店があります。「麺がパリパリ」「キャベツが太め」「卵がトロトロ」など、それぞれのお店に特徴があります。そんな中、小さなお好み焼き店で提供される500円のお好み焼きに、こんな物語があったなんて…。原爆の被害にあった広島では、1人1人の人生に壮絶なドラマが詰まっている。改めてそんなことを感じました。

まちのだがし屋さん~わくわくがとまらない!~

2022年9月19日~2022年9月25日放送 
東北放送 ラジオ制作部 小野寺穂実

【番組概要】
宮城県の北西部にある加美町中新田地区には、石畳道路が特徴の「花楽小路(からくこうじ)商店街」があります。商店街の一角にある駄菓子屋さん、『だがし屋竹とんぼ』が今回の舞台です。店主の野泉マヤさんが、商店街に少しでも楽しいお店を、という想いを持ち、2年前にオープンさせたこのお店。6畳ほどの小さな店内には、チョコレートや、グミ、ガム、ゼリーなど、およそ130種類の駄菓子が、棚いっぱいに並んでいます。お店が開いているのは、平日の3日間と土曜日の、おやつの時間帯。もらったお小遣いを握りしめて楽しみにやってくる小さな子どもたちや、駄菓子ファンだという大人たち、子どもや孫との駄菓子選びを楽しみにやってくる人々など、お店に訪れるお客さんは様々です。ですが、どのお客さんにも共通しているのが、駄菓子を選ぶ時の"わくわく"する気持ち。今日はもらったお小遣いの中で何を買おうかな、あの子はきっとこの駄菓子を喜んでくれる・・・それぞれの"わくわく"が生まれる場所が、『だがし屋竹とんぼ』です。そんな"わくわく"を、店主の野泉マヤさんの想いとともにお伝えします。色々な世代の人が集まり、たまり場となっているこの場所こそ、まちの風物誌です。

【制作意図】
『だがし屋竹とんぼ』を初めて訪れた時、今日は何を買おうかなと楽しみにお店までやってくる子どもたちの軽い足取り、そして握りしめたお小遣いを計算しながら慎重に駄菓子を選ぶ様子を見かけました。そして、今日はこれを買ったんだよ!と最後に笑顔で教えてもらいました。このお店には、"わくわく"があふれている、と感じました。販売されている駄菓子は10円から、高くても100円程度です。決して高価なものではありませんが、このお店は日常の小さな楽しみや喜びを与えてくれる、とても貴重な存在なのだと思い、取材を決めました。何か形に残るモノをつくっている音ではなく、日常にあふれる小さな"わくわく"を音として表現したらどうなるのか。私が『だがし屋竹とんぼ』で出会った"わくわく"たちを、詰め込みました。

【制作後記】
『だがし屋竹とんぼ』を取材するにあたり、お店がある「花楽小路商店街」についても少し調べてみました。この花楽小路商店街は、まちの顔であり、コロナ禍に入る前には、四季ごとにお祭りやイベントが開催され、賑わっていたそうです。ところが、コロナが拡大して一気にまちの賑わいが消えてしまいました。そんな中でオープンした『だがし屋竹とんぼ』。店主の野泉マヤさんは、オープン時のあいさつ回りの時に、商店街の他のお店の方々から、こんな時でも新しいお店ができて嬉しいと、エールをもらったそうです。『だがし屋竹とんぼ』という場所が、これからもたくさんの"わくわく"を生み出す場所として、花楽小路商店街を、そして加美町を盛り上げる、そんな拠点となればいいなと思います。

伝書鳩がつなぐ未来

2022年9月12日~2022年9月18日放送 
山梨放送 ラジオ局ラジオ制作部 秋山幸江

【番組概要】
山梨県、南アルプス市出身の大学生 中嶌健さんは、鳩の帰巣本能を活用して災害時の通信や運搬手段として役立てる『災害救援鳩』研究に取り組んでいます。自宅ではレース鳩の趣味を持つ父・健司さんとともに100羽以上の鳩を飼い幼いころから鳩と向き合ってきました。生き物が持つ力を見直し、その可能性を見出すべく研究に打ち込む健さんと応援する父・健司さんの姿を追いかけています。

【制作意図】
なぜ、若者である健さんが『伝書鳩』に注目したのか。その思いに興味を抱き企画しました。
何十羽という鳩の鳴き声や、羽ばたく音にのせて研究への熱い思いと、鳩の魅力をお届けしたいと思います。

【制作後記】
健さんは東日本大震災や西日本豪雨など、災害が起こるたびに「ひとのために自分に何ができるのか」
と考えた事が、研究へ挑む動機の一つだったといいます。鳩一羽移動する時も、包み込むように持ち上げる健さんの人間性の中に自然や他者と共存していくためのヒントを感じました。



そろそろ帰ろうか~ 夕暮れの町に響く愛の鐘(防災無線)

2022年9月5日~2022年9月11日放送 
信越放送 ラジオ局 編成制作部  伊藤俊道

【番組概要】
あなたのお住まいの地域では 夕方どんなメロディーが流れていますか?「夕焼け小焼け」「家路」「赤とんぼ」?!数多くの災害に見舞われてきた歴史から、日本各地に設置されている防災行政 無線。屋外スピーカーは各所に設置されており、災害に関する情報や避難情報、人命に関する情報など、住民に知らせる重要な役割を果たしています。夕方のメロディーは、その機器が正常に作動するか、チェックをかねて毎日流されています。そしてそこには、市町村ごとにこだわりがあります。出身や所縁のある著名人が作った曲が採用されていたり、公募によって採用された曲が流れていたり…。番組では、そんな防災行政無線のメロディーを追いかけながら、そこに住む人々の生活に寄り添った背景を切り取り、災害が多発する昨今、9月は防災月間という事もあり、防災行政無線への関心を少しでも高めてもらいと願い制作しました。

【制作意図】
3年目のコロナ渦…自宅でのリモートワークをしていると、ある日、これまで耳に止まらなかった野外スピーカーからのメロディー。それは、地域に情報を促す防災行政無線からのの音でした。子供の頃に聞いた記憶がありますが、大人になった今は、会社にいることが多く、ほとんど耳にも止まっていませんでした。日中自宅にいると、熱中症への警戒メッセージや詐欺に注意のアナウンス。毎日様々な情報が発信されていました。そして夕方には、何かホッとする“一日お疲れさまでした”と言っているような温かみのあるやさしいメロディが流れていました。そこで、他の地域ではどのようなメロディーが流れているのか?平日のラジオ番組の中で「わが町のチャイムはどんなものが流れているか」リスナーから情報を寄せて頂き、中でも個性の地域をセレクトし今回の番組で放送しました。

【制作後記】
2019年の台風19号災害で長野県は大きな被害がありました。千曲川の水が堤防を越える中、住民に危険を呼びかけたのが地元の消防団員が鳴らす半鐘の音でした。5分間鳴らし続けられた半鐘の音を聞き、お年寄りや海外出身の人達は「ただ事ではない」ことを察知し避難しました。緊急時の伝達手段として、情報の受け手側の能動的な操作を伴わず、必要な情報が届けられるようにと設置された防災行政無線の屋外スピーカー。時代とともに求められる情報の伝達方法は、様々に変化していきますが、各地域の特性に応じ、複数の情報伝達手段を組み合わせることにより、より多くの住民へ確実に情報を伝えることが重要だと思い知らされました。災害が頻繁に起こる昨今、防災行政無線から今後サイレンや危険を知らせる音ではなく穏やかな、故郷の情景に溶け込み親しまれるメロディーが流れる存在としてこれからもあり 続けてくれることを願います。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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