2023年5月22日 (月)

海女さんを訪ねて

2023年4月24日~2023年4月30日放送 
東海ラジオ 報道スポーツ制作部 吉川秀樹

【番組概要】
2000年以上の歴史を持つ「海女漁」。三重県の「鳥羽・志摩の海女漁の技術」は国の重要無形民俗文化財に指定されています。中でも、鳥羽市相差(おうさつ)町は、日本で最も現役の海女が多いエリア。この町には、海女さんと会話を楽しみながら、新鮮な海の幸を堪能できる食堂「相差かまど」があります。10年前、NHK連続テレビ小説がヒットして一躍有名になった海女さん。実際に海に潜っている姿を映像などで見たことがあっても、直接お話を聞かないと、分からないこともたくさんあります。                                                     いったいどれくらいの深さまで潜るのか?素潜りの技術とは?この仕事のやりがいとは?知られざる「海女さん」の姿を紹介します。

【制作意図】
東海地方のラジオ局に勤務していながら、なかなか直接足を運ぶ機会が少ない三重県南部エリア。鳥羽市の海女漁について、知識としては知っていても、実態は分からずじまい。一度直接お話を聞いてみたいと思ったことがきっかけです。海に潜るのに、酸素ボンベも背負わず、白衣を着て潜るだけ。その状態で、なぜ長時間潜ることができるのか?専門の技術習得にはどれくらいの時間がかかるのか?現役の海女さんの年齢層は?海女を志す若者は誰でもなることができるのか?様々な疑問が湧いてきます。                                                      全国の皆さんに「海女さんとは何か?」を少しでも知って頂きたいという思いで制作しました。

【制作後記】
今回の取材でお話を伺ったのは、この道50年のベテラン・70歳の中村みちこさん。取材で見えてきたことは、今なお現役で海に潜り続けることに「やりがいを感じる」と話す一方で、「仕事だから、やって当たり前」「危険な仕事だけど、ある意味、仕事と割り切ってやっている」「自分がたくさん貝を獲れば獲るほど、稼げる」という思いも持ち合わせているという点です。「これは私の仕事ですから」という割り切りは、どんな業種でも共通する部分。海女の世界も例外ではない。そう感じました。後継者不足を課題としながらも、決して地元の若い女性には、海女になることを勧めない方針も貫いています。(もちろん希望者がいれば大歓迎ですが)常に危険と隣り合わせの環境で、海に生きる海女の仕事。鳥羽市の食堂「相差かまど」を訪れ、海女の世界を垣間見ることができました。                

原発事故から12年 それでもこの地で 牛と共に生きる

2023年4月17日~2023年4月23日放送 
ラジオ福島 編成局放送部 佐藤成美

【番組概要】
福島県楢葉町の山間にある蛭田牧場。12年前の原発事故により避難を余儀なくされた町で、唯一営農を再開しました。牧場のオーナー・蛭田博章さんは、避難指示が出され、先が見えず苦しい思いをした時期もありましたが、諦めず地元での営農再開を実現させました。一度は一頭もいなくなった牛舎には、現在、140頭が飼育できるようになりました。蛭田さんの1日は朝5時から始まり、エサ作りから搾乳、掃除など多岐に渡ります。休む暇もなく忙しい日々が続きますが、蛭田さんは、「このように働けるのも営農再開出来たから。逆に楽しい!」と笑顔で話します。そして、最近では、力強い助っ人も現れました。困難を乗り越え、地元・楢葉町で酪農を続ける、蛭田さんの情熱をお届けします。


【制作意図】
原発事故後の営農再開は、前例がなく大変困難なことでした。先が見えない中、“地元で営農再開させる”と強い意思を貫き通した蛭田さんを、皆さんに知ってほしいという思いから取材・制作しました。また、酪農の現場は、重労働、担い手不足に加え、最近では、飼料などの原材料費が高騰するなど問題が山積しています。蛭田さんも休みなく働いていますが、それ以上に、生き物を扱う責任ある酪農の仕事にやりがいを感じています。その輝いている姿を見て、酪農の魅力を多くの方に伝えたいと思い、制作に取り組みました。

【制作後記】
今回の取材を通して、牛への愛着がとても強くなりました。収録の時に牛とかなり接近したのですが、人生の中でこれほどまでも牛と近づいたのは、初めてでした。乳牛(ホルスタイン)はとても大人しく人懐っこい性格で、収録中もつぶらな瞳でこちらを見つめてきました。蛭田さんが笑顔で話す、「手塩にかけて育ててきた娘たちなので、大切にします!」という気持ちが、少しだけ分かった気がしました。

 

春は「いかなご」 感謝届ける神戸の味

2023年4月10日~2023年4月16日放送 
ラジオ関西 報道制作部 藤原正美

【番組概要】
春を呼ぶ魚「イカナゴ」。年々漁獲量が減り、漁期が短くなっている。漁獲量が減ると、値段は上がる。それでも、神戸などでは古くからの味を守り、同時に資源も守っていこうと、努力を続けている。阪神淡路大震災の後、地元の味を送ることで、感謝や自分が元気でいることの証として、待ってくれる人たちのために、くぎ煮を作り続けている。そんな多くの人の思いを送る。

【制作意図】
神戸では、昔から「イカナゴのくぎ煮」を作っている。元々は漁師たちの家庭料理だったのが、1980年代頃から一般に広まるようになり、それぞれの家庭料理として確立されていった。現在は農林水産省の「うちの郷土料理」で兵庫県の味のひとつにも選ばれている。ところが、ここ数年、漁獲量が極端に減り、漁期が短くなっている。様々な要因が重なり減少につながっているため、対策もとられているが、劇的な改善は見られない。量が少なくなると、当然、値段も高騰。かつて1キロ800円で買えたものが、最近は数千円に。そうしたなかでも、神戸の人たちは毎年「いかなごのくぎ煮」を作っている。なぜ作り続けるのか?家庭の主婦、漁業者の思いと、この家庭の味を知ってほしいと思い、制作に至った。

【制作後記】
漁獲量の減少の原因について、漁業者や専門家にあたってみると、原因がたくさんあり、どれもが複雑に絡み合っていると感じた。漁師さんに伺うと口が重くなる人もいた。一方、消費者もそうした「獲れない」ことを理解していて、金額が高いのも「やむを得ない」と思う人も少なからずいた。それでも作り続けるのは、「くぎ煮」を楽しみにしている人が数多くいて、その人たちへ自身の近況を含め「春の便り」として送っているのだとも感じた。神戸の人のイカナゴへの思いの強さを、改めて実感した。

大洗の粉もん~お好み焼き?もんじゃ焼き?いいえ!たらし焼です!~

2023年4月3日~2023年4月9日放送 
茨城放送 編成事業部 勝又諒子

【番組概要】
茨城県中央の海沿いに面した大洗町で大正時代からおやつとしても親しまれていた「たらし焼」という食べ物があります。お好み焼きより柔らかく、もんじゃ焼きよりは固い食感で具材も味付けも自由なのがたらし焼の特徴です。今回はたらし焼をお店で提供している「ほそのや」2代目店主の細野谷裕子さんに「たらし」についてお話を伺いました。細野谷さんは大洗生まれ、大洗育ちなのでたらし焼は子供のころから食べています。大洗では当たり前に食べられている「たらし」がどんな食べものなのか、そしてたらし焼が繋ぐ絆をお伝えします。

【制作意図】
私は茨城県外出身のスタッフです。茨城県はよく魅力度がない県として有名ですが、全然そんなことはありません!!沢山の魅力があるのに、茨城県内では当たり前すぎてインタビューをすると「何もない所だよ」と答える人が多いように感じました。今回作るにあたり考えたのは茨城県民の皆さんが当たり前に思っているものが本当は素敵なものなんですよ!と伝えたいこと。ですので大洗町で当たり前に食べられている「たらし焼」を選びました。大洗から茨城県、そして全国へ「たらし焼」の魅力を広めたいと思い制作しました。

【制作後記】
とにかく、制作している時に鉄板で焼いている音を聞くのは音の飯テロですね。おなかからの「ぐぅ~」という主張に何度負けそうになったか…。たらし焼を鉄板でじゅうじゅう焼く音に細野谷さんの元気はつらつな声と取材したときの思い出が何度もよみがえりました。取材した時も思いましたが、細野谷さんがすごく素敵な方でおしゃべりをしながら、たらしを食べるのも最高のひと時になると思います。お好み焼きやもんじゃ焼の濃い味に飽きたら、たらしを食べてみるのがいかがでしょ
うか?シンプル・イズ・ベストですよ。

地雷のない世界へ 山梨からの挑戦

2023年3月27日~2023年4月2日放送 
山梨放送 ラジオ制作部 内田孝輝

【番組概要】
山梨県南アルプス市に30年近くにわたり、地中の地雷を取り除く「地雷除去機」の開発に取り組む企業があります。手掛けた機体はカンボジアなど11カ国で約140台が稼働し、先日はロシアの軍事侵攻が続くウクライナの政府関係者も視察に訪れました。地雷とは縁もゆかりもなかった企業が地雷除去機を造ることになったのは、ある偶然の出会いがきっかけでした。“地雷のない世界”の実現を目指す、山梨からの挑戦を紹介します。

【制作意図】
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年以上が経ちます。今なお終わりは見えず、激しい戦闘で続き多くの犠牲と被害が出ていますが、日本では時とともに関心が薄れつつあるようにも感じます。そんな中、地雷のない世界を目指し、地雷除去機の開発に取り組み続ける企業があること、山梨の建設機械メーカー「日建」の思いを多くの人に知ってほしいと思いました。

【制作後記】
地雷は罪のない市民も無差別に殺傷する残虐さから“悪魔の兵器”と呼ばれています。特に「対人地雷」は殺すことよりもけが人を増やし、国力を削ぐのが目的と聞いてぞっとしました。過去に埋められ、放置された地雷は世界全体で約1億個とも言われるそうです。復興の妨げにもなる地雷の除去が進み、地雷のない世界が実現することを願ってやみません。

2023年3月30日 (木)

浮かぶお星さま、渡されたバトン

2023年3月20日~2023年3月27日放送 
新潟放送 BSNウェーブ 佐藤実南

【番組概要】
新潟市中央区古町通3番町にある「喫茶UKIHOSHI」。そこで提供されているのは、「浮き星」という小さなお菓子です。金平糖のような見た目のお菓子ですが、あられに砂糖をコーティングしたもので、お湯を注いで飲む、全くの別物。作っているのは、明治33年創業の明治屋ゆかり店。もともとは「ゆか里」という名で、明治時代から新潟市民に親しまれてきました。しかし、職人の高齢化、後継者不足などが理由で、その味と歴史は途切れかけていました。そんな「ゆか里」の味を守りたいと声をあげたのは、一人のデザイナーでした。ゆか里から浮き星へ。味と歴史のバトンを繋ぐ人々のお話です。

【制作意図】
「喫茶UKIHOSHI」に入り、まず目に付くのが、ずらりと並んだ小さなお菓子たち。
その、可愛らしいパッケージの裏には、伝統を守ろうと奮闘した人々の思いがつづられていました。
120年以上代々受け継がれてきた職人技と、新しいデザインや企画がどのような化学変化を起こしてきたのか。伝統を守って来た人、そのバトンを受け取り未来に繋いでいく人、それぞれの思いを取材しました。

【制作後記】
今回の取材を通して、変わっていく時代の中で、同じものを作り続け、求められ続けることの厳しさを感じました。明治屋の3代目の小林さんは、戦争、新潟地震など沢山の困難を乗り越え、ゆか里の味を守って来たそうです。浮き星(ゆか里)に限らず私たちの生活は、先人たちが大切に守り繋いできたもので溢れているのだと気づくことができ、簡単に途絶えさせてはいけないのだと思いました。この作品が、聴いた人の身の回りの無くしてはいけないものに、目を向けるキッカケになってくれたら嬉しいです。

刀匠 松葉國正 鋼も溶かす熱い

2023年3月13日~2023年3月19日放送 
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 丸山莉奈

【番組概要】
1000年以上の歴史がある「日本刀」の刀匠が宮崎県日向市にいらっしゃいます。日向市は、宮崎県の北東部に位置し、日向灘海域に面しています。日向の国にゆかりのある刀工の作品は、太陽の国の刀という意味で日州刀と呼ばれています。今回の主人公、松葉國正さんは刀鍛冶になって34年。郷里である日向市に鍛冶場を構えました。日本一を意味する日本美術刀剣保存協会会長賞、4年連続で特賞第一席、など多数の賞を受賞。2014年に無鑑査の称号を得て、現代の名工の一人です。そして松葉さんの「日本刀制作技術」は2022年、宮崎県の無形文化財に登録されました。刀づくりが楽しくて楽しくて仕方がないと話す、松葉さん。突然の病魔により、1年以上刀を作れない時期もありました。それでも諦めず、鋼を打ち続ける刀鍛冶の熱い想いを届けます。

【制作意図】
何気なく「日本刀制作技術」が宮崎県の無形文化財に登録された記事を読みました。日本刀ってどうやって作るのだろう、と疑問に思い、調べてみました。原料である玉鋼を竹炭で熱し、槌で何度も打ち延ばして刀の形に整形していきます。全国でも刀鍛冶が数少ない中、宮崎県にこんな凄い方がいらっしゃるということ、文化財にも指定された「日本刀制作技術」をみなさんに知ってほしいと思い、制作しました。

【制作後記】
刀匠、職人というと寡黙なイメージがありましたが、松葉さんはとっても明るく元気な方でした。日本刀の世界で頂点に立たれた今でも「刀づくりはとても難しい、ひとつひとつ新たな気持ちで作成している」とおっしゃっていました。侍のいない時代になぜ刀を作り続けるのか、松葉さんは日本刀が美しいから、日本刀を自分の手で作り出せることがこの上ない幸せ、と答えが返ってきました。日本刀愛に溢れた松葉さんの熱い想いが、皆様に届くことを願っております。

2023年3月 9日 (木)

旗やのぼりで町づくり~今も受け継がれる染物の魅力~

2023年3月6日~2023年3月12日放送 
和歌山放送 報道制作局報道制作部 黒川綾香

【番組概要】
和歌山県の真ん中に位置する御坊市。この御坊市には毎年10月4日・5日に行われる「御坊祭」という、地元の人に愛されている大きな祭りがある。「御坊祭」はもちろん、その他日高郡内で行われているお祭りの装束や旗を一手に担っている染物屋の存在を知った。「そめみち染物旗店」。その店の三代目・染道祥博さん。祖父、父の背中を追ってこの世界に飛び込んだ染道さん。最初からこの仕事をやりたい訳ではなかった染道さんがどうしてお店を継ぐ気になったのか?そこにはモノづくりに対する情熱が隠されていた。地元の人からの信頼も厚いこのお店。お客さんの声も交えながら、伝統を守りながらも新しいことに挑戦する染道さんを追った。

【制作意図】
染物屋ってどんなことをしているんだろう?堅いイメージというだけでなく、そもそもどんな作業をしているのか皆目見当もつかない。そんな仕事の裏側を知りたくて、門を叩いた。地元の人であれば誰もが知っているお店。祭りの装束だけではなく、のぼり旗や店の暖簾など、生活に密着した作品もたくさんある。その1つ1つに時間と手間をかけながら、手作業で創り上げていく。何気なく見ている身近なものが、作り手によって大切に生み出されていること、そして、その作品が町にイロドリを添えていることを皆さんにも知ってほしい。

【制作後記】
今回は祭り用の旗を作成しているところを見せてもらったが、1つ1つの作業どれも気が抜けないことがよくわかった。色を付けたり、乾かしたり、洗ったり、いろいろな作業があるが、天候にも大きく左右されるのだという。「梅雨が大敵」と話してくれた染道さん。乾燥した時期であれば1日もあれば乾くものが、梅雨時期には2週間・3週間経っても乾かないこともあるそうだ。10月のお祭りに向けて忙しい時期に遅々として作業が進まないことも・・・。私なら「どうしよう!!」とパニックになってしまいそうなところだが、さすが染道さん。「焦っても仕方ない。焦ってやっても良いものはできないから、ただただ待つのみ」と話してくれた。素晴らしい作品の裏側にはいろいろな苦労があるもの。この番組を制作することで改めてそのことに気付くことができた。

指笛王国おきなわ~みんなで奏でるハーモニー

2023年2月27日~2023年3月5日放送 
ラジオ沖縄 報道部 金城奈々絵

【番組概要】
エイサーなど沖縄の伝統芸能に欠かせない音の一つが「指笛」です。指笛は指と唇を使って笛のような音を奏でるもので、お囃子のように場を盛り上げます。沖縄では、高校野球などスポーツの応援シーンでも、指笛が響きます。沖縄県民の暮らしに溶け込む指笛で、メロディーを奏でているのが、音楽サークル「指笛王国おきなわ」です。メンバーは、60代から最高齢92才までの30人。サークル内で「国王」としてメンバーをリードするのは垣花譲二さん(74歳)です。垣花さんは、指笛を沖縄の文化と位置づけ、次世代に継承していこうと2005年に指笛王国を建国しました。                                  垣花国王とともに練習をリードしているのが、視覚障碍者の金城利信さんです。金城さんは、難病のため中途失明し、趣味で琉球古典音楽の三線や笛の演奏を始め、こうした経験を活かして指笛王国では音楽大臣を務めています。金城さんは、指笛メロディーで難易度の高い、高音を美しく響かせることができる上級者です。メンバーは「金城さんのようになりたい!」と切磋琢磨しながら練習に励み、指笛の普及・継承に取り組んでいます。番組ではメンバーの声を交えて、指笛音楽の世界をお届けします。

【制作意図】
指笛という沖縄の伝統芸能を影で支える音にスポットをあて、指笛メロディーを紡ぐサークルの存在を多くの方に知ってほしいという思いから取材・制作しました。また、サークル内で活動する金城利信さんが難病を乗り越え、音楽を通じて仲間と交流している姿から、障害のあるなしに関わらず、互いを尊重しあうサークルの雰囲気も併せて伝えたいと思い、制作に取り組みました。

【制作後記】
取材をする中で、指笛王国の皆さんに指笛メロディーをたくさん聞かせて頂きました。指笛は、それぞれの個性も反映しており、1人1人の音色が重なりあって優しい響きと美しいハーモニーが築かれているように感じました。リスナーの皆さんにも、放送を聞いてあたたかな気持ちを感じてもらえたら幸いです。

白い輝きそうめんづくり

2023年2月20日~2023年2月26日放送 
西日本放送 ラジオセンター 白井美由紀

【番組概要】
香川県の小豆島で400年間続く手延べそうめんづくり。そうめんというと、夏のイメージがありますが、実はそうめんづくりの最盛期は冬。寒い冬は空気が乾燥していて、そうめんの味も引き締まるそうです。また、天日干しにすることで、太陽の光を浴び、そうめんはより白い輝きを増し、美味しく仕上がります。以前は、一つ一つの工程を手作業、足作業で行っていたそうめんづくりですが、最近ではずいぶん機械化も進み便利になりました。しかし、いくら機械を使っても、その日の温度や湿度、気候などにより、刻一刻と変化するそうめんの状態を確かめるのは、職人の五感。そして必ず仕上がりの部分には人の手による作業があります。マルカツ製麺所の三木さんは「面倒をみる」という表現を使っていましたが、まさに目が離せない幼い子どものように、常に見て、常に触って、においや音も感じながら、その状態を確認して作業しています。朝5時からスタートした作業は夕方5時まで、その間ほとんど、全力疾走するかのように家族みんなが動いていました。(機械はその工程ごとに代わるので、機械の方が休んでいるかも・・・)手間のかかる作業ですが、そうめんにまで心地よい音楽を聞かせる・・・なんて愛情もたっぷりかけて美味しいそうめんを作る三木さんの想いを届けます。

【制作意図】
小豆島でそうめん業をしているところは昔は250軒ほどあったそうですが、今は120軒くらいとかなり減っています。職人の高齢化も進み、60歳~70歳台の人が多いとか。三木さんは30歳台でかなり若手です。作業は、三木さんとお母さん、その日によって従業員さんがくる場合もあるくらい。ほとんど家族でされています。マルカツ製麺所5代目のお父さんは、三木さんが大学卒業後アパレルの仕事をしていた社会人2年目の時に亡くなられ、それを機に、島に戻ってきたそうです。叔父さんがいろいろと教えてくれていましたが、その叔父さんも早くに亡くなってしまい、以降いろんな人に教えてもらいながら、そうめん職人として育ててもらったといいます。若手ならではの工夫やアイデアをいろいろと試行錯誤しながら、これからのそうめん業を盛りあげていきたいと、日々努力を重ねています。若い職人さんがそうめんづくりに興味を持ってもらえるように、三木さんの思いが届きますようにと制作しました。

【制作後記】
そうめんづくりは、どの工程も大切で、朝5時から夕方までの作業すべては番組に反映できませんが、丁寧に丁寧に作られていることに、感動しました。三木さんご家族や、小豆島の皆さんの溢れる愛とお人柄にふれて、心が洗われるような取材でした。お昼ごはんには、生そうめんをいただきました。もともとまかないとして食べられていた生そうめん、最近ではマルカツ製麺所さんでも通販で販売していますが、この味が忘れられません。コシがあって、のど越しもよく、香り高く味わい深い生そうめんにすっかりハマってしまってます。生そうめんのことは、地元の人でも知らない人が多いくらいレアです。ちなみに、生そうめんに、そうめんつゆだけじゃなく、小豆島の特産品でもある「オリーブオイル」を少しかけると、これまた、最高です!!!意外と思われるかもしれませんが、「出会うべくして出会った運命の出会い」と言えるくらい、相性バツグンです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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