春は「いかなご」 感謝届ける神戸の味
2023年4月10日~2023年4月16日放送
ラジオ関西 報道制作部 藤原正美
【番組概要】
春を呼ぶ魚「イカナゴ」。年々漁獲量が減り、漁期が短くなっている。漁獲量が減ると、値段は上がる。それでも、神戸などでは古くからの味を守り、同時に資源も守っていこうと、努力を続けている。阪神淡路大震災の後、地元の味を送ることで、感謝や自分が元気でいることの証として、待ってくれる人たちのために、くぎ煮を作り続けている。そんな多くの人の思いを送る。
【制作意図】
神戸では、昔から「イカナゴのくぎ煮」を作っている。元々は漁師たちの家庭料理だったのが、1980年代頃から一般に広まるようになり、それぞれの家庭料理として確立されていった。現在は農林水産省の「うちの郷土料理」で兵庫県の味のひとつにも選ばれている。ところが、ここ数年、漁獲量が極端に減り、漁期が短くなっている。様々な要因が重なり減少につながっているため、対策もとられているが、劇的な改善は見られない。量が少なくなると、当然、値段も高騰。かつて1キロ800円で買えたものが、最近は数千円に。そうしたなかでも、神戸の人たちは毎年「いかなごのくぎ煮」を作っている。なぜ作り続けるのか?家庭の主婦、漁業者の思いと、この家庭の味を知ってほしいと思い、制作に至った。
【制作後記】
漁獲量の減少の原因について、漁業者や専門家にあたってみると、原因がたくさんあり、どれもが複雑に絡み合っていると感じた。漁師さんに伺うと口が重くなる人もいた。一方、消費者もそうした「獲れない」ことを理解していて、金額が高いのも「やむを得ない」と思う人も少なからずいた。それでも作り続けるのは、「くぎ煮」を楽しみにしている人が数多くいて、その人たちへ自身の近況を含め「春の便り」として送っているのだとも感じた。神戸の人のイカナゴへの思いの強さを、改めて実感した。
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