2014年9月 8日 (月)

江差の八月は江戸にはない!?

2014年9月8日~2014年9月14日
北海道放送 ラジオ局  榊原満

【番組概要】
毎年8月9日~11日の3日間、豪華な13台の山車が町中を練り歩く姥神大神宮渡御祭。
蝦夷地最古の祭りとして、その起源はおよそ370有余年前にもさかのぼります。その年のニシン漁を終え、「江差の五月は江戸にはない」といわれるほどの景気に沸き返る夏の江差で、豊漁に感謝を込めてにぎにぎしく行われる、絢爛豪華、大盤振る舞いのお祭りです。番組では、今も江差の人たちが大切に守り続けるこのお祭りと、この日にかける思いを伝えます。

【制作意図】
「江差の五月は江戸にはない」とまで言われたニシン漁華やかし頃の江差の町。今は他の地域同様、人口減、過疎化に悩む北海道最古の港町で、毎年8月に繰り広げられる「姥神大神宮渡御祭」はそんな時代の名残を伝える一大ページェントです。地元に残った者、都会に出て行った者、評判を聞いて訪れた旅行者。人工の5倍以上、5万人が集うこの祭りの魅力に迫ります。

【制作後記】
今は人通りも少ない江差の町が「江差の五月は江戸にはない」とまでの景気に包まれていたことを想像するのは難しい。しかしこのお祭りには、かつての栄華の残り香があります。威勢が良くて、華やかで、思いっきり気前がいい。それは単なる金満体質に溢れたバブリーな景気のよさではなく、豊漁を感謝する神様への思いに溢れた奥ゆかしい神事でした。江差で生まれた人たちはすべてこのDNAを受け継ぎながら、毎年この日に合わせて地元へ帰ってきます。地元愛に満ちたお祭りを見て、次回は参加したくなりました。

2014年8月28日 (木)

伝統ふたたび・和傘の里に新たな息吹

2014年9月1日~2014年9月7日
四国放送 ラジオ編成制作部 三浦審也

【番組概要】
徳島県美馬市の美馬町は、かつては全国第二位の和傘の生産地でした。生活の洋風化とともに衰退した和傘作りの復活を目指す、美馬和傘制作集団を取材するとともに、和傘にまつわる様々な音もお届けします。

【制作意図】
伝統工芸の衰退や後継者不足が各地で問題になっている中、復活させようとする取り組みは面白いと感じ、制作しました。

【制作後記】
一度すたれた技術の復興は容易ではありません。和傘作りに必要な道具もないので自作するなど、美馬和傘制作集団の皆さんは試行錯誤を続けたそうです。今では全国から和傘の注文があり、数ヶ月から一年待つ場合もあるとか。和傘を知らない世代の私も、一本欲しくなっちゃいました。

2014年8月22日 (金)

「トゥクトゥク」青島を走る

2014年8月25日~2014年8月31
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 二木 あさこ

【番組概要】
昭和40年代、新婚旅行ブームに沸いた宮崎市・青島。かつての賑わいを知る地元の人からは、昔を懐かしむ声が多くあがっていました。そんな中、4年前、突如青島に登場した3輪自動車「トゥクトゥク」。キュートな見た目、愛嬌のあるエンジン音。宮崎市青島に「トゥクトゥク」が登場してから、「トゥクトゥク」がたくさんの笑顔を乗せて走っています。青島に「トゥクトゥク」を導入した青島神社の長友 安隆宮司、トゥクトゥクドライバー・谷口 礼さんの思いを、「トゥクトゥク」の音と共に、ご紹介します。

【制作意図】
「昔の賑わいを取り戻したい!」観光地が抱える問題を、青島生まれ青島育ちの若い世代が向き合っています。新婚時代に宮崎に来たことがある方はもちろん、青島を知らない方に、宮崎には、おもしろいところがあると知っていただき、遊びに来てもらえるように、思いをこめて、制作しました。

【制作後記】
『観光地として、衰退していた青島が、最近元気になってきている。』
そんな噂を聞きつけて、青島を取材しました。新たな試みとして登場した「トゥクトゥク」が、4年を経て青島にすっかりなじんでいます。「観光地ならではのしがらみもあるんですよ(笑)」と、大変なことも笑い飛ばす、谷口ドライバーの人柄と、開放的な南国宮崎にぴったりな乗り物「トゥクトゥク」があいまって、新しい青島を作っています。「トゥクトゥク」という音と共に、笑い声が響く青島をぜひ、お楽しみください。

銅鑼と太鼓が夏を呼ぶ~長崎ペーロン

2014年8月18日~2014年8月24放送
長崎放送 ラジオ制作部 元永純史

【番組概要】
長崎市中心部から車で30分ほどの所にある、牧島。その牧島の港で、毎年夏が近づくと聞こえてくる音があります。ペーロン船という木造船に乗り込み、渾身の力で舟を走らせるその音です。銅鑼と太鼓のリズムに合わせ、漕ぎ手の掛け声が近隣に谺します。牧島代表は、長崎でも強豪と言われているチームの一つ。毎年長崎では、そのペーロンで一番を決めるための大会が開催されます。今年も我が町の威信をかけた戦いが始まります。

【制作意図】
ペーロンに携わる人間が、一年で最も熱くなる日、それがペーロン選手権大会。代々その地域に受け継がれる漕ぎ手の魂とプライドを賭けて真剣勝負が行われます。ペーロンを通して、地域の子供からお年寄りが交流し、一体となって我が町の代表を応援するペーロン文化、そして、その応援を背に、一番を目指して水面を駆ける漕ぎ手の雄姿が伝わればと思い制作しました。

【制作後記】
体験ペーロンで船を漕いだことはあったのですが、今回初めて伴走船に乗せて頂きました。真横から至近距離で見るペーロンの動きは力強く、一発でその魅力を知る事が出来ます。漕ぎ手の力を一つにし、櫂を水面に突き立てて漕ぎ起こす瞬間の力強さとその格好良さは、是非とも、実物を見て頂きたいです。牧島では体験ペーロンもやっているので、興味がある方は人数を集めて申し込んでみて下さい。

2014年8月13日 (水)

1200年の技~高野山の宮大工~

2014年8月11日~2014年8月17放送
和歌山放送 報道制作局 報道制作部 花井歩高

【番組概要】
和歌山・奈良・三重にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されて10年。中でも弘法大師・空海が開いた高野山は来年(2015年)開創1200年を迎えます。木立に囲まれた標高800メートルの盆地内には現在も117の寺院が立ち並ぶ宗教都市を形成しています。高野山の長い歴史は、一方で様々な職人や住民による手仕事が支えてきたともいえます。伝統を継承する宮大工の技と思いに注目しました。

【制作意図】
地域の伝統の営みを音で残しておきたい、そんな思いから今回の番組を制作しました。地元出身、この道30年の尾上恵治さんに山内の廃校舎を利用した作業場をみせてもらいました。高野山から切り出した樹齢200年のヒノキ。墨で線を引き、丸みを持たせながら刻み、細かな曲線で仕上げていく。そこに図面はありません。古い寺院の部材から型を取り、職人たちのチームワークでそれぞれの工程を分業しています。作業場にはノミやカンナで材木を削る音だけが響きます。尾上さんらは今回、172年ぶりの再建となる壇上伽藍の中門(ちゅうもん)の造営を手がけました。最新の耐震基準が求められますが、寺社建築は1000年前に確立され、変えようがないと話す尾上さん。黙々とつづく作業の中に、熱い思いが込められています。

【制作後記】
過去の技術を現代に伝え、未来に受け継がれる。尾上さんが「タイムマシーンを作っている気分」と話していたのが印象的でした。良質な木を育てるための山仕事、伐採した木を製材し、宮大工や桧皮葺、それに建具や表具、畳に左官、金物・・・寺社を1棟作るにしても様々な手仕事が必要です。かつては山上での営みを支えるため、さまざまな産業が成り立っていました。しかし今、高野山でも過疎化は深刻です。
宮大工のみなさんに忙しい作業の合間に、工程や、手作りもする道具についてたくさんお話しいただきました。「ゆりかごから棺まで、なんでも作ります」と尾上さん。厳しい職場、一人前になるまで15年ほどかかるとですが、20代30代の職人も育ちつつあります。

復興願い震災10年 山古志に響く牛の角突き

2014年8月4日~2014年8月10放送
新潟放送 ラジオセンター 丹羽 崇

【番組概要】
新潟県長岡市山古志(やまこし)で1000年もの歴史があるといわれる伝統行事、牛の角突き(つのつき)を紹介。2004年に発生した新潟県中越地震から10年経ち、復興を合言葉に頑張る山古志闘牛会の松井治二(まついはるじ)会長の思いに迫る。

【制作意図】
10年前の大地震によって山古志の牛舎も自宅も失った松井さん。それでも笑顔を絶やさない松井さんを支えているものは何か。今こそ東日本大震災の被災者に、そして何より私たち一人一人に伝えたいとの思いから制作しました。

【制作後記】
震災10年を「節目」と捉える視点は報道機関のエゴではないかと考え続けながら、取材音源と向き合う日々でした。



2014年7月30日 (水)

涼やかな風を運ぶ~静かに熱い情熱で

2014年7月28日~2014年8月3放送
西日本放送 ラジオセンター 白井美由紀

【番組概要】
うちわの生産量全国90%をほこる香川県丸亀市。丸亀うちわは国の伝統的工芸品に指定されています。13年前から、丸亀うちわづくりをされ、伝統工芸士に認定された若い職人が、これからの丸亀うちわを背負っています。エアコンや機械では感じられないうちわの涼しさ。特にプラスティックではなく竹の柄のうちわはその「しなり」でやさしくふんわりとした風を運びます。決して口が達者なわけでもない職人さんが丸亀うちわの魅力を静かに語ってくれました。

【制作意図】
お気に入りのうちわはありますか?うちわってなかなか大切に扱われていないかも・・・そう思い、丸亀うちわのことを取材させていただくことにしました。涼しい風を運ぶうちわですが、情熱は熱く、そして静かに語ってくれる感じをありのままに伝えたいと思いました。お話はすべて作業をしていただきながらの「まま」の音を使いました。

【制作後記】
お気に入りの1本を見つけました。柄も気に入り、あおいだ時の風がいちばん心地よいものを選びました。1本1本手づくり、竹のしなりも少しづつ違うので、また持ち手の感触も重要です。1時間かけて選んだ竹うちわは私の宝物です。今年は涼しく夏をエコにすごせそうです。

愛情いっぱい、母ちゃんの手作り桶

2014年7月21日~2014年7月27日放送
ラジオ福島 編成局 放送制作センター 石田久子

【番組概要】
森林の国、日本。代表的な器である桶や樽。考えられたのは平安時代と言われ、一般に普及されたのは室町時代といわれています。いわき市は海にも恵まれ寿司屋も多く、温泉地でも桶が使われ、みそ、つけ物といった生活を支える他日常的に使われていました。かつてはどの地区にも桶の職人がいて、気軽に注文に応じていたそうです。

【制作意図】
全国でも数少ない、女性の木桶職人が、いわきの山間の町にいらっしゃると聞き、”1つの桶ができるまで”の作業をぜひ音で表現できないかと伺い、いくつかの工程の中から”たが締め”と”底入れ”を中心に制作しました。

【制作後記】
日本の手仕事は後継者不足という深刻な問題があり、手仕事の仲間同士で作品を展示する展示会も行われています。遠藤さんを慕う若い手仕事職は、今年遠藤さんの桶をイギリスや東京・愛知でも展示し好評だったと聞きました。初めて遠藤さんの桶をハワイアンズで手にした時「優しい」という言葉が心に浮かびました。内側はすべすべ、外側はつるつる、手で持ちやすく”味”のある存在感。遠藤さんお手製のみそもつけものも絶品だったことを付け加えさせて頂きます。

2014年7月14日 (月)

音になる前の音を聴け ~かるた王国・福井

2014年7月14日~2014年7月20日放送
福井放送 ラジオセンター 前田智宏

【番組概要】
小倉百人一首を使い、詠まれた上の句と対になる下の句の札を瞬時に取る、競技かるた。福井県は競技かるたが盛んな地で、「かるた王国」と称されるほど。多くの人が幼いころから学校や地域でかるたを学び、全国大会では、毎回福井県勢が上位に食い込みます。
そんな競技かるた、鍛錬をつむと「音になる前の音」が感じられるようになるのだといいます。普段の生活は感じ取れない、繊細な音の世界へご案内します。

【制作意図】
「音になる前の音」=0コンマ数秒の音の世界に挑む、
競技かるたの奥深さを伝えたいと思い企画しました。また、番組中に聞こえてくる歌を詠んでいるのは、現在全国にたった7人しかいない“専任読手”と呼ばれる読み手のお2人です。選ばれし詠みのプロの美しい響きも是非じっくりと味わっていただきたいと考えながら、制作しました。

【制作後記】
20年来のかるた選手!という友人がいます。
彼の熱い話を聞くうち、私もどんどんとかるたの魅力に引き込まれ、その面白さを伝えたいという一心で取材を続けました。初めて生で見るかるたの試合は、その張りつめた空気と、札を勢いよく取る迫力、まさに静と動が行き交うもので、興奮しました。「かるた、やってみたいな…!」と本気で思う今、まずは百首の覚えなおしからスタートです……。

2014年7月 9日 (水)

”鉄”にかける青春~はたき続けた58年~

2014年7月7日~2014年7月13日放送
東北放送 ラジオ局制作部 菊池修司

【番組概要】
宮城の伝統工芸品、仙台箪笥。希少で高価なことでも知られますが、その理由や作業工程はあまり知られていません。仙台箪笥の錺金具を作る職人、八重樫榮吉さん(78)は毎日工房で一人鉄を打ち続けています。まず惹かれるのは、その鉄を打つ音。一人前になるまでは、その音を聞いて師匠である父親は身が入っていないと叱ったといいます。一定のリズムの中でみるみるうちに立体的な金具が仕上げられていく様子は、感動すら覚えます。そこに襲いかかる東日本大震災や後継者の不在。しかし、そんな状況にあっても、榮吉さんは変わらず”青春”の日々を歩んでいるのです。

【制作意図】
間違いなくその土地でしか聞くことのできない「音」である、榮吉さんの鉄をはたく「音」。その「音」がそこに携わる人や風景を想像させ、それにより歴史や伝統にまで想いを馳せることができるという体験を新鮮に味わっていただきたく制作しました。

【制作後記】
職人さんといえば、科目で少し怖いイメージがあるかもしれませんが、八重樫榮吉さんはそういう枠にはまりません。話すのは苦手と言いながら、とても人が好きな印象を受けました。サブタイトルの”はたく”という表現は、榮吉さんの言葉です。一人工房で鉄をはたき続けるというのは、想像してみるとかなりの重労働なはずです。けれども、榮吉さんは「自分に合っている」と楽しく仕事を続けています。榮吉さん、そして奥様の仁子さん、その二人三脚はまだまだ美しい仙台箪笥を作り上げていくと思います。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

ブログ powered by TypePad