2014年11月11日 (火)

名選手を支える職人~日本人で初めてプロになった用具係

2014年11月10日~2014年11月16日放送
東海ラジオ放送 制作局制作部 岸田実也

【番組概要】
「ホペイロ」とは、ポルトガル語で用具係のこと。サッカーに関する全ての物、ウェア、シューズ、グランドで飲むドリンク、ボールから練習道具一式に至るまで、全てホペイロが管理しています。サッカーが盛んな南米や欧米では当たり前の存在ですが、日本ではまだまだ普及していません。世界で通用するプロのホペイロが名古屋グランパスにいます。日本代表の本田圭佑選手がスパイクのケアを任せるなど全幅の信頼を寄せています。日本人で初めてホペイロになった松浦典紀氏43歳のプロフェッショナルな所以を紹介します。

【制作意図】
J1リーグ、J2リーグの40チームの中で、プロのホペイロがいるのは5チームほどしかありません。華やかに見えるJリーグの裏側で選手を支えるホペイロの松浦典紀氏を紹介することで、選手はどのような人たちに支えられているのか、「プロ」は選手だけでなもく裏方も「プロ」であるということを伝えたくて制作しました。

【制作後記】
なぜJリーグでホペイロが普及しないのか。同じ東海地方にあるJ2リーグのFC岐阜の関係者に聞いてみると、「いることによる素晴らしさが分かってもらえないのでは」という答えが返ってきました。J2リーグではスパイクは個人管理で、新品のスパイクは練習で馴らして試合で履きます。松浦氏は、選手の足型をとり、選手に合わせて調整し新品のスパイクですぐに履けるようにします。そんなホペイロがいることが、選手にとってどれだけ心強いか痛感しました。

2014年11月 4日 (火)

白馬から福島に贈るハッピーバースデー

2014年11月3日~2014年11月9日放送
信越放送 ラジオ局ラジオ編成制作部 小森康夫

【番組概要】
2011年の夏から長野県北安曇郡白馬村に移り住んだ木村紀夫さん(49歳)は、東日本大震災原発事故のため故郷の福島県大熊町を離れ長女と暮らしています。木村さんは津波で父親と妻を失い、次女の汐凪さんは行方不明となったまま3年半の歳月が流れました。汐凪ちゃんの手がかりを求めて毎月1回大熊町に通う木村さんの姿を木村さんを支える家族や長野県内外の人々の様子を取材しました。

【制作意図】
帰宅困難地域となってしまった故郷に、行方不明の娘を捜し続ける一人の父親の想いと、その父親と共に生きる家族の姿を伝えることで人生の苦難に立ち向かい、新たな道を求め進み行こうとする「人間の力」を伝えたいと考えました。長野県の豊かな自然が人の心を癒し、笑顔と夢を与えてくれることも表現できればと考えました。

【制作後記】
悲しみと絶望の淵にあっても、人間は家族や友人に支えられ、環境に力を与えられ、再び前を向いて歩きだすことができる、その姿を間近で見届けることによって、取材者というより、一人の友人として交流を深め、一人の人間として自分自身が成長できていると感じています。

100年の時を刻む ~ハンコのまち六郷~  

2014年10月27日~2014年11月2日放送
山梨放送 ラジオ本部ラジオ制作部 大久保達朗

【番組概要】
山梨県南部の市川三郷町六郷地域はハンコ作りが盛んな地域です。およそ100年の歴史を持ち、全国のハンコ生産量の50%を占「日本一のハンコの里」として成長してきました。近年、ハンコ作りも機械化が進み、昔ながらの手掘りの技が失われつつあります。そんな中で数少ない手彫り職人の一人、佐野弘和さんは、79歳の今も現役として六郷の伝統を守り続けています。佐野さんは「世界で一つだけのハンコ」という思いを込めて一文字ひと文字を刻み込んでいます。


【制作意図】
最近はペーパーレス化が進み、ハンコの使用が減る中、ハンコのまち六郷の100年の歴史と伝統を守り続ける佐野弘和さん。79歳の今でも佐野さんは、はんこ作りの全てを手作業で行います。一日3本作るのが、やっという佐野さんは、昔から製作作業の中で続けている事が1つあります。それはハンコの一本一本に、「ご主人様の為にしっかり働きなさい」と言い聞かせることです。佐野さんのハンコに対する思いや、モノづくりの大切さを伝えたいと今回企画しました。


【制作後記】
佐野さんはハンコの魅力を伝えたいと地元の小学生たちに、ハンコ作りを教えています。また、自らも出展するハンコを制作し続けています。79歳の今でも成長しようと日々精進を怠らない佐野さんの姿に「職人の魂」を感じました。

2014年10月21日 (火)

おばあちゃんの相撲甚句 

2014年10月20日~2014年10月26日放送
RKB毎日放送 RKBミューズ 三輪肇

【番組概要】
福岡県飯塚市(いいづかし)の八木山(やきやま)小学校では、今なお古くから化粧まわし姿で四股を踏み、すり足で踊り、女子は相撲甚句を歌います。歌のお手本になっているのは、地元の米農家のおばあちゃん。おばあちゃんの相撲甚句が児童たちに伝えているのは宮相撲の伝統のみならず、八木山という土地の文化そのものだったのです。

【制作意図】
代々、入学すると、全員が四股名を与えられ、女子は相撲甚句を覚えるという・・・。私たちのエリアにこの様な伝統を持つ稀な小学校があり、それを伝えるおばあちゃんの歌声。そのルーツには穀倉地帯である米作りの文化、またその実りを、未来を担う子供達に託す、地域の人々の姿を伝えたいと思い制作しました。

【制作後記】
本編に登場していない方々へも取材でお会いしましたが、皆さん地域愛に満ちた方々ばかりでした。この地域は高原地帯の為に、平地より数週間早くお米の収穫が行われます。出来たお米をうれしそうに見せてくださったり、「四股名」を持つ事で八木山のことを思い出して欲しいという、いつまでもふるさとを思う気持ちが印象的でした。

2014年10月15日 (水)

耳をすませば 運河育ちの元気声

2014年10月13日~2014年10月19日放送
ラジオ関西 報道制作部 西口正史

【番組概要】
神戸港の発展を支えた「兵庫運河」は、いまは時折ジェットスキーが通る程度で静かにたたずんでいます。そこではじまった、真珠の養殖プロジェクト。子供も大人も、アコヤ貝も?、毎年、運河を通して成長しています。週に一度の手入れ作業では、にぎやかな子ども達の声が響きます。

【制作意図】
ミナトばかりが注目される神戸ですが、運河もなかなか大したもんでしょ。そんな気持ちでつくってみました。運河でいま学んでいるのは子ども達だけじゃない。大人もまた、運河を学びなおしている。運河は一つの近代化遺産だということが伝わればと思います。

【制作後記】
最初に取材したのが2013年12月。そこから毎月ではありませんが、活動に併走させていただきました。外にいるのにゲーム機が手放せない子ども達が目に付く昨今。ぼくはいいたい。「ゲーム機を棄てて運河に出よう」。アコヤ貝の世話をするみんながかっこよかったのだ。

2014年10月 3日 (金)

ようお帰りなさいました

2014年10月6日~2014年10月12日放送
山口放送 ラジオ制作部 大谷陽子

※2014年度録音風物誌番組コンクール入賞作品
最優秀賞受賞 再放送です。

【番組概要】
本州の西の端、山口県。日本海を臨む長門市仙崎の港は、終戦後、在外邦人の引揚げ港となりました。終戦の翌月から1年間で41万人の引揚げ者が上陸(博多、佐世保、舞鶴などに次ぐ全国5番目の引揚げ者数)、仙崎の町は一丸となって引揚げ者の援護をしました。当時21歳だった(なか)()貞女(さだめ)さんは、本土の地に降り立った引揚げ者を温かいお茶で迎え、宿も提供しました。それから68年。89歳になった中谷さんは当時を偲んで訪れる人に現地を案内し、依頼があれば講演にも出向きます。引揚げ港仙崎の歴史と思いやりの風土を伝え残したいという中谷さんの思いを綴ります。

【制作意図】
長門市仙崎は、古くは鯨漁で賑わった港町です。童謡詩人・金子みすゞのふるさとでもあります。終戦後、人口8,000人の町は、およそ1年の間に41万人もの人を迎える引揚げ港としての役目を果たしました。そこに生きた人々の歴史と経験が風土や気風として受け継がれていることを財産として伝えていきたいと制作しました。

【制作後記】
「よう お帰りなさいました」とは、「本当によく帰られましたね」という相手への気持ちを込めた山口弁の表現です。中谷さんの会話には、相手へ心を寄せる山口弁が度々使われます。放送の中でも出てくる「のんた」も代表的な山口弁で、「のー、あんた」と親愛の気持ちを込めて語りかける言葉です。温もりの響きを持つのは、相手に思いを馳せる思いやりの心があるからこそと、中谷さんの姿を見て学びました

カッパと孫助さんの約束

2014年9月29日~2014年10月5日放送
青森放送  ラジオ編成制作部 山本鷹賀春

※2014年度録音風物誌番組コンクール入賞作品
優秀賞受賞 再放送です。

【番組概要】

青森県八戸(はちのへ)市を流れる新井田(にいだ)川にはメドツが棲むといわれています。メドツとは、カッパのことです。何百年も昔、そのカッパと、地元の庄屋の孫助さんがある約束をしました。それは、地域の子どもたちを水難事故から守るため、孫助家ではある物を一切食べないという取り決めです。しかも子孫代々にまで守らせるという厳しい条件でした。孫助さんの家は代々「孫助」を襲名しています。そして、現在の孫助さんも、その約束を厳格に守り続けています。その後、新井田川は護岸工事が行われました。川は子どもたちにとって、さらに危険な場所となり、そして、孫助さんの家も今、立ち退きを迫られています。

【制作意図】
「どんな約束でも、約束は約束。守るべきもの。たとえ相手がカッパでも守るべきもの。」孫助さんの言葉です。何百年も続く旧家の家訓のように聞こえます。新井田川は、昔と姿を変え、周辺は都市化が進んでいますが、それでも約束を守り続ける人間の姿をカッパの視点で制作しました。何百年も前の庄屋さんと孫助さんに共通する、地域への想いを伝えたいと思います。

【制作後記】
この番組は、生中継で収録された音を録音構成にしたものです。カッパの声とナレーションを担当している十日市秀悦が以前「子どもの頃メドツを見たことがある」と発言したことから始まった番組でした。事前取材中、カッパ伝説の起源の一つが八戸であること、メドツとは水の神「ミヅチ」から来ていることなど、次々と明らかになりました。しかしそれ以上に、孫助さんの存在は、私たちにとって大きな衝撃でした。そして八戸の「糠塚きゅうり」(昔きゅうり)の味も忘れられないものでした。

2014年9月22日 (月)

録音風物誌リスナープレゼント

番組をお聴きの皆さまにプレゼント
「米の食味(しょくみ)ランキング」で4年連続の特A評価を獲得した
佐賀県産「さがびより」の今年の新米5キロを5名様にお送りします。

Saga
【ご応募方法】


■住所

■氏名

■年齢

■電話番号

■番組の感想、ご要望など

をお書き添えのうえ、お聴きの放送局へはがき、またはkayoukai@radio.or.jp まで、
「録音風物誌新米プレゼント」と明記してご応募ください。
締切りは10月20日です。
尚、当選者の発表は11月上旬の賞品発送をもって代えさせていただきます。

白神の春~ブナが育む森の声~

2014年9月22日~2014年9月28日放送
秋田放送  ラジオセンターラジオ制作部 石﨑 富士子

※2014年度録音風物誌番組コンクール入賞作品
優秀賞受賞 再放送です。

【番組概要】
雄大な白神山地に抱かれている町のひとつ、藤里町。秋田県最北端の町に桜の便りが届く頃、山ではどんな風景が見られるのか、この時期の藤里駒ケ岳に登り、春の森の音をお届けします。

【制作意図】
白神山地が世界自然遺産に登録されて20年がたちました。毎日来ても飽きない、感動する!という山のガイド斉藤栄作美さんは日々白神山地の魅力を訪れる方々に伝え続けています。再来年のカレンダーから新たな祝日「山の日」が加わる事になりそうですが、番組を聴いて、白神山地だけでなく、すぐそばの山でも、「山に行ってみたい」と思っていただけたらと思い制作しました。

  【制作後記】
ナレーション担当酒井も私も白神山地に登るのは初めてでした。感動と心地よさの中、見た目はまだ冬の森でも春へと動く植物、動物、生きるための水、それを生み出してくれる森、生かされているという事を改めて感じました。今回登りながらいろんな音を録りましたが、木の音は、木のよって木の部位によって良く聴こえるところそうでないところがあり、様々試しましたが、実際に耳に聞こえる音と同じ音をと、聴診器の管にピンマイクを入れて録りました。

ぬれ煎餅で電車が走る

2014年9月15日~2014年9月21日
文化放送 制作部 栁下直人

【番組概要】
千葉県銚子市に銚子電鉄という小さな鉄道会社があります。この会社、電車を走らせるだけではなく、「ぬれ煎餅」を作っていることでも知られています。本業の鉄道事業よりも、売り上げが多いというこのぬれ煎餅。犬吠駅の構内では実演販売も行われています。醤油の香りに引き寄せられ、観光客でにぎわう光景をお送りします。

【制作意図】
銚子といえば漁業の街ですが、実は醤油の街でもあり、ぬれ煎餅発祥の地でもあります。ぬれ煎餅という煎餅があり、それを鉄道会社が作っていること。煎餅を焼いているそばで電車が出発していくユニークさはもちろんですが、経営に苦労している小さな鉄道会社の努力も知っていただきたいと制作しました。

【制作後記】
網の上で焼かれる生地はどんどんと大きくなっていき、特製の醤油が入った壺に浸すと、「ジューッ」と醤油のしみこむ音がしました。私も焼きたてをいただきましたが、噛めば噛むほど醤油の味わいが口の中に広がりました。醤油の香りを想像して楽しんでいただければ幸いです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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