2016年9月16日 (金)

人情温まる、みんなが支える街角寄席

2016年8月29日~9月4日放送
四国放送 ラジオ局ラジオ編成制作部 小喜多雅明


【番組概要】
徳島市内の商店街の外れの一軒の蕎麦屋。歴史を感じさせる趣のあるお店だが、近年の中心市街地の衰退の影響は例外なくここにもある。そんな中で決して広くはないこの蕎麦屋の店内では、月に一回1300円でお蕎麦付きで大阪からやってくる若手の噺家が落語を披露する寄席が開かれている。寄席には近所に住む一人暮らしのお年寄りや老夫婦などの常連が若手噺家をまるで孫でも見るような優しい雰囲気で応援している。「前より上手になったよ」「もう少しこうした方がいい」など若手の落語を周囲が温かい目で見守り育てている。運営はボランティアの45歳女性が行う。徳島での母のような存在だ。寂しくなる中心市街地の片隅で細々と残る温かい人情と触れ合いを伝える。

【制作意図】
この蕎麦屋のある地域は、かつて商店街やオフィス街として大変栄えました。ところが郊外型のショッピングセンターの出店やオフィスビルの移転などが重なり、人通りの少ない地域となってしまいました。しかし月一回の寄席からは、人々の優しい笑い声が聞こえます。古き良き風情をかすかに残し、そして脈々と残るこの街の人情、私たちが忘れかけているであろうこの宝をもう一度見直して頂ければとこの番組を制作しました。

【制作後記】
まだまだこれからという若手噺家をこの街の人々を中心に自分の孫のように優しく、時には厳しく激励する人情に、なんだか懐かしさを覚えました。インタビューしたお年寄り、そして店の雰囲気といい、祖父母の家を訪ねたような感覚でした。こういう人情や風情をいつまでも残していきたいものです。

下北半島妖怪ハウス

2016年8月22日~8月28日放送
青森放送 ラジオ局ラジオ制作部 福岡夏希


【番組概要】
青森県むつ市には「妖怪ハウス」なるものが存在する。そんな噂を聞きつけ、不安を感じながらも訪ねてみました。「よぐ来たにし おみやげの店」とかつての名残がある店内には、ゲゲゲの鬼太郎キャラクターの等身大フィギュアや生首(マスク)が何十体も並んでいました。妖怪ハウスを管理しているのはむかいの「飛内旅館」のご主人、飛内源一郎さん。旅館業でありながらプラモデルやSFなどいわゆるサブカルチャーへの愛が止まらずそちらで有名になってしまったというユニークな方でした。今年は青森の珍スポットを巡るバスツアー(参加料10万円!)も組まれ、飛内さんに会いたい若者で旅館は賑やかでした。

【制作意図】
一見変わった人に見える飛内さんですが、お話してみると一本筋の通った考え方をしているとわかります。自分の好きなものにはまっすぐ取り組み、「地域のために」という思いをしたこともあるようでした。かつては周りから理解されずさみしい思いをしたこともあるようです。そんな状況と飛内さんの作品「地獄巡り」が重なり、ぜひ応援してあげたいという気持ちになりました。

【制作後記】
「青森珍スポ巡りツアー」があることをたまたま知り、日程を合わせて取材することができました。飛内旅館以外では新郷村のキリストの墓や、青森市浅虫のある大盛りで有名な鶴亀屋食堂などをまわっていたようでした。「都会にはない青森の”ゆるさ”が面白かった」とのお話から、青森に人を呼ぶ新しい方法が見えた気がしました。

2016年8月16日 (火)

28年呼びかけ続け・・・市場の母の館内放送最終日

2016年8月15日~8月21日放送
北陸放送 制作局ラジオ放送部 内潟賢太郎


【番組概要】
江戸時代から約300年にわたって金沢市民の台所として親しまれているのが近江町市場です。場内アナウンス、経理、イベントでお客にふるまうカニ汁の調理まで担ってきた小林スミ子さんが退職することになりました。近江町市場での28年間の思い、そして小林さんの市場で最後の日、最後の場内アナウンスを音で追いました。

【制作意図】
威勢のいい売り子の呼び声が印象に残りがちな近江町市場ですが、その裏方で働く人たちの支えが金沢市民の台所に賑わいを生み出し、観光客に旅情を提供しています。そんな裏方の女性の思いを伝えられればと思っております。

【制作後記】
凛とした小林さんの語り口の中に、28年間の自らの仕事への誇りが感じられました。そして近江町市場への限りない愛情に胸が熱くなりました。

100年先の森を描いて

2016年8月8日~8月14日放送
山口放送 ラジオ制作部 大谷陽子


【番組概要】

山口県下関市豊田町。河田紀美江さん(67)は、7代受け継いだ山を夫と共に守っています。山間の家に嫁いで45年。舅に農業と山仕事を教わるうちに、森の大切さを知りました。森は、木材だけでなく、おいしい空気、水など、多くの恵みを与えてくれます。強い樹木の根は、土砂災害を防ぎます。しかし、林業の後継者不足で、河田さんの集落でも、山の木が一斉に伐採され売られるなど、禿山や荒れた山が目立つようになりました。

河田さんは、自然に雑木林が作られる天然の林を目指して、いろんな種類の木を植林しています。長い年月をかけて成長した丈夫な木を少しずつ売って恩恵を受ける・・・息の長い林業をすることで、家も山も守れると考えています。その思いは、林業を継いだ次男にも、そして、3人の孫たちにも受け継がれています。

 

【制作意図】

今年から新しく、8月11日が国民の祝日「山の日」となりました。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日です。しかし、山に目を向けてみると、林業の担い手は減少し、高齢化しています。禿山や荒れた山が増える一方で、植林をしたくても鹿の被害が明らかな状況では躊躇せざるを得ません。山を守り山の恵みを受ける持続可能な林業を目指す女性林家、河田紀美江さんを通じて、未来を考えた上で今何をすべきか考えたいと制作しました。

 

【制作後記】

「山は先代からの預かり物」。河田紀美江さんも、林業の後を継いだ次男・晃幸さんも、口を揃えます。だから、山を荒らしてはいけない、禿山に売ってしまうことはできない、より良い形で次の代に渡さなければいけないと言います。同時に、地域の環境や水を守っているという自負もあります。その背中を見て、晃幸さんの3人の息子たち(高1、中2、小6) は、自分が地域に必要とされていると感じながら将来の夢を描き始めています。課題山積の林業の未来に、今、目を向けなければいけないと教えていただいた取材でした。

 

音楽の宝石箱~商店街に響く手回しオルガンの音~

2016年8月1日~8月7日放送
静岡放送 ラジオ局編成制作部 中尾慎


【番組概要】
静岡市の中心地にある商店街「呉六名店街」。ここでは毎週日曜日になると、路上で「手回しオルガン」のコンサートが始まります。全国でも珍しい手回しオルガンがどうしてこの商店街で響き始めたのでしょうか?商店街を歩く人々はその音に何を感じるのでしょうか?実際の音色に乗せてお届けします。

【制作意図】
商店街の衰退が叫ばれる昨今、呉六名店街も例外ではありません。通りの通行料は最盛期の3分の1程度にまで減ってしまいました。「もう一度楽しい商店街にしたい」その一心で手回しオルガンを奏でる商店街会長の山本耕三(やまもとこうぞう)さんの活動の様子が、ぜひ音として残すべきだと思い、作品にしました。

【制作後記】
私がこの活動を知ったのは、たまたま休日に呉六商店街を歩いていた時です。手回しオルガンのハンドルを回す演奏者、そして親子、カップル、お年寄りと様々なお客さんが1つになって自然と合唱を始めるその光景に私は目が釘付けになり、気付くとその輪に加わっていました。この作品でその雰囲気が少しでも伝われば幸いです。

 

2016年7月29日 (金)

館長はエンジニア、アナログ博物館へようこそ

2016年7月25日~7月31日放送
中国放送 RCCフロンティア制作部 角賢直

【番組概要】
広島市内から高速道路を使っておよそ2時間。中国山地のほぼ中央にある庄原市の口和郷土資料館が今回の舞台です。廃校になった分校の木造校舎をそのまま使った資料館の概観からは想像もできないアナログ機械の数々が300点も展示されています。

【制作意図】
口和郷土資料館に展示されているアナログ機械はすべて館長である安部博良さんが修復したもので、動態保存されています。中国山地の山奥にある資料館で阿部さんはひとり、どうして古い機械を修復し続けているのでしょうか?番組では安部館長の思いに迫りました。

【制作後記】
館長の安部さんは大手電機メーカーで数々の放送局の立ち上げに携わった元エンジニア。そのため、放送に関する機材の修復にも熱心に行っています。展示品の中にはかつて先輩ディレクターが使ったであろう6ミリテープのデンスケもあり、PCMレコーダーを片手に身の引き締まる思いがしました。

夏陽に輝く、エメラルドの沼

2016年7月18日~7月24日放送
秋田放送 ラジオセンターラジオ制作部 加賀屋晃太

【番組概要】
秋田県の三種町が日本一の生産量を誇るじゅんさい。じゅんさい農家の渡邉憂さんの元を訪ね、じゅんさい作りへのこだわりや、じゅんさいを全国に広めていきたいという胸のうちを取材しました。また、町ぐるみのじゅんさいPR活動として行われた駅のホームでの「流しじゅんさい」の様子を交えてお送りします。

【制作意図】
高級食材として扱われるじゅんさいですが、全国的な知名度は高くありません。全て手作業での収穫のため、収量も少なく、じゅんさい農家の稼ぎも少ないという現状です。魅力たっぷりのじゅんさいを全国のみなさんにも、より知ってもらおうと制作しました。

【制作後記】
取材の時にじゅんさい採りの体験をさせてもらいましたが、これがなかなかハマる!自然に囲まれ、沼の上で黙々と採っていると心が落ち着きます。沼の注ぐ水の音や、水面に手を入れた時の音を聞いて、暑いこの時期の涼みになればと思います。

2016年7月 5日 (火)

思い出を紡ぐ足踏みミシンと思いを繋ぐ修理士

2016年7月11日~7月17日放送
熊本放送 ラジオ制作部付 宮川理佳

【番組概要】
熊本市中央区国府にあるミシンの修理・販売をする店「ミシン一番店」。アンティークにこだわる店では、60年前から100年以上前の足踏みミシンを扱っています。そして今、足踏みミシンの修理を依頼する人は増えており、全国各地から依頼があるのです。どうして今足踏みミシンなのでしょうか?世代を越えて受け継がれるミシンとミシンに寄せる思い出、それを繋ぐ修理士の思いを取材しました。

【制作意図】
電動ミシンが普及する中、古い足踏みミシンの修理の依頼が全国からあるのはどうしてだろう?そんな疑問から店を訪ねてみると、手は油まみれ、額に汗をかきながらミシンと向きあう若い修理士がいました。ミシンに付いた傷ひとつにひとつに歴史がある・・・ミシンに詰まった依頼者の思い出を大切にする修理士の姿をみて、アナログな機械だからこそ繋いでいける思い出があるのだと感じました。足踏みミシンへの思い出は人それぞれですが、修理をしたミシンの軽快な音にそれぞれの「あの頃」を思い出していただけると嬉しいです。

【制作後記】
アンティークにこだわる店では、アンティークのホーンスピーカーでオールディーズやクラシックなど懐かしい曲を流しています。その音楽に誘われて店を訪れた70代の男性が、足踏みミシンを見て目を細めていました。戦後の物のない時代に、母親がミシンで繕い物をする姿を思い出したそうです。「いい物を見せてもらいました」と言い残して店を後にする男性の笑顔が印象的でした。「ミシン一番店」は人々の思い出がよみがえる場所なのかもしれません。

伝統をつないだ葉の繊維

2016年7月4日~7月10日放送
信越放送 ラジオ局編成制作部 中嶋直也

【番組概要】
長野県の「食」といえば信州そば。全国的に知られている信州そばとは少し変わった「須賀川そば」が長野県の北東部に位置する山ノ内町に受け継がれてきました。家庭で日常的にそば打ちが行われてきたこの町に「須賀川そば」が根付いた理由や、守り残していきたいという思いを持つ北沢滋子さんの活動をお伝えします。

【制作意図】
親から子へ、子どもから孫へと、この地域で伝わってた「須賀川そば」を残していきたいとそばうちを続ける北沢さんの思いが伝えられればと制作に取り組みました。

【制作後記】
本当に楽しそうにそばをうつ姿が印象的な北沢さん。冬は手が荒れて困るということを笑顔で話していると、「そばうちをやりすぎて、そばアレルギーになっちゃった」と一言・・・。それでもこの地域に残されてきた「須賀川そば」を下の世代につなげていきたい、という気持ちが伝わりました。

2016年7月 3日 (日)

発酵兄弟、地域を醸す

2016年6月27日~7月3日放送
山梨放送 ラジオ本部ラジオ制作部 渡邉尚

【番組概要】
山梨県甲府市で150年続く老舗のお味噌屋さん「五味醤油」。6代目の五味仁さん(34)は歌って踊れるお味噌屋さんとして有名です。こどもたちに伝統の「てまえみそ」文化を伝えるため、歌とダンスでみそ造りの工程が学べる「てまえみそうた」を企画した五味さん。妹の洋子さんと、友人の発酵デザイナー小倉ヒラクさんと「発酵兄妹」というユニットを結成し、県内各地の小学校、保育園、幼稚園で「てまえみそ」づくりのワークショップを開いています。番組では「てまえみそのうた」をひっさげてのワークショップの様子や「発酵兄妹」のこれまでの活躍を紹介しています。

【制作意図】
古くから日本の食卓に欠かせない味噌ですが、一人当たりの購入量は40年前の半分に落ち込んでいます。お味噌汁を飲まない家庭も増え、自分の家で味噌を作る「手前みそ」文化も失われつつあります。そのような現状の中、「手前みそ」の楽しさ、奥深さを自作の歌で子どもたちに伝える「発酵兄妹」の活動を通して、食育の大切さ、ひいては日本独自の発酵醸造文化に少しでも関心を持っていただければと制作しました。

【制作後記】
5年前に発表された「てまえみそのうた」。動画投稿サイト、ユー・チューブでのアクセス数は8万件を超えます。今や県内だけでなく全国から、てまえみそづくりのワークショップのお呼びがかかるほどになりました。発酵兄妹が制作した「てまえみそのうた」は食育活動や発酵醸造文化の普及活動に使用する場合、著作権フリーでどなたでも使えます。てまえみそ文化を全国に広めたいという彼らの思いが、より多くの人に届くことを願っています。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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