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2025年4月

2025年4月 9日 (水)

令和の空に鳴り響く破裂音 ~素直なお菓子・パットライス~

2025年4月7日~2025年4月13日
高知放送 ラジオ事業局ラジオ制作部 矢野修平

【番組概要】
全国で様々な呼び方がある「ポン菓子」。特に四国地方では「パットライス」という名前で呼ばれている昭和の香りが残るお菓子「ポン菓子」にスポットを当てます。高知県南国市で「おかじまポン菓子」を営む岡島弘之さん。現在も週末には高知県の各地へトラック1台で移動し、移動販売を行っています。物価の高騰や後継者不足の波にも負けず、昔ながらの製法でポン菓子を作る岡島さんに話を聞きました。

【制作意図】
休日に偶然聞いた大きな破裂音と、久しぶりに嗅いだ甘く香ばしい香りのもとを辿ると、昔懐かしいポン菓子でした。最近見る数が少なくなってきたポン菓子とポン菓子機を目にして、そもそもポン菓子はどのように作られているのか、ポン菓子業界が置かれている状況に興味が湧き、取材・制作しました。

【制作後記】
今回の収録で久しぶりにポン菓子の実演販売を見た時に、わかっているのにその音にびっくりしました。
「ポン」という大きな音を出す際には周りを歩くお客さんに「大きな音が鳴るよ」と事前に声かけをする岡島さんの心配りと、接客をしながらも黙々とポン菓子を作り続ける岡島さんの姿が印象的でした。
今回の番組を通じて一人でも多くの人にポン菓子の実演販売を見て、素朴で美味しいポン菓子を食べてほしいと思います。

荒波かきわける船 佐渡へ

2025年3月31日~2025年4月6日
新潟放送 オーディオコンテンツ部 橋本大暉

【番組概要】
昨年、世界文化遺産に登録された佐渡金山がそびえる、日本海に浮かぶ島、佐渡。
その佐渡へ渡るための生命線が、佐渡汽船が誇る、離島航路最大級の6階建カーフェリー「おけさ丸」。荒れる日本海の荒波をかき分け進む勇壮なこの船を動かす人々と、そこで鳴る・響く音にスポットを当て、佐渡汽船のカーフェリーで働く乗組員の想いを、現場に響く音で伝える。

【制作意図】
乗客や物資を安全かつ楽しく送り届けるため、日夜汗を流す船乗りたちの想いや情熱、また、船から聴こえてくる音から想像することで垣間見える船乗りたちの生き様と船と島の魅力。
佐渡へ向かうカーフェリーにフォーカスすることで、それらを全国にお届けできると思い、今回の取材を敢行した。

【制作後記】
ダイビングをするため佐渡に行く私がよく利用していたのが、今回取材をしたおけさ丸。
今まではただの乗客として、電車にも飛行機にも味わえない冒険のワクワクを感じゆったり楽しんでいた船旅が、普段は見えない裏側を覗いたことで船乗りたちの仕事があるおかげで私たちの「楽しさ」が生まれている、安全が土台としてあるからこその楽しさだと感じた。
仕事をする船乗りの背中はさりげなく、それがかっこよかった。

 

「飛べ、るみあ! ~紀州のプロレス少女爆誕~」

2025年3月24日~2025年3月30日
和歌山放送 報道制作部 寺門秀介

【番組概要】

和歌山県を拠点する地域プロレス団体”紀州ぶんだらプロレス”に、地元の高校を卒業したばかりの19歳の少女・藤井瑠美愛(ふじい・るみあ)が入団し、1年間の練習を経て2024年12月、地元・和歌山でデビュー戦を迎えた。ベテラン男性選手との7分間の力闘の末、惜しくも初勝利はならなかったが、観客は熱狂し、拍手喝采の華々しいデビューとなった。

スポーツ歴は高校の時にソフトボールをしたくらいで格闘技経験は皆無。中学時代はイジメがきっかけで不登校にまで陥った瑠美愛の目に、突如飛び込んだ女子プロレスのYouTube動画がきっかけでプロレスの虜となる。パワー溢れるファイトに勇気づけられて自らもプロレスラーを志し、地元・和歌山の社会人団体”紀州ぶんだらプロレス”に入団する。

高校卒業後は県内の飲食業に就職し、休日は道場で稽古に励む会社員とプロレスラーの二足のわらじで多忙を極める瑠美愛だが、「和歌山が好きで、自分もプロレスで和歌山を元気にしたい」との思いを胸に、ファイティングロードを駆け上がっていく。

【制作意図】

大都市と異なり娯楽の少ない和歌山県をはじめ、いま、地方の各地に”紀州ぶんだらプロレス”のような
昼間は社会人・休日はプロレスラーとして活動する選手と団体が増えている。中には”新根室プロレス”のようなメジャー団体のマットに参戦するレスラーも登場したり、地方の団体同士の交流戦も盛んに行われるなど、地域の元気をもたらすツールとして、それぞれの土地に愛される存在に成長する地域プロレス。

将来への希望が少ないと若者が県外に流出していく和歌山県で、引きこもりから立ち直ったプロレスの世界に自ら飛び込み、”和歌山が好きだ”という思いをファイトスタイルに込め、プロレスによる地域おこしの力となる道を選んだ藤井瑠美愛の姿を通じて、和歌山の若者による可能性のひとつとして提示したい。

【制作後記】

高校卒業前の2023年11月、紀州ぶんだらプロレスの稽古の報道取材中にたまたま出会った藤井瑠美愛選手。自己主張や器械体操が苦手と言っていたが、その後も黙々と道場での稽古を重ねるうちに
目覚めるような成長を遂げた姿に、密着取材をしていた身としても、目頭が熱くなった。

これから他団体の強敵選手との対戦や遠征も増えていくが、多忙な本業との両立にも苦労するなか、
誠実かつ前向きに取り組む姿にこれからも注目したい。

 

わが町、わが祭り、チキリンばやし ~鉦が奏でる大分魂~

2025年3月17日~2025年3月23日
大分放送 音声コンテンツ部 山下花恋

【番組概要】
大分県大分市の夏を彩る民謡「チキリンばやし」は、1970年に「大分市民で歌い踊れる民謡がほしい」という声をもとに、大分市民の手で作詞・作曲・振り付けが行われた大分市独自の民謡です。歌詞は方言をそのまま活かし、曲には大分に古くから伝わる「チキリン」という鉦のリズムが取り入れられています。チキリンばやしの踊りには2種類あり、どちらの振り付けも2本のバチを持って太鼓をたたく動作が組み込まれており、軽快な踊りが特徴です。大分市中心部の人々は小学生の頃から体育の授業や学校の行事でこの踊りを踊っており、地域に根差した踊りとなっています。制作当時を知る人は少なくなりましたが、若いころから「チキリン」の演奏を続けている浜町チキリン保存会の清水進正さん、唯一制作当時を知る歌い手の松井猛さん、そして踊り手の筑紫晴美さんなど、チキリンばやしに関わってきた人々がそれぞれの思いを語ります。

【制作意図】
このチキリンばやしは、毎年8月に開催される大分七夕祭りの中で「チキリンばやし市民総踊り」として行われています。町でこの音楽が流れると、思わず踊りたくなるようなリズミカルな音楽が特徴です。この音楽に使われるのは、大分で古くから伝わる「チキリン」という鉦の音です。鉦は銅と錫(スズ)の合金で作られており、丸くて平たい底がある形が特徴です。竹を削った柄(え)に、長さおよそ4センチに切った鹿の角を直角に取り付けた撞木(シュモク)で演奏します。このチキリンは演奏の難しさや複雑さから、後継者不足が課題となっています。チキリンばやし以外でも様々な祭りで使われる「チキリン」。その特徴的で独特な音色を、多くの人に知っていただきたいと思い、今回の制作に至りました。

【制作後記】
チキリンばやしが今年で55年目という節目を迎えるにあたり、この活動に関わることができたことを大変誇りに思っております。私はこの度、録音風物誌を制作するまでチキリンばやしの存在を知っていましたが、実際に触れる機会はあまりありませんでした。しかし、長年演奏者、歌い手、そして踊り子として携わってきた3名の方のお話を伺い、チキリンばやしに対する深い思いや愛情を知ることができました。その結果、チキリンばやしが守るべき大分県の貴重な財産であることを改めて実感いたしました。8月に開催される「チキリンばやし市民総踊り」では、飛び入りで踊り手として参加することも可能です。この放送をお聞きになり、ぜひ多くの方に現地へ足を運んでいただき、一緒に歌って踊っていただけることを心より願っております。

瀬戸内の夜明け~魚市場から この新鮮を はやく届けたい

2025年3月10日~2025年3月16日
西日本放送 ラジオセンター 白井美由紀

【番組概要】
高松市中央卸売市場で働く皆さんは、深夜1時ごろに出勤し早朝のセリを経て、午前中に仕事が終わります。その中で美味しいお魚や海の幸を、小売店に素早く届け、消費者の元へ・・・といろいろな工夫をされています。この工夫は、瀬戸内で獲れる海の幸ならではの工夫で、全国的にも珍しいそうです。株式会社高松東魚市場のセリ人溝渕陽介さんに協力していただき、高松ならではのセリの模様、そのにぎわい活気あふれる音をお届けします。

【制作意図】
瀬戸内の海の幸は、本当においしいものがたくさんあります。日々、そのような環境で暮らす私たちはとても幸せだなと感じることが多々あります。瀬戸内の海ならではの活気を全国にお届したいと思い制作しました。

【制作後記】
この取材のあと、市場の中にある「おけいちゃん」という朝6時から開いている魚料理の定食屋さんで「朝ごはん(?)」いただきました。ふっくらごはんと、新鮮な魚、アツアツの味噌汁で、元気もらいました。その日以降、ほぼ毎日おさかな食べてます。漁師さんの想いを、セリ人の想いを、スーパーのバイヤーたちの想いを、そして調理する人の想いを考えたら、骨まで食べたくなるくらい、おさかなが愛おしいです。



西の京の伝統を受け継ぐ-大内塗りの今-

2025年3月3日~2025年3月9日
山口放送 ラジオ制作部 寺岡岳男

【番組概要】

大内塗(おおうちぬり)は、山口県山口市で作られている漆器です。
室町時代に、西国一の大名と言われ、山口市を拠点とした大内氏のもとで誕生したことから、「大内塗」の名がつけられました。大内塗の特徴は、渋みのある深い朱色の地塗りの上に、色付の漆でハギやススキなどの秋の草を描き、金箔で大内氏の家紋である「大内菱(おおうちびし)」をあしらった優雅な絵模様です。大内氏の滅亡で、一時衰退しましたが、明治に入って復興されました。現在ある工房4軒の作り手は、53歳~98歳と高齢化で再び衰退の危機を迎えています。若者を受け入れたくても、修行期間の長さと、その間の収入を保障出来ないのが、課題でした。そこで、山口市では、後継者を育てるために、「山口市版地域おこし協力隊」として5年間の研修制度を作りました。
その制度を活用して、大内塗りの技術を学ぶ20代の2人を紹介します。


【制作意図】

山口県内で広く知られている漆器「大内塗」その中でも特徴的な製品「大内人形」その技術の継承問題があることを、そして、現在それぞれの思いをもって技術継承のために学んでいる若者がいることを
広く知ってもらえれば、また、山口市・山口県立大学・大内塗漆器振興協同組合が協力しての技術継承への取り組みが、他の地域の、伝統工芸の技術継承の参考になればと思い制作しました。



【制作後記】

私は、山口県出身です。
子供の頃から、大内人形の存在は知っていましたし、将来も続いていくものであろうと、漠然と思っていました。山口市在住の私の親族も同様な考えでした。ラジオのワイド番組のコーナーでの話題を探しているうちに、偶然山口県立大学の山口光教授から、大内塗の現状(衰退の危機にある)についお聞きして、驚きました。この状況を広く知っていただきたいと思い、取材を始めました。
可能であれば、大内塗りの研修を受けている2人の今後の状況も取材していきたいと思います。

 

Hello!黄色いビブス~サインは平和への証~

2025年2月24日~2025年3月2日
中国放送 ㈱RCCフロンティア 兼清 友希

【番組概要】
広島市中区の中心部にある平和記念公園で、ボランティアガイドとして活動する佐々木駿くん。黄色いビブスと黄色い帽子を被って、月2回、外国人観光客に無料でガイドをしています。ガイドを始める前は、戦争・原爆のことはほとんど知らなかった駿くん。なぜガイドをしようと思ったのか?外国人に、英語で平和記念公園の歴史と、被ばく体験を伝える駿くんに注目しました。

【制作意図】
今年、原爆投下から80年という節目を迎える広島。被ばく者の高齢化が進むなか、体験の伝承が大きな課題となっています。そんな広島で、一人の少年がガイドとして活動しています。被ばく地・広島の現状と、ガイドを通して海外と日本の平和の架け橋になっている駿くんの姿を伝えたいと思い、制作しました。

【制作後記】
お母さんいわく、「小さい頃から人見知りしない性格」という駿くん。その言葉の通り、自分からどんどん外国人に声をかけて、ガイドをしていました。ちなみに、駿くんのビブスは現在2枚目。1枚目のビブスも見せてもらったのですが、前・後ろ・肩…と全面にサインがびっしり。書く場所がほとんどありませんでした。取材中、「これからも出来る限りガイドを続けたい」と笑顔で話してくれたのが印象に残っています。今後も活躍を追っていきたいです。

紡ぎ、手すき、繋ぐ者たち

2025年2月17日~2025年2月23日
秋田放送 編成局ラジオ放送部 鈴木悠

【番組概要】
秋田県の中でも特に豪雪地帯、地元では白鳥の飛来地としても人気の横手市十文字町。この町の伝統工芸「十文字和紙」。200年以上もの歴史を持ち、かつては50軒以上の家で作られてきた和紙の担い手は、今やたった一人の職人だけ。その職人、佐々木清男さんも入退院を繰り返していて、今年は和紙作りに参加できません。代わりに立ち上がったのは、清男さんを応援し、自分たちも和紙作りを行う「十文字和紙同好会」。職人が不在の中、毎年1月に訪れる「卒園証書」と「卒業証書」作りの様子を和紙作りの音と共に伝えます。

【制作意図】
十文字和紙に限らず、秋田県内の様々な伝統工芸が直面している「職人の高齢化」や「跡継ぎ」の問題。職人不在の中、その問題にどのように向き合い、解決し、未来に繋げていくのかを和紙作りの音も取り入れながらお伝えしたいと思い、制作しました。ほとんど機械化されている工程も手作業で行うからこそ、和紙に表れる温かみ。そんな和紙同様、十文字和紙同好会の皆さんの温かい人柄なども、言葉や空気感を通してお伝えしたいと思います。

【制作後記】
当初は、十文字和紙のたった一人の職人である佐々木清男さんに密着しようと考えていましたが、取材の電話をかけたときに初めて、清男さんが入院されていることを知りました。事前調査で、地元の中学校と幼稚園に卒業(卒園)証書づくりをしていることを知り「今年の和紙作りはどうなるんだろう…?」と思いながら、和紙作りをしている公民館へ。和気あいあいとしながらも、真摯に和紙作りに向き合う姿を見て、愛好会の皆さんを主役にすることに決めました。                                               手作りの和紙同様、温かい皆さんのお人柄。和紙作りの様々な工程も体験させていただき、取材中も笑いが絶えない現場でした。マイクに私の笑い声も沢山入ってしまい、編集が大変だったのはここだけの話です…。

“おやこ寺子屋”で心の居場所づくりを

2025年2月10日~2025年2月16日
福井放送 報道制作局制作部 松田佳恵

【番組概要】
北陸の小京都といわれる福井県大野市。越前大野城を望む城下町の中心には石畳の寺町通りがあり、今も14の寺が並んでいます。今回の舞台はその中で467年の歴史がある善導寺です。
ここで開かれているのは「越前大野おやこ寺子屋」。
3年前からお寺で親子が様々な学びを深める企画を年4回実施していて、これまでに「日本語」や「性教育」などさまざまなテーマで開催してきました。企画しているのは、3児の父で善導寺副住職の大門哲爾さんをはじめとした地元の大人たちです。取材をしたのは「防災」をテーマにした寺子屋。境内で自分たちで火を起こして非常食を作り、2024年元日に発生した能登半島地震で実際に石川県輪島市にボランティアとして活動をした医師を講師に招き、水やトイレの重要性などの講義を通して学び
を深めました。寺を拠点に、子どもたちの未来を支える居場所づくりが進んでいます。

【制作意図】
私の住む福井県大野市は、山の上にそびえたつ城がまるで雲の上に浮かんでいるようにみえる”天空の城越前大野城”がある、歴史と風情のある町。冬は雪深く、真っ白な美しい光景が見られる自慢のふるさとです。ただ、過疎化が進み人口は年々減少。子どもたちの数も減ってきています。そんな中、ある寺で子どもたちに学びを提供する「寺子屋」を企画していることを知りました。おじゃましてみると、子どもたちは生き生きと活動し、大人は自分の子どもだけじゃなく、周りの子どもとコミュニケーションを取る姿が。そこには、様々な価値観に触れながら人と人とのつながりを構築していき、地域みんなで子どもを育てていく姿がありました。地域や人とのつながりが少なくなってきた今、こうした居場所づくりがこれからの地方をつくるヒントになるのではと思い、制作しました。

【制作後記】
私事ですが、春に第一子が生まれる予定です。ふるさとで子どもを育てていこうという決意をしたころ、この「越前大野おやこ寺子屋」に出会いました。最初はプライベートで参加し、地域の子どもたちと一緒に学びを深めました。その時に感じたあたたかさや子どもたちのキラキラと輝く目をみて、番組として制作し、たくさんのみなさんに知ってほしい、伝えたいと思いました。これからもずっとこの寺子屋が続いてほしいと願っています。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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