2007年8月 6日 (月)

藍とともに生きる

東北放送 ラジオ局編成制作部 佐々木 雄祐

緑深い山々に囲まれた、宮城県栗原市栗駒文字地区に平安時代から行われてきた、染織技法「正藍染」(又は「正藍冷染」)を受け継ぐ藍染の工房があります。

その技法を代々受け継いできた千葉家。現在藍染作業の中心になっているのは千葉まつ江さん(77歳)です。まつ江さんは藍の栽培から染めの作業、製品化まで一貫して行っています。

藍で生地を染めるためには藍を発酵させる必要があります。人工的に発酵させるのが一般的ですが、千葉家では熱を使わず、夏の気温変化のみによって発酵させています。

そのため染めの作業が出来るのは、6月から7月の40日だけです。気温や湿度によっても染まり具合が左右される正藍染、まつ江さんは一枚一枚「いい藍色が出るように」と祈りながら染めあげます。

その想いを映し出し、生地はやさしい藍色に染まります。今年の染めの作業は7月15日で終了しましたが、まつ江さんはこれからも藍とともに生き続けます。

2007年7月30日 (月)

震災を乗り越えて~輪島曳山祭の男たち~

北陸放送 制作部 川瀬 裕子

今年3月25日、震度6強の「能登半島地震」が能登を襲いました。輪島市も住家や神社などが損壊し、地震の10日後に行われるはずだった曳山祭は中止になってしまいました。

約350年の歴史がある曳山祭を取り仕切る「おとう組」と呼ぶ地元の厄前の男たちは、自分たちが被災したにもかかわらず、町の人たちを元気づけるために、曳山祭を開催したいと願っていました。

自分の生活もままならない中での祭りの準備は、彼らの契りを一層強くしました。言葉で語るより、その涙が全てを物語っていました。

男たちの熱い涙がありました。

2007年7月23日 (月)

田の神さあの ふるさと

宮崎放送 ラジオ制作部 福田 直子

宮崎県えびの市。鹿児島県と熊本県との県境にあるこの地には「田の神さあ」と呼ばれる田んぼの神様がいます。

形も表情も様々で、地元に人々から愛されている神様です。150体以上ある神様の中で末永地区にある神様だけは、今も昔も変わらず地元の人々が五穀豊穣を祈願しておまつりしています。

そのお陰か、ここでは美味しいお米「ひのひかり」がとれます。番組では、昔から変わらず地元の人々の生活に密着している田んぼの神様「田の神さあ」と、そこに住む人との関わりを描きます。

2007年7月16日 (月)

いのちのお話 出前講座

西日本放送 ラジオセンター 池本 恵津子

香川県の10代の人工妊娠中絶率が6年前にワースト1になりました。最近では、小学生の例もあったといわれるほどで、性教育が見直されつつあります。

このようなことを受け、立ち上がったのが、地元で助産院として働く,三好博子さんと田中幸子さん。『いのちのお話出前講座』と題する講座を5~6歳の子どもたちとその親を対象として、県内各地へ出回ります。

約50分の講座は、いのちの尊さや生命誕生の瞬間を伝えるために、歌、ゲーム、指人形などで惹きつけます。

この講座のピークは、最後の『出産劇』。三好さんが自ら妊婦役になり、夫役には会場から選ばれた2人の子どもを持つお父さん、そして助産婦は田中さんと3人が本番さながら演じます。

約10分の超安産ですが、子どもたちも一緒になって、『ひっひっふぅ~』。みんなが見守る中、赤ちゃんが生まれます。もちろん、人形ですが、泣き声はテープから流れてきます。

そして生まれたての赤ちゃんをみんなで抱いていきます。お母さんやお父さんは懐かしく、子どもは小さな手で大きな命を実感します。この瞬間こそが三好さんや田中さんの一番伝えたいこと。

2007年7月 9日 (月)

心を束ねて~ペーロンの熱い夏~

長崎放送 ラジオ制作センター 三浦 俊

今回、長崎市三重町のペーロンについて制作しました。

長崎の夏といえばペーロンです。各地区に分かれて、和船での早さを競います。このペーロンは伝統のある行事で、男たちを「中心に熱い戦いが繰り広げられます。

先祖代々長い年月とともに受け継がれてきたペーロンも、都市化の波でサラリーマンも増え、後継者不足に悩み、夜に練習するなど、環境は様変わりしています。

番組は、伝統行事ペーロンをめぐる現状と共に、街の誇りを継続させるべく、ペーロンにその心を託す地域の人々の熱いハートを伝えられれば、と思い制作しました。

2007年7月 2日 (月)

アカシアの町から拍子木が流れる

秋田放送 ラジオ制作部 丹内 モモコ

秋田県の北、鹿角郡小坂町には日本で一番古い木造の芝居小屋があります。小坂鉱山の最盛期、従業員の慰安用に造られたものですが、今でも全国から観光客が訪れます。

砂漠のようだった町をみんなでアカシアを植え、やっと緑を取り戻した町は、行き交う人々にもやさしく微笑んでいます。

先頭に立って元気なのは川口ヒロシ町長。観光施設は立派なのですが、町役場の貧弱なこと!

「町役場なんて事務が出来ればいい、皆様を迎えるところが町の顔です」と言い切る姿に清清しさを感じました。

きょうも役場職員、康楽館のスタッフは、クーラーもないところでがんばっているに違いない。

2007年6月25日 (月)

理想のオカリナを求めて

静岡放送 制作部 荻野 倫久

イタリア生まれの陶器製の楽器、オカリナは、吹く人にも安らぎを与え「癒しの楽器」と呼ばれます。近年のヒーリングミュージックの静かなブームの中、楽曲にオカリナを組み込んでいるものも多く、趣味として手作りでオカリナを作る人も増えています。

土と炎から生まれる素朴な響きが、喧騒のなかで生きる現代人の疲れた心に癒しを与えるのかもしれません。静岡理工科大学の志村史夫教授を中心とした研究グループガ、オカリナの音を科学的に解明する研究に取り組んでいます。

同時にプロノ「オカリナ奏者として知られる本谷美加子(ほんたにみかこ)さんも加わり、「科学」と「演奏家の視点」に基づいた理想のオカリナ作りも進んでいます。

信楽や瀬戸、常滑など、全国の焼き物の名所から集められた土を使い、さまざまな温度で焼き上げられたオカリナ。それぞれの成分分析や、音色を数値化したスペクトル分析から明るみになるオカリナの音色の秘密とは?

そしてプロの演奏家の主観を交えた「理想のオカリナ作り」の行く着く先は…。

2007年6月18日 (月)

夢見る公園

文化放送 制作部 小笠原 真愛

東京都 渋谷区にある代々木公園。週末になるとたくさんのストリートアーティストたちが集まり、思い思いのパフォーマンスを披露しています。

ケヤキ並木の下、多い日には20組を超えるアーティストはほんの1.2m間隔で陣を構え、隣に負けじと歌う! 踊る! 叫ぶ!

技術の上手・下手は別として、その「見て欲しい」「聞いて欲しい」という懸命なメッセージに、思わず通行人の足も止まります。

そんな、代々木公園の熱い文化を音にしました。アーティストたちの思いが伝わりますように。

2007年6月11日 (月)

高原を吹き渡る童謡の歌声

熊本放送 ラジオ局 原武 博之

平成の大合併で熊本県上益城郡山都町の一部となった旧清和村。
清和高原天文台を有し、150年の歴史を持つ「清和文楽」を核に、村づくりが行われ、人口3,300人の村に、年間12万人もが訪れていました。

他の2つの町に吸収されてしまったような状況の中で新たなふるさとづくりを進める旧清和村。村の中心地も合併によって地域が移り小学校も統合されて、廃校となってゆきます。

旧清和村村長で、現在NPO法人、日本国際童謡館 理事長の兼瀬哲治さんは、廃校になった旧朝日小学校を童謡運動の拠点としようと考え、この5月から「童謡学校」を開校することにしました。

豊かな自然の中に響き渡る歌声。日本人の心の中に浸み入っている童謡が、旧清和村に新たな風を吹き込んでくれるか、地元住民の期待も大きいようです。

2007年6月 4日 (月)

おらんくの映画館

高知放送 ラジオセンター 手島 伸樹

シネコン全盛の今、地方の映画館は姿を消しています。
高知県でも中心部のシネコンと小さな映画館が2館、そして今回取り上げた東部の「大心劇場」のみが常設の映画館です。

映画の火を消すまいと1人で頑張る館主、小松秀吉さんを通して懐かしい昭和の風景を感じてもらいたいと制作しました。

「大心劇場」高知県安芸郡安田町。
館主の小松秀吉さんは、モギリ、売店、看板制作、映画技師など、すべて1人で担当しています。その情熱は?

普段は暗い映画館ですが、壁には200枚以上の古い映画のポスターが…。休憩時間も楽しんでもらおうという館主の優しさです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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