2022年6月 3日 (金)

おんせん県でととのいます! ~蒸し風呂文化の新たな挑戦

2022年5月30日~2022年6月5日放送 
大分放送 コンテンツ制作 那賀ひとみ

【番組概要】
大分県の南に位置する豊後大野市。このまちは”おんせん県”とも称される大分県で唯一、温泉が湧き出ていません。しかし、ここには大自然があります。この魅力を伝えようと、アウトドア・サウナ協議会「おんせん県いいサウナ研究所」を設立し、アウトドアサウナを企画したのが、高橋ケンさん。サウナの歴史を調べる中で知ったのは地元に残る、蒸し風呂文化―。豊後大野市市内には16世紀後半につくられたと推定される『蒸し風呂』の一種である石風呂が12ヶ所残っています。現役で使われているのは、辻河原という地域に残る石風呂だけ。辻河原石風呂保存会の渡辺桂一さんは、コロナ禍となるまでは年に2、3度、沸かしていました。ただ、継承しようにも若手が少ないことも課題のひとつとなっています。古くから伝わる『蒸し風呂』の文化が、新たな形となって続く『まち』、『ひと』を「音」で届けます。

【制作意図】
いまや全国的に「サウナー」や「サ飯」などの言葉が飛び交う、空前のサウナブーム。そんな中、九州で唯一「日本ジオパーク」と「ユネスコエコパーク」の両方に認定されている大分県豊後大野市は、大自然を生かした「アウトドアサウナ」を観光資源として活用しようと『サウナのまち』を宣言しました。その人気から、古くより豊後大野市に伝わる石風呂にもスポットが当てられ、観光客も増えています。しかし、現役で使うことのできる石風呂を沸かせる人は多くいません。石風呂の蒸し風呂文化が新しい「アウトドアサウナ」という形となって後世に残りますように、という想いを込めて制作しました。

【制作後記】
アウトドアサウナへ訪れた観光客に話を聞くと、自然を流れる川や雨、空気を活用したサウナは、「ここ(豊後大野市)がナンバーワンじゃないかな。」という声がありました。石風呂の蒸し風呂文化は、アウトドアサウナと直接の繋がりはないものの、「ととのう」気持ち良さは通ずるものがあると感じました。まちに温泉が湧き出ていなくても、大自然の中で「ととのう」ことのできるサウナがある!蒸し風呂文化が、現代に「アウトドアサウナ」という新しい形となって生き続けることが、石風呂の存続にも繋がるのではないかなと思います。県外のサウナーの皆さんにはもちろん、まだ「サウナ」を体験したことのない大分県内の方にもオススメしたい場所のひとつになりました。

山城を起点にー新たな町づくりー

2022年5月23日~2022年5月29日放送 
福井放送 報道制作局制作部 関美里

【番組概要】
福井県の最北端、あわら市細呂木地区。この地には、戦国時代まで使われていた神宮寺城址があります。神宮寺城址は、曲輪や土橋といった山城の典型的な構造を持っていて、当時の地区の様子をうかがい知ることができる貴重な城址です。現在、地区の人たちが、散策路をつくるなどの整備を進めていて、今年の夏に山開きを予定しています。城が建っていないからこそ、風に揺れる木々の音、鳥のさえずりに思いを馳せることができ、目を閉じると当時の様子が浮かび上がってくるようなロマンあふれる場所です。また、細呂木地区のコミュニティセンターでは、本格的な越前そばとカレーを楽しむことができ、開店すると、地区の内外から多くの人が訪れます。実はこのコミュニティセンターで料理を作っている人も料理を運んでいる人も、皆がボランティア。地区を盛り上げるために地区の人たちが協力しています。時代の変化とともに山城の周りの様子は変化し続けています。それでも、地区の人が細呂木を愛し細呂木を守ろうとしていることは今も昔も変わりません。細呂木地区では、山城を起点としたまちづくりの輪が広がっています。

【制作意図】 
年々、地方の高齢化は進み、観光地の整備をはじめとしたまちづくりは、数名の有志で行っているという地域も少なくありません。そのなかで細呂木地区では、およそ半数ほどの地区の住民が有志として山城の整備のために力を貸していて、町づくりにこれほどまでに多くの人が集まることに驚き、取材を始めた。そこで聞けたのは「自分の住む地域のことをまず知り、自分たちでより良くしていかなければ」という熱い想いでした。強風吹き荒れる雨の日に行われた山城の整備に、20人もの住民が集まってくれたことを、城址保存会の会長は「忘れることはない」と話します。地区のコミュニティーセンターで、訪れた客に温かく声をかけ、絶品の料理を振る舞う人も皆、ボランティアです。自ら地区のために動く人たち、そして山城を拠点に地区を守っていた戦国時代の人たちを重ね、まちづくりとは何なのか考えていただけると幸いです。

【制作後記】
あわら市細呂木地区は、のどかな自然があふれる場所です。神宮寺城跡に一歩足を踏み入れると、風で葉が揺れる音、竹同士があたる音など自然の音がたくさん届きます。実際に山城をガイドしていただくなかで、城址を守る人たちの生き生きとした表情が印象的で、本当に自分の住んでいる地区を愛しているということが伝わってきました。コミュニティセンターで働く人も、訪れる人を心から歓迎していて、本当に温かい、素敵な地区だと感じました。

受け継がれるムラの誇り~福を呼ぶ三番叟まわし~ 

2022年5月16日~2022年5月22日放送 
四国放送 ラジオ編成制作部 三浦審也

【番組概要】
めでたい人形の舞いで無病息災や五穀豊穣を祈る徳島の伝統芸能「三番叟(さんばそう)まわし」。三番叟まわしで健康と豊作・大漁・商売繫盛を予祝する門付け(かどづけ)は、現在、阿波木偶箱まわし保存会が受け継ぎ、年初めに1000軒の家々に福を授けています。今も続く門付けの様子や、文化の伝承・発信に尽力する阿波木偶箱まわし保存会の活動を紹介します。

【制作意図】
古くから人形芝居が盛んで、天狗久を筆頭に多くの人形師を輩出している徳島県は、全国でも有数の人形浄瑠璃大国です。正月儀礼や娯楽としての人形芝居を披露する「箱まわし」の芸人は、かつては四国全域、さらには本州・九州まで出向いて、全国各地の人形文化の振興に貢献しました。社会の変化や差別を乗り越えて、地域の誇るべき文化となった三番叟まわし・箱廻しについて知っていただきたいと思います。

【制作後記】
阿波木偶箱まわし保存会の辻本一英さんの祖母は、祝福芸の一つ・えびすまわしの芸人でしたが、差別のために人形を川に流したそうです。人々に福を運んだ人形たちを、差別のために捨てざるをえなかった箱まわし芸人たちの想いは想像するに余りあります。保存会は、阿波の人形文化の発信・伝承の拠点「人形のムラ」を徳島市にオープンし、今年5月から一般公開しています。現存する貴重な人形を展示する他、人形芝居の公演や体験教室も行われます。阿波の人形文化を次世代に伝えるため、今後も折に触れて取材させていただきたいと思います。

春、水深200mへ祈る。

2022年5月9日~2022年5月15日放送 
秋田放送 編成局ラジオ放送部 武藤美結

【番組概要】
3月下旬、秋田県男鹿市にある男鹿水族館GAOでは、稚魚を海に放流する体験会が行われます。放流されるのは、秋田の県魚「鰰(ハタハタ)」です。日本海で雷が轟く冬の初め頃、突如大群で漁港に押し寄せる鰰は、「神様からの恵み」とも考えられていました。秋田県民が古くから知恵を絞り、色々な食べ方を編み出してきた魚です。その鰰に危機が迫っています。かつて2万トンもの漁獲量を誇った秋田県ですが、2021年度は300トン以下。苦渋の決断で“禁漁”が行われた、30年前と同じ状況なのです。番組では鰰が直面している現状と、稚魚を手塩にかけて育てる飼育員の想い、そして稚魚と向き合う子どもたちの様子などをお届けします。

【制作意図】
鰰は冬の風物詩として取り上げられることも多いのですが、その漁獲量や景色を守るべく、春に稚魚を放流している人たちがいることを、知らない方も多いのではないでしょうか。私もそのうちの1人でした。今回、水族館で行われている「稚魚放流体験」を取り上げることで、鰰の現状やなぜこの時期放流するのか、稚魚を手塩にかけて育てた飼育員の想いや、子どもたちが学び体験する様子を伝えたいと考えました。また、鰰の稚魚は人工授精で生まれ、餌を与えられて育ち、多くの人の手により海に帰されます。その稚魚が2年後、大きくなって秋田に帰ってきた時、私たちはその命を頂くかもしれません。巡る命についても考えていただけたらと思います。

【制作後記】
ハタハタ漁の歴史や調理法、漁の様子や禁漁について調べていくうちに、秋田では鰰に対して熱い思いを抱く人が昔から多かったのだと改めて感じました。また餌やり体験を取材し、稚魚が生きているプランクトンを食べる様子を観て、命の尊さや儚さを感じました。私自身にとっても、飼育員や参加者と共に「秋田の鰰」を考える、良いきっかけになりました。

宮崎ぎょうざ 悲願の日本一

2022年5月2日~2022年5月8日放送 
宮崎放送 ラジオ制作部 村山耕一

【番組概要】
全国でぎょうざと言えば、「栃木県宇都宮市」「静岡県浜松市」が有名ですが、実は、宮崎県も「食卓の定番」としてぎょうざが親しまれています。2年前に製造・販売業者らが中心となって「宮崎市ぎょうざ協議会」が発足し、2021年、ぎょうざの購入額の日本一を目指してPRに力を入れました。上半期からトップを独走した宮崎市。ついに年間ランキングが発表される日を迎えます。ぎょうざ界をリードする宇都宮市・浜松市を上回り、悲願の日本一を達成することができるのか。宮崎市ぎょうざ協議会の渡辺愛香会長の想いとともに、宮崎ぎょうざの魅力をお伝えします。

【制作意図】
「特徴がないのが宮崎ぎょうざの特徴」と話す渡辺会長。それぞれ色や形、焼き方は違えど、宮崎産の食材をふんだんに使用し、様々なアイディアで「ぎょうざ愛」を競い合う各店舗。ライバル同志、手と手を取り合いながら「ぎょうざの新名所 宮崎」を目指す姿を、県民として誇らしく感じ、制作しようと思いました。

【制作後記】
2020年は、宮崎市はぎょうざ購入額で、宇都宮市・浜松市に惜しくも敗れ、全国3位でした。その悔しさをバネに、2021年は宮崎ぎょうざのテーマソングが誕生するなど、県内全体を巻き込んだ機運の高まりを感じました。取材を進めるうちに、コロナ禍で明るい話題が少ない中、ぎょうざをきっかけに悲願の日本一を目指し、「宮崎がひとつ」になったと感じました。宮崎にはおいしいぎょうざがたくさんあります。皆さんの食卓でも「宮崎ぎょうざ」を楽しんでいただけたらと思います。

2022年4月26日 (火)

守り受け継ぐ~SLやまぐち号

2022年4月25日~2022年5月1日放送 
山口放送 ラジオ制作部 奥田貴弘


【番組概要】
SLやまぐち号は今年で復活から43年。現在は修理中のC57型「貴婦人」に代わり、デゴイチの愛称で親しまれるD51型が力強い走りを見せています。力強い走りで鉄道ファンを魅了するSLの音と、製造から80年以上経過した車体を安全に、かつ正確に運行させるために奮闘する機関士、整備士の姿をお伝えします。

【制作意図】
山口線を走るSLやまぐち号は、60代以上は現役時代を懐かしむ人から、幼い子供まで世代を超えて多くの鉄道ファンを引き付ける鉄道遺産です。本物のSLを前にすると、蒸気の熱気や音、石炭の匂い、まるで大きな生き物のような迫力を感じます。SLの躍動感のある走行音や谷あいに響く汽笛の音、SLを安全に運行させるための保守管理の現場の音にあわせて、SLを愛する人たちの思いを伝えたいと制作しました。

【制作後記】
山口を代表する音といえばSLの汽笛の音。幾度となく紹介されているSLやまぐち号ですが、今回は新山口駅にある下関総合車両所・新山口支所のご協力で、普段は立ち入ることのできない整備の現場に立ち会うことができました。ベテランが若手を指導する現場は、厳しくもありながら、技術を確かに伝えようとする熱意を感じました。私自身は特に鉄道ファンというわけではありませんが、SLを前にするとなぜかワクワクして自然に笑顔になります。お聞きの皆さまのぜひ一度SLやまぐち号にご乗車ください!

走りだせ!オートバイ神社から生誕の地への想い

2022年4月18日~2022年4月24日放送 
静岡放送 ラジオ局オーディオコンテンツセンター 岡本澪奈

【番組概要】
静岡県浜松市は、オートバイ生誕の地。1946年にホンダの創始者・本田宗一郎が、陸軍で使用していた無線用小型エンジンを改良し自転車に取り付け試走したのが、浜松のオートバイ製造の始まりです(浜松ではこれを"ポンポン"と呼んでいます)。国内4大メーカーのうち3社(ホンダ・ヤマハ・スズキ)のルーツが浜松市にあります。そのオートバイ生誕の地を盛り上げようとしているのが「大歳神社」。神主の石津さんは大型バイクを3台所有する大のバイク好きです。ここのお守りを目当てにSNSを通じて神社を知った全国のライダーが訪れています。元々は地域の方の参拝も少なかったこの神社。石津さんはなぜオートバイの受け入れを始めたのか。そしてライダーはこの大歳神社に対して、そしてオートバイ生誕の地・浜松に対してどのように感じているのか。いろいろなバイクの音とともに、オートバイ神社の様子をお届けします。

【制作意図】
小さいころから身近にあったオートバイを取材したい!とすぐ思いました。両親がホンダの浜松工場で二輪の生産に携わっており、小さいころよく1300ccの大型バイクを所有している父親の後ろによく乗せてもらっていたのです。あの時の爽快感、すぐ隣に大きな車が走っている躍動感など・・・忘れられない瞬間ばかりです。そして、令和になってからできたオートバイ神社が実家の近くにあると知り、取材させていただきました。県内外多くのライダーさんを取材させていただいた中で、市外の方は浜松市がオートバイ生誕の地ということを知らない方が多かったです。しかし、この大歳神社をSNSで知って来たことで、交通安全を意識し、浜松がオートバイ生誕の地だと知り、その思いを乗せながら走り出す姿がありました。ライダーさんの思い、そしてそれを受け入れる石津さんの思いを感じていただきたいです。また、いろいろなメーカー、大きさ、ピストンの数などの違いで、エンジン音や操作音が全く違うことにも面白みを感じたので、そんなところにも注目しながら聴いていただきたいです。

【制作後記】
神主の石津さんが所有する大型バイクの後ろに乗せていただいてバイク音を録音しました。その時に、普通のセーターにジーンズという服装だったのですが、その上にさらにプロテクター(急停止した時に身を守るもの)がついているジャケットや膝あてなど、乗るまでに身に着けるものが多かったのが印象的です。「服装、それを身に着けた位置ひとつとっても、自分にしっくりくるまで調整を怠らない。オートバイはめんどくさいところも多いけど、それ以上に乗っている時の楽しさが上回る!かっこいい!」とおっしゃっていた石津さん。優しいお人柄の奥に、オートバイへの熱い思いを感じました。

おばあちゃんの肉玉そば

2022年4月11日~2022年4月17日放送 
中国放送 RCCフロンティア 馬越 弘明

【番組概要】
広島市民のソウルフード「お好み焼き」。
57年前からお好み焼き店を営む梶山敏子さん(80)は、スタンダードなお好み焼き・肉玉そばを500円で提供しています。有名店では1000円近くするお店もある中で、それは広島市民でも驚きの価格。
敏子さんは、35年以上その値段を守り続けています。しかし、原材料費の高騰が襲いました。それでも値上げをしたくないという敏子さん。なぜ敏子さんは500円の値段を守り続けるのか?
そして、「値上げをするくらいならお店をやめようかな…」そんな敏子さんの一言を聞いた常連さんがとった行動とは?8人が入ればいっぱいになる、小さなお店の物語です。

【制作意図】
「この時代、500円で肉玉そばが食べられるお店があるの!?」
そんな驚きが、取材をスタートさせるキッカケでした。取材をしてみると、店主がその値段にこだわる理由には、広島とは切っても切れない背景がありました。そして、そんな店主の思いを共有した常連さんの行動力がありました。戦後を生き抜いた、1人の広島市民の思いをお伝えできればと思い、制作しました。

【制作後記】
広島には本当にたくさんのお好み焼き店があります。「麺がパリパリ」「キャベツが太め」「卵がトロトロ」など、それぞれのお店に特徴があります。そんな中、小さなお好み焼き店で提供される500円のお好み焼きに、こんな物語があったなんて…。原爆の被害にあった広島では、1人1人の人生に壮絶なドラマが詰まっている。改めてそんなことを感じました。

2022年3月29日 (火)

「東京ジャーミィ」多文化共生社会・東京のイスラム教寺院

2022年4月4日~2022年4月10日放送 
文化放送 コンテンツディベロップメント部 髙橋隆真

【番組概要】
日本には現在約20万人ものイスラム教徒がいると推定されており、そのうち約3万人が東京に住んでいると言われています。全国で110箇所以上あるイスラム教寺院(モスク)のうち、最大級のものが、東京都の渋谷区にある『東京ジャーミィ』です。1938年に設立された東京の伝統あるモスクです。本作では、イスラム教の集団礼拝の日である金曜日にお邪魔し、「東京ジャーミィ」の広報担当の日本人イスラム教徒の下山さんや、礼拝に来ていた人たちへのインタビューをイスラム教の礼拝の神聖な[音]と共にお届けします。

【制作意図】
私は、東京出身ではなく、大学進学を機に上京しました。そんな私が、東京で過ごしている中で強く感じていたのは、「沢山の文化・宗教・国籍の人々が共生する都市」であるということでした。東京にはイスラム教寺院だけでなく、ユダヤ教の教会もありますし、タイ仏教の寺院だってあります。もちろん神社もたくさん。東京で生まれた日本人にとって、東京が“故郷”であれば、私を含め様々なバックグラウンドを持った人たちにとっても“第二の故郷”であるはずです。ですが、このような人たちに偏見を持っている人も多いのが現実です。それはやはり、メディアの責任もあると思います。「起こった出来事」を伝えることは我々の役割ではありますが、それだけでなく「日常」を伝える時間があっても良いかなと思います。まずは、イスラム教寺院の日常の音を聴いてもらって、興味を持っていただければ、少しでも優しい気持ちになっていただければと思います。

【制作後記】
これだけ多くの民族・言語・文化を持った人たちが集まるところは初めてで、驚きました。礼拝に来た方だけでなく、見学に来た大学生、結婚相手を探しに来た人、いろんな人が集まって、「アッサラーム アライクム」「ワライクム サラーム」(アラビア語/イスラム教徒共通の挨拶)と、コミュニケーションを交わす光景は非常に印象的でした。音声だけでは伝えきれませんでしたが、「東京ジャーミィ」はトルコ風の建築で見た目も非常に美しいです。「東京ジャーミィ」広報担当の下山さんをはじめ、ここにいる方々は親切に接してくれますので、是非行ってみてください。


市電の呼吸に全集中

2022年3月28日~2022年4月3日放送 
熊本放送 ラジオ制作部 中村レン

【番組概要】
熊本市電が登場したのは98年前。地元の私たちには欠かせない交通手段のひとつです。
コロナで外出自粛になるまでは、この市電に年間300日以上乗ってきたという中村弘之さん(85)は、毎回独自の「乗車メモ」を取り、運転士の名前とともにその運転技術やアナウンスなど「勤務評定」的なものをつけています。この中村さんがある日出会ったのが「いつ止まったか分からないくらいのブレーキ技術」をもった江崎運転士。他にも「カーブの帝王」や「新幹線並みのスムーズな発車」など職人肌の運転士が揃っています。およそ100人いる運転士は、乗客の安全と快適さのために日々技術を磨いていました。日頃気づくことがない「当たり前の安全」に力を尽くす運転士。100年近い歴史のなかで脈々と受け継がれている運転士の誇りが垣間見えます。

【制作意図】
きっかけは地元新聞の読者の投稿欄。番組にもご出演いただいた中村弘之さんの「びっくりするほどブレーキがうまい運転士がいる」というものでした。市電に乗るお客さんの事情は様々。お年寄りはもちろん、その日具合が悪い人もいます。足が悪くても席がなく立っている人もいます。そんな人たちのために可能な限り優しい運転をしている運転士と、そこに気づいた乗客。見えない交流が素敵だなと思いました。中村さんの投稿が載った後、別の高齢女性からも「その運転士は私も知っています。本当に静かに止まるのです。」というメッセージが新聞に掲載されました。これはホンモノだ!と思って取材しました。


【制作後記】
市電に慣れ親しんでいる熊本市民にとっては、空気ブレーキの音にはなじみがあり、情景がありありと浮かぶのですが、市電が走っていない地域に暮らす人たちにどこまで想像してもらえるだろう?という点に悩みました。乗客の命を預かっている運転士が目指しているのは「安全であたりまえ」を超える快適さ。それが一か所ごとの停留所や信号での優しい停車や揺れのないカーブ、それに静かな加速につながっています。取材後、すっかり市電のファンになった私は、休日など日に3~4回乗車し、そのたびに運転士の名札を確認するようになってしまいました(笑)

 

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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