2022年8月30日 (火)

ビートを刻む風呂桶

2022年8月8日~2022年8月14日放送 
東海ラジオ放送 制作局 報道・スポーツ制作部 柴田 健

【番組概要】
岐阜県中津川市付知町にある早川木材株式会社は、建築用木材の加工、檜風呂の浴槽や風呂桶の製作を行っています。その早川木材の専務取締役・小池英仁さんは、風呂桶製作の技術を応用して、ドラムを作りはじめました。地元の木材を使い、早川さん自身の手によって伝統的な技法で作られる「風呂桶のドラム」。そのドラムがどのように生まれ、どのように作られ、どのように受け入れられているのかを追いかけました。

【制作意図】
桶の製法を全く新しい別のものに応用するという斬新な発想。その一方で、守り続ける職人としての木へのこだわりと伝統的な技術。「風呂桶のドラム」を通じて、「新しさ」と「昔ながら」の共存のあり方のひとつを示せればと思っています。そして、こういった情熱のこもったものが、しっかりとユーザーに届いていることをはっきりと描きたいと思い、制作しました。

【制作後記】
小池さんの「技術」と「発想」は、我々の日常でも必要なことです。人の心を動かすものにはその両方が備わっているのだと、改めて認識させられました。また、日常で親しむ音楽を支える楽器、そのひとつひとつにもドラマがあり、職人のこだわりがあり、魂が込められていることも、改めて教えてもらいました。それは、自分の身の回りにある何気ない物も例外ではありません。そういった部分への想像をふくらませることができる人間でありたいと思いました。

声を持たないコウノトリ 日本の空に戻る

2022年8月1日~2022年8月7日放送 
ラジオ関西 報道制作部 高塚恵子

【番組概要】
国の特別天然記念物、コウノトリ。羽を広げると2メートル以上にもなる大きな、そして白と黒の美しい鳥です。一度は日本の空から消えましたが、野生復帰への取り組みなどが行われ、その数も増えてきています。そんなコウノトリの鳴き声、聞いたことありますか?実は鳴かない、というより鳴けない鳥です。。コミュニケーションはくちばしを鳴らすクラッタリングで。鳴き声があるのは、卵から孵化して巣立ちまでのわずかな期間だけです。コウノトリがどんな鳥なのか、人間と共生するには何が必要か、関係者の言葉をヒナの声とともにお送りします。

【制作意図】
コウノトリは兵庫県の県鳥。とはいえ、その姿は豊岡や生息地域以外ではなかなか目にすることはありません。どんな鳴き声なんだろう?調べてみると実は鳴けない、鳴くのはヒナの間のわずかな期間だけ。そんな貴重なヒナの声を聞いてみたいというところから企画しました。

【制作後記】
コウノトリは警戒心が強い鳥なので、ヒナの声を聞きたい、と思っても果たしてうまく録れるのか。飼育施設でタイミングよくヒナが孵化してくれるのか。最初は不安でいっぱいでした。県立コウノトリの郷公園の船越稔さんたちの協力の下、レコーダーを飼育施設の巣の近く放置、数時間後レコーダーを回収し、音を確認しました。でも聞いたことがないので、どの音がヒナの声なのかわかりません。「え?これ?馬?怪獣?」と思った声(音)がヒナの声。最初は驚きましたが、聞いているうちに親近感がわき、かわいく思えるようになりました。一度は「絶滅」したコウノトリですが、少しずつその数は増えつつあります。かつてのように優雅に飛ぶ姿を、各地で見られる日が来てほしいと、願うとともに、私たちにできることは何か考え、できることからやっていきたいと感じました。

コーヒーを表舞台に!~高知生まれの“はちきん珈琲”

2022年7月25日~2022年7月31日放送 
高知放送 クロスメディア推進局ラジオ戦略部 梅木 敦裕

【番組概要】
今年の3月、初めて高知県産のコーヒー豆「はちきん珈琲」が収穫されました。栽培に成功したのは高知市の喫茶店「コーヒー研究所・M」のオーナー 多和昌子さん。外国からの輸入が多く国内での栽培が難しいとされるコーヒー豆をなぜ高知で栽培しようとしたのか。それは、「コーヒーを表舞台に出したい」という多和さんのコーヒーに対する熱い思いがありました。高知生まれの「はちきん珈琲」が誕生するまでの経緯や苦労、そして「高知でコーヒー豆を育てたい」という熱い思いが乗った多和さんの言葉を皆さんにお届けします。

【制作意図】
外国からの輸入が圧倒的に多く、気候的な問題などもあり国内での栽培は難しいとされるコーヒー豆。そんなコーヒー豆を「高知で育てたい!」と栽培に挑み、長い期間をかけてお客さんに届けることができた多和さんの物語を多くの人に伝えたいと思い取材しました。またコーヒー豆の栽培に挑んだ際、周りからの冷ややかな声や失敗などを数多く経験した多和さん。それでも「高知でコーヒー豆を育てたい」という熱意が溢れる印象的な言葉はコーヒー作りに限らず、何かに挑む人たちの糧になると思い、今回取り上げさせていただきました。

【制作後記】
取材の時に私も「はちきん珈琲」を頂きました。私は普段、職場であまりメーカーにもこだわらずに缶コーヒーを飲んでおり、「そんな私にコーヒーの味の違いが分かるのかな…」と思いながら頂いたのですが、飲んだ瞬間、深いコクと不思議な爽やかさを口の中で感じ、思わず「おおっ!」と唸ってしまいました。普段、自身がオーナーを務める喫茶店でお客さんの好みを聞いて商品を出すほど、コーヒーに対しての知識と情熱がある多和さん。それだからこそ作ることができた「はちきん珈琲」であるとその一杯で感じることができました。また、コーヒー豆を栽培するハウスにも伺ったのですが、多和さんのご厚意で私もコーヒー豆の種をまき、順調にいけば2か月程で芽が出るということなので「早く芽が出ないかな」と楽しみにしております。

2022年7月 8日 (金)

おらが湊鐡道夫婦(めおと)デュオ

2022年7月18日~2022年7月24日放送 
茨城放送 編成事業部 菊地真衣

【番組概要】
茨城県ひたちなか市を走る第3セクターの『ひたちなか海浜鉄道』。かつては湊鐡道としてこの地で歴史を重ねてきました。勝田駅から阿字ヶ浦駅までの11駅14.3キロを結ぶこの路線は、観光客や地域の人たちの足として親しまれています。『私たちの湊線を守りたい』と立ち上がり、15年、開業当時の面影が色濃く残る那珂湊駅の待合室のベンチで、毎週末ギターを手に歌い続けるみなと源太さんは、妻のゆうこさんと共に息の合った演奏とハーモニーで駅利用客を和ませています。上下列車が来るまでのつかの間ステージで披露されたのは、源太さんの幼少期の湊線での思い出を歌ったオリジナルソング『季節の風』、中島みゆきの『ホームにて』、そして、阿字ヶ浦から海浜公園までの延伸の願いを込めて作られた『未来の街まで』の3曲です。廃線危機から鉄道を支え、行きかう駅の利用客を歌声で迎え、歌声で送りだす、そんなあたたかな地元の音をお届けします。

【制作意図】
春夏秋冬多くの観光客が訪れるひたちなか市。観光する人たちにとって欠かせない存在でもあるひたちなか海浜鉄道は、『ディーゼルカー1両編成』、『車両がホームにやってくるのは30分に1本』…といわゆる典型的なローカル線。昨年には国から延伸許可が下りるなど時代に逆行し勢いのある路線と言えます。しかし、1913年の開業以来ずっと順風満帆だったわけではありません。モータリゼーションの流れなどを受け、経営努力を行うも一時は廃線の危機に。さらに、その後も東日本大震災や新型コロナウイルスなど、さまざまな局面を乗り越えてきました。現在のひたちなか海浜鉄道があるのは、『どうにかして盛り上げたい、守りたい』と、それぞれにできることを探しながら熱い想いを注いできた地元の人たちの存在無くして語れないと感じ、今回の企画を考えました。みなと源太さんとゆうこさんの演奏は、15年同じ場所で歌い続けていることで、その『音』自体が地元の名物となっています。ちなみに3曲目の歌詞にある『いやどうも』『かえってどうも』は茨城県内で交わされる挨拶の言葉です。まだまだ続くコロナ禍の中、ラジオを通して届けることで、その音にいつか会いに来てほしい、という願いも込めて制作しました。

【制作後記】
私がみなと源太さんと初めてお会いしたのは1年前。私自身車ユーザーのため鉄道を利用する機会が少なく、初めて那珂湊駅での演奏を目の当たりにしたときはあまりのあたたかさに心が震えたのを覚えています。また、昨年も録音風物誌の制作を担当しましたが、もし今年も機会があるのなら、絶対みなと源太さん夫婦を取り上げたいと考え、企画を温めていました。コロナ禍で演奏することもままならなかったときもありましたが、今年のゴールデンウィークには蔓延防止等重点措置も解除され、県内外からひたち海浜公園のネモフィラを目当てに、多くの観光客が訪れ、源太さん自身も演奏にも力が入っているようでした。収録を行ったのがまさにこのGW期間中で、待合室にも老若男女多くの人がおりました。ひとたび演奏が始まると、スマホに目を落としていた人は顔をあげ、ヘッドホンをしているひとは外して聴き入る様子も見られました。素材編集に関しては、利用客の話し声、切符売り場の小銭の音など、景色がわかるように録音を行いました。また、このあたたかい風景と、この路線が未来へ続いてほしいという思いを、ステレオ収音マイクで録った走り出す列車の音を最後に使用することで表現しました。



新潟に笑顔の花を!華やぎちんどん隊

2022年7月11日~2022年7月17日放送 
新潟放送 ラジオ放送部(BSNウェーブ)吉田亜弥

【番組概要】
新潟にはパフォーマンス集団「華やぎちんどん隊」がいます。ちんどん隊というと、派手な格好と楽器を鳴らし、街を練り歩くイメージがありますが、この華やぎちんどん隊は、さらにパフォーマンスまで出来るちんどん隊なのです。なぜかというと、お芝居の中から結成されたので、皆さんが役者経験の持ち主。コロナ禍で落ち込んだ気持ちを明るくしてくれる「華やぎちんどん隊」を取材しました。

【制作意図】
華やぎちんどん隊のメンバーが奏でる音楽、パフォーマンス、そしてみなさんの笑顔をラジオを通じてお伝えたいと思い制作しました。結成秘話や華やぎちんどん隊の特徴、そしてメンバーの思いなどを演奏にのせてお送りしています。今となっては懐かしい存在である「ちんどん隊」が、さらに現代風になった新潟の華やぎちんどん隊の活動で笑顔の花を咲かせたいという思いを取材しました。

【制作後記】
華やぎちんどん隊のメンバーは役者経験がある方々なので、演奏のほかにミニお芝居が始まったり、ダンスが始まったりと本当にパフォーマンス集団なんだと感じました。パフォーマンスを見ていると、子供から大人までみんなで楽しむことができ、自然と笑顔になるので、これからもっともっと多くの人の笑顔を作っていって欲しいと思いました。


2022年7月 1日 (金)

山は自然のミュージアム

2022年7月4日~2022年7月10日放送 
北陸放送 ラジオ開発部 中川留美

【番組概要】
石川県白山市尾添地区は白山のふもとにある高原で周囲にブナ原生林が広がっています。地元の旅館女将、北村祐子さんは自然を楽しむノルディックウォーキングを企画し、自然の生き物や地域の歴史を話をしながら山を案内しています。ブナ原生林に入ると、山から清水が流れ、鳥たちの鳴き合う声が聞こえてきます。ブナの木漏れ日の中はまるで音楽ホールのような感じです。ノルディックウォーキングに参加する人たちも木の香りをかぎ、谷間から吹く風に心地よさを感じます。白山に祀られた仏像は地域に住む人たちが大切に守ってきたという話もありました。鳥たちの鳴き声とノルディックウォーキングで自然を楽しむ人たちの様子を取材しました。

【制作意図】
日本三名山のひとつ、霊峰白山のふもとにある白山市尾添地区。ブナ原生林や高山で見られるような草花、野生の生き物たちが生きている場所であり、地元に住む人々が白山に祀られていた仏像などを守ってきた歴史も残るところです。山の中に入ると、何十種類もの鳥たちの鳴き声が聞こえてきます。四季を通して何度も訪れたいと思えるミュージアムにいるような感覚になり、鳥たちのさえずる音、木漏れ日の美しさ、木の香り、土の感触、五感で感じられる山の素晴らしさを表現したいと思いました。

【制作後記】
取材を通して、鳥たちのさえずりに驚きました。山の中には何十種類もの鳥たちが鳴き合っていて、何時間でも聞いていられるような心地よさがありました。ブナの落ち葉でフカフカになっている土を歩き、木々の香りをかぎ、普段の生活では感じられない時間を過ごすことができました。

福島県初の女性養蜂家 奮闘の日々

2022年6月27日~2022年7月3日放送 
ラジオ福島 編成局放送部 嘉数夕稀子

【番組概要】
自然豊かな郡山市田村町の山間に、県内で初めて女性の養蜂家として認定された方が営む養蜂場があります。義理の父親が高齢の為に養蜂場を閉じようとしていました。そこで彼女は周りからの後押しもあり後を継ごうと決意します。しかし、、実際は力仕事が多く女性には大変な作業ばかりでした。滅入る気持ちを支えてくれたのは、懸命に働く蜜蜂たちの姿でした。そんな蜜蜂に愛情を注ぎ、日々の作業を丁寧に欠かさず続けます。養蜂の仕事の中で最も重要な採蜜の日。巣枠に蜂蜜がたくさんたまっていていました。努力が報われた瞬間でした。養蜂を続けていくうちに、自分なりの蜜蜂への向き合い方を見出だす彼女の姿を音を通してお伝えします。

【制作意図】
以前電話で取材をした養蜂業の女性に、直接会ってもっとお話を伺いたいと思いました。その時にお話しされていた、女性だからこその悩みや苦労・喜びなどを作業音とともに伝えたいと考え、制作しました。

【制作後記】
日の出時刻早朝4時からの作業に同行しました。取材中に2回も蜜蜂に刺されて、はじめて感じる痛みに耐えながら収録しました。収録後、採れたての蜂蜜を食べると今までの苦労が吹き飛びました。このために養蜂をやっているんだという言葉を身をもって感じました。

2022年6月16日 (木)

喝采 400年の和歌祭 人の心をつなぎ伝統を受け継ぐ                  

2022年6月20日~2022年6月27日放送 
和歌山放送 報道制作部 寺門秀介

【番組概要】
紀州徳川家の栄華を現代に伝える、和歌山市の紀州東照宮の例大祭「和歌祭(わかまつり)」は、ことし(2022年)5月に400年の節目を迎えた。徳川家康のみたまを乗せた重さ1トンの大神輿を男衆が激しく担ぎ、華やかな衣装の武者や技芸集団が和歌山城の周囲を練り歩く渡御行列は、和歌山市民の楽しみのひとつ。とくにことしは奉賛者が新しい祭礼具を奉納したり、和歌浦湾では60年ぶりに花火が打ち上がったほか、当日は特別ゲストで「暴れん坊将軍」の徳川吉宗公を演じた松平健さんもお国入りするなど最高潮を迎え、5万人が喝采を送った。和歌祭の歴史は、紀州徳川家が民衆とともに作り上げた400年であり、作家の司馬遼太郎らが指摘する「身分の上下にこだわらぬ大らかな人間性を持つ紀州人の気質」に由来するものとも考えられ、紀州徳川家19代当主も市民に「共に祭を盛り上げよう」と呼びかけたことからもうかがえる。市民がひとつになって祝う400年の歴史と伝統を録音コラージュで振り返る。

【制作意図】
和歌山県をはじめ地方では若者の地元流出にが続き、経済活動や産業の維持はもとより、地域の文化である「まつり」の担い手も不足している。直近では新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされ、地域の活気がより失われつつある状況だ。今回取り上げた和歌祭もコロナ禍の影響で規模の縮小を余儀なくされたまつりの一つ。コロナ禍から3年目、大型連休を前にまん延防止等重点措置も解除され、これまで開催出来なかった祭やイベントが全国で徐々に再開する動きが相次ぎ、和歌祭も400年のことし、ようやく大々的に開催出来るようになり、地元の期待が高まり歓喜に包まれた。一方で敬虔な祭の参加者ほど喜びをかみしめストイックに準備をして臨む。武士と町人が祭の催行という共通の目的に向け身分の垣根を取り払って協力し、地域の誇りと徳川の栄華を発信してきた400年の歴史を感じてもらいたい。

【制作後記】
和歌祭当日、県の内外からおよそ5万人が和歌山市を訪れ、まさに人いきれ。新型コロナ禍による制限から解放されたかのような喜びの渦に包まれた。人混みを掻き分けて録音機を手に祭の行列を追いかけたのは本当に久しぶりで、取材者の立場を何度も忘れそうになった。制作者は東京都足立区出身で、和歌祭をふるさと自慢に持つ和歌山市民を羨ましく思うとともに、これからも地域に伝わる歴史や文化の発信を続けていきたい。

2022年6月 7日 (火)

「命を持つ瞬間(とき) ~500年の歴史は海を越えて~」

2022年6月13日~2022年6月19日放送 
長崎放送 報道制作部 戸島夢子

【番組概要】
長崎県大村市は、長崎県の中央に位置し、多良の山々と大村湾に囲まれた自然豊かな市で、国指定天然記念物であるオオムラザクラや花菖蒲が有名なことから花の町としても知られていて、空港があることから長崎の玄関口ともいわれています。そんな大村にある松原地区は、人口およそ2千人の小さな町です。松原地区には、長崎県の伝統的工芸品に指定されている「松原包丁」があります。それは、壇ノ浦の戦いからさかのぼり、500年前から地域の人々のために農業器具や包丁を作る技術が職人たちによって受け継がれており、松原の大きな産業となっていました。しかし、全盛期では17軒あった鍛冶屋も3軒のみとなりました。そこから、松原包丁の歴史を繋ぐため田中鎌工業4代目、田中勝人さん(59歳)の挑戦は始まります。その熱意は海を越え今では海外にも…職人の包丁作りにかける思い、松原包丁の新たな歴史をお送りします。

【制作意図】
伝統を受け継ぎ刃物づくりを何百年も続ける鍛冶屋は日本でも珍しくないと思います。田中さんは、その伝統を受け継ぎながらも今の時代に受け入れられる形を追求し、新しいことに挑戦しています。米軍基地が近いこともあり、海外のお客様が鍛冶屋に直接訪れます。日本の伝統と海外需要。小さな町ではありますが、松原地区から世界へという大きな挑戦を伝えたいと思い取材しました。そして、打つ音、削る音どれにしても一定でなく不規則なリズムを刻みます。一つ一つ手作りで同じものが一つとしてないことを音で感じてほしいです。

【制作後記】
今回取材をさせていただいた、田中鎌工業4代目・田中勝人さんは、私の中の職人というイメージを変えてしまうほど、とても穏やかで人の心の中に入るのがうまく、いい意味で職人らしくない職人だと感じました。田中さんの人柄から、お客さんも安心してリピート購入できる、メンテナンスに来る理由だと思います。現在、勝人さんの息子・裕紀さんも5代目として修業されています。この先も何百年と続く歴史として松原包丁が、国内だけでなく世界で愛されることを願っています。



人と道具を繋ぐモノづくり

2022年6月6日~2022年6月12日放送 
西日本放送 ラジオセンター 白井美由紀

【番組概要】
香川県三豊市で、農道具の「柄」を専門に製作する「大西柄物製作所」大西正文さん美佐子さん夫妻がこだわりの商品を作り続けています。こだわりは、国産材のカシとシイの木にこだわっています。自宅工房の倉庫で、気を1年半かけて乾燥させ、蒸気でねじれやゆがみを取り、そこから加工。加工は機械化されていますが、すべての工程は正文さんが行います。道具を長く大切に使ってほしいと、古い農道具も傷んだ柄の部分を新しくしてくれるので、発注は全国からくるそうです。正文さんのお父さんの代から60年以上続いています。最近では、農道具のほかに、うどんの生地を薄く均等に伸ばすために欠かせない「麺棒」や、「太鼓のバチ」なども製作。特に、「麺棒」は硬くてゆがみが無いので使いやすいと人気。自宅の一部にこの麺棒を使ってうどん打ちを体験できる「うどん体験教室」も作り、妻の美佐子さんが教えてくれます。農道具の「柄」ってそんなに意識したことが無い方も多いかもしれませんが、実は、道具の「アタマ」と、使う「人」を繋ぐ大切なパーツ。その手触りによって、使い心地も変わってきます。だからこそ、こだわりにこだわりを重ねて、丁寧に作っているそうです。

【制作意図】
大西正文さんのこだわりと、美佐子さんの明るさで、この「柄」が道具と人をつなぐだけではなく、人と人をつなぐ存在になっているなぁと感じ、今のこの時代だからこそ、こんなご夫婦、こんな道具が、必要なんじゃないかと、番組で取り上げさせていただきました。

【制作後記】
実は、取材時に、私もうどん打ちをしました。自分で打ったうどんの美味しいコト!!(ちょっと見た目はイマイチでしたが・・・)取材のときの美佐子さんからのおもてなしと、正文さんの温かい言葉。息子さんが写真を撮ってくれたり、本当にご家族のきずなを感じました。柄物の製作は、正文さんの代で終わりだそうです。正直、儲けにつながる仕事ではなく、在庫も多く抱えなくてはならないため、お子さんたちには継がせられないとおっしゃいます。ただ、正文さんの丁寧な仕事ぶりは、きっと受け継がれていくと思います。ご家族のあたたかいおもてなしの心は、確実に受け継がれます。そして、特筆すべきは、ご夫婦の仲の良いコト!!!美佐子さんが看護学生だった時に配属されていた病院に偶然、1週間だけ、正文さんが入院されたことから、二人は出会い、ご結婚されたそうで、それから50年・・・。なれそめも楽しそうにお話してくれました♪取材の後、大西さんの作った麺棒を使っているうどん屋さんで、お昼を食べました。香川県の高瀬町にある小野うどんさんです。ここも、ご夫婦が仲良かったので、何か、そういう道具がもたらす「縁結び」的な要素も感じました。
※放送内のうどん屋さんの音風景は、小野うどんさんです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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