喝采 400年の和歌祭 人の心をつなぎ伝統を受け継ぐ
2022年6月20日~2022年6月27日放送
和歌山放送 報道制作部 寺門秀介
【番組概要】
紀州徳川家の栄華を現代に伝える、和歌山市の紀州東照宮の例大祭「和歌祭(わかまつり)」は、ことし(2022年)5月に400年の節目を迎えた。徳川家康のみたまを乗せた重さ1トンの大神輿を男衆が激しく担ぎ、華やかな衣装の武者や技芸集団が和歌山城の周囲を練り歩く渡御行列は、和歌山市民の楽しみのひとつ。とくにことしは奉賛者が新しい祭礼具を奉納したり、和歌浦湾では60年ぶりに花火が打ち上がったほか、当日は特別ゲストで「暴れん坊将軍」の徳川吉宗公を演じた松平健さんもお国入りするなど最高潮を迎え、5万人が喝采を送った。和歌祭の歴史は、紀州徳川家が民衆とともに作り上げた400年であり、作家の司馬遼太郎らが指摘する「身分の上下にこだわらぬ大らかな人間性を持つ紀州人の気質」に由来するものとも考えられ、紀州徳川家19代当主も市民に「共に祭を盛り上げよう」と呼びかけたことからもうかがえる。市民がひとつになって祝う400年の歴史と伝統を録音コラージュで振り返る。
【制作意図】
和歌山県をはじめ地方では若者の地元流出にが続き、経済活動や産業の維持はもとより、地域の文化である「まつり」の担い手も不足している。直近では新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされ、地域の活気がより失われつつある状況だ。今回取り上げた和歌祭もコロナ禍の影響で規模の縮小を余儀なくされたまつりの一つ。コロナ禍から3年目、大型連休を前にまん延防止等重点措置も解除され、これまで開催出来なかった祭やイベントが全国で徐々に再開する動きが相次ぎ、和歌祭も400年のことし、ようやく大々的に開催出来るようになり、地元の期待が高まり歓喜に包まれた。一方で敬虔な祭の参加者ほど喜びをかみしめストイックに準備をして臨む。武士と町人が祭の催行という共通の目的に向け身分の垣根を取り払って協力し、地域の誇りと徳川の栄華を発信してきた400年の歴史を感じてもらいたい。
【制作後記】
和歌祭当日、県の内外からおよそ5万人が和歌山市を訪れ、まさに人いきれ。新型コロナ禍による制限から解放されたかのような喜びの渦に包まれた。人混みを掻き分けて録音機を手に祭の行列を追いかけたのは本当に久しぶりで、取材者の立場を何度も忘れそうになった。制作者は東京都足立区出身で、和歌祭をふるさと自慢に持つ和歌山市民を羨ましく思うとともに、これからも地域に伝わる歴史や文化の発信を続けていきたい。
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