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2017年7月

2017年7月28日 (金)

木が生み出す音色を届けたい ~半田から響け!ウッドスピーカー~

2017年7月31日~2017年8月6日放送 
東海ラジオ放送 制作局制作部 山崎聡子

【番組概要】
愛知県半田市に住む原田佳文さんは、6年前、45歳の時に、23年間勤めた会社を辞め、木工作家の道へと進みました。なかでも力を入れて製作しているのがウッドスピーカー。昔ながらの技術を用い、1つ1つ手作業で作られる木のスピーカーが生み出す音色が、今、多くの人を惹きつけています。さらに、今はもう製作されていない貴重なウッドスピーカーの再現にも成功しました。原田さんのウッドスピーカーにかける想い、そして、半田から広がりつつあるウッドスピーカーの音の魅力をお届けします。

【制作意図】
原田さんの作るウッドスピーカーから音楽を流すと、その音色に引き寄せられるように、次々と人が足を止めていきます。ウッドスピーカーが持つそれほどの音の魅力、原田さんの人生を変えたその音の魅力をなんとかしてラジオで伝えたいと思い、制作しました。また、併せて、原田さんの職人としての情熱や、地元の半田とのつながり、本物の音に触れる大切さについても織り込みました。ウッドスピーカーから生み出される、やわらかく、どこか懐かしい音色の魅力を感じていただければ幸いです。

【制作後記】
初めてiPhone用のウッドスピーカーの音を聴いた時、、線もなにもつながっていないのに、木の力だけで音がここまで変わるのか!と驚きました。「音楽は身構えて聴くものではない。心地いい音を、本物の音を、日常の中で何気なく楽しめるようなものが作れれば・・・」という原田さんの想いをまさに具現化したものだと思います。ちなみに「耳触りのいい音」という表現は俗語表現ではありますが、インタビュー中に何度も出てきたため、原田さんの目指す音を表す象徴的な言葉として、あえてそのまま放送させていただきました。

2017年7月20日 (木)

営みを守る軍手

2017年7月24日~2017年7月30日放送 
東北放送 ラジオ局制作部 阿部航介

【番組概要】
宮城県の北東部、三陸の海に面した石巻市。その内陸部の飯野川地区に、軍手専門の製造工場「石巻軍手興業」があります。軍手を作っているのは、72歳の水越佳次さん。軍手を作り始めて40年になります。ひとりで軍手を作り続ける水越さん。実際に軍手を使っている方からの声を聞くのが一番嬉しいと語ります。工場の機械音とともに、水越さんの軍手作りに対する思い、そして石巻に暮らす人々と軍手がどう関わりを持っているかについてお伝えします。


【制作意図】
宮城県内で軍手を製造している場所があることに驚き、興味を持ちました。取材に伺って工場の中を拝見すると、黒光りする軍手編み機が全部で10台近くあり、それぞれがそれぞれの動き・音で軍手を編んでいました。そして、軍手編み機はもちろん、照明や換気扇、壁に至るまでもが、白いわたをうっすらと被っていました。その光景と音は見たことも聞いたこともなく、水越さんの柔らかな人柄と一緒にお伝えできたらと思いました。
地元・石巻には、工場や水産加工場で石巻軍手興業の軍手を使う方が多く存在します。水越さんの軍手が、地元石巻の働き手を支えているということ、そして水越さんがどんなことを考えて軍手を作っているかということが伝わればと思います。

【制作後記】
仕事をしながらよくお聴きになるというラジオ番組の話をしたり、地元の石巻の話をしたり、旬の食べ物の話をしたり、趣味のパチンコの話をしたり…取材の本筋以外のこともよくお話しさせていただきました。取材を通じて水越さんの温かい人間味に触れ、水越さんと石巻軍手興業がとても好きになり、番組としてお伝えできることが誇らしい気持ちになりました。
取材の度に山のように頂いた軍手は、今後大事に使っていこうと思っています。

 

2017年7月11日 (火)

いつまでも回り続けろ!神大独楽

2017年7月17日~2017年7月23日放送 
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 柳田紗緒里

【番組概要】
宮崎県宮崎市佐土原町。歴史と文化が多く残る町です。
ここに江戸時代から伝わるのが「神楽独楽」。「ホー」という独特の音を響かせて回ります。この独楽を5歳の頃からずっと作り続けているのが佐土原に住む兵頭正一さん(80)。佐土原にたった一人の神代独楽作り手です。時代の変化とともに神代独楽で遊ぶ子どもは減り、現在作り手もおりません。ですが、兵頭さんは神代独楽を作り続け、神代独楽で遊ぶ楽しみを保存会と一緒になって子ども達に伝えています。これからの未来も子ども達の手によって神代独楽が回り続けて欲しいという願いを込めながら・・・。

【制作意図】
「神代独楽」は佐土原の子ども達にとって身近な遊びでした。それが時代の変化と共に神代独楽で遊ぶ子ども、そして作り手が減って今では兵頭正一さんがただ一人神代独楽を作り続けています。兵頭さんはじめ保存会のメンバーは子ども達に神代独楽を広め、残していく為の活動を精力的に続けています。当たり前だった事が時を経ると当たり前でなくなる。でも昔から伝わる物というのは次の世代、そしてまたその次の世代にも受け継いで語り継ぐ事で新たな知識や発見になる事を伝えたいと思いました。

【制作後記】
神代独楽は音が出るのも特徴ですが、その形もまた独特です。その1個を手作業で作る・・・作ってみないと分からないという事で神代独楽作りを体験してみました。完成形しか見る事がなく、何でも簡単に作れてしまうこの時代ですが、「手作り」の良さ、作り手の苦労、そして何よりも「温かみ」を改めて感じました。そう思わせてくれたのは作り手である兵頭さんの人柄が一番大きかったと思います。

故郷(ふるさと)を描く 太鼓の音色

2017年7月10日~2017年7月16日放送 
ラジオ福島 編成局放送制作センター 森本庸平

【番組概要】
東京電力福島第一原子力発電所の事故による避難指示が、今年3月に解除された福島県川俣町山木屋地区。この地区には、15年あまり前から活動する創作和太鼓「山木屋太鼓」があります。自然豊かな故郷の風景を描いた曲を、和太鼓の演奏で表現してきました。メンバーの中に、この春、解除に合わせていち早く山木屋に戻った姉妹がいます。6年ぶりに故郷で暮らしながら、思いを新たに太鼓と向き合う2人の姿をお伝えします。

【制作意図】
東日本大震災と原発事故から6年4か月。今年春の避難指示解除で、当初の3割まで避難区域は縮小しました。しかし、住民の帰還はなかなか進んでおらず、川俣町山木屋地区もその一つです。そんな中、「山木屋太鼓」は、小学生から社会人まで若いメンバーが中心となって、ふるさとへの思いを、太鼓を通して、国内外で発信してきました。この春の解除を経て、再スタートを切った山木屋で練習に取り組むメンバーの姿を通して、今の福島の姿を全国に伝えられたらと思いました。

【制作後記】
和太鼓の演奏を間近で見るのは初めてでしたが、まずその迫力に圧倒されました。山木屋での練習はまだ限られていますが、仕事や学校終わりに集まったメンバーの表情は、リラックスして清々しい位に気持ちよさそうで、演奏の一体感も特別でした。移動距離も長く大変な人もいますが、故郷での時間を大切に過ごしているようでした。山木屋に帰った人、帰ろうとしている人、帰らない人。事情は違っても、故郷を思う気持ちは変わらない。それぞれの思いがにじみ出た、山木屋太鼓の魅力に一気に引き込まれました。

2017年7月 5日 (水)

まっすぐ前を向いて営業します。8度の傾斜を持つラーメン店

2017年7月3日~2017年7月9日放送 
和歌山放送 報道制作局 柘植義信

【番組概要】

和歌山市の郊外、紀の川の堤防沿いにある木造の小さなラーメン店。店の名前はまる豊。店を切り盛りするのは70代後半の老夫婦。味もさることながら店の人気は店舗が8度傾いていること。地盤沈下と老朽化で店舗が傾いて久しい。顧客は専用の板や棒でラーメン鉢を支えてラーメンを食べる。ラーメンブームもあって知る人も知る人気の店に。しかし、店が立ち退くことになり、今月初めから市内の別な場所で心機一転、店を移転した。看板ものれんも元の店のまま。顧客も新しい店を訪れ、早速老夫婦のラーメンを味わう。店は傾いていないが、専用の道具は健在。店には前の店同様笑い声が絶えない。番組を通して町作りと店舗の持つ意味を考えてみたい。

【制作意図】
少子高齢化や後継者不足、過疎と地域経済の衰退で、個人商店が置かれている状況はとても厳しい。町から個人の店が段々減っている。こうした中、30年以上にわたり、堤防沿いの物置小屋を改造したラーメン店が人気を博していた。店の人気は店が8度傾斜していること。いつの間にか地盤沈下と老朽化で店が傾いてしまった。店を切り盛りするのは70代後半の老夫婦。いつも店からは元気な声と笑い声が絶えない。この店も立ち退きを余儀なくされ、今月初め、市内の別な場所に移転した。心機一転、新しい店でがんばる老夫婦。2人の心意気を通して活気を失う地方都市に勇気と元気を与えたい。

【制作後記】
店主は、「客の喜ぶ顔が見たい」と会社勤めをやめラーメン店を開いた。何をやっても長続きしないといわれた木造の店舗。店が地盤沈下と老朽化などで傾斜したことが新しいビジネスチャンスに客が考案したラーメン蜂が滑らない棒や平らになる板。客が店主の背中を押し、店を盛り上げていく。老夫婦も持ち前の明るさで、客に元気を与える。チェーン店の飲食店が増え、後継者難もあって素朴な個人の店が段々減っていることに改めて気づく。形骸的なチェーン店の店員の会話にはない老夫婦の会話に、人と人のつながりを感じる。人の心に働きかける仕事とはどんなものかを改めて考えてみたい。

2017年7月 4日 (火)

たこプロレス

2017年6月26日~2017年7月2日放送 
新潟放送 報道制作課 佐藤智也 

【番組概要】
新潟県新潟市北区白根地区(旧白根町)で江戸時代から続く白根大凧合戦。毎年6月初旬に5日間に渡り行われる夏の風物詩です。越後平野を流れる「信濃川」の支流「中ノ口川」の両岸から畳24畳分の大凧を揚げ、空中で絡ませ川に落とし、相手の凧綱が切れるまで引き合う勇壮なお祭りです。白根に住む人はこのお祭りの準備に1年をかけます。縄、凧、凧に書く絵は全て手作業です。その1年間の想いをお祭りの5日間にぶつけます。お互いの組のプライドを賭けたこの戦いで組の団結を強くします。凧を揚げるため、勇壮な若者が堤防を賭け、綱を引く。その迫力と思いを音と実況で届けます。

【制作意図】
準備に一年かかるという白根大凧祭り。一年間の想いが、堤防を駆けるその一瞬に凝縮されます。その激しさ、迫力、想いを言葉でなく音で伝えたいと考えました。ただ、白根大凧合戦のルールは複雑で、現地で見ていてもわかりづらい部分もあります。この説明をナレーションで行うのではなく、敢えて現地の興奮をそのままに実況することで、臨場感も伝えられたらと考えました。白根大凧合戦協会会長 種村幸夫さんと中之口川河川敷で凧を見上げているような、そんな雰囲気を感じて頂けたら幸いです。

【制作後記】
取材したのは5日間行われる白根凧合戦の初日でした。この激しさでこの後も凧を揚げ続けるのかという驚きがありました。銭湯のお祭りが地域にもたらすものとは何か、その答えが河川敷にあったように思います。この意地と意地がぶつかりあう合戦で、地域は結束を深め、地域のアイデンティティを育んでいます。私が生まれた地域にはこのようなお祭りはありませんでしたので、少し羨ましい気持ちになりました。是非、来年観に来て頂き、白根大凧合戦の:迫力、青春の匂いを感じて頂けたらと思います。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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