2013年12月11日 (水)

この醤油でないとアカンのよ

2013年12月2日~12月8日放送
西日本放送 ラジオセンター 堀部直子

【番組概要】
醤油づくりとして400年の歴史をもつ香川県小豆島。ここに創業110年を迎える「やまひら醤油」があります。工場は港のすぐ近くにあり、瀬戸内の7つの島へ時代を逆行し、今もなお船で醤油を運び続けています。
島の人に「やまひらの醤油じゃないとアカンのよ。」と、愛され続けられる理由とは?

【制作意図】
インターネットが発達し、流通も昔ながらの船から車へと時代がシフトしてもなお、島々へ船で醤油を運ぶ「やまひら醤油」の3代目山口俊徳さん。島民はただ醤油を待っているのではなく、人と人との関係が希薄になっている時代、醤油を通して人情や人と人との関わり方が見えたような気がします。

【制作後記】
山口さんは今年75歳。ここ何十年も休まず仕事をされているそう。他人から見たら大変な仕事だが、本人は悠々と楽しく仕事されているのが印象的でした。配達の合間の世間話も人と人との結びつきには欠かせない大事な要素なんだと改めて感じました。

2013年11月21日 (木)

飯坂けんかまつり~世話人日記

2013年11月25日~12月1日放送
ラジオ福島
 編成局放送制作センター 飯田英典

【番組概要】
300年余りの歴史をもつ福島県福島市飯坂町の「けんかまつり」祭り二日目「本祭り」では重さ1トンの担ぎ屋台をぶつけ合う「宮入り」が行われ各町から6台の屋台が境内で「けんか」を繰り広げます。飯坂に住む人間は、10月が近づき、金木犀の香りが漂い、町内各地から太鼓を練習する音が響きいてくると血が騒ぎ、祭りが待ち遠しくてたまらなくなります。にぎやかな祭りの裏で、各町内の祭典事務所に詰めて、祭り屋台の運行や担ぎ手、こども達の調整などを行っているのが「世話人」です。スタッフが世話人として参加、見る側から支える側から聞こえてくる音風景をレポートします。

【制作意図】
子供の頃から、楽しみにしてきた「飯坂けんかまつり」に世話人という裏方として関わる機会を得たことから、見る側、楽しむ側ではない角度から祭りを取材し、これま耳慣れた太鼓の演奏や掛け声などがどのように聞こえてくるのか、そこに関わる人々の姿に近づくことが出来るのではないかと考え、番組を制作しました。

【制作後記】
祭りに関わる老若男女と触れ合うことで、祭りが地域の誇りであり、祭りに関わることで郷土愛、地域愛がはぐくまれていく姿が間近に感じられ、自分自身を育んでくれたこの地域への思いをあためて実感することが出来ました。世話人の中には被災し避難している人もいて、環境はいたって複雑ながら、祭りを成功、そして楽しむため集まった世話人には不思議な連帯感が生まれ、忘れられない三日間を過ごすことが出来ました。

2013年11月12日 (火)

ミツバチが繋ぐ希望のいちご

2013年11月11日~11月17日放送
東北放送 ラジオ制作部 石澤雅幸

【番組概要】
宮城県南部、東北有数のイチゴの産地、亘理町。この地で行われている、ビニールハウスでのイチゴ栽培は、秋から春にかけて最盛期を迎えます。この地は、2年半前の津波で壊滅的な被害を受けました。、そして今、一歩一歩復興にむけ進んでいます。そのイチゴの栽培に欠かせないのがミツバチ。花粉を運ぶ役割を果たします。このミツバチを育て、イチゴ農家に貸し出しているのが、17年前、亘理町に隣接する丸森町に移住してきた養蜂家・石塚武夫さんです。石塚さんのミツバチへの思いとは?そして、石塚さんと農家の希望を乗せたミツバチが繋ぐ実りを、ミツバチの羽音と共にお伝えします。

【制作意図】
津波で大きな被害を受けた、東北有数のイチゴの産地、宮城県亘理町。そこには、イチゴ農家、そして、イチゴ栽培に欠かせないミツバチを育てる養蜂家の姿がありました。特産品イチゴの復活にかける人々、そして、大事な役割を担うミツバチ。番組では、ミツバチが希望の架け橋となってつなぐ人々の思いを描きました。

【制作後記】
取材を進めるうちに、養蜂家のミツバチにそそぐ愛情が思った以上だった事、そしてミツバチがイチゴ栽培に欠かせない受粉という役割を果たすとともに、農家と養蜂家の思いを繋ぐ役割も担っていたことを知りました。ミツバチの羽音を交え、そこに関わる農家、養蜂家の思いをどのように表現したらいいか迷いながら制作しましたが、多少なりとも感じていただければ幸いです。

2013年11月 8日 (金)

金箔職人がつなぐ伝統工芸の明日

2013年11月04日~11月10日放送
北陸放送 ラジオ制作部 田村七瀬

【番組概要】
日本の伝統工芸を支える金箔。石川県金沢市は全国の生産量の98%を占めます。金箔の薄さはおよそ1万分の1ミリと言われ、薄く叩きのばす作業は、今も熟練した職人の技が必要とされます。しかし、世界一の品質を誇る金沢の金箔も主な需要先である仏壇や寺院の減少や安価な海外の製品に押され、苦境に立たされています。今回はこの道35年の金箔職人、松村謙一さんを訪ね、今も響く箔打ちの音と、400年続いた歴史を守り続ける想いをお聞きます。

【制作意図】
昔は当たり前のように市内のあちらこちらから響いていた、箔打ち機の音。今では金沢に住む人たちにとっても馴染みのない音になってきています。この今では貴重になってしまった箔打ちの音にのせて、金沢金箔の現状、そして職人・松村さんの想いを、地元はもちろん、全国の皆さんに知ってもらえたらと思い制作しました。

【制作後記】
昔からの製造方法にこだわってつくるために、ただ金を叩いてのばすというだけでなく箔を挟む和紙など材料の調達や下準備のご苦労、また、金沢金箔のこれからに懸ける松村さんの熱い想いなど、たくさん貴重なお話をお聞きしたのですが、当然10分間に全てを盛り込むことはできず、やむなくカットすることになり残念でした。この番組から、少しでも多くの方に松村さんの想いが伝われば幸いです。


2013年10月31日 (木)

よう お帰りなさいました

2013年10月28日~11月3日放送
山口放送 ラジオ制作部 大谷陽子

【番組概要】

本州の西の端、山口県。日本海を臨む長門市仙崎の港は、終戦後、在外邦人の引揚げ港となりました。終戦の翌月から1年間で41万人の引揚げ者が上陸(博多、佐世保、舞鶴などに次ぐ全国5番目の引揚げ者数)、仙崎の町は一丸となって引揚げ者の援護をしました。当時21歳だった(なか)()貞女(さだめ)さんは、本土の地に降り立った引揚げ者を温かいお茶で迎え、宿も提供しました。それから68年。89歳になった中谷さんは当時を偲んで訪れる人に現地を案内し、依頼があれば講演にも出向きます。引揚げ港仙崎の歴史と思いやりの風土を伝え残したいという中谷さんの思いを綴ります。

【制作意図】
長門市仙崎は、古くは鯨漁で賑わった港町です。童謡詩人・金子みすゞのふるさとでもあります。終戦後、人口8,000人の町は、およそ1年の間に41万人もの人を迎える引揚げ港としての役目を果たしました。そこに生きた人々の歴史と経験が風土や気風として受け継がれていることを財産として伝えていきたいと制作しました。

【制作後記】
「よう お帰りなさいました」とは、「本当によく帰られましたね」という相手への気持ちを込めた山口弁の表現です。中谷さんの会話には、相手へ心を寄せる山口弁が度々使われます。放送の中でも出てくる「のんた」も代表的な山口弁で、「のー、あんた」と親愛の気持ちを込めて語りかける言葉です。温もりの響きを持つのは、相手に思いを馳せる思いやりの心があるからこそと、中谷さんの姿を見て学びました。

 

2013年10月10日 (木)

存続をかけてノコッタ ノコッタ! 清水西久保の相撲甚句

2013年10月21日~10月27日放送
静岡放送 ラジオ局編成制作部 山中 貴弘

【番組概要】
鈴虫が鳴くころ、静岡市清水区西久保にある鹿島神社(かしまじんじゃ)では、「相撲甚句」と呼ばれる民謡が響き渡ります。 西久保地区では明治の頃から、秋の収穫に感謝するため、毎年10月に行われるお祭りで相撲甚句が奉納されています。しかし、清水西久保の相撲甚句も、年々後継者が減っています。その原因は、今の時代には受け入れにくい歌詞や、化粧まわし姿で披露しなければならないことです。今では、大半が還暦を過ぎてしまった相撲甚句保存会のメンバーが、一人でも多くの子どもたちに受け継いでもらいたいという想いと、相撲甚句を経験した子どもたちの声を交えて紹介します。

【制作意図】
清水西久保の相撲甚句が披露される鹿島神社のお祭りも、最近では、くじ引きや配布ものなど、イベントを目的として来る参加者も多く、相撲甚句の存在が薄れていました。後継者も減る中、明治から続く地元の風物詩を少しでも多くの人に忘れないでいてほしいと願い作品にしました。

【制作後記】
かわいい化粧まわし姿で、恥ずかしそうに相撲甚句を披露する子どもが印象的でした。西久保地区の相撲甚句の歌は10月しか披露されません。そこで、「秋」らしさを出すために、相撲甚句の歌やインタビューなど、様々な場面で、鈴虫の音色が入るよう録音しました。秋の風物詩「清水西久保の相撲甚句」とともに、秋を感じていただければと思います。

2013年9月30日 (月)

マスコじいさんのひとりごと(再放送)

2013年10月7日~10月13日放送
ラジオ関西 報道制作部 西口正史

★録音風物誌番組コンクール入賞作品(最優秀賞)

80周年を迎えた六甲ケーブルの写真展を取材した際、目を引いたのが創業当時から稼働し続けているマスターコントロール(マスコン)でした。「彼」を語り部に、「六甲ケーブルの今を切り取りたい」。その衝動を形にしたのが今回の作品です。

およそ1ヶ月、報道の仕事の合間を縫って六甲山に通いました。登山・ハイキング客に混じって、汗だくのスーツにあやしい機材カバン、といういでたちに関わらず、在りし日の六甲についてお話いただいた六甲ケーブル(六甲摩耶鉄道)、六甲山小学校、そして山上の住民のみなさんありがとうございました。聞けば聞くほど、港町神戸を静かに見守る六甲の魅力に惹かれていきました。

もちろんその全てを10分間に盛り込むことは不可能なので・・斜度26度の斜面を力強く昇る(下る)ケーブルカーの姿と夏の六甲の自然を想像してもらうことを念頭に仕上げました。

もうひとつの祝いめでた(再放送)

2013年9月30日~10月6日放送
RKB毎日放送 RKBミューズ 三輪肇

★録音風物誌番組コンクール入賞作品(優秀賞)


福岡の代表的な祝いうたといえば、博多祇園山笠え歌われる「博多祝い唄(祝いめでた)」。
しかし福岡エリアには他にも多くの祇園祭りがおこなわれ、地域とともに歌い継がれる「祝いうた」が存在します。

その一つが福岡市西区西浦(にしのうら)地区の祝いめでた。
博多祇園山笠が行われた同じ福岡市内でありながら、独特な佇まいを見せています。その博多の唄とは違う、もうひとつの祝いうた「西浦の祝いめでた」を知り、また人々の手により伝承・継承される地域文化との関わりを知っていきます。

〈制作裏話〉
今回の取材で印象的だったのは、漁師歴50年、竹園満夫さんとの出会い。現在は保育園の園長さんをしています。強烈なキャラクターの竹園さん。話しているだけで唄が持つ力、郷土愛を感じてしまいます。

砂に込めるおもてなしの心(再放送)

2013年9月23日~9月29日放送
大分放送 ラジオ局ラジオ制作部 宮崎真由美

★録音風物誌番組コンクール入賞作品(優秀賞)

温泉観光都市として有名な別府市。
数多くの特色ある温泉がありますが、その中で全国的にも珍しい「砂湯」を取り上げました。

地元の入浴客のみならず、観光客にも大変人気がある海浜砂湯の魅力と、そこで活躍する別府でただ一人の”砂かけマイスター”井村節子さんの「おもてなしの心」を皆さんにも知ってもらいたいという思いで制作しました。

心地よい波の音と、小気味よい砂を搔く音、明るくあたたかみのある井村さんのおしゃべりを聞いて、「別府に行って、この砂湯に入ってみたい!」と思っていただければ狙い通りです。

2013年9月18日 (水)

幸せになれるかき氷

2013年9月16日~9月22日放送
熊本放送 ラジオ編成制作部付 宮川理佳

【番組概要】
熊本市中心部、交通量の多い幹線道路から入ったところに創業100年以上の飴屋「近藤製飴本舗」があります。夏には特製のかき氷が登場し、店の軒下では、かき氷を夢中でほおばる子ども達の姿が見られます。食べると笑顔になれるかき氷と、「近藤製飴本舗」の魅力を店から聴こえてくる音や、訪れるお客さんの声で表現しました。


【制作意図】
近藤製飴本舗を初めて訪れた時に感じた印象は、「ほっこりする温かい店」。お客さんには子ども達のほか、お盆で帰省しているという40代50代の大人達でした。長年愛される「近藤製飴本舗」。こだわりのかき氷も魅力の1つですが、お店の皆さんの温かい接客も魅力の1つです。お店に集まる人達とかき氷が作る幸せな空気を全国の皆さんにお届けしたいと作品にしました。


【制作後記】
笑顔で接客なさるお店の方々ですが、作業場の室温は38℃!熊本特有のムシ暑さの中で製氷作業をしていらっしゃる近藤さん一家は汗びっしょりでした。マイクを向ける私にも冷たいお茶を出して下さったり「ゆっくり休んで(会社に)帰りなっせー。」と話しかけて下さったり・・・その心遣いにとても感動しました。取材をきっかけに、私が「近藤製飴本舗」の大ファンになったのもまちがいありません。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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