2020年4月22日 (水)

見えない壁を超えて…~もう1色の桜のジャージ~

2020年4月27日~2020年5月3日放送 
新潟放送 情報センターラジオ放送部 (BSNウェーブ所属)石割恵美子

【番組概要】
去年、日本中が湧いたラグビーワールドカップの裏で日本に伝わってきた「ブラインドラグビー」という視覚障害者のためにアレンジされたスポーツ。2015年にイギリスで生まれ、去年初めてイギリスからコーチを招き日本で講習会が開かれた。新潟在住のブラインドラグビー日本代表監督の浅間光一(あさま こういち)さんと経験者の山田弥毅(やまだ ひろき)さんにお話を伺い、実際にパスの練習の音や、耳だけで感じるブラインドラグビーの魅力とルールについてお伝えする。

【制作意図】
まだまだ認知度が低いスポーツではあるが、「より多くの人にこのスポーツを知ってもらいたい」という思いと、ブラインドラグビー日本代表の監督・コーチが新潟在住であり、新潟から全国へ広まっていく未来のスポーツになればと考え制作した。

【制作後記】
視覚障害の方が、ラグビーを楽しむための工夫がルールの中に沢山取り入れられていた。ブランドラグビーで使用するボールの中の鈴は、パスやボールを持って走っている時に位置を把握するために必要な音だが、最も大切なことはプレイヤー通しの掛け声だった。また、相手に「タッチ」することがタックルと同じ意味を持つことから、激しくぶつかり合うことが少ない。弱視ゴーグルを付けるなどして健常者も一緒に楽しめるので、コミュニケーションを深めるスポーツとしての可能性を感じた。

 

色あせないカセットテープ

2020年4月20日~2020年4月26日放送 
宮崎放送 ラジオ部 岩切速郎
 
【番組概要】
宮崎県の最南端、串間市。ここには市の広報誌「広報くしま」を目の不自由な方の為に、文字を音声に変えて提供するボランティア団体「カナリヤ会」があります。29年前に活動を始め現在、27歳から95歳まで14名で活動しています。広報誌が発行される月末に打ち合わせを行い翌週録音。その録音して配るのが「カセットテープ」。29年目の開始当時から変わっていません。カセットテープの方が目の不自由な人には使いやすいのだとか。便利な世の中にあっても変わらない「カセットテープ」。カナリア会の温かさとカセットテープのこだわりを取材しました。

【制作意図】
今はスマホで何でも出来る時代。便利な世の中にはなりましたが、それが逆に不便に感じることも多いと思います。スマホの画面は平らで視覚障害者には逆に不便かも知れません。その様な中、未だに「カセットテープ」にこだわっています。ラジカセの多くはスイッチが分かりやすく、視覚障害者でも比較的に簡単に使う事が出来ます。本人たちは「これ以外出来ないから!」と言いますが、その中には「これが一番便利」と言う彼らなりのやさしさが含まれています。そんなカナリア会を取材しました。

【制作後記】
打ち合わせも収録も笑顔が絶えませんでした。「笑顔が出ないとボランティアは出来ない」と言う代表の山下さんの声が頭から離れません。そんなメンバーだから29年も続けられるしみんなからも愛されているんだと実感しました。私たちラジオもいつまでも愛される番組を続けて行きたいと感じました。

2020年4月13日 (月)

ゆらりゆられて路面電車

2020年4月13日~2020年4月19日放送 
高知放送 ラジオ編成制作部 手島伸樹
 
【番組概要】
現在、全国の街を走る路面電車はわずか19。最盛期の5分の1だそうです。その内の一つ、高知の路面電車は現存では最古となります。観光名所「はりまや橋」を中心に南北に走る高知の路面電車。
現役で走る車両には、今年古希を迎える昭和25年製造の車両もあります。路面電車が発する独特の音、また路面電車にかかわるさまざまな音で構成しました。

【制作意図】
高知の街を走る路面電車。地元では「とでん」で通ります。土佐電気鉄道株式会社(現在はとさでん交通)の略で、明治37年創業。現在運行している路面電車では日本最古を誇ります。日常生活に溶け込んだ路面電車を改めて、見つめてみると、そこには様々な人が携わっています。その日常を追いたいと思い制作しました。

【制作後記】
普段、通勤でも利用する路面電車ですが、取材することで、安全運行の為に携わる方、路面電車を愛する方、日々利用する方など様々な方にお会いし、また一つ新しい目で路面電車を見ることが出来ました。是非、現存する全国19の路面電車をすべて乗ってみたいと思います。

2020年4月 9日 (木)

知られていないのが泣き所? 弁慶とまちづくり

2020年4月6日~2020年4月12日放送 
和歌山放送 報道制作部 柘植義信

【番組概要】
和歌山県田辺市は紀伊半島の南にある地方都市。晩年を過ごした博物学者南方熊楠や合気道の創始者植芝盛平とならんで、歌舞伎や人形浄瑠璃など芝居の世界で有名な武蔵坊弁慶の生まれたちとして地元の人たちは親しみを持っている。弁慶がこの地の出身か定かでない。また実在の人物かよく分からないが、この地の人は出身と信じる人が少なくない。毎年、秋には30年以上に渡り商工業者や市民らがつくる弁慶まつりが開かれる。まちの中心を弁慶踊りの曲にあわせて老若男女がまちを練り歩く。祭りには毎年弁慶役の男が登場する。33代目は地元の会社員の男性。長さ2メートル40センチの長刀を持って弁慶との対決を市民らが演じる芝居で披露する。練習にも余念がない。当日は堂々とそれを演じる、市民からは絶賛の拍手。弁慶を演じることはある種地元のヒーローとなっている。市民が弁慶を地元の英雄と捉えていて、いろいろなまちづくりには欠かせないキャラクターとなっている。番組では地元の多くの人に愛されている弁慶をこれからも地元のヒーローとして後生に語り継ぎ、まちの活力につなげていくだろうことを紹介する。

【制作意図】
歌舞伎や人形浄瑠璃の世界では有名なキャラクターの武蔵坊弁慶を通してまちおこしをしようと地元の商工業者や市民がまつりを企画して30年あまり。今は、通りを練り歩く弁慶踊りだけでなく、市民の手作りの芝居も演じられまつりを盛り上げる。地元の例大祭ほどの派手さはないが手作りのまつりが定着してきた。世界遺産、闘鶏神社の参道で月に一度開かれる弁慶市と呼ばれる朝市も出店者は減少傾向にあるが地元の人たちには人気だ。この地方、県南部の中心であるが、多くの地方都市と同様、人口減少や高齢化、市街地の空洞化などの課題を抱えている。しかし地元の人に愛されるキャラクターとして根づいている弁慶の「活躍」を通して地元に生きる人が素朴ながらまちづくりに取り組もうとする姿を紹介し、この地の良さや誇りを次の世代にバトンをつないでいこうとするようすを報告する。

【制作後記】
弁慶が実在の人物か、本当の出生地はどこかというと明確な答えはないが、田辺市の多くの人は地域に史跡や伝承があることから、地元のヒーロー、地域を元気にするキャラクターとして大なり小なり捉えていることに注目しました。ナレーションを担当した寺門秀介も弁慶役を演じたことがある一人。地元出身ではないが、関係者の勧めで弁慶役を買って出た。体格がよく、僧兵姿で長刀を振りかざす姿は皆が連想する武蔵坊弁慶とシンクロする。本人はそれ以降も時間があると、全国の弁慶伝説の地を訪ね歩いている。弁慶役の活躍を通して、地元の人に溶け込み、地域を盛り上げようという気持ちにさせる何かがあると感じたこともこの番組を志したきっかけになった。人口減や中心部の空洞化など全国の多くの地方都市の光景がこの地にもある。地味だけど市民が楽しみながら取り組むまちづくりを紹介し、それを応援していくことが地域のラジオとして大事なことだと感じています。

2020年4月 2日 (木)

結城紬~真の美を求め、人の幸せを願って~

2020年3月30日~2020年4月5日放送 
茨城放送 編成局編成制作部  鴨川貴史

【番組概要】
結城紬は室町時代に結城家から幕府への献上品として紬織りが使用されことから、結城紬と呼称されるようになったといわれています。古来からの技術の継承が評価され、昭和28年には、茨城県の無形文化財として指定を受け、さらに昭和31年には、国の重要無形文化財として総合指定を受けました。そして、平成22年には世界共通の財産としてユネスコ無形文化遺産にも登録されています。今回の収録では、地機(じばた)という原始的な織機で織り上げる「地機織り」の音と、真綿から手で糸を引き出す「糸つむぎ」の音を紹介しています。古来から続く、唯一無二の結城紬が生み出されるまでの音をお楽しみください。

【制作意図】
茨城県の西に位置する結城市。この結城市で受け継がれる結城紬は、一説には2千年以上前から作られていたともいわれています。現在では、作る人が年々減ってきている結城紬。そのような状況にある日本のみならず、世界にも認められた「結城紬」の魅力を結城紬の製作にはなくてはならない、「地機織り」「糸つむぎ」という古来からの製法の音で伝えられればと思い、制作しました。

【制作後記】
茨城県が誇るべき伝統的な織物「結城紬」。今回、実際に「地機織り」や、「糸つむぎ」の現場を取材してみて、昔から続く手作りの技術の素晴らしさを実感することができました。結城紬は、高級品といわれていますが、無地の生地を織るだけで2か月以上が費やされるその労力や技術を考えると当然のことと、納得することができました。いつかは、自分の結城紬を持ってみたいと考えるほど、とても魅力的な織物だと感じました。

2020年3月24日 (火)

季節をかたどる讃岐和三盆

2020年3月22日~2020年3月29日放送 
西日本放送 報道制作局 報道業務部  奥田麻衣

【番組概要】
香川県といえば「うどん県」と呼ばれるほど讃岐うどんが有名ですが、うどん以外にも誇れるものがあります。それが「讃岐和三盆」です。和三盆とは、香川県や徳島県で、200年余りの長きに渡り伝統的な技法で生産されてきた高級砂糖。現在、香川県で製造を続けているのは2社のみに。和三盆作りは主に冬から春にかけて行われますが、中でも今回は、熟練した職人にしか出来ない「押し船」「研ぎ」と呼ばれる工程を取材しました。

【制作意図】
取材させていただいた「ばいこう堂」さんは一部機械化されていますが、「押し船」「研ぎ」の工程だけは今もなお伝統製法を守りながら熟練した職人の手作業により丁寧に作られています。冬から春にかけて行われる和三盆作り。和三盆を使ったお干菓子は一年中作られていますが、一番人気は春のお干菓子。ふたを開けた瞬間に広がる春の景色、柔らかい色合いと甘さに心和みます。口にした時に感じる温もりや繊細な口どけに身も心も癒されて欲しい。私自身も大好きな讃岐和三盆の魅力を多くの方にお伝えできれば嬉しいです。

【制作後記】
最近は「和三盆をもっと身近に感じて欲しい」との想いから、動物や楽器などのポップなデザインのお干菓子を作ってみたり、観光地や美術館などともコラボレーション。伝統を後世に伝えていくべく、色んな試みをされています。和三盆のお干菓子は抹茶のお菓子として親しまれてきましたが、コーヒーや紅茶とも大変よく合います。見かけた際は是非お手にとってみて下さい!

祝いの謡いでもぐら打ち

2020年3月16日~2020年3月22日放送 
長崎放送 ラジオ制作部 米森 仁美

【番組概要】
長崎の県央、諫早市。島原半島に向かう入り口に位置する森山町の中の原地区では、明治時代の半ばから続くと言われている「もぐら打ち」という行事があります。無病息災、五穀豊穣などを祈って、竹の先に藁を括り付けた棒で家々の前の地面をたたいてまわります。九州には広く伝わる行事ですが、ここ原地区では独特な調子の祝いの謡いと共に行われます。地域の人も楽しみにしている年に1度のもぐら打ちの様子をお送りします。

【制作意図】
子どもたちが少なくなり、昔とは形を変えて続けられている原地区のもぐら打ち。いつから続いているかわからなく、詳しい文献も残っていない中、形を変えながらも小正月の行事として残ってきました。
独特な謡いを今回番組として形に残すことで、後世へつなげていくひとつの後押しになってくれることを願い、制作しました。

【制作後記】
地域の人が楽しみにしているもぐら打ち。少子高齢化が進み、地域の子供たちや、行事をしる先輩方が少なくなっている中、この行事を継続していくことの大変さも感じました。男の子の最年長の4年生岸川楽偉堂くんは、普段は年下の男の子たちと走り回って遊ぶ、やんちゃな男の子のです。しかし、このもぐら打ちの時には、自分がみんなを引っ張っていくぞ、という気持ちが強まります。地域の人とのつながりや、子供たちも育てるこの行事をこれからも長く続いていってほしいと願っています。

2020年3月 6日 (金)

水海の田楽能舞~池田町に受け継がれる芸能~

2020年3月9日~2020年3月15日放送 
福井放送 ラジオセンター 中村 謙太

【番組概要】
福井県池田町の水海地区は、山に囲まれた自然豊かな場所です。ここに鎌倉時代から伝わる田楽能舞を、能の演目を引き継ぐ父と子にスポットを当てて紹介しています。番組では、直前の本稽古から当日の禊、田楽能舞の奉納と、時系列を追って取材しました。どのように父と子が能を受け継ぎ、当日はどのように舞ったのか、水海の人にとっての田楽能舞の大切さを伝えています。

【制作意図】
田楽能舞が、約750年前の鎌倉時代から、脈々と受け継がれてきたという歴史の重みや、後世に伝えるという水海の人の熱意を伝えたいと思い、制作しました。特に、リスナーに池田の風景をイメージしてもらえるように、囃子、太皷や笛の音色、川の音など様々な種類の音を盛り込みました。

【制作後記】
下駄や雪の音など、小さな音を綺麗に収録できるように、マイクをできるだけ近くまで近づけました。

2020年3月 2日 (月)

令和につなぐ新年の舞い

2020年3月2日~2020年3月8日放送 
四国放送 ラジオ編成制作部 三浦審也

【番組概要】
霊峰・剣山を望む徳島県つるぎ町の伝統芸能「天の岩戸神楽」は、毎年1月1日の午前0時に、町内の松尾神社で奉納されます。神楽は世代交代の時期を迎えていて、舞台で踊るメンバーは今年から30~40代の若手に代替わりしました。令和に受け継がれる伝統の舞いを紹介します。

【制作意図】
過疎化や少子高齢化で伝統文化の継承が難しくなっている中、つるぎ町の天の岩戸神楽は若返りがうまくいっているケースと言えるでしょう。ストリートダンスの経験者が神楽のメンバーに加わるなど、新しい風が起きているのを感じます。令和最初の元日から活気あふれる元気なつるぎ町をお届けしたいと思います。

【制作後記】
「伝統芸能=古くさい」という考え方自体が、既に前時代的なのかもしれません。若い世代や子供たちは、もっとフラットに捉えているようです。新しい年の始まりを告げる神楽は、令和の時代も受け継がれていくことでしょう。

佃煮、時代を歩く

2020年2月24日~2020年3月1日放送 
秋田放送 ラジオ制作部 利部昭勇

【番組概要】
男鹿半島の付け根にある八郎潟。岸辺には佃煮屋が点在します。潟から獲れるワカサギやシラウオ、フナなどを材料に、明治から佃煮作りが盛んに行われてきました。深い雪に閉ざされる秋田では、冬期間の保存食として重宝されてきのです。しかし、平成に入った頃、食生活の変化が佃煮を直撃。柔らかい物を好んで食べる時代の人たちから、そっぽを向かれてしまったのです。起死回生をかけて編み出したのが「ワカサギの唐揚げ」。食感を工夫した新しい佃煮に売り上げが回復しました。時代は平成から令和へ。秋田の佃煮は新たな危機を迎えています。立ち向かうのは、家業を継ぐ決意をした若手経営者たちのグループ「スメルト」。佃煮の、さらに新しい愛され方を模索し始めました。

【制作意図】
地方の時代と言われながら、その実感は皆無と言っていいのが現実。人口流出に歯止めは掛からず、地方には次代を託せる人が激減するばかり。「国破れて山河あり」と言いますが、冗談ではありません。しかし、一方で、故郷の山河を、人を、暮らしを、生業を、文化を愛で、地方再生に立ち向かおうとする人材が、わずかずつ増えています。冷え切った地方経済の中で歩く道は険しい。しかし、彼らの視線の向こうには、はっきりとした「何か」が存在しています。地方で生きるということ。そのために今、起こすべきアクションは?全国に普遍的にある、この問題を、秋田のソウルフードのひとつ、佃煮を通して見つめたいと思いました。

【制作後記】
深い雪に閉ざされる地域では、冬に動物性蛋白質をいかに確保するかが大きな課題でした。その解決策のひとつが魚介の佃煮です。また、戦争中は戦地に赴く兵士たちの保存食として注目され、一般では入手困難な砂糖が、材料として佃煮屋に優先的にまわされたという証言もあります。 佃煮が命をつなぐ主役だった時代が間違いなくありました。今、佃煮は主役になりえないかもません。しかし、この文化が無くなることはないでしょう。なくても生活に支障はないが、あった方が、どこか豊かになれる。
令和の時代になり、佃煮は、そんな存在になっていくのでは?そして、金銭だけではなく、人としての豊かさを失わないために立ち上がった、佃煮店の若手経営者たち「スメルト」の活動を、これからも追い続けようと思います。

 

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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