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2020年4月 9日 (木)

知られていないのが泣き所? 弁慶とまちづくり

2020年4月6日~2020年4月12日放送 
和歌山放送 報道制作部 柘植義信

【番組概要】
和歌山県田辺市は紀伊半島の南にある地方都市。晩年を過ごした博物学者南方熊楠や合気道の創始者植芝盛平とならんで、歌舞伎や人形浄瑠璃など芝居の世界で有名な武蔵坊弁慶の生まれたちとして地元の人たちは親しみを持っている。弁慶がこの地の出身か定かでない。また実在の人物かよく分からないが、この地の人は出身と信じる人が少なくない。毎年、秋には30年以上に渡り商工業者や市民らがつくる弁慶まつりが開かれる。まちの中心を弁慶踊りの曲にあわせて老若男女がまちを練り歩く。祭りには毎年弁慶役の男が登場する。33代目は地元の会社員の男性。長さ2メートル40センチの長刀を持って弁慶との対決を市民らが演じる芝居で披露する。練習にも余念がない。当日は堂々とそれを演じる、市民からは絶賛の拍手。弁慶を演じることはある種地元のヒーローとなっている。市民が弁慶を地元の英雄と捉えていて、いろいろなまちづくりには欠かせないキャラクターとなっている。番組では地元の多くの人に愛されている弁慶をこれからも地元のヒーローとして後生に語り継ぎ、まちの活力につなげていくだろうことを紹介する。

【制作意図】
歌舞伎や人形浄瑠璃の世界では有名なキャラクターの武蔵坊弁慶を通してまちおこしをしようと地元の商工業者や市民がまつりを企画して30年あまり。今は、通りを練り歩く弁慶踊りだけでなく、市民の手作りの芝居も演じられまつりを盛り上げる。地元の例大祭ほどの派手さはないが手作りのまつりが定着してきた。世界遺産、闘鶏神社の参道で月に一度開かれる弁慶市と呼ばれる朝市も出店者は減少傾向にあるが地元の人たちには人気だ。この地方、県南部の中心であるが、多くの地方都市と同様、人口減少や高齢化、市街地の空洞化などの課題を抱えている。しかし地元の人に愛されるキャラクターとして根づいている弁慶の「活躍」を通して地元に生きる人が素朴ながらまちづくりに取り組もうとする姿を紹介し、この地の良さや誇りを次の世代にバトンをつないでいこうとするようすを報告する。

【制作後記】
弁慶が実在の人物か、本当の出生地はどこかというと明確な答えはないが、田辺市の多くの人は地域に史跡や伝承があることから、地元のヒーロー、地域を元気にするキャラクターとして大なり小なり捉えていることに注目しました。ナレーションを担当した寺門秀介も弁慶役を演じたことがある一人。地元出身ではないが、関係者の勧めで弁慶役を買って出た。体格がよく、僧兵姿で長刀を振りかざす姿は皆が連想する武蔵坊弁慶とシンクロする。本人はそれ以降も時間があると、全国の弁慶伝説の地を訪ね歩いている。弁慶役の活躍を通して、地元の人に溶け込み、地域を盛り上げようという気持ちにさせる何かがあると感じたこともこの番組を志したきっかけになった。人口減や中心部の空洞化など全国の多くの地方都市の光景がこの地にもある。地味だけど市民が楽しみながら取り組むまちづくりを紹介し、それを応援していくことが地域のラジオとして大事なことだと感じています。

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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