2017年9月14日 (木)

100年先の森を描いて

2017年9月11日~2017年9月17日放送 
山口放送 ラジオ制作部 大谷陽子

2017年度録音風物誌番組コンクール優秀賞 
再放送です

【番組概要】

山口県下関市豊田町。河田紀美江さん(67)は、7代受け継いだ山を夫と共に守っています。山間の家に嫁いで45年。舅に農業と山仕事を教わるうちに、森の大切さを知りました。森は、木材だけでなく、おいしい空気、水など、多くの恵みを与えてくれます。強い樹木の根は、土砂災害を防ぎます。しかし、林業の後継者不足で、河田さんの集落でも、山の木が一斉に伐採され売られるなど、禿山や荒れた山が目立つようになりました。河田さんは、自然に雑木林が作られる天然の林を目指して、いろんな種類の木を植林しています。長い年月をかけて成長した丈夫な木を少しずつ売って恩恵を受ける・・・息の長い林業をすることで、家も山も守れると考えています。その思いは、林業を継いだ次男にも、そして、3人の孫たちにも受け継がれています。


【制作意図】

今年から新しく、8月11日が国民の祝日「山の日」となりました。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」日です。しかし、山に目を向けてみると、林業の担い手は減少し、高齢化しています。禿山や荒れた山が増える一方で、植林をしたくても鹿の被害が明らかな状況では躊躇せざるを得ません。山を守り山の恵みを受ける持続可能な林業を目指す女性林家、河田紀美江さんを通じて、未来を考えた上で今何をすべきか考えたいと制作しました。

 

【制作後記】

「山は先代からの預かり物」。河田紀美江さんも、林業の後を継いだ次男・晃幸さんも、口を揃えます。だから、山を荒らしてはいけない、禿山に売ってしまうことはできない、より良い形で次の代に渡さなければいけないと言います。同時に、地域の環境や水を守っているという自負もあります。その背中を見て、晃幸さんの3人の息子たち(高1、中2、小6) は、自分が地域に必要とされていると感じながら将来の夢を描き始めています。課題山積の林業の未来に、今、目を向けなければいけないと教えていただいた取材でした。

 

やんばるを味わう~国頭村安田集落の珈琲タイム~

2017年9月4日~2017年9月10日放送 
琉球放送 ラジオ局 編成制作部 長濱明美

【番組概要】
沖縄本島北部「やんばる」と呼ばれるこの地域には、国内最大級の亜熱帯照葉樹林の森が広がっています。豊かな森と太平洋に面するやんばるの小さな集落「安田」にはヤンバルクイナをはじめとした世界的にも希少な生き物たちが多く生息しています。都会とは違い、スーパーもコンビニもない安田の集落。その集落の生活を支えているのが創業96年の「安田共同店」。4年前に共同店を引き継いだ徳田夫婦の出す自家焙煎珈琲が大人気だ。野鳥たちの奏でるハーモニーをBGMに安田集落の珈琲タイムは、ゆっくりと流れています。

【制作意図】
珈琲農園を営みながら、「安田共同店」を引き継いだ徳田泰次郎・優子さんご夫婦。徳田夫婦が作る珈琲豆はオーガニックで高品質。なかなか市場に出る事はありません。珈琲に関わる徳田夫婦は「安田共同店」が日用品や食料品を購入する場所だけではなく、珈琲を通して集落の集いの場になってほしい!という想いで自家焙煎のデイリー珈琲をスタート。のどかな安田集落に溶け込んでいる珈琲タイムを感じてほしいです。

【制作後記】
朝7:30安田共同店がオープンと同時に集落の方々が続々に集まり、安田集落の生活を支え求められている売店だという事を実感しました。共同店で大人気のデイリー珈琲の自家焙煎の担当は奥様の優子さん。年配の多い集落の方々が毎日飲んでも飽きない珈琲を提供したい!と高温の焙煎機の前で汗だくになりながら楽しそうに笑顔で話す優子さんの姿に、安田共同店の珈琲に込められた深い愛情を感じました。共同店内に古くからある大型のクーラー音が少し 気になりますが日常の安田共同店を感じて頂けたらと思います。

 

夏の日の桂浜 ~海と龍馬と海獣と~

2017年8月28日~2017年9月3日放送 
高知放送 ラジオ局ラジオ制作部 手島 伸樹

【番組概要】
高知県高知市桂浜。月の名所として知られるこの景勝地は大勢の観光客が訪れます。幕末の志士、坂本龍馬像。打ち寄せる波。そして、浜辺に立つ小さな水族館。龍馬が生きた時代も、観光地となって、大勢の人々を迎えてからも、そこで働く人々の暮らしを見つめながら、波は同じように打ち寄せています。番組ではそんな桂浜の夏の一日をスケッチしました。

【制作意図】
よさこい節に「月の名所は桂浜~」と歌われる、高知を代表する観光地、桂浜。この夏も、大勢の人が訪れました。何気ない一日をスケッチしながらそこで働く若い人(水族館の飼育員)の思いを伝えられればと制作しました。

【制作後記】
水族館は”見る”ことが多く、”聞く”こと、すなわち印象的な音が数多くある訳ではありません。
しかしながら小さな古い水族館で働く若い飼育員の仕事への思い、気持ちが、インタビューに爽やかに
現れていると思います。

 

2017年8月25日 (金)

今年も盛岡さんさがやってくる!~高校生たちのもうひとつの甲子園~

2017年8月21日~2017年8月27日放送 
IBC岩手放送 編成局ラジオ放送部 佐々木美穂

【番組概要】
今年で40回目を迎える盛岡さんさ踊り。節目の祭りを盛り上げようと、次世代の担い手育成を目指す、「盛岡さんさ踊り高校選手権大会(さんさ甲子園2017)」が開催されました。盛岡さんさ踊りの歴史の中で初めての試みで、5校が出場。今回は、一番出場数の多い盛岡商業高校に焦点をあて、練習から本番までの様子をお送りします。

【制作意図】
今後、後世に残る大切な大会として受け継がれてほしいという願いを込め、若い世代の担い手に注目して制作しました。本番に臨む生徒達の熱い想いに注目してお聴きください。

【制作後記】
ゴールした時の生徒達は、全員が達成感に満ち溢れており、場内は歓声で包まれていました。結果は、惜しくも準優勝でしたが、彼らにとって最高の思い出になった事でしょう。

2017年8月15日 (火)

ある祭りにエコの灯を

2017年8月14日~2017年8月20日放送 
北日本放送 報道制作部 西崎雄一郎

【番組概要】
明治2年に富山市水橋地区の大きな川・水橋川(現在は白岩川)に大きな橋が架かった事を記念して始まった「水橋橋まつり」は今年で149回目を迎えます。この歴史ある祭りの目玉は全国でも珍しい裸火を川に流す「火流し」 かつては灯油を燃料として使っていましたが環境への配慮から近年「バイオ燃料」が使用されるようになりました。その燃料の一部を地元小学校の児童が制作。制作授業の様子から水橋橋まつり当日の盛り上がりなどを取材しました。

【制作意図】
水橋地区の小学生が授業からエコについて学びそして地元の祭りに貢献するというこの取り組みを取材していくなかで「水橋橋まつり」が県内に数ある夏祭りの中でも歴史が古く「火流し」が厳粛な催事だと知りました。毎年多くの人で賑わう祭りの雰囲気を少しでも伝えられたらと思い今回取り上げました。

【制作後記】
お願い事をしながら火を点け流すと良いと言われており小学生が思い思いの願いごとをしながら火をつ付けたあと手を合わせているのがとても微笑ましく見えました。いよいよ来年は記念の150周年祭ということで祭りが終わった後すぐさま来年は今年以上の盛り上がりを!と話し合いをしておられました。

2017年8月 2日 (水)

西宮サイファー ~路上ラップでつながる若者の輪~

2017年8月7日~2017年8月13日放送 
ラジオ関西 報道制作局 事業部 神吉 将也

【番組概要】
「サイファー」とは複数人が円になってラップをすること。阪急西宮北口駅前の広場では、毎週木曜日の夜サイファーが行われており、中学生から二十歳前後の若者が集まってきます。神戸と大阪の中間に位置することから参加者は幅広く、それぞれの思いを持ってラップをしています。主催者と参加者からその思いを聞き、サイファーを通じて自分がどのように変化していったのか、またこれから文化として根付いていくであろうこの輪がどのように機能していくのかに迫りました。

【制作意図】
サイファー参加者の中には、一見ラップをしそうに見えない中学生や女性も含まれており、なぜラップをしようと思ったのかが気になっていました。インタビューしてみると、いじめられていたり、人見知りで友達が一人もいなかったりといった過去があるが、サイファーやラップで生まれた繋がりで自分が変わったというような経験を語る人が何人もいました。駅前でラップをしている集団に冷ややかな目を向ける人も多いのですが、サイファーという新しい文化がこういった風に機能していると伝えることにちょっとした意味があるのではないかと思い制作することに決めました。

【制作後記】
参加者たちが自分の考えや夢・目標を堂々と話す様子に驚きました。自分が彼らと同じ年齢のころ、同じようにはできなかったと思います。正直なところ、録音風物誌の中でこのトピックは多少浮いていると自覚しているのですが、若者たちのコミュニティの中でつくられていく新しい文化を取材できてよかったです。

2017年7月28日 (金)

木が生み出す音色を届けたい ~半田から響け!ウッドスピーカー~

2017年7月31日~2017年8月6日放送 
東海ラジオ放送 制作局制作部 山崎聡子

【番組概要】
愛知県半田市に住む原田佳文さんは、6年前、45歳の時に、23年間勤めた会社を辞め、木工作家の道へと進みました。なかでも力を入れて製作しているのがウッドスピーカー。昔ながらの技術を用い、1つ1つ手作業で作られる木のスピーカーが生み出す音色が、今、多くの人を惹きつけています。さらに、今はもう製作されていない貴重なウッドスピーカーの再現にも成功しました。原田さんのウッドスピーカーにかける想い、そして、半田から広がりつつあるウッドスピーカーの音の魅力をお届けします。

【制作意図】
原田さんの作るウッドスピーカーから音楽を流すと、その音色に引き寄せられるように、次々と人が足を止めていきます。ウッドスピーカーが持つそれほどの音の魅力、原田さんの人生を変えたその音の魅力をなんとかしてラジオで伝えたいと思い、制作しました。また、併せて、原田さんの職人としての情熱や、地元の半田とのつながり、本物の音に触れる大切さについても織り込みました。ウッドスピーカーから生み出される、やわらかく、どこか懐かしい音色の魅力を感じていただければ幸いです。

【制作後記】
初めてiPhone用のウッドスピーカーの音を聴いた時、、線もなにもつながっていないのに、木の力だけで音がここまで変わるのか!と驚きました。「音楽は身構えて聴くものではない。心地いい音を、本物の音を、日常の中で何気なく楽しめるようなものが作れれば・・・」という原田さんの想いをまさに具現化したものだと思います。ちなみに「耳触りのいい音」という表現は俗語表現ではありますが、インタビュー中に何度も出てきたため、原田さんの目指す音を表す象徴的な言葉として、あえてそのまま放送させていただきました。

2017年7月20日 (木)

営みを守る軍手

2017年7月24日~2017年7月30日放送 
東北放送 ラジオ局制作部 阿部航介

【番組概要】
宮城県の北東部、三陸の海に面した石巻市。その内陸部の飯野川地区に、軍手専門の製造工場「石巻軍手興業」があります。軍手を作っているのは、72歳の水越佳次さん。軍手を作り始めて40年になります。ひとりで軍手を作り続ける水越さん。実際に軍手を使っている方からの声を聞くのが一番嬉しいと語ります。工場の機械音とともに、水越さんの軍手作りに対する思い、そして石巻に暮らす人々と軍手がどう関わりを持っているかについてお伝えします。


【制作意図】
宮城県内で軍手を製造している場所があることに驚き、興味を持ちました。取材に伺って工場の中を拝見すると、黒光りする軍手編み機が全部で10台近くあり、それぞれがそれぞれの動き・音で軍手を編んでいました。そして、軍手編み機はもちろん、照明や換気扇、壁に至るまでもが、白いわたをうっすらと被っていました。その光景と音は見たことも聞いたこともなく、水越さんの柔らかな人柄と一緒にお伝えできたらと思いました。
地元・石巻には、工場や水産加工場で石巻軍手興業の軍手を使う方が多く存在します。水越さんの軍手が、地元石巻の働き手を支えているということ、そして水越さんがどんなことを考えて軍手を作っているかということが伝わればと思います。

【制作後記】
仕事をしながらよくお聴きになるというラジオ番組の話をしたり、地元の石巻の話をしたり、旬の食べ物の話をしたり、趣味のパチンコの話をしたり…取材の本筋以外のこともよくお話しさせていただきました。取材を通じて水越さんの温かい人間味に触れ、水越さんと石巻軍手興業がとても好きになり、番組としてお伝えできることが誇らしい気持ちになりました。
取材の度に山のように頂いた軍手は、今後大事に使っていこうと思っています。

 

2017年7月11日 (火)

いつまでも回り続けろ!神大独楽

2017年7月17日~2017年7月23日放送 
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 柳田紗緒里

【番組概要】
宮崎県宮崎市佐土原町。歴史と文化が多く残る町です。
ここに江戸時代から伝わるのが「神楽独楽」。「ホー」という独特の音を響かせて回ります。この独楽を5歳の頃からずっと作り続けているのが佐土原に住む兵頭正一さん(80)。佐土原にたった一人の神代独楽作り手です。時代の変化とともに神代独楽で遊ぶ子どもは減り、現在作り手もおりません。ですが、兵頭さんは神代独楽を作り続け、神代独楽で遊ぶ楽しみを保存会と一緒になって子ども達に伝えています。これからの未来も子ども達の手によって神代独楽が回り続けて欲しいという願いを込めながら・・・。

【制作意図】
「神代独楽」は佐土原の子ども達にとって身近な遊びでした。それが時代の変化と共に神代独楽で遊ぶ子ども、そして作り手が減って今では兵頭正一さんがただ一人神代独楽を作り続けています。兵頭さんはじめ保存会のメンバーは子ども達に神代独楽を広め、残していく為の活動を精力的に続けています。当たり前だった事が時を経ると当たり前でなくなる。でも昔から伝わる物というのは次の世代、そしてまたその次の世代にも受け継いで語り継ぐ事で新たな知識や発見になる事を伝えたいと思いました。

【制作後記】
神代独楽は音が出るのも特徴ですが、その形もまた独特です。その1個を手作業で作る・・・作ってみないと分からないという事で神代独楽作りを体験してみました。完成形しか見る事がなく、何でも簡単に作れてしまうこの時代ですが、「手作り」の良さ、作り手の苦労、そして何よりも「温かみ」を改めて感じました。そう思わせてくれたのは作り手である兵頭さんの人柄が一番大きかったと思います。

故郷(ふるさと)を描く 太鼓の音色

2017年7月10日~2017年7月16日放送 
ラジオ福島 編成局放送制作センター 森本庸平

【番組概要】
東京電力福島第一原子力発電所の事故による避難指示が、今年3月に解除された福島県川俣町山木屋地区。この地区には、15年あまり前から活動する創作和太鼓「山木屋太鼓」があります。自然豊かな故郷の風景を描いた曲を、和太鼓の演奏で表現してきました。メンバーの中に、この春、解除に合わせていち早く山木屋に戻った姉妹がいます。6年ぶりに故郷で暮らしながら、思いを新たに太鼓と向き合う2人の姿をお伝えします。

【制作意図】
東日本大震災と原発事故から6年4か月。今年春の避難指示解除で、当初の3割まで避難区域は縮小しました。しかし、住民の帰還はなかなか進んでおらず、川俣町山木屋地区もその一つです。そんな中、「山木屋太鼓」は、小学生から社会人まで若いメンバーが中心となって、ふるさとへの思いを、太鼓を通して、国内外で発信してきました。この春の解除を経て、再スタートを切った山木屋で練習に取り組むメンバーの姿を通して、今の福島の姿を全国に伝えられたらと思いました。

【制作後記】
和太鼓の演奏を間近で見るのは初めてでしたが、まずその迫力に圧倒されました。山木屋での練習はまだ限られていますが、仕事や学校終わりに集まったメンバーの表情は、リラックスして清々しい位に気持ちよさそうで、演奏の一体感も特別でした。移動距離も長く大変な人もいますが、故郷での時間を大切に過ごしているようでした。山木屋に帰った人、帰ろうとしている人、帰らない人。事情は違っても、故郷を思う気持ちは変わらない。それぞれの思いがにじみ出た、山木屋太鼓の魅力に一気に引き込まれました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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