2025年11月10日 (月)

カウンターの魔法 一歩踏み出す光

2025年11月10日~2025年11月16日
中国放送(株)RCCフロンティア 橋本 照英

【番組概要】
広島市中区にあるカウンタースタイルの靴磨き専門店「92(ナインティーツー)」を2017年にオープンした靴磨き職人の安部春輝さん。「靴磨き」は自分でもできるのに、92にはたくさんの方が通います。人々はなぜ92に通うのか?人々が安部さんの元を訪れる理由に注目しました。

【制作意図】
安部さんのお店「92」は、ただ靴を綺麗にするだけの靴磨き専門店ではありません。
そこには、イマドキのスタイリッシュなお店でありながらも、「職人の技」と「人との繋がり」がある「昭和な温かみ」がありました。人との関係性が希薄だと言われる現代に、職人を頼りにお店を訪れる人たち。そんな関係性や情熱を伝えたいと思い、制作しました。

【制作後記】
今回の取材の際、私も安部さんに革靴を磨いていただきました。今まで、見たことがないほど光り輝く自分の靴を眺め、感動したと同時に、これを履いて仕事をしたいと感じました。
また、私は今回入社して初めて、外での取材をさせていただいたのですが、緊張する私に対して、安部さんはとても気さくに話しかけてくださいました。こういった安部さんの人柄も相まって、お客さんたちは前向きな気持ちになり、きれいに磨かれた革靴とともに頑張っていらっしゃるのだろうと思います。そんな安部さんの人柄と靴の輝きを伝えることができれば幸いです。

さあさあお立合い~筑波山の伝統口上

2025年11月3日~2025年11月9日
LuckyFM茨城放送 上川浩輝

【番組概要】
筑波山にある筑波山神社。その境内で行われている「ガマの油売り口上」。
つくば市の無形文化財にも指定されている。この「ガマの油売り口上」を継承すること目的としている「筑波山ガマ口上保存会」に取材した。口上だけではない道具や環境の音含めたこの「ガマの油売り口上」をお楽しみください。

【制作意図】
「ガマの油売り口上」は落語の要素を含んでいるが、道具を使う点や外で口上を行う点など、音の観点からも面白いものが録れるのでは無いかと思い取り上げた。
口上とインタビューに答えてくださった筑波正治さんの思いも音に乗せたいと思い、両方を組み合わせて制作した。

【制作後記】
私は茨城に住み始めて半年で題材選びに悩みました。先輩社員に題材になりそうなものを聞き込みしていく中でこの「ガマの油売り口上」に出会いました。口上に道具と実演、他でなかなか聞くことのない文化で面白いと思い取り上げました。
「筑波山ガマ口上保存会」では現在、継承のため講座を開いています。「ガマの油売り口上」がこれからも筑波山神社で、そして聞いた人の心に残り続けることを願っています。

ふるさとの熱~高浜七年祭~

2025年10月27日~2025年11月2日
福井放送 報道制作局制作部 今川俊

【番組概要】
福井県の最西端に位置する高浜町。人口1万人ほどの小さな町です。この町で、数えで7年に一度行われるのが「高浜七年祭」。神輿の巡幸を中心に、太鼓・太刀振・曳山芸能・神楽・お田植・俄などの各種芸能が、連日連夜7日間に渡って繰り広げられます。小原一輝(こはらかずき)さん(32)。地元・高浜町出身で、現在は高浜町役場に勤めています。妻と子ども1人の3人暮らし。今年初めて「高浜七年祭」で太鼓を披露します。小原さんが所属するのは、東山地区の「東部若連中」。太鼓を打つとき、右手を真っすぐ上に突き上げるダイナミックな動きが特徴です。16歳から41歳までの男衆21人が、5か月間もの間、毎日2時間汗を流して練習し、本番を迎えます。高浜の人を強くつなぐ「魂の音」。この作品は、伝統の祭りに挑む小原さんと、町の熱気を描いた物語です。

【制作意図】
「高浜七年祭」は、活気があふれる町を挙げての祭りです。生まれたばかりの子どもから、お年寄りまで、町中の人が集まります。この「熱」を伝えたい、と思ったのが制作のきっかけです。リサーチをしていくうち、印象的な音に出合います。昼夜問わず、どこからともなく町に響く重低音。祭りに向けて練習を重ねる太鼓の音でした。まさに数えで7年に一度の「風物誌」。この音色を聴くと、祭りが近いのだと実感する町民も多いと聞きます。また、令和の人口減少時代、年々祭りに携わる人は減っていく一方。それでも、新たに祭りを盛り上げたいと挑戦する小原一輝さんに惹かれたことも、大きな原動力となりました。
 この音をラジオから届けることで、全国のみなさんに高浜七年祭の魅力を伝えたい、というのが制作意図です。

【制作後記】
私自身、「高浜七年祭」のことは知っていましたが、現場に足を運ぶのは今回が初めてでした。そこで感じたのは、とにかくみなさんの「熱」があるということです。老若男女、世代を問わずこれだけの人が集まる祭りは、いまだかつて見たことがない情熱にあふれた風景でした。この思いが「音」として伝わるように。編集のときには、特にこだわって作業を進めました。今後も「高浜七年祭」が末永く続いていくことを願って――。高浜町に思いをはせながら聴いていただけますと幸いです。

時の流れと南部せんべい

2025年10月20日~2025年10月26日
青森放送 制作局ラジオ制作部 大野和

【番組概要】
県外で暮らす弟と、地元青森で暮らす姉。姉は最近、地元で愛されている焼き菓子、「南部せんべい」に関心を持ち、青森県の太平洋側にあるおいらせ町(ちょう)で、明治時代からせんべいを作り続けている「川越せんべい店」を訪れます。5代目の店主、川越将弘さんから南部せんべいの製法や歴史を学び、焼きたてのせんべいを味わいます。長い伝統を守りながら地元でせんべい作りを続けていきたい、と語る店主の信念に心を動かされた姉は、弟にその魅力を伝えたいと思い、お土産にせんべいを送ります。弟は届いたせんべいを口にし、懐かしさとともに地元の味の良さを改めて感じます。一方の姉も、どこか実感の祖母に似てきたことに気づかされます。

【制作意図】
いろいろな美味しいものや、見た目も良くお洒落なお菓子が増えていく中で、青森県の県南地域で長い間愛されている焼き菓子、「南部せんべい」。小麦でできたせんべいには、軽やかな食感と素朴な味わい、そして長い歴史があります。かつて飢饉をきっかけに生まれた命をつなぐ食べ物「天保せんべい」が名前を変え、身近な焼き菓子として役割を変えても、人と人とをつなぐ、思い出の食べ物であることは変わりません。この番組を通して、自分の故郷にある思い出の味や家族や地域とのつながりなど、温かい記憶を思い出すきっかけにしてほしいという意図で制作しました。

【制作後記】
今回番組でご紹介した「川越せんべい店」は、実は去年から取材させていただいたお店でした。取材中の11月ごろに火災があったのですが、同じ場所で無事に営業を再開し、今年あらためてご縁を頂き、お話を聞くことができました。取材当時は9月半ばとは思えないほど暑く、石窯の熱気も合わせると気温が40度近くなる中で、大きな石窯でリズム良く正確にせんべいを焼く職人技には圧倒されました。私にも弟がいて、番組制作後に川越せんべい店で購入したせんべいを何種類か弟に送りました。今回番組内では紹介できなかったのですが、バターを使った南部せんべいが特に美味しかったそうです。子どものころよく食べたせんべいが、今になって家族や地元の人と話すきっかけになることの嬉しさを、番組制作を通して改めて感じました。

地下鉄のさえずり

2025年10月13日~2025年10月19日
北海道放送 オーディオビジネス局 編成制作部 (株)カトエムシー加藤 丈晴

※2025年度録音風物誌番組コンクール最優秀賞受賞作品(再放送)

【番組概要】
北海道には1971年・昭和46年に開通した日本で4番目にできた地下鉄があります。札幌の地下鉄が開業したのは、1972年に開催された札幌オリンピックの2カ月前、1971年12月16日です。じつは札幌の地下鉄の車輪はゴムタイヤを採用していて、これは日本で唯一で【札幌方式】と呼ばれることもあります。そのため通常の電車とは異なる仕組みがあり、そこから札幌の地下鉄ならではの音も鳴ります。地下鉄開業に奮闘した元職員、そして現役職員の声とともに札幌の地下鉄の歴史と【さえずり】をお送りします。

【制作意図】
鉄道好きの方にはもうおなじみかと思われますが、札幌の地下鉄はカーブなどで独特な音がします。札幌市民の中にはそれは日常なので気づいていない方もいますが、気づいた方は「鳥のさえずりのようだ」と言うこともあります。半世紀以上にわたってなり続けてきた札幌の音をお聴きいただきたいと思いました。

【制作後記】
登場する若原嗣男さん(元札幌市技術職員)は、札幌の地下鉄開業について「とにかく、(あの環境で)よくできたなと思う」という言葉を何度も口にしていました。はじめてのことでほぼ誰もわからない中、東京・大阪で地下鉄工事に携わった各大手建設会社のエース級のスタッフに教えを請い、地元住民ほか関係各所の協力もあって開業にこぎつけた、と。とにかく工期を決めていたのでそれに向かって必死に頑張ったそうです。新たな輸送手段を作るという目的はもちろん「オリンピックまでに!」を合言葉にみなさん突き進んだそうです。 ところであなただったら、あの地下鉄の音を聴いてなんと表現しますか?

Hello!黄色いビブス~サインは平和への証~

2025年10月6日~2025年10月12日
中国放送 株式会社RCCフロンティア 兼清 友希

※2025年度録音風物誌番組コンクール優秀賞受賞作品(再放送)

【番組概要】
広島市中区の中心部にある平和記念公園で、ボランティアガイドとして活動する佐々木駿くん。黄色いビブスと黄色い帽子を被って、月2回、外国人観光客に無料でガイドをしています。ガイドを始める前は、戦争・原爆のことはほとんど知らなかった駿くん。なぜガイドをしようと思ったのか?外国人に、英語で平和記念公園の歴史と、被ばく体験を伝える駿くんに注目しました。

【制作意図】
今年、原爆投下から80年という節目を迎える広島。被ばく者の高齢化が進むなか、体験の伝承が大きな課題となっています。そんな広島で、一人の少年がガイドとして活動しています。被ばく地・広島の現状と、ガイドを通して海外と日本の平和の架け橋になっている駿くんの姿を伝えたいと思い、制作しました。

【制作後記】
お母さんいわく、「小さい頃から人見知りしない性格」という駿くん。その言葉の通り、自分からどんどん外国人に声をかけて、ガイドをしていました。ちなみに、駿くんのビブスは現在2枚目。1枚目のビブスも見せてもらったのですが、前・後ろ・肩…と全面にサインがびっしり。書く場所がほとんどありませんでした。取材中、「これからも出来る限りガイドを続けたい」と笑顔で話してくれたのが印象に残っています。今後も活躍を追っていきたいです。


どんぐりピアノ~70年目の音色~

2025年9月29日~2025年10月5日
南日本放送 音声メディア部 美坂 理恵

※2025年度録音風物誌番組コンクール優秀賞受賞作品(再放送)

【番組概要】
鹿児島県霧島市牧園の三体小学校で70年にわたり引き継がれ、「どんぐりピアノ」の愛称で親しまれる古いグランドピアノがあります。このピアノは終戦直後の物のない時代、三体小や旧三体中学校の児童生徒や地区住民らが協力し、近くの山からドングリの実200キロを拾い集め、5万本のクヌギの苗木に育て、それを植林して得た資金で購入しました。当時、どんぐりを広い集めた女性と、「どんぐりピアノ」の歴史を伝えようと活動するピアニストにお話を伺いました。実は二人は・・・。70年目を迎えた「どんぐりピアノ」の澄み切った音色とともにお伝えします。

【制作意図】
現在、三体小学校の児童数は5人。数年後には休校になるのではという話も聞こえてきます。今年はどんぐりピアノが三体小にやってきてちょうど70年であること、子どもたちの声とともにあるどんぐりピアノの音色を記録し、録音風物詩で多くの方に聴いていただきたいと制作しました。

【制作後記】
どんぐりピアノの音色はとても艶やかでクリア。丁寧に調律されていることが伝わってきます。この古いグランドピアノを調律できる方は県内にはもう1人しかいないそうです。番組の中で子どもたちが歌っている「どんぐりピアノの歌」は当時の教頭が作詞したものだったり、どんぐりピアノの歴史を子どもたちに伝えたいと保護者が中心となって手作りした絵本があったり・・・「どんぐりピアノ」を通して子どもたちへの温かい思いを感じる取材となりました。   

2025年9月29日 (月)

風鈴の音色に願いをのせて

2025年9月22日~2025年9月28日
四国放送 編成局ラジオ編成制作部 田中 宏之

【番組概要】
縁結びのお寺として知られている徳島県勝浦郡勝浦町にある胎蔵寺。こちらでは、2021年から短冊に願いを託して奉納する風鈴まつりが毎年開催されています。風鈴まつりを始めたのは、住職・新田法弘さんの友人がいった一言から。初回は150個からスタートした風鈴まつりも今では500個を超え、お寺を訪れる参拝者に美しい風景と音色を届けるとともに、人々の願いを伝える場になっています。    

【制作意図】
胎蔵寺の風鈴まつりを知ったのは、別番組の取材からでした。私自身が胎蔵寺を訪れ、新田さんの人柄、風鈴が奏でる優しい音色に癒されたこともあり、ぜひラジオを通して皆さんにも風鈴まつりの様子を感じていただきたいと思いました。また、お寺が子供たちにとっての憩いの場となっている様子も取り上げ、地元住民とお寺の繋がりの大切さも感じとっていただきたいです。

【制作後記】
20数年前に大病を患って、死の瀬戸際をさまよった新田さん。多くの人に支えられ、乗り越えることができたそうです。その経験を経て、多くの人に恩返しをしたいという新田さんの「願い」が風鈴まつりにはこめられています。 「願い」は想うだけでなく、書いて表すことで他の人と繋がり、より大きな願いへと広がっていくのかもしれません。今後も胎蔵寺の風鈴まつりがより多くの人を癒し、愛されるイベントになっていくことを願っています。    

81歳、まだまだ夢中!

2025年9月15日~2025年9月21日
長崎放送 報道制作部 久保田麻智子

【番組概要】
長崎市に住む、福吉拓雄さん。1944年(昭和19年)生まれの御年81歳。
子どもの頃からラジオ作りが趣味です。家庭にラジオがある、というのが当たり前ではなかった少年時代。学校の図書室にあるラジオの回路図を書き写し、先生が持っていたラジオを眺め、祖父の家にあったラジオを分解しては組み立て、を繰り返した。その情熱が、少年時代をあざやかに彩りました。定年後も変わらぬ情熱で、子どもたちに電気の面白さ、モノづくりの楽しさを伝えています。熱中することが、人生を輝かせる、と教えてくれます。

【制作意図】
一つのことに純粋に熱中する気持ちを思い出させてくれた福吉さん。「子どもの頃は、ラジオの回路図が頭の中に入っていた。」というほど。3人兄弟の長男だった福吉さん。本音を言えば、大学に行きたい気持ちもあったけど、家族のことを思ったら就職するしかなかった。でも、電気が好きだったから、二言なく就職しました。自分の好きなことを叱らずに認めてくれて、電気の道をすすめてくれた、
父親の想いに応えられたかな。」と、話します。セピア色になった理科の教科書を「これは大好きだから、近くに置いておきたいんです。これが原点だね。」と見せてくれました。少年時代の気持ちのままに、熱中する福吉さんの輝く姿が伝わったら良いなと思います。

【制作後記】
福吉さんは、ラジオ以外にも趣味がたくさん。カメラ(写真を撮ること)、随筆を書くこと、竹とんぼ作り、ハーモニカ、マラソンなど。アマチュア無線も楽しんでいて、同好会や愛好会の仲間もたくさんいます。自宅では、プランターで植物を育てたり、老人クラブに出かけて行って、料理を習ったりと、とにかく快活な方です。取材のために持って行った、小型ラジオやラジカセ、録音機材にも興味津々そして、話し出すと止まらない。とても楽しい取材でした。奥様は、手作りのラジオで溢れる棚を見て「少々迷惑」と溜息を吐いていましたが、そんな奥様もラジオ好き。それぞれの部屋で、それぞれが好きなラジオ番組を楽しんでいる姿を見て、ラジオ制作者として嬉しかったです。

ドンドコ響け! ~竹太鼓村から広がる希望の竹~

2025年9月8日~2025年9月14日
南海放送 メディアセンター 君岡きらら

【番組概要】
愛媛県松山市を代表する観光地・道後温泉。湯の町から車で10分ほど走った山あいに「かぐや姫太陽竹太鼓村」はあります。村を作ったのは、78歳 林薫さん。全国で問題となっている放置竹林――地域のお困りものである竹を、“豊かな資源”と考え活用しています。切り出した竹は、力強い音を響かせる竹太鼓に、また夏の風物詩・流しそうめんが流れるレールや器、お箸に。竹を使って人々を笑顔にしています。林村長のやさしい思いは村を越えて広がり、竹太鼓の輪は地域へとつながっています。

【制作意図】
大学時代、地域活性化を学んでいた頃、山あいに暮らす方々との会話でよく耳にしたのが「竹のお困りごと」でした。「家の裏の竹林が家まで迫ってきよる」「竹がネットみたいに重なって、放置竹林に入るのもひと苦労」「線路まで竹が侵食しよる」そんな声を聞くたびに、竹は厄介者として扱われていることを実感しました。
しかし同時に、竹はかつて日本人の暮らしを支えてきた大切な資源でもあります。その価値を見直し、“希望ある資源”として生かそうと挑む林さん。「放置竹林を太鼓やそうめん流しへアップサイクルして、地域に笑顔を広げていく姿を、多くの方に伝えたい!」そんな思いからこの番組を制作しました。

【制作後記】
竹の可能性を信じ、「かぐや姫太陽竹太鼓村」まで作り上げた林村長。編集作業中は、チャーミングな話しぶりにこちらまで癒され、気づけば自然と笑顔に。頭の中では「林村長って、現代版花咲じいさんみたいだな~」と思わずたとえていました。そんな村長の人柄を、番組を通して少しでも伝えられていれば嬉しいです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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