2025年1月31日 (金)

アロハイサイ! ~沖縄とハワイ、125年のつながり~

2025年1月27日~2025年2月2日
ラジオ沖縄 制作報道局 報道部 當銘真喜子

【番組概要】
沖縄でフラスタジオの代表を務める仲本大樹(なかもと・たいき)さん。
高校生の時に「ハワイに親戚がいるよ」と母親から何気なく聞かされ、ハワイへ渡りました。そこで感じた沖縄ハワイ移民たちの沖縄を想う気持ちに動かされ、移民の歴史について継承するために様々な取り組みを行っています。その中のひとつが、去年12月中旬に行われたイベント『ハースー』です。フラの動きを取り入れたストレッチを行い、最後はみんなでフラを踊ります。参加者は小さな子どもからシニアまで男女問わず、青空の下でフラを楽しんでいました。
イベントでコラボレーションした北中城村は、沖縄ハワイ移民2世の比嘉太郎トーマスさんのゆかりの地です。比嘉太郎トーマスさんは、沖縄戦にアメリカの通訳兵として従軍し、沖縄の人々を救ったり、戦後の沖縄救済運動を行った人です。イベントでは、沖縄でフラを踊ることの意義や移民の歴史を参加者へ伝えています。沖縄ハワイ移民の歴史継承のために奮闘する仲本さんの活動への想いを綴っています。

【制作意図】
今年、沖縄からのハワイ移民は125周年の節目を迎えました。
沖縄はハワイの他にも、南米や北米などへ移民が渡った歴史を持ち、世界中に沖縄県系人がいます。沖縄県は、移民県民や県系人も含めた沖縄に関わる全ての人々の繋がりを継承するため、毎年10月30日を「世界のウチナーンチュの日」とし記念日としています。この日沖縄にやってきた沖縄県系人たちが「ただいま!」と涙をする姿を見て、先人たちの沖縄を想う気持ちが世代をこえて受け継がれているんだなと感じています。私は、ハワイへ行ったことはありませんが、現地で聞こえる沖縄の方言(ウチナーグチ)やエイサーなど沖縄らしさに出会うことを想像するだけで嬉しくなります。
沖縄ハワイ移民が初めて海を渡ってから125年経ちましたが、ハワイで脈々と受け継がれてきた先人たちの故郷を想う心や地元に対する愛情、誇り、繋がりについて知るきっかけになればと企画しました。ぜひ皆さんの地元や移住地など愛着のある場所を思い浮かべながら聞いてほしいです。

【制作後記】
当時18歳の仲本さんが、母親から「ハワイに親戚がいる」と聞き、親戚に会いに行ったことは、人生を動かすほどのターニングポイントとなりました。仲本さんは、現地の人々と交流を重ね、フラを習って沖縄へ持ち帰りスタジオを開くことに繋げていてその行動力にも驚かされました。仲本さんの沖縄とハワイへの大きな愛に触れた取材でした。イベント「ハースー」には、県内外のフラ経験の有無を問わない参加者、およそ20人が、リラックスした様子で体を動かしていました。イベントで比嘉太郎トーマスさんの話がありましたが、知っている人は全体の1割程度。認知度は高くありません。
イベント後に参加者へ話を伺うと仲本さんの沖縄とハワイの歴史と、先人たちの故郷を思う心を少しでも知ってもらいたいという気持ちが届いていると感じました。仲本さんは今年、新たな取り組みとして移民をテーマにしたフラや移民劇を行うということなので活動を継続して取材していきたいです。

2025年1月16日 (木)

べっこう夫婦と海の宝石

2025年1月20日~2025年1月26日
長崎放送 報道メディア局 報道制作部 戸島夢子

【番組概要】
江戸時代、日本で唯一貿易の窓口だった長崎の出島に、中国より伝来した「長崎べっ甲」。
しっとりとした艶、空気のような軽さ、深みのある光沢。その美しさから、「海の宝石」と呼ばれ、国の伝統工芸品にも指定されています。その一方で、ワシントン条約によって1993年にタイマイの輸入が禁止されると、べっ甲業は材料不足に加え後継者不足にも頭を抱えることとなりました。
全盛期には200社ほどあったべっ甲業者も、今では20社ほど。「長崎べっ甲」の歴史と技術を守り継ぐべく、日夜作業台に向かう仲睦まじい職人夫婦を取材しました。

【制作意図】
長崎の港には、大きな客船が毎日のように寄港し、海外の旅行客で賑わっています。かつて長崎土産として人気を博した「長崎べっ甲」は、”絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約=ワシントン条約”により国外への輸出入が禁止されました。海外旅行客がお土産として「長崎べっ甲」を持ち帰ることも、原材料となるタイマイの甲羅を海外から仕入れることも出来ないのです。
原材料は残りわずか。後継ぎも業界全体で減少していることを知りました。べっ甲業界は大きな問題に直面しています。「長崎べっ甲」がこれからも長崎の伝統工芸品として残り続けてほしい、
少しでも多くの人にべっ甲の良さを伝えたいと思い制作しました。

【制作後記】
取材した「有限会社 安田 安龍工房」の二代目・藤原慎二さんと佳美さん夫婦。おふたりともとても明るく、終始笑いの絶えない現場でしたが、べっ甲の話となると真剣な表情に。苦境の中にあっても、べっ甲への愛と情熱、新しいデザインを創り出す探究心を忘れずにお持ちなのだと、私も胸が熱くなりました。べっ甲細工職人とそれを支える方々に守られてきたこの技術が、これからも10年、20年と受け継がれていくこと、”長崎べっ甲”が末永く愛される長崎の工芸品であることを心から願っています。

100円モーニングがもたらす希望

2025年1月13日~2025年1月19日
KBS京都 ラジオ編成制作部 西村佳恵

【番組概要】
築50年、190戸中およそ4割が65歳以上の一人住まいという西京極大門ハイツ(京都市右京区)では、自主管理組合の運営のもと敷地内の集会所で毎週日曜8時半から「日曜喫茶」を開いています。
淹れたてのコーヒーとトーストに、ゆで卵が付いてたったの100円。
ボランティアの住民が交代で運営し、毎回30~40名が集う憩いの場となっています。
高齢化が加速し、ますます高齢独居者が増えていく中で、一つ屋根の下、日曜喫茶を通してつながりを深め、「おひとりさま」が明るく暮らしている様子をお届けします。

【制作意図】
今回取材した「西京極大門ハイツ」は築50年で西京極という決して便利ではない駅から徒歩10分のマンションにも関わらず、資産価値が下がらないと話題のマンションです。その理由の一つとして、住民が日曜喫茶やマンション内で開催されるイベントを通して、良好なコミュニティを築いているため、マンション管理の話し合いでも適切な合意形成がなされ、快適な住環境が維持できているそうです。
マンションが古くなるにつれ、住民も老いていく。“人と建物の老朽化”というネガティブな印象を感じさせないマンションの取り組みが気になり、今回取材をさせて頂きました。

【制作後記】
トーストにゆで卵、コーヒーが付いて100円とはお得なモーニングだと思われますが、取材に行くと意外とコーヒーだけ注文する方も多く、皆が皆、朝食目的というわけでもないようです。集会所ではおしゃべりに花を咲かせる人たちもいれば、新聞を読んだり、テレビを見たり、過ごし方は人それぞれ。それでも、ひとり家に籠っているのではなく、ちゃんと身だしなみを整えて、人に会いに行くということを大切にされている印象でした。日曜喫茶は最初隔週開催でしたが、毎週開催に変えた後の方が参加率が高いそうです。管理組合の理事長は週に1回、100円玉を握りしめて来れば、住人の健康確認ができると仰っていましたが、それにより生きがいができたという方もいて、自分もこんなマンションに住んでみたいと思いました。

2024年12月24日 (火)

遠州織物と紡ぐふるさとのぬくもり

2025年1月6日~2025年1月12日
静岡放送 ラジオ局オーディオコンテンツセンター 寺田愛

【番組概要】
静岡県の西部・浜松市を中心とした遠州地方は、綿織物の日本三大産地として知られています。豊かな水と温暖な気候のおかげで、古くから綿花の産地として栄えていた遠州地方。江戸時代には綿織物の製造が始まり、その後明治時代に豊田佐吉氏(トヨタグループ創業者)によって小幅力織機が発明され、生産量は飛躍的に増加しました。
遠州地方で織られたものはすべて遠州織物と呼ばれています。
地域に根ざした産業の一つとなっていた遠州織物ですが、時代の変化などにより現在は厳しい状況に置かれています。
そんな中、地域の誇りとしての「遠州織物」を未来につないでいこうと活動している桂川さんに出会いました。今回は、桂川さんのベイビーボックスの活動を中心に、地域に残る伝統技術と職人の思いを取材し番組にまとめました。

【制作意図】
赤ちゃんグッズをまとめたベイビーボックスを制作している桂川さん。グッズ一つ一つに「遠州織物」の技術が使われています。それぞれの得意分野を持った職人さんたちとコミュニケーションをとりながら、物事を進めていく姿が印象に残りました。ご自身の子育て経験も踏まえて誕生した「ベイビーボックス」。桂川さんの、素晴らしい伝統技術を地域で育つこどもたちへ繋いでいきたいという願いを番組を通して伝えたいと思い制作しました。

【制作後記】
この取材をするまでは、「遠州織物」について、名前を聞いたことがあるくらいで漠然とした知識しか持っていませんでした。どんな布で、どこがどんな風に素晴らしいのか…桂川さんをはじめ、取材したみなさんがいきいきと語ってくださり、「遠州織物」の魅力をより理解できました。まだまだ奥が深い「遠州織物」。この技術が地域の方たちの誇りとして、途切れることなく未来へ繋がっていくよう願っています。


唄いやんこ~私の山中節~

2024年12月30日~2025年1月5日
北陸放送 ラジオ開発局 中川留美

【番組概要】

日本三大民謡のひとつに数えられる「山中節」。毎年全国コンクールや認定審査会など、緊張する場が多い中、もっと気軽に楽しく唄い合おうという思いから始まった「山中節唄いやんこ」があります。“唄いやんこ”とは、山中弁で“唄いあいっこ”のこと。山中節の愛好家たちが県内外から集まり、好きな歌詞をそれぞれの思いで唄い合います。40年続く「山名節唄いやんこ」は唄の上手下手は関係ない。参加する人が楽しんで唄う場です。

【制作意図】

唄を競い合うこともない、結果を気にすることもない、好きな山中節を思うままに唄い合っているのを聞きながら、山中温泉で大切に唄い継がれてきた歴史を感じました。参加した人の歌声と山中節の歌詞について触れながら、40年続いてきた「山中節唄いやんこ」の様子を伝えたいと思いました。

【制作後記】

“唄いやんこ”という言葉の可愛さに興味を持ちました。取材前は、山中節ばかりが繰り返し唄われることに飽きがくるのではと心配していましたが、全く飽きることはありませんでした。その場で「山中節唄いやんこ」を聴いていると、歌詞から伝わる山名温泉の自然や情景、温泉を訪れた旅人の様子まで思い浮かんできました。哀愁のある曲調に聴き入りながらも、「はぁ~」という歌い出しは、まるで温泉に浸かったときの気持ち良さから出たような声のようにも思えました。山中温泉の自然や人があってこその山中節。ひと節だけでも覚えて、私も山中節を唄ってみたくなりました。

どんぐりピアノ~70年目の音色~

2024年12月23日~12月29日
南日本放送 音声メディア 美坂理恵

【番組概要】
鹿児島県霧島市牧園の三体小学校で70年にわたり引き継がれ、「どんぐりピアノ」の愛称で親しまれる古いグランドピアノがあります。このピアノは終戦直後の物のない時代、三体小や旧三体中学校の児童生徒や地区住民らが協力し、近くの山からドングリの実200キロを拾い集め、5万本のクヌギの苗木に育て、それを植林して得た資金で購入しました。当時、どんぐりを広い集めた女性と、「どんぐりピアノ」の歴史を伝えようと活動するピアニストにお話を伺いました。実は二人は・・・。70年目を迎えた「どんぐりピアノ」の澄み切った音色とともにお伝えします。

【制作意図】
現在、三体小学校の児童数は5人。数年後には休校になるのではという話も聞こえてきます。今年はどんぐりピアノが三体小にやってきてちょうど70年であること、子どもたちの声とともにあるどんぐりピアノの音色を記録し、録音風物誌で多くの方に聴いていただきたいと制作しました。

【制作後記】
どんぐりピアノの音色はとても艶やかでクリア。丁寧に調律されていることが伝わってきます。この古いグランドピアノを調律できる方は県内にはもう1人しかいないそうです。番組の中で子どもたちが歌っている「どんぐりピアノの歌」は当時の教頭が作詞したものだったり、どんぐりピアノの歴史を子どもたちに伝えたいと保護者が中心となって手作りした絵本があったり・・・「どんぐりピアノ」を通して子どもたちへの温かい思いを感じる取材となりました。

今宵、白馬で逢いましょう

2024年12月16日~12月22日
熊本放送 ラジオ制作部 高野泰宏

【番組概要】

八代市にあるキャバレーニュー白馬は日本でも数少ないキャバレー。ステージに生バンド。シャンデリアにミラーボールと雰囲気は昭和のまま。しかし、不景気、キャバクラ、スナックの台頭でキャバレーは姿を消していきました。このニュー白馬で初舞台を踏んで日本を代表する歌姫となった地元出身の女性歌手がいました。昨年末に急逝した八代亜紀さんです。社長の池田義信さんによると今年になって八代さんの聖地巡礼として来店する人が急増したそうです。八代さんは里帰りする際にはここを訪れ、経営継続を訴えました。池田さんは「昔からの客には懐古を新規客には新しさ」をコンセプトに営業を継続しています。

【制作意図】

放送が年末であったということと昨年末に八代亜紀さんが亡くなったということもあり、彼女のデビューの地である一説には日本唯一といわれるキャバレーを取りあげるしかないと思いました

【制作後記】

番組で使用した曲は1ッ箇所を除いて、八代亜紀さんの曲です。また、八代亜紀の部分は弊社のテレビ番組から流用したものでラジオテレビ兼営局のメリットができたかなと思います。参考までに料金は80分、飲み放題、歌い放題5500円です。


海から届いたふるさとの調べ

2024年12月9日~12月15日
青森放送 ラジオ制作部 大野和

【番組概要】

久しぶりに故郷の海沿いの町、青森県野辺地町(のへじまち)に戻ってきました。
懐かしい風景のなか、夕方5時のチャイムを聴きます。幼い頃に親しんだ野辺地祇園まつりが近づき、町全体が熱気に包まれます。聴こえてきたのは、どこか懐かしいメロディー。
それは、夕方のチャイムと関係がある祇園囃子の旋律でした。
そして、小学校では、子どもたちが一生懸命に練習した演奏を聴きます。
それは合奏曲「祭り日」。実はこの曲が、夕方5時を知らせるチャイムの「調べ」です。

祇園まつりや子どもたちの合奏を通して、この町の文化が脈々と受け継がれていることに
気づかされます。そして、夕方のチャイムの持つ意味。それは単なる時間の合図ではなく、人々の暮らしや心のつながりを象徴するものだと改めて理解しました。
故郷の海の音とチャイムを聞きながら、この町の文化がこれからも途絶えることなく、
次の世代へと引き継がれていくことを願いました。

【制作意図】

かつて大阪・京都から日本海を通って交易していた「北前船(きたまえぶね)」。
その船が青森県野辺地町に寄港していたことから、町には上方文化が根付きました。
その一つが「祇園まつり」です。祭りが継承されるなかで、祇園の囃子は合奏曲とチャイムという新たな形として受け継がれています。人になるとただ時間を知らせるチャイム、と思う人もいるかもしれませんが、子どもたちは今もその音を楽しみ、町の文化を守っています。この番組を通して、
合奏曲とチャイムに込められた町の人の思いを伝え、自分の住んでいた場所や日常の中の大切なものに気づいてほしいという意図で制作しました。



【制作後記】

「祭り日」は、昭和40年代ごろに野辺地小学校で音楽を教えていた
渕沢和子(ふちざわかずこ)さんが、野辺地祇園まつりで子供たちが演奏する祇園囃子
「祇園(ぎおん)」「渡り」「夜神楽(よかぐら)」「剣(けん)」「楽(がく)」の5曲を
鍵盤ハーモニカやリコーダーなどで演奏できるメロディにアレンジした曲です。
直接お話を聞きたかったのですが、ご高齢のためお話を聞くことができず残念でした。
自分で題材を決め、自分で取材をして番組を作ることになったら一度紹介したいと思っていたのが、野辺地町のチャイムでした。どこか哀愁のある独特なメロディーですが、このチャイムを聴くたびに自分が子どものころに演奏した祭り日や祇園まつりの記憶が蘇り、懐かしく温かい気持ちになります。
番組の中ではご紹介できませんでしたが、子供の頃祭り日を演奏したという町の方は、
自分が担当した楽器や当時何人で演奏したかなどを覚えていたり、自分の子どもが祭り日の演奏をしたのを観に行って覚えていたり…
長い間野辺地町で祭り日が愛されているのを知ることができてとても嬉しかったです。

 

じいちゃんのしめ縄は唯一無二! 孫プロデューサー奮闘中

2024年12月2日~12月8日
南海放送 メディアセンター 平野和子

【番組概要】
愛媛県の米どころ西予市宇和に生まれ育つ上甲清(じょうこう・きよし)さん88歳。米作りの傍ら作るしめ縄が評判になり、産直市などへ出荷するように。
仕事で愛媛の特産品を販売していた孫の智香さん27歳は、商品として見た祖父のしめ縄の可能性を感じ、仕事をやめて、祖父のしめ縄作りのプロデュースを始めた。今では全国にファンが増えている。じいちゃんを尊敬し、広く知って欲しいと活動する孫との二人の師走を伝える。

【制作意図】
失われつつ米文化を継承しようとする祖父と孫。SNSなどを駆使し、新たな繋がりを作りながら、米農家の生き様、農村文化を伝えようと奮闘する2人の様子を追った。

【制作後記】

12月14日㈯から東京で上甲清さんの展示会が行われる。
「米と藁。しめ縄職人 上甲 清 展」
・2024年12月14日㈯~26日㈭ 10:00~19:00
・21_21DESIGN SIGHT

問い合わせ 
株式会社 メソッド
info@wearemethod.com

https://www.2121designsight.jp/gallery3/rice_and_straw/



未来へ!世界へ!海を渡る船箪笥

2024年11月25日~12月1日
山形放送 報道制作局制作部  神保 美帆

【番組概要】

山形県酒田市にある木工店の4代目・加藤渉さん(50)。釘などを使わずに木材を組み合わせる「指物(さしもの)」の技術を継承し、現在は伝統工芸品「酒田船箪笥」も製作しています。
江戸時代から明治時代にかけて、寄港地で商品を売買しながら航海をしていた北前船。
船の中で金品などを保管する金庫のような役割をしていたのが「船箪笥」です。
酒田は新潟県・佐渡、福井県・三国と並ぶ船箪笥の三大名産地の1つですが、需要の減少や職人の高齢化と担い手不足により近年では新たな船箪笥は製作されていませんでした。港町の伝統を復活させたい、という思いのもと酒田船箪笥の“復興”にチャレンジをしている加藤さんを追いました。



【制作意図】

酒田船箪笥は指物、漆塗、装飾金具と各職人が分担して製作をしていますが、装飾金具だけは酒田市内で作り手を見つけることができないでいました。
そんな時、地元高校の工業科の生徒から「船箪笥の装飾金具を作ってみたい」と声がかかりました。次の時代に伝統工芸品を繋いでいきたいという加藤さんの思いと、高校生たちの取り組みをたくさんの人に届けたいと思い、取材しました。



【制作後記】

加藤さんは後継者不足と認知度不足が課題だと感じ、製作の傍ら様々な場所で船箪笥について発信を続けてきました。「伝統を繋いでいきたい」という思いが高校生に届き、「地元の作り手の力で船箪笥を製作する」という加藤さんの夢の実現に近づいた瞬間を傍で見ることができ、私もとても嬉しかったです。
地元の高校生たちも、酒田船箪笥や酒田の歴史については知らない部分も多く、装飾金具作りは地元の歴史を見つめ直すきっかけにもなったそうです。時々苦戦しながらも、楽しそうに金具作りに取り組んでいる高校生の姿が印象的でした。

 

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

ブログ powered by TypePad