2023年12月 7日 (木)

港町に響く音頭~細島・口説きの守り人たち~

2023年11月27日~2023年12月3日放送 
宮崎放送 ラジオ部 宇田津 幸恵

【番組概要】
古くから漁業や交易で栄えてきた宮崎県日向市細島。この港町では、お盆の時期、初盆を迎えた家で音頭取りたちが音頭を取り、それに合わせて近所の人々が集まり踊って、明るく楽しくご先祖様や故人を迎えるという風習があります。番組では、交易文化の名残りとしてとどまり、細島の人々を家族のように繋ぐこの音頭の口説きについて、口説き手で師匠と弟子の関係である俵兵蔵さんと岸本謙二さんの物語とともに紹介します。

【制作意図】
今回の物語の舞台である細島は、父の故郷です。子どもの頃からこの音頭、口説きのメロディには耳馴染みがあり、いつか作品に残せたらいいなと思っていました。この音から記憶を辿ると、そこには細島の人々が家族のように集い笑って踊っている姿があり、その情景を思い浮かべると、楽しさだけではない、日本のお盆特有の懐かしさや切なさも感じます。日本各地にあるそれぞれのお盆の姿。その一つとして、細島のお盆の姿を口説き手の物語を通して感じていただけたら、そして、聴いた方が少しでもそれぞれの故郷へ思いを馳せる機会になったら嬉しいなという思いで制作しました。

【制作後記】
実は今回、師匠の俵さんに前向きな心境の変化があり、取材後に「来年はケンボ(岸本さん)と音頭を取るからあんたも踊りにきない!」と声をかけてくださいました。来夏、師弟の二人が一緒に音頭を取る姿を見られるのが、そしてそれに合わせて踊るのが今からとても楽しみです。録音風物誌に携わらせていただくと、何をとってもそこには物語が存在するということに改めて気づかされます。日々精進して、作品作りの筋力を鍛えていきたいです。




那覇大綱挽まつり

2023年11月20日~2023年11月26日放送 
琉球放送 報道制作部 銘苅 強


【番組概要】
新型コロナウイルスの流行を乗り越えて、およそ4年ぶりの通常開催となった「那覇大綱挽まつり」1450年ごろより続く伝統は、2023年になったいまも”まつり”として続いています。世界ギネス記録にも登録されている大綱は、長さおよそ200メートル、重さおよそ40トン。男女に見立て2本に分けた綱を、人力で繋ぐことでまつりが始まります。綱挽参加者20,000人の掛け声と爆竹の音が印象的です。まつり自体への来場参加者数は約27万5,000人。多くの人が待ちわびていた沖縄県那覇市の伝統的なまつりを「地元の祭り」視点からお届けします。

【制作意図】
およそ4年ぶりの通常開催となった那覇大綱挽まつり。2020年以降、新型コロナウイルスの蔓延により開催中止となっていましたがようやく「いつものまつり」として沖縄県那覇市に帰ってきました。昨年は規模を縮小して実施しようとするも、まるでまつりの神が時期尚早と諭すかの様に開始前に綱がほどけるトラブルが発生してしまい、開催できずにいました。県民が臆することなく盛り上がることができた今年の大綱挽まつり。新型コロナウィルスによって自身が慣れ親しむ季節ごとの風物詩までもが
少なくなっていたことを改めて実感しました。しかしだからこそ、それが戻ってきた喜びを、人々が楽しむ様子を存分に届けられたらと思い制作しました。

【制作後記】
「音がある祭り」ということもあり”那覇大綱挽まつり”を題材にしました。もう少し細かく会場アナウンスを録り、番組内で使用することでナレーションで説明するだけでなく、より臨場感のある
まつり独特の雰囲気が演出できたのではと感じています。

 

みんなでポクポク~音楽のお寺・龍泉寺

2023年11月13日~2023年11月19日放送 
和歌山放送 報道制作部 寺門秀介


【番組概要】
和歌山県南部・田辺市にある浄土宗の古刹「龍泉寺」では、毎年春と秋の彼岸に檀家や市民を本堂に集めてユニークなコンサートを開いている。参加者が楽器の演奏に合わせて小さな木魚を一緒にポクポクと叩きながら楽しめる趣向が好評を博している。ブラジル・サンパウロ出身で日系三世の住職・田中実マルコスさんと、妻で龍泉寺の娘・素子さんが企画したもので、回を重ねるごとに参加者の輪が広がるとともに、妻・素子さんの母親までオカリナの演奏に加わるなど、お寺総出の一大イベントとなっている。住職夫妻がこのコンサートに込めた思いを音楽と歌で綴る。

【制作意図】
紛争や事件、虐待、経済危機など殺伐とした世情のなか、音楽を一緒に楽しめる寺として心の拠り所にしようと工夫を凝らす住職夫妻。葬儀や法事など「死」を連想されてしまいがちな寺だが、住職夫妻は仏具の木魚でさえも気分を高揚させるアイテムとして活用することで、寺を「生」の象徴に昇華させようと強く願っている。寺の重要な役割をコンサートに込めて表現しようと励む和歌山県南部の地方都市の動きを紹介する。

【制作後記】
住職の田中実マルコスさんが語る「生きる希望の湧く癒やしのお寺にしたい」という言葉が胸に刺さった。マルコスさんの故郷・ブラジルの教会でも歌は欠かせない重要なもので、両者に共通したスピリットを連想した。音楽を聴きに、歌いに、時には演奏しに集まる年2回の寺参りは和歌山県田辺市民の心と体を動かす原動力になっていると感じた。お寺の多様性もまた、人の心や命を救う重要な要素なのだろう。


多年を保つ保多織~江戸時代のお殿様からのGift~

2023年11月6日~2023年11月12日放送 
西日本放送 ラジオセンター 白井美由紀


【番組概要】
高松市にある岩部保多織本舗。ここで織られるのが、保多織(ぼたおり)。その歴史は古く、江戸時代から330年以上も続いている織物です。高松藩初代城主松平頼重公が京都の織りもの師を呼び寄せ、朝夕に風がピタッと止まってしまい蒸し暑いこの高松の環境でも快適に過ごすことができるような衣服のための織物を作らせたのが、保多織のはじまりと言われています。その保多織を唯一受け継いでいた岩部さんを取材しました。
保多織は、平織りの変形で、肌ざわりの良さと通気性や吸水性にすぐれた織物です。独特な凹凸があり、このすき間が空気を含むため、夏はさらっとした肌ざわりで、冬は逆に肌に触れたときの冷たさをあまり感じないという特徴があります。江戸時代から発明されていた機能性衣服です。さらに、「多年を保つ」といわれるように大変丈夫でもあります。保多織の命名も頼重公だったといわれています。そんな歴史ある織物を実際に手織り機で織りながら話をしてくださいました。
歴史があるから残すのではなく、良いものだから自然と残っていく・・・そんな保多織を続けていきたいと岩部さんはおっしゃいます。

【制作意図】
各界で伝統の後継者不足が叫ばれる中、この保多織は、若い世代からも伝統をつないでいこうという声があります。その理由は、やはり「着心地の良さ」。良いものだからこそ、これまでこんな長い歴史をくぐりぬけてきた保多織です。縦糸が歴史だとしたら、横糸に人々の知恵や生活、寄り添う優しさが織りなされています。
もともとは幕府への献上品にも使用される高級品ですが、今は、私たちの身近な場所で、衣服以外にも、シーツやハンカチなど、その吸水性などの機能にも注目を集めています。決して華やかで目を引くものではないけれど、こんなに長い間、こんなすごい機能を持った布が織り続けられていたこと、そしてその存在をたくさんに人に知ってもらいたい。その肌で触れてもらいたい。と思い制作しました。

【制作後記】
お殿様の衣服として織られていた技法ですが、最近では、綿素材のものが多く保多織のハンカチや、てぬぐい、ふきんなどどしても、販売されています。私も使っています。こぶりなクッションカバーを最近買いました。とにかく気持ちよくて触れていたいので、家では、よく、そのクッションを抱いています。冬はあたたかく、夏は、ひんやりして気持ちいいですよ。

明日へのエール・ミュージックサイレン~平和を願う音

2023年10月30日~2023年11月5日放送 
大分放送 OBSメディア21 吉田薫


【番組概要】
大分県大分市中心部のまちなかでは、毎日3回、朝昼晩に大音量で音楽が流れます。8階建ての老舗デパートの屋上から聞こえてくるミュージックサイレンです。昭和29年(1954)に1号機が産声をあげて来年で70年。戦後、平和の象徴として鳴り始めたそのサウンドは、大分市中心部に暮らす人々の日常の音として長く愛されてきました。子どもの頃から聞き続けてきた自転車店の店主は、決まった時間に流れるそのミュージックサイレンを「遊びに行く合図、お昼ご飯の合図、遊びを終える夕ご飯の合図」と懐かしみ、カフェのオーナーは「お昼の音は、ランチタイムの繁忙に向けてスイッチを入れてくれる大事な合図」と熱弁し、老舗食堂の女将は「世の中が苦しいとき、あの音楽がお互いのためのエールになった」と微笑んでくれました。当たり前のように日常の中で聞こえてくるミュージックサイレンは、人々の時計代わりになり、人生のエールにもなっています。現在、国内で稼働しているミュージックサイレンは数台となりましたが、平和を願うその音色は、今日も日常の生活に溶け込み、時を刻み、人々をやさしく包みこんでいます。

【制作意図】
大分市中心部の人々にとって、あまりにも日常的過ぎる音「ミュージックサイレン」。昭和29年に1号機が産声をあげて来年で70年を迎えます。昭和50年、2号機に受け継がれた平和を願う音は、世界が激動する中にあって、現在でも当たり前のように変わりなく、午前10時、正午、午後7時と、毎日3回流れています。その独特のサウンドは、日常の何気ない平和を無意識に感じさせてくれる貴重な存在だと感じています。現在、メーカーのメンテナンス部門がなく、故障すれば修理が難しい状況にあります。この音が聞こえなくなる前に、少しでも多くの人々にミュージックサイレンの音を意識して聴いて欲しいとの思いから、大分市中心部で暮らす人々とのあたたかな関係も含めて取材しました。ミュージックサイレンが聞こえる何気ない日常の平和。そんなシーンが、全国の皆様の身近にも、形を変えて存在するのではないでしょうか。ぜひ見つけてみていただきたいとも思います。

【制作後記】
今回、朝昼晩と流れるミュージックサイレンの音色を、まちなか各所で録音しました。また、音源に近い場所から録音したいため、設置場所である老舗デパートに無理をきいていただき、日頃立ち入ることのできない屋上からも特別に録音させていただきました。海からの風を浴び、眼下の大分市街地を眺めながら、響き渡るミュージックサイレンを録音。いつもなら日常の中に溶け込む音が、目の前で存在感をあらわにした瞬間、子どもの頃に今は亡き両親とまちなかで買い物をした記憶が読みがえってきました。なんともノスタルジックな気持ちに浸れた時間でした。こういうことがあるから、取材って楽しいんですよね。



200円の人情弁当

2023年10月23日~2023年10月29日放送 
山口放送 ラジオ制作部 寺岡岳男


【番組概要】
山口県下松市の旗岡団地にある個人経営のスーパー「スーパーマルエス旗岡」
矢野忠治社長(72)は、200円のお弁当を作っています。原価180円、人件費は度外視です。
団地の人口も減少し高齢化も進んでいます。遠くの大規模スーパーに行く団地の人も多く、スーパーの売り上げも下がる一方です。しかし矢野社長は200円にこだわり、年金暮らしの人たちのために値上げをせず頑張っています。そんな矢野社長の、お弁当を通じて「団地の人たちのために」という気持ちを取材しました。

【制作意図】
「200円のお弁当」と、価格に注目されて過去に地元メディアが取材に訪れたこともあるスーパーマルエス旗岡ですが、最近SNSで矢野社長が「もう限界です」と発信されたことから、最近の原材料費の値上げがニュースでも多く取り上げられるなか、スーパーの経営が厳しいことは容易に想像できました。にもかかわらず値上げをせずに、あくまで200円にこだわる社長の意図は何か?と気になったことから、取材を行いました。

【制作後記】
何気なく矢野社長に「このスーパーが無くなったら困る人も多いでしょうから、50円程度は値上げされたらいかがですか?」と問いかけたところ「年金暮らしの人にとっては、50円でも毎日のことですからね」と返され、自分がまだ経験したことのない、年金生活でのやり繰りの厳しさに気づかされました。「200円のお弁当」という、価格のみに注目が行きがちですが、取材を進めるうちに「団地の住民の高齢化」「年金暮らし世帯の家計の厳しさ」「一人暮らし世帯の安否確認」「免許返納後の買い物難民」など、取材開始前には思い至らなかった、社会問題の数々が、団地の中のスーパーの状況に凝縮されていることに気づかされました。その問題の数々を、気負わず自分が出来ることを淡々と実施していく矢野社長の声から感じていただければと思います。

 

フクシマさん家の看板コロッケ

2023年10月16日~2023年10月22日放送 
秋田放送 編成局ラジオ放送部 高見 理於


【番組概要】
風待ち港とも言われるほど穏やかな港町、秋田県男鹿市船川港。海のすぐそばに今年で創業105年を迎える精肉店「グルメストアフクシマ」はあります。休日になると常連客から観光客までひっきりなしに訪れるこの店の一番人気は、肉ではなく手作りのコロッケ。材料はシンプルながらクリーミーな食感や味わいが人気です。作るのは、4代目の福島智哉さん。3代目の父と母とともに店をやりくりしています。番組では、おもわずよだれが出てしまうようなコロッケの音、4代目の葛藤やお店のこれからに密着しました。 


【制作意図】
スーパーマーケットや最近ではコンビニエンスストアでもお肉を購入できる時代。精肉店の数は全国的に少なくなってきているといいます。取材したグルメストアフクシマの3代目福島基秋さんも、「お肉だけではやっていけない」といいます。そんな厳しい時代、継がなくてもいいと言ったにも関わらず、継いだ4代目の想い、そして4だいめの人生をも変える「フクシマの看板コロッケ」をたくさんの人に知ってもらいたいと思い、制作しました。

【制作後記】
「東京で働いていっぱいいっぱいになったとき、仕送りのコロッケ食べて泣き崩れちゃいました。」と話す4代目の智哉さん。実はこの言葉、1回目の取材では聞き出せませんでした。2度目の取材、コロッケを作る過程の音のみを録音する日に、たまたま録れた本音でした。「精肉店のコロッケ」は、題材としては珍しいものではありませんが、「コロッケを売るために肉を売っている」と言ってしまうほど力を入れている精肉店はここだけではないでしょうか。お店がこれからもずっと続いていくことを願いながら制作させていただきました。

2023年9月22日 (金)

うけたもう!羽黒山伏 ティム

2023年10月9日~2023年10月15日放送 
山形放送 アナウンス部 門田和弘

録音風物誌番組コンクール 最優秀賞受賞 再放送

番組概要】
1400年以上も前から「修験の山」として崇拝を集めている出羽三山(羽黒山・湯殿山・月山)。江戸時代以降は「西の伊勢参り・東の奥参り」と言われる程の参詣スポットで、その力を求めて山伏が集い、今でも厳しい修行を積んでいます。中でも羽黒山は、羽黒修験道の中枢として、古来から山伏修行の厳格なスタイルを守り続けてきました。しかし近年は女人禁制も解かれ、さらに外国人山伏も受け入れ始めています。ニュージーランド出身のバンティングティモシーさん(ティム)もその1人です。羽黒山伏の精神文化に魅了され、荒行の末、2017年に山伏となりました。現在、ティムはSNSで世界に向けて、日本の山伏文化を発信しています。その結果、修験道に興味をもち、山伏になる資格を得るための入門儀礼(秋の峰入り)に参加する外国人が増えています。羽黒山伏最高位の星野文紘松聖は、羽黒修験の言葉「うけたもう(受け賜る)」が全てであり、今や垣根を取り払う時代にある。閉鎖的な山伏の世界から、開放的な山伏の世界への転換期なのだと・・・まさにグローバル修験道の勃興といえます。                  


【制作意図】
①昨年のコンクール・総評において、放送作家の石井彰氏から「外国人の録音風物誌を聴いてみたい。新しい日本文化との融合が気になる」といったコメントを頂きました。それからリサーチを続け、今回の「外国人山伏」を題材に取り上げる事になりました。日本古来からの閉ざされた文化である「修験道」、その中に入り込む「外国人山伏」= なぜ? その疑問を突き止めてみたくなったのです。                                    ②「録音風物誌」らしい音を求めて、今回、特に狙った音は「石を突く金剛杖と、鈴の音」。本殿まで1.7km続く石段は、江戸時代に作られたもの。その時代時代の参詣者が様々な思いを込めて踏みしめた2446段の石の1つ1つを、地と人を繋ぐと言われている「金剛杖」で「カツ―ンカツ―ン」突く快音と、地霊を鎮めるといわれる「鈴の音」が合わさり、催眠効果を誘う心地よい音を録音する事が出来ました。その他にも法螺貝、川での禊の唱え、静寂な山中の雨の音など、非日常の音が羽黒の山にはたくさんありました。

【制作後記】
山伏修行の一部を体験しました。(本来は体験するものではないと思うんですが・・・) 羽黒山伏最高位の星野文鉱松聖から「体で感じてこそ、いい番組が作れる!」との励ましの言葉を頂き、生涯初のふんどし姿に!6月上旬とはいえ、月山からの雪解け水は水温7℃。全身が震え、冷たさが痛さに変わり、星野氏の見守るプレッシャー?の中でとにかく耐えに耐えて、ティムが般若心経を唱える横で、私はうめき声を上げる事しか出来ませんでした。しかし不思議と川から上がった後は清々しい気持ちになりました。今回は構想段階から山伏の事を深く学び、取材でも山伏から直接話を聞く事ができ、とにかく「山伏」は深い世界です。山伏の説明だけで時間が過ぎてしまうので、言葉を選び、出来るだけ分かりやすいシンプルな構成を心掛けたつもりです。取材の最後に突然、星野さんとティムが一緒に法螺貝を吹き始めました。2つの(2人の)法螺貝のコラボは、ティムが受け入れられた証拠。嬉しくて涙が出そうになりました。

げんじぃの手作りヤギ牧場

2023年10月2日~2023年10月8日放送 
北日本放送 メディア本部コンテンツ局 陸田陽子

録音風物誌番組コンクール 優秀賞受賞 再放送

【番組概要】
富山県氷見市の中心部から車でおよそ30分。途中、携帯電話の電波が届かなくなるような山道を進んでいった吉懸(よしがけ)地区に、「げんじぃの吉がけ牧場」があります。牧場の主は「げんじぃ」こと村江元三さん77歳です。吉懸で生まれ育ったげんじぃは、72歳の時に家族の大反対を押し切って、たったひとりで朽ち果てた小屋や荒れ果てた田畑を放牧場に整備し、ヤギと触れ合える牧場を作りました。それから5年。反対していた息子さんも、今ではヤギの様子を動画投稿サイトで紹介するなどして、げんじぃを応援しています。

【制作意図】
「自分はヤギのお乳で育ったと小さいころから教えられてきた。第二の人生はヤギと楽しく過ごしたい」と、恥ずかしそうに教えてくれたげんじぃ。ヤギと過ごし、笑顔になれる場所を作りたい。そして過疎化が進む吉懸地区を、笑い声が聞こえる場所にしたいというげんじぃの思いを取材しました。

【制作後記】
息子の剛さんのYouTube動画配信やそのほかSNSの配信を見て、「げんじぃの吉がけ牧場」には全国からヤギに会いたい、ヤギに癒されたいと、観光客が訪れます。去年は、新婚旅行で訪れた人、ヤギと触れ合いたくて市内のホテルに連泊し、毎日通ってきた人、中には3か月間も滞在してヤギの世話のお手伝いをしてくれた人もいたそうです。ヤギとの触れ合いは、心も体も癒されます。ラジオで鳴き声だけでも聞いてホッコリしていただければ嬉しいです。

牧野博士を愛する小学生のガイドさん

2023年9月25日~2023年10月1日放送 
高知放送 クロスメディア戦略局ラジオ戦略部 梅木 敦裕

録音風物誌番組コンクール 新人賞受賞 再放送

【番組概要】
およそ1500種類以上の植物の新種や新品種に命名し、「日本植物分類学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎。その牧野博士の生き方や性格に憧れを抱く小学生・川本琉楓さんは「多くの人に博士の功績や人柄などについて知って欲しい」という思いから、博士の名が付いた植物園でガイドをしています。琉楓さんはなぜ博士に憧れを抱いたのか、そして博士について多くの人に知ってもらうために奮闘する様子をお伝えします。

【制作意図】
今年の春から高知県出身の植物学者・牧野富太郎が主人公のモデルとなったテレビドラマがスタートし、県内では観光博覧会「牧野博士の新休日」が始まるなど盛り上がりを見せています。その中で牧野博士の生き方や性格に魅了された小学生・川本琉楓さんが、牧野博士についてもっと多くの人に知ってもらうためにガイドをしているということを知り、「高知出身の偉人であり、自身の憧れを伝えるために奮闘する琉楓さんのことを多くの人に知ってほしい」という思いで、取材・制作しました。

【制作後記】
実際にガイドを行なう様子を取材させていただいたのですが、ガイド本番になると大勢のお客さんが集まっていました。「自分が小学生の時、こんな大勢の人に囲まれて何かを発表するとなれば緊張して喋ることができないな…」と思いましたが、琉楓さんは物怖じせずに明るい笑顔ではきはきと、憧れの牧野博士についてのスピーチをしていました。この様子を見て「好き」や「憧れ」を極めることで、自信を持って物事を伝えることができるんだなと今回の取材と制作で感じました。また放送の中にもあった通り、今年の春から琉楓さんの妹・絆心さんがガイドを引き継いでいます。絆心さんがガイドを行なう日時は牧野植物園のホームページで案内が出ていますので、皆さんも是非、現地で絆心さんのガイドを聞いてみてください。そして、ガイドを卒業した琉楓さんの現在の夢は「牧野博士をはじめとした地域の偉人をもっと学んでその魅力を発信できるような本を出版すること」だそうです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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