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2016年11月

2016年11月29日 (火)

朴の木の音

2016年11月28日~2015年12月4日放送 
東北放送 阿部航介

【番組概要】
朴の木コーラスは、宮城県北部に位置する栗原市栗駒地区を拠点に活動する女声合唱団です。七十代以上の女性が全体の半数以上を占めるこの合唱団。メンバーは週に一度の練習日を心待ちにしています。合唱祭という目標に向け、声と心をひとつにして歌う彼女達の思いを柔らかくも深みのある歌声に乗せてお届けします。

【制作意図】
合唱団という「集団」を扱うに当たり、メンバーそれぞれの思いや週に一度集まる理由を見つけ集めていく作業に注力しました。この物語を聴いた方々には朴の木コーラスの存在意義を考えて頂き、胸の中にほんの少しの暖かさを感じてもらえれば良いと思っています。

【制作後記】
今回お話を伺ったおばあちゃんたちはとにかく元気でパワフル。取材に行く度に可愛がって頂、私にとってのある種のパワースポットのような場所になりました。完成した作品を聴いて頂くのが楽しみでなりません。

2016年11月21日 (月)

山峡に響く月明かりの神楽

2016年11月21日~2015年11月27日放送
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 大谷彩歌

【番組概要】
全国各地で伝承される神楽。宮崎でも200以上の神楽が受け継がれています。一方で地域の高齢化や後継者不足によって消えゆく神楽も少なくありません。小川神楽は、宮崎県西米良村小川地区―人口100人にもいたない山間の集落に受け継がれる神楽です。夜になると、月明かりのほかに何もない集落で、消え行くのを待つだけだった小川神楽。今、月明かりに見守られる稽古場からは、年嵩の舞い手達の力強い声と共に、若い舞い手の声も聞こえてきます。地域に人が増えれば神楽を継承できるわけではありません。続ける意志と日々の練習もまた、必要不可欠なのです。

【制作意図】
宮崎では、冬の風物詩として親しまれている神楽ですが、その少し前―秋が終わりに差し掛かる頃に聞こえ始める桂子の音は、地元の人々にとって秋の風物詩です。神楽の担い手達はどんな思いで、そうして神楽を舞うのでしょうか。12月に行われる神社社殿での奉納が本番ですがそれに向けて夜毎稽古に励む舞い手達の声を届けたいと思いました。

【制作後記】
若い舞い手の方々に。神楽を好きな理由を尋ねると、「かっこいいから」という答えが返ってきました。伝統の継承を重んじる一方で、神楽や神楽を担ってきた先人達への純粋な憧憬があることがとても素敵なことのように思えました。稽古場からは、指導の声と同じくらい笑い声も聞こえてきます。「好きだから舞う」「伝統を残すために舞う」どちらも大切で、だからこそこれからも小川神楽は受け継がれていくのではないかと思います。

2016年11月16日 (水)

未来神楽 福島から風を

2016年11月14日~2015年11月20日放送
ラジオ福島 編成局 大槻幹郎 

【番組概要】
平成28年8月27日、福島市内の稲荷神社に現代の創作神楽、ふくしま未来神楽の第三番「天・天・天狗」が奉納されました。前衛的かつ幻想的な音声・演奏とプロジェクトの発起人である詩人・和合亮一さんの創作神楽への思いをおおくりします。

【制作意図】
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年と半年が経過。震災前とほぼ変わらぬ生活をしている人もいれば、2011年3月11日で時が止まったままの人・地域もいまだにたくさんあります・「風化させてはいけない」「語りつがなければならない」その想いを伝える福島の動きを全国の人々に知ってほしい、と考えています。

【制作後記】
神楽自体は1時間を超えるもので、その中のほんの一部しか届けられず、正直「分かりづらい」と思いますが、その中でも特子供達の優しい声の響きは取材していても後で聴いても印象的でした。

心も躍る 祭り金太郎たち~ 地域の絆を一つに結ぶ 御坊祭

2016年11月7日~2015年11月13日放送
和歌山放送 報道制作部 柘植 義信

【番組概要】
毎年10月のはじめになると町中の人の心が騒ぎ、心が一つになる時がある。和歌山県の中部のまち御坊市に江戸時代から伝わる「御坊祭」は小竹八幡宮の例大祭。神と氏子が親密感を増し、一体となる祭りで 地域に根付いた祭りです。9つの地域が仕立てた組と呼ばれる連が参加し、神輿や太鼓を積んだ櫓をかつぐ大人。笛を吹く子供、雀踊りの女性たち。住民がそれぞれの役割を担い、祭をみんなで楽しむ。それをリードするのが祭り金太郎と呼ばれる年中「祭」のことが頭から離れない男衆。祭り金太郎が地域の人の心をつかみ、地域の絆を深める。祭りを通して過疎と高齢化が進む地方の元気を回復させる一つの姿が見えてくる。

【制作意図】
御坊祭を一年中、頭のどこかに置いていて、祭では地域の結束を固める役割を担う男衆を「祭り金太郎」と呼んでいる。番組では、祭り金太郎と祭りに参加する住民の表情を紹介しながら、地域と祭りの関係について改めて考えてみたい。各地では、過疎と高齢化が進み地域の絆が脆弱になっているが、祭り金太郎の役割を通して地域の人の心を一つにするきっかけを探るとともに祭りが持つ、高揚感を住民が体感することで地域に生き続ける意味を問いかけたい。

【制作後記】
御坊祭は、地域の人が神とふれあい、楽しむことがあくまで主体で、観光を目的とした見せる祭りでないことがわかります。地元の人が力を合わせ祭りを盛り上げ、今年も共に元気で生きていることを確認しあっています。移り住んできた人も古くからの住民と一緒になって祭りに参加。排他的でなく融和な雰囲気から絆の深さがみえてきます。災害などで地域住民の自助共助が求められる中、祭りを通して築いている住民の絆を引き続き取材していくことで地元局として地域再生のあり方を考えていきたい。

2016年11月 4日 (金)

地域が慕うワインへの想い

2016年10月31日~2015年11月6日放送
新潟放送 ラジオ本部制作部 五十嵐滋章

【番組概要】
米どころ新潟にあって、ワインづくりの道を切り開いた岩の原葡萄園。120年以上の歴史がある老舗ワイナリーでは、毎年10月に収穫祭が行われます。また、この収穫の期間、一般客に向けたワイン葡萄の収穫体験も行われています。摘み取る葡萄の品種は「マスカット・ベーリーA」。岩の原葡萄園の創業者、川上善兵衛が、日本の風土にあったワイン葡萄を、と品種改良を重ねて生み出したものです。この品種を全国に広めたことから、善兵衛は「日本ワインぶどうの父」と言われます。また、善兵衛が葡萄園を開業したのは、地域の農民が出稼ぎに行かなくてもいいように、という想いからでした。地元の小学校では、今も善兵衛にまつわる学習活動を続けています。ふるさとの人々への想いをワインに託した創業者は、今も地域の人々から「善兵衛さん」と呼ばれ、慕われているのです。

【制作意図】
新潟県上越市にある老舗ワイナリー「岩の原葡萄園」。その創業者、川上善兵衛は、大地主の長男として生まれますが、7歳で父を亡くし幼くして川上家の当主となります。勉強のため上京、慶応義塾で学び、勝海舟を訪れてワインと出会います。やせた土地でも葡萄は育つと知って、地域の農民が冬、出稼ぎに出なくても良いように、と、葡萄園を立ち上げたのは、まだ22歳のときでした。私財を投じ、川上家の庭をつぶして葡萄畑にしたこと、ワイン醸造のために石蔵を建て、雪を運び入れて温度管理を行うといった苦労、品種改良の末作り出した「マスカット・ベーリーA」を独占せずに全国に広め、今では国産赤ワイン用葡萄で最も用いられる品種となっていること、いまだに地域では「善兵衛さん」と呼ばれ親しまれていること。知るほどに、「岩の原葡萄園」そして川上善兵衛について発信したい、という想いに駆られ、この番組を制作しました。

【制作後記】
番組内にも登場する、収穫祭でインタビューに答えて下さった方。子どもの頃は「遠足に来る場所」大人になってからは、創業者川上善兵衛を知り、その懐の深さに感銘を受けている。取材を通じて「岩の原葡萄園」そしてその創業者、川上善兵衛がいかに地域の人々から愛されているか知ることが出来ました。本編には登場しませんが、善兵衛Tシャツを着て収穫祭に参加している方もいらっしゃいました。地域の人々の暮らしに尽くした126年前の善兵衛の想いは時代を超えて、季節が巡るごとに甘く瑞々しい果実となっているのだな、と感じました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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