2011年2月17日 (木)

引け! 引くんだ!! 大俵

ジオ福島 編成局 放送部 手塚 伸一


毎年1月14日に行われる会津坂下町の「初市・大俵引き」は、何と言っても主役の「引き子」達。

彼らの思い、気合い、おたけびを全編を通じて感じて頂ければと思い、制作しました。厚着をしていても寒くて身を縮める中、下帯一本で堂々と5tもの重さがある大俵を引き合う姿が伝われば幸いです。

始まる前は下帯一本となるとふるえていた引き子が、終わった後には体から湯気を出しながら笑顔だった事が忘れられません。

2011年2月10日 (木)

元旦初打ち”音に聞く鍛冶場の力”

福井放送 ラジオセンター 越桐 清司

福井県越前市の山あいに位置する余川町は、700年の歴史を持つ、越前打刃物の産地です。
ここでは毎年元旦の午前零時から初打ちの行事が開かれています。

白装束の鍛冶職人たちが赤々と燃えた鉄の棒を大きな金槌で打ち形を整えていきます。親方が打ち、子方が相槌を打つという作業は、動力がなかった時代の古式ゆかしい伝統的なものです。

日本各地に多く存在していた鍛冶職人は、刃物の大量生産と農業の機械化によって昭和30年代から激減しました。
文部省唱歌として愛唱されていた「村のかじや」も昭和60年に音楽の教科書から姿を消しました。

今では元旦にしか聞くことのできなくなった昔懐かしい鍛冶の音は、観光に訪れた人たちを魅了しています。雪が深々降りつもる中、行われている越前打刃物の初打ちは地区の名工達が伝えている、
冬の風物誌です。

2011年2月 3日 (木)

南向きの終の住処で

西日本放送 営業局ラジオセンター 池本 恵津子

香川県の西部 三豊市詫間町の荘内半島は、瀬戸内海が見渡せ日当たりのいい穏やかな気候の地です。18年前、この地を気に入り大阪から移り住んだ木本あつしさん 81歳がいます。

 木本さんが名前も風土も知らないここに住むことを決めたのは、2つの趣味が大きく関係しています。
 1つは、小学2年生から続けている「園芸」。大阪では霜との戦いで植物を育てる苦労を体験しました。荘内半島は、海から吹き上げる風で霜が降りない土地。さらにお家を南向きに構えることで、燦燦と降り注ぐ太陽の恵みを利用して現在も品種改良を行っています。

 もう1つは、フィルムカメラでの撮影。育てた植物を捕らえるだけでなく、荘内半島の海の表情や鳥たちの会話、瞬く天体などの一瞬一瞬を写真に収めます。撮影のためなら時間も労力も惜しまない木本さん。自分らしい写真を求めて撮り続けています。

 木本さんのみなぎるエネルギーは、自然と歩調を合わせるからこそ得られる力なのかもしれません。

2011年1月27日 (木)

城下町のちゃっこい豆腐屋

東北放送 ラジオ局制作部 伊香 由美子

デパート、オフィスビル、マンションなどが立ち並ぶ仙台の中心部で、なつかしい豆腐の行商が始まりました。
ラッパを鳴らして町を行くのは、130年の老舗、上村豆腐店の4代目社長、上村修治さん42歳。

地方都市の例にもれず仙台も、郊外に大型スーパー、ショッピングモールができ、中心部で商売をしていた店が姿を消しつつあります。
上村豆腐店のある仙台市中心部では、足が不自由になり買いものに行けない、仕事が忙しく遠くまで買い物に出かけられない、
といった声も聞こえています。

130年の商売を支えてくれたお客様への恩返しがしたい、
という思いから夕方からスタートする行商の様子に同行すると、
「ありがとうね」「よいお年を」など、物を売る人と買う人の言葉の
やりとりが温かかったのが印象的。

多くの車が行き、コンビニエンスストアが立ち並ぶ大通りから一歩入ると、ラッパの音が鳴って人が集まる、そんな風景が加わった仙台をまた好きになりました。

2011年1月20日 (木)

兼六園のエンターテイナーを目指して

北陸放送 ラジオセンター 川瀬 裕子

金沢を代表する観光スポット「兼六園」。

園内を案内してくれる「兼六園ガイド」は、個性も様々です。
昭和31年に案内業が許可制になってからガイドとして活躍するのは女性のみでした。

そんな中、昨年初の男性ガイドが誕生し、話題となっています。
目立つのは男性だからという理由だけではありません。
ユニークなガイドぶりはもちろん、メイクもバッチリ、ネイルケアもしているという外見も注目を集めています。
なぜそこまでやるのか?

彼が目指しているものが、兼六園という定番観光地に違った輝きをもたらしそうです。

2011年1月13日 (木)

名曲が生まれた滝

静岡放送 ラジオ局制作部 山中 貴弘

静岡県伊豆市修善寺。伊豆半島には、観光名所になっている数多くの滝がありますが、地元の人しか知られていない滝がありました。  
高さ105メートルもある「旭滝(あさひだき)」。 
日本で二番目に高さのある滝なのですが、知られていない理由とは?  
観光地・伊豆でも知られていない幻の滝「旭滝」ですが、実はこの滝から生まれた名曲があるのです。それは、尺八の中では有名な「滝落ちの曲」。           

江戸時代、旭滝のふもとには瀧源寺(ろうげんじ)というお寺がありました。尺八を吹きながら諸国を行脚する虚無僧は、名曲のふるさとでもある旭滝を訪れては瀧源寺に寝泊まりしていたそうです。

月日は流れ、瀧源寺と虚無僧の姿は消えてしまいましたが、この土地で生まれた名曲を後世に残そうとしている方がいました。一年に一度、旭滝を前に「滝落ちの曲」を吹くというのです。 虚無僧がこよなく愛した名曲「滝落ちの曲」が、旭滝を前に蘇ります。 

2011年1月11日 (火)

炭焼きの灯を守って

山口放送 ラジオ制作部 大谷 陽子

緩やかな山に囲まれた盆地が広がる、山口県下関市菊川町。
山裾に、今も一軒だけ、炭焼きを仕事にしている家があります。
炭を焼くのは山岡トキ子さん、83才。たった一人で、炭焼きの窯を守っています。

33才で夫に先立たれてから50年。男性でも厳しいと言われる山の仕事を生業に、女手一つ、3人の子どもを育て、家を守ってきました。

「生涯貫ける仕事を持てたことが誇り」と語るトキ子さん。

炭焼き職人という仕事だけでなく、昭和の時代を生き抜いた女性の強さを「風物詩」として伝えたい…。
その強さを見習いたい思いで取材させていただきました。
そこで待っていたのは…、トキ子さんの炭で焼いてくださった小さなサツマイモにトウモロコシ。サツマイモのねっとりする程の甘さと、炭の温かさ(というより熱い!)、そしてトキ子さんの笑顔に、心ほぐされました。

継続は力なり…コツコツ真面目に生き抜いた先に幸せがあることをトキ子さんはその生き様で教えてくださいます。

2010年12月30日 (木)

冬の味覚・やっぱりココがおいしいネ!

秋田放送 ラジオ局ラジオ制作部 鎌田 智循

秋田県ではセリを葉っぱから根っこまで全て食べます。
鍋から立ち上る湯気とともに広がるみずみずしい香りとシャキシャキした食感…。秋田の鍋料理には欠かせない名わき役です。

県内最大の生産地・湯沢市三関では冬の厳しい寒さの中、セリの収穫が続きます。奥羽山脈から流れてくる伏流水と秋田の寒さに育まれた三関のセリ。

冷たいセリ田に並ぶ青々としたセリは口に入れた瞬間、冬の音を奏でます。
シャキシャキ…。冬の味覚を耳でも味わってください。

<取材こぼれ話>
セリは、柔らかくてまとわりつくような泥の田んぼで育ちます。
なれないゴム長と田んぼから抜けない足。転んで、泥だらけになってマイクを向け続けました。
奥羽山脈から差し込むオレンジ色の日差しで、紫色になった朝靄の中で、緑色に光るセリはとてもきれいでした。

2010年12月16日 (木)

よみがえる紅葉饅頭~百年の時を超えて~

中国放送 ラジオ局ラジオ制作部 岡本 幸

広島と言えば「もみじまんじゅう」。
今や全国、どころか世界からのお客様も、広島、特に宮島を訪れれば、焼き立てを一つほおばり、お土産にどっさり買い込まれます。

これぞ広島の“風物”であります!

…ということで、今回の主人公は「紅葉饅頭」。
中でもちょうど100年前に「紅葉型焼饅頭」として商標登録された、
由緒正しき「元祖」に、その大役をお任せしました。

「元祖」は一旦途絶えましたが、この度復活しました。
作ったのは高津常助という男。
復活させたのは、常助の孫、加藤宏明。

新によみがえった紅葉饅頭が語る、世紀にわたる二人の男の物語をほんの少~しのぞいて見て…いえ、聴いてください。

2010年12月 9日 (木)

トーンチャイムで素敵な風を伝えたい

熊本放送 ラジオ局ラジオ編成制作部 中山 直

トーンチャイムをご存知ですか? いわばピアノの鍵盤のひとつひとつを筒状の楽器にしたもので、鳴らすとやわらかい音色が響きます。

このトーンチャイムに魅せられたのが熊本市に住む「美齢重(ミレージュ)」のみなさんです。
メンバーは60才前後の主婦9人、ほとんどが楽器とは縁がなかった人たちですが、9人がまとまると、すばらしい音楽が生まれます。

月に1回、彼女たちはホスピス病棟でボランティア演奏をしています。
演奏する場所は病室前の廊下、「日によっては体調が悪い患者さんに、押し付けにならないように」という配慮からです。
病室の外に吹く風や季節の移ろいをトーンチャイムの演奏に乗せて、彼女たちは素敵な風を病室に送り届けます。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

ブログ powered by TypePad