2024年12月24日 (火)

じいちゃんのしめ縄は唯一無二! 孫プロデューサー奮闘中

2024年12月2日~12月8日
南海放送 メディアセンター 平野和子

【番組概要】
愛媛県の米どころ西予市宇和に生まれ育つ上甲清(じょうこう・きよし)さん88歳。米作りの傍ら作るしめ縄が評判になり、産直市などへ出荷するように。
仕事で愛媛の特産品を販売していた孫の智香さん27歳は、商品として見た祖父のしめ縄の可能性を感じ、仕事をやめて、祖父のしめ縄作りのプロデュースを始めた。今では全国にファンが増えている。じいちゃんを尊敬し、広く知って欲しいと活動する孫との二人の師走を伝える。

【制作意図】
失われつつ米文化を継承しようとする祖父と孫。SNSなどを駆使し、新たな繋がりを作りながら、米農家の生き様、農村文化を伝えようと奮闘する2人の様子を追った。

【制作後記】

12月14日㈯から東京で上甲清さんの展示会が行われる。
「米と藁。しめ縄職人 上甲 清 展」
・2024年12月14日㈯~26日㈭ 10:00~19:00
・21_21DESIGN SIGHT

問い合わせ 
株式会社 メソッド
info@wearemethod.com

https://www.2121designsight.jp/gallery3/rice_and_straw/



未来へ!世界へ!海を渡る船箪笥

2024年11月25日~12月1日
山形放送 報道制作局制作部  神保 美帆

【番組概要】

山形県酒田市にある木工店の4代目・加藤渉さん(50)。釘などを使わずに木材を組み合わせる「指物(さしもの)」の技術を継承し、現在は伝統工芸品「酒田船箪笥」も製作しています。
江戸時代から明治時代にかけて、寄港地で商品を売買しながら航海をしていた北前船。
船の中で金品などを保管する金庫のような役割をしていたのが「船箪笥」です。
酒田は新潟県・佐渡、福井県・三国と並ぶ船箪笥の三大名産地の1つですが、需要の減少や職人の高齢化と担い手不足により近年では新たな船箪笥は製作されていませんでした。港町の伝統を復活させたい、という思いのもと酒田船箪笥の“復興”にチャレンジをしている加藤さんを追いました。



【制作意図】

酒田船箪笥は指物、漆塗、装飾金具と各職人が分担して製作をしていますが、装飾金具だけは酒田市内で作り手を見つけることができないでいました。
そんな時、地元高校の工業科の生徒から「船箪笥の装飾金具を作ってみたい」と声がかかりました。次の時代に伝統工芸品を繋いでいきたいという加藤さんの思いと、高校生たちの取り組みをたくさんの人に届けたいと思い、取材しました。



【制作後記】

加藤さんは後継者不足と認知度不足が課題だと感じ、製作の傍ら様々な場所で船箪笥について発信を続けてきました。「伝統を繋いでいきたい」という思いが高校生に届き、「地元の作り手の力で船箪笥を製作する」という加藤さんの夢の実現に近づいた瞬間を傍で見ることができ、私もとても嬉しかったです。
地元の高校生たちも、酒田船箪笥や酒田の歴史については知らない部分も多く、装飾金具作りは地元の歴史を見つめ直すきっかけにもなったそうです。時々苦戦しながらも、楽しそうに金具作りに取り組んでいる高校生の姿が印象的でした。

 

点と点が繋がって

2024年11月18日~11月24日
RKB毎日放送 オーディオコンテンツセンター 樋口かおり

【番組概要】
点字が考案されて来年で200周年。街中に点字が溢れている中、今回は点字ボランティアにスポットを当てた。昨今人員不足の影響もあり、点字の翻訳作業を1人1人ばらばらで行う図書館も増える中、福岡市立図書館は、数十年に渡って、毎週グループで集まって点訳の作業を行っていることを知り、取材を決めた。サブタイトルにもあるように点字本を作るボランティア同士の繋がり、その本を利用する人への繋がり・そしてそれが街から全国の図書館に広がっていくそのコミュニティの存在の中心が点字であることから、すべてが繋がっていく“点”を意識して制作を行った。

【制作意図】
昨年私が目を怪我した時に、視力がほぼ無く、街中の音を頼りに日常生活を送った経験がある。いざ自分が見えない状況に置かれた時に、音声ガイドや点字などいくつかの読み取る選択肢が与えられていることのありがたさを再認識した。
一方で音声案内は他の音と混ざって聞き取りにくく不便だったこともあり、自分のペースで自分の感覚で空間・物事を認知できる点字の素晴らしさに改めて気付かされた。
点字が考案されておよそ200年という背景もあり、点字の継承に携わっている地元の点字図書館とボランティアたちにスポットを当てたいと考えた。

【制作後記】
今回取材を行うために、予め図書館と電話やメールで頻繁にやり取りをしていたものの、担当者と直接会ったのは、取材当日が初めてだった。その時、視覚障害があるということを知った。改めて自分の視野の狭さに気付かされると共に、障害の有無にかかわらず、日頃から自分自身が人に寄り添うコミュニケーションが取れているのか省みる機会になった。
またボランティアというと多種多様で、1回きりというものもある中、毎週1回誰かのために尽力し続けている点訳ボランティアの生き方に尊敬の念を抱いた。
地方の図書館という事もあり、ボランティアは数名で小さな活動と言われるとそれまでだが、この活動が数十年続いてきて、確かに誰かの支えになってきたという事実に胸を打たれた。これからも規模の大きさに関わらず、熱い想いを持つ人に取材したいし、私もそんな人になりたい。

2024年11月29日 (金)

地下鉄のさえずり

2024年11月11日~11月17日
北海道放送 オーディオビジネス局 編成制作部 加藤丈晴

【番組概要】
北海道には1971年・昭和46年に開通した日本で4番目にできた地下鉄があります。札幌の地下鉄が開業したのは、1972年に開催された札幌オリンピックの2カ月前、1971年12月16日です。じつは札幌の地下鉄の車輪はゴムタイヤを採用していて、これは日本で唯一で【札幌方式】と呼ばれることもあります。そのため通常の電車とは異なる仕組みがあり、そこから札幌の地下鉄ならではの音も鳴ります。地下鉄開業に奮闘した元職員、そして現役職員の声とともに札幌の地下鉄の歴史と【さえずり】をお送りします。

【制作意図】
鉄道好きの方にはもうおなじみかと思われますが、札幌の地下鉄はカーブなどで独特な音がします。札幌市民の中にはそれは日常なので気づいていない方もいますが、気づいた方は「鳥のさえずりのようだ」と言うこともあります。半世紀以上にわたってなり続けてきた札幌の音をお聴きいただきたいと思いました。

【制作後記】
登場する若原嗣男さん(元札幌市技術職員)は、札幌の地下鉄開業について「とにかく、(あの環境で)よくできたなと思う」という言葉を何度も口にしていました。はじめてのことでほぼ誰もわからない中、東京・大阪で地下鉄工事に携わった各大手建設会社のエース級のスタッフに教えを請い、地元住民ほか関係各所の協力もあって開業にこぎつけた、と。とにかく工期を決めていたのでそれに向かって必死に頑張ったそうです。新たな輸送手段を作るという目的はもちろん「オリンピックまでに!」を合言葉にみなさん突き進んだそうです。 ところであなただったら、あの地下鉄の音を聴いてなんと表現しますか?

2024年11月14日 (木)

シニアライフは春景色〜ながの男の脳喝倶楽部

2024年11月4日~11月10日
信越放送 編成制作部 美斉津 千夏

【番組概要】
長野県は長寿県。県の北部・長野市で活動する「ながの男の脳喝倶楽部」は、平均年齢76.6歳の男性だけのシニアグループ。仕事一筋だった男性は定年後の孤立が心配されますが、この倶楽部のメンバーは充実したシニアライフを過ごしています。スポーツにカラオケ、麻雀、施設見学、農園作業、ボランティアなど好きな活動に参加できます。地域にとっても大きな力となっている活動の一つが「替え歌」の披露。覚えやすさ、親しみやすさなどから、公民館主催の地域交流会や、警察署の啓発運動などからも声がかかります。いきいきと活動するメンバーを追いました。

【制作意図】
地元新聞で目にした「ながの男の脳喝倶楽部」の名前。「男の脳喝」というインパクトがある言葉に惹かれメンバーに会うと活動もユニークでした。定年後にできた時間をどう過ごすか。その立場になると困惑する人は少なくないようです。会社から地域へと新しい人間関係でつくられた「ながの男の脳喝倶楽部」。ここでは、年齢は関係なく、活躍できる場面を自分たちで作り出しています。私にはその様子がとても眩しく、胸が熱くなりました。中でも「替え歌」は、シニアの日常などをコミカルに描き、その才能が開花。レパートリーは80曲を超えます。シニアライフを満喫している皆さんを紹介します。

【制作後記】
「ながの男の脳喝倶楽部」との出会いは2022年1月。行動制限が続く中、コロナに負けないココロとカラダづくりをしていました。当時から感じていたメンバー同士の仲の良さ、ノリの良さ!以降、何度か生放送にも出演いただいています。制限が解除されると活動も頻繁になり、今では、現役時代より忙しい毎日を過ごすメンバーもいるほどです。「替え歌」も益々好評。県外からも「歌いたい」と問い合わせがあり、長野市から全国に向けた替え歌のネットワークもできつつあります。長野県の「健康寿命」(令和4年値)は、女性が7年連続、男性が2年連続で全国1位。長寿県ならではの元気なシニアの声をお届けします。

2024年10月28日 (月)

どうなる?高志の紅(あか)ガニ

2024年10月28日~11月3日
北日本放送 コンテンツ局アナウンス担当 佐藤栄治

【番組概要】
富山県射水市にある新湊漁港では全国的に珍しいお昼12時半からセリが行われ、多くの観光客が見学に訪れます。その昼セリにかけられるのがベニズワイガニです。富山湾の水深1000メートル付近で獲れるこのベニズワイガニ、富山県では「高志の紅ガニ」としてブランド化しています。ところが今年はそのベニズワイガニが例年に比べ水揚げが減っていて、漁業関係者が心配しています。その原因は今年の元日に起きた能登半島地震によって海底で大規模な地滑りが起き地形が大きく変わってしまい、漁にも影響が出ているというのです。今回はセリ場を見学する場所から観光客の声や、漁業関係者の声を聞き、これからの漁に不安を抱きながらも前を向く人々の声を紹介します。

【制作意図】
2024年1月1日に起きた能登半島地震によって、富山県内でも家屋の倒壊や、液状化現象によって、様々な施設にも被害がありました。そんな中、私たちが普段、直接目にすることのない深海1000メートルにおいても大規模な地滑りが起きている事が次第に明らかになり、ニュースで伝えられました。富山湾を生業の場とするカニかご漁師の人たちは大切な漁具を地滑りによって失い、それでも富山を代表する昼セリの風景を守ろうと懸命に試行錯誤を繰り返しています。
地震から半年以上が経過してもまだまだ復興出来ていない多くの人々が富山県内にもいること。被災しながらも富山の名物を守ろうと奮闘する人々に迫りたいと思い企画しました。

【制作後記】
海の中で何が起きていたのか、直接目で見ることのできない深海の様子が、その後の調査により次第に明らかになってきました。我々の日ごろの放送では地上部分の被災状況を伝えることが多くありましたが、直接目に見えにくい場所も大きな被害があり、それによって大変苦しい思いをしている人々がいることを知りました。富山県水産研究所の研究員の方によると私たちが口にできるサイズのベニズワイガニは9年以上成長したものとのこと。資源の回復と新たな漁場の開拓が、いかに苦難を伴うか改めて知りました。

ワイン県で醸される高校生

2024年10月21日~10月27日
山梨放送 メディアプロデュース局ラジオコンテンツ部 塩澤未佳子

【番組概要】
ブドウの生産量、ワイナリー数ともに日本一の山梨県。その地で高校生が、ブドウ栽培からワイン造り、販売までを授業で取り組んでいる高校があります。ワインを造るのは大人だけと考えてしまいますが、地元の大事な産業と捉え、試飲ができない年齢でも、ワイン造りに関わることで、未来の自分を描く彼らを、作業音とともにお伝えしています。

【制作意図】
高校生が、大人の飲み物であるワインを、どのように捉え、醸造や販売などに取り組んでいるのか、ワインへの理解は?など、素直な思いを聞き、自分たちが大人になった時をどのように描いているのかを探りました。

【制作後記】
高校生という多感な時に、地元の産業を体感しているというのは、とても貴重なことだと感じました。山梨への愛着や理解など、工程を理解しながら自然に身に付けている生徒たち。彼らの体験が、将来、このワイン県で、ワイン造りや発酵に関わることで活躍する生徒が出てくるであろう未来を、とても楽しみに思いました。

安来節全国優勝大会

2024年10月14日~10月20日
山陰放送 コンテンツ制作部 丸山聡美

【番組概要】
8月15日から3日間開催される「安来節全国優勝大会」。その様子を短い時間にぎゅぎゅっとつめてお届けします。

【制作意図】
子どもからお歳をめされた方まで、幅広い会員がいる安来節保存会。そのなかでも一番大きな大会の熱量を伝える一方で、「安来節」といえばどじょうすくいの踊りだけではないということを、改めて知っていただけたらと制作しました。

【制作後記】
やはり3日間の大会を6分35秒に収めるのには苦労しました。

2024年9月19日 (木)

ここはふるさと~ゴッタンが奏でる島立ちの唄~

2024年9月30日~10月6日
南日本放送 ラジオセンター音声メディア部 岩佐清太郎

録音風物誌番組コンクール 最優秀賞受賞 再放送


【番組概要】
鹿児島県の西部、東シナ海に浮かぶ甑島列島。この島で幻の楽器「ゴッタン」を復活させ、島に音楽文化を根付かせようと活動している人々がいる。そのグループ「ゴッタン甑の会」のオリジナル楽曲「ここはふるさと」は島を離れる子どもとその親の気持ちを歌った曲である。甑島には高校がなく、島の子どもたちは中学校を卒業すると実家を出て、鹿児島市などの本土で暮らしながら高校に通うことになる。この別れは「島立ち」という。15の春に新たな一歩を踏み出す子どもと送り出す親の気持ちを素朴で優しいゴッタンの音色とともにお届けする。

【制作意図】
島立ちは離島の多い鹿児島県だからこそ起こりうる巣立ちの儀式だが、15の春に故郷を離れ、親元を離れるのは子どもにとっても親にとっても寂しいこと。そして甑島には音楽文化が根付いていなかったため島の事を思い出すことのできる島唄がなかった。ゴッタン甑の会のオリジナル楽曲「ここはふるさと」は甑島の島唄として島立ちを経験する子どもたちの支えになってほしいと思うと同時にゴッタンで奏でるこの唄を甑島の住民に限らず、同じように故郷を思う人々にも聴いてほしいと思い制作しました。

【制作後記】
はじめての1人取材、はじめての離島、さらに取材日の鹿児島は春の嵐が吹き荒れており、船の欠航もちらつき・・・始まる前からどうなるかわからないドキドキの状態でした。ゴッタンを通しての交流の場・演奏の場は年々増えており、島の文化として着実に根付き定着していると感じました。多くの人が癒されている素朴で優しいゴッタンの音色を生の演奏で聴いてほしいです。4月に島立ちを控える親子にインタビューをさせていただきましたが、生まれ育った故郷を離れなければならないという過酷な現実を決して悲観することなく前向き捉えており、新しい生活を楽しみにしていると答えてくれました。私も微力ながら何らかの形で甑島出身の子どもたちを応援していければと思います。

靴職人は世界旅行に想いを馳せる

2024年9月30日~10月6日
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 大石怜香

録音風物誌番組コンクール 優秀賞受賞 再放送


【番組概要】
宮崎県宮崎市にある靴修理のお店「飯干製靴店(いいほしせいくつてん)」。このお店を営むのが靴職人の飯干畩二さんと奥さんの久美子さんです。畩二さんは、小学校1年の時に小児麻痺にかかり、左足に麻痺が残りました。足が不自由だから座ってできることを、と思い靴職人の道に進みました。しかし、10年前に脊柱管狭窄症を患ってしまいます。それでもなお、畩二さんは奥さんや相棒の足踏みミシンとともに靴修理を続けます。そんな畩二さんが靴に託す想いとは・・・

【制作意図】
飯干畩二さんは、82歳です。まずはじめに、この歳まで靴修理のお店を続ける理由が率直に気になりました。さらにお店には、130年物の足踏みミシンや靴に使う革をすく革すき機など、今ではあまり見られない機械が並んでいます。この足踏みミシンや畩二さんが打つ力強い金槌の「音」を録音風物誌で皆さんに聴いてもらいたいと思い制作しました。

【制作後記】
靴職人と言っても、分業制で大きく2つの職人に分けられるそうです。一つが靴をデザインし、靴の甲の部分を作る甲革師、もうひとつが靴底をつくる底付師です。畩二さんはそのどちらも修行をして一人で靴を作る職人になりました。靴を作るすべての工程が分かっているからこそ、その人に合った、靴に合った修理ができるのだなと今回の取材で感じました。また、畩二さんは「今は、修理の靴を手がけることでいっぱいいっぱいだが、いつかオーダーメイドの靴をまた作りたい」とも話していました。そ
して「第一号を作るなら、奥さんの靴を」と決めているのだそうです。この話を聞いて、ほっこりしました。とても心温まる靴修理のお店でした。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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