2019年7月22日 (月)

知ってる?歴史ある和歌山県民歌

2019年7月22日~2019年7月28日放送 
和歌山放送 報道制作部 柘植義信

【番組概要】
荘厳なメロディーに乗せて紀伊半島の情景と人々の心のありようを歌い上げる和歌山県民歌。歌詞には浜木綿や常春、くろしおなど南国を表現する歌詞が並ぶ。この県民歌、戦後の復興を願う篤志家の提案がきっかけになって懸賞金付きの公募で実現した。選者は郷土のの文豪佐藤春夫、作曲は日本を代表する作曲家の山田耕筰が担当した。国体の開会式など大きな式典などでは歌われてきたが、県民歌制作の思いに反し、県民にはあまり定着してこなかった。和歌山でも雪が降り積もったり、山深いところもあるので、黒潮が流れる常春を唄う県民歌に違和感を感じる人もいるようだ。長野県の人は県民歌をだいたいの人が歌えるという。和歌山県でも県民歌評価する声が一部で上がり、県民歌を歌おうという運動が始まった。知事も率先して歌い、PRに努め、その機運を盛り上げようと期待を寄せている。「いやさらに伸びよさかえよ、ふるさとは常にほほ笑む」と歌詞は結んでいる。歌ができて70年あまり。時代は昭和から平成、令和になった。過疎と高齢化が進む紀伊半島の南端にある和歌山県に住む人々が歌の原点になった「平和への願いと復興と発展」を今改めて考えるきっかけにしたい。

【制作意図】
戦後の混乱期、後世に残るものをとの願いからある篤志家が持ちかけ企画された和歌山県民歌。学習机が840円という時代に1万円という破格の懸賞金が付き作品の募集が始まった。郷土の文豪佐藤春夫が歌詞の選者に。作曲は日本を代表する作曲家山田耕筰が担当した鳴り物入りの県民歌。しかし国体など大きな行事の時以外はあまり歌われることがなく、県民への定着率は今ひとつ。長野県のように多くの人が親しんでいないようだ。しかし荘厳なメロディーに乗り、選者の春夫がいう情緒豊かに風土や県民気質を歌い上げている歌を高く評価する人もいる。後世に残るものをという篤志家の志を受け継いでいこうという機、運もではじめた。地方では、過疎と高齢化、都会への一極集中などで地域の衰退が続いている。「いやさらに伸びよさかえよ、ふるさとは常にほほ笑む」と歌は締めくくっている。歌ができて70年あまり。平和な時代が続いて欲しいという願い、心が折れそうになったとき和歌山県に住む人が心に刻みたいがことばがこの歌にあることを広く伝えていきたい。

【制作後記】
制作担当者は自分の出身地、東京の歌が歌えません。和歌山でこの歌を知り、ふるさとを持つ人がふるさとへの強い思いや地域発展への熱い希望を知りました。地方の活力が減退し、都会への一極集中がさらに進んでいる今日、地元のラジオ局がこうした歌を紹介することで地域に生きる人や他の土地に移り住んだ人の心が折れそうになったとき、心の礎になればと思いました。令和の時代が始まりました。どんな時代になるのでしょう。この歌ができた当時の復興と発展、平和を願う気持ちをラジオを通していろいろな形でリスナーに伝えていくことが私たちにできる一つの地域貢献ではないかと感じています。情報発信の手段としてのラジオ放送はこれからも生きていくと考えるからです。

茨城初のプロ野球チーム 茨城アストロプラネッツ~1年目の挑戦~

2019年7月15日~2019年7月21日放送 
茨城放送 編成局編成制作部 首藤美穂

【番組概要】
今年4月、茨城県に県内初のプロ野球チームが誕生しました。日本プロ野球独立リーグルートインBCリーグに加盟している「茨城アストロプラネッツ」です。開幕から2か月、県内初のプロチームは地域に受け入れられているのか。「地元茨城を盛り上げたい」という思いで誕生したチームの今を取材しました。

【制作意図】
1年目をとりあげるのは今年しかない!と取材をお願いしました。話を伺い、チーム作りや認知度の低さなど、1年目ならではの難しさだけでなく、少しずつ応援の輪が広がっている様子を実感しました。私設応援団の声を中心に入れることで、地域に受け入れられていく様子が感じられるよう制作しています。

【制作後記】
球団代表の山根将大さんとの出会いは、2016年12月に球団がBCリーグ準加盟承認の取材をしたことがはじまりでした。そこから2年半、取材を続けることで私自身、茨城のスポーツチームに目を向けるようになりました。茨城アストロプラネッツはもちろんですが、放送を聞いた方が地元のスポーツチームに少しでも興味を持つきっかけになったらうれしいです。

2019年7月 8日 (月)

鐘舎 Bell Shelter~小豆島の音を集めたアート~

2019年7月8日~2019年7月14日放送 
西日本放送 報道制作局 報道業務部 奥田麻衣

【番組概要】
3年に1度、瀬戸内の島々を舞台に開催される『瀬戸内国際芸術祭』。今年4回目を迎え、会期を春・夏・秋の3シーズンに分け、四季折々の瀬戸内の風景とともに現代アートを楽しめます。この芸術祭に今年初参加となったのが、中国のアーティストDadawa(朱哲琴)さん。歌手や音楽プロデューサーとして活躍し、「音に興味がある」というDadawaさん。瀬戸内の島々の一つ香川県小豆島でどんな音に興味を持ち、どんな作品を制作したのでしょうか。

【制作意図】
音に興味があるという音のプロが作る音のアート・・・想像しただけでワクワク!「人々を感動させられる音の空間を作りたい」。Dadawaさんが興味を持った音、作品を通して小豆島の新たな魅力を伝えられるのではと思い取材したのですが、そこには想像を超えた音の空間が待っていました。

【制作後記】
Dadawaさんが小豆島で集めた音は約100種類。その中から作品に取り入れられたのは、5箇寺の鐘の音と醤油蔵での作業音(醤油を醸造する木桶に棒を入れてかき混ぜた際に出る音)でした。制作するにあたってDadawaさんが大切にしたのは「島に根付いてきた音を生かす」ということ。その音が小豆島にとってどんな存在なのか。歴史や伝統を学んだり、地元の方々にお話を伺ったりと小豆島に寄り添った作品作りが印象的でした。「地元の方が訪れることで、より魅力ある作品になると思う。作品を作れて幸せ」。Dadawaさんの作品は3シーズン通して展示。まもなく夏会期(7月19日~)がスタート。地元の方はもちろん多くの方に作品の一部として鑑賞し、音のパワーを感じていただきたいです。私は香川県に住んで7年になりますが、小豆島にこんな音があったのかと感動の連続でした。その感動を上手く伝えられたのか・・・。ラジオ制作歴“未”と記しましたが、実はこれまで制作経験ゼロ。企画、構成はおろか、録音機や編集機の使い方すら知らず・・・。それでもDadawaさんが見つけてくれた素敵な音を、魅力を、届けたい一心で音を紡ぎました。放送を聴いて小豆島に少しでも興味を持っていただければ嬉しい限りです。

 

茶市ん風が瀬戸に吹く~佐世保早岐茶市

2019年7月1日~2019年7月7日放送 
長崎放送 ラジオ局制作部 藤井真理子

【番組概要】
長崎県佐世保市の南東部に位置する早岐。地区が面する早岐瀬戸は大村湾と外海である佐世保湾をつないでいて、最も狭いところでは10メートル余り。潮の干満によってはさながら川のようです。
その早岐瀬戸沿いに開かれるのが400年の歴史をもつ「早岐茶市」です。茶市の始まりは、農閑期に農産物と海産物を持ち寄って交換したこととされ、現在は5月から6月にかけて三日間づつ4回、合計12日間開かれます。地元では「茶市ん風にあたるぎんた、そん年は風邪ひかん。」…「茶市で風にあたると、その年は風をひかない。」と言い伝えがあるほど、地域に根付き、親しまれている茶市です。
今年も5月に入り、出店の準備が始まりました。一年ぶりに再会する顔、お店同士、そしてお客さんとの再会を喜びながら茶市が始まりました。煮干しを売る寺崎さんは出店して52年。茶市の思い出を話してくれました。若い頃は、自分で採ったワカメを売っていたいう小山さんは87歳。今は手作りの漬物を売っていますが、今年が最後の茶市と言います。

【制作意図】
安土桃山時代から続いていると言われる伝統の茶市ですが、時代の流れの中で少しずつ変化しています。出店している皆さんの事情も一様ではありません。茶市が開かれる早岐地区の風土、茶市の歴史と賑わいを紹介しながら、茶市に寄せる人々の思いを伝えようと制作しました。

【制作後記】
最終日を迎えた茶市に87歳の小山さんの姿はありませんでした。番組中では敢えて触れませんでしたが、自宅で転倒して怪我をしたそうです。伝統の茶市ですが、ここにも高齢化の波が押し寄せています。また、早岐茶市は7、8、9の付く日、例えば17日や18日などに開くの慣習ですが、集客を考えて週末の開催を検討したり、河川工事に伴う開催場所の変更を検討するなど、伝統の茶市も曲がり角に来ていることを感じました。

2019年7月 2日 (火)

曲水の宴~現代に蘇る平安の歴史絵巻~

2019年6月24日~2019年6月30日放送 
福井放送 ラジオセンター 中村 謙太

【番組概要】
福井市の一乗谷朝倉氏遺跡は、戦国大名の朝倉氏が、5代100年に渡って築いた城下町の跡です。毎年、この遺跡で、貴族の歌遊び「曲水の宴」を再現したイベントが行われています。曲水の宴は、一乗谷朝倉氏遺跡でも、およそ450年前に行われていたという記録が残っており、これが、朝倉氏遺跡で曲水の宴を再現する理由の一つにもなっています。番組では、遺跡に日本全国から観光客が訪れ、賑わっている様子や、曲水の宴に参加した演者の想いと詠んだ歌、そして、見物客の様子などを紹介しています。

【制作意図】
曲水の宴は、戦国時代に行われていた催しで堅苦しい印象を受けますが、一般の人が公募を経て演者として参加できたり、小学生や高校生がボランティアとして参加していたりと、多くの人が親しんでいます。今年の歌のお題は「新」(あたらしい・あらた)。戦国時代に行われていた曲水の宴が、長い時間を経て、「令和」の新しい時代にも受け継がれているということを伝えたいと思い、制作しました。

【制作後記】
曲水の宴の核となるのは、演者が詠んだ歌です。その歌の音を綺麗に収録できるように、マイクをできるだけ近くに設置しました。

2019年6月10日 (月)

日本の風景に茅葺屋根を残したい

2019年6月17日~2019年6月23日放送 
秋田放送 ラジオセンターラジオ制作部 二田耕平


【番組概要】
秋田県横手市で農業を営む、佐藤偉仁さん(40才)は、茅葺屋根の葺き替えや補修を兼業している。「佐藤茅葺店」(弟子2人と3人体制)をはじめ、秋田県内では10人ほどの職人が茅葺を守っているが、全国的にも職人の減少、高齢化により、秋田から各地に出張することも少なくない。茅葺道具の心地良い音、偉仁さんの思いを取材した。

【制作意図】
担当していたワイド番組で、昨年、「つぎ なにつくろう!」(※制作後記参照)のご紹介をする機会があった。その関連で佐藤茅葺店ウェブサイトの「日本の風景に茅葺屋根を残したい」という言葉に出会い、取材を依頼した。秋田では季節外れの夏日、行程の多い茅葺作業の中では、ほんのわずかな時間ではあったが、果たして、現場の雰囲気は伝わるだろうか。

【制作後記】
佐藤茅葺店が、手仕事を未来に残したいいう思いで、2015年に始めた取り組みは、賛同する仲間たちの協力を得て、体験型マルシェ「つぎ なにつくろう!」に発展した。地域の公民館を会場に、子どもたちの心を動かす様々なワークショップが数多く並ぶ賑やかなイベント。今年も秋に開催される。

2019年6月 3日 (月)

若い力で伝統芸能を伝える 那賀高校 人形浄瑠璃部

2019年6月10日~2019年6月16日放送 
四国放送 編成制作部 中木光彦

【番組概要】
徳島県南部に位置し緑豊かな山々に囲まれた徳島県立那賀高校に4年前「人形浄瑠璃部」が誕生した。今年4月末に八面(やつら)神社の境内に建つ農村舞台でメンバー7人が伝統の人形芝居を演じた。2体の人形をあやつり語りに挑戦した高校生の姿を追った。

【制作意図】
後継者が減りつつある阿波人形浄瑠璃の伝統を絶やすまいと練習に打ち込む高校生のひたむきな姿を音を通じて伝えたい。

【制作後記】
練習風景では人形遣いの勘緑さんの熱の入った指導、それにこたえようとする生徒たち本番当日はたくさんのお客さんを前にしての演技、それらを私1人でミキサーやマイクをセッティングし収録しましたが失敗できないプレッシャーとの戦いでした。

 

水音で巡る兼六園

2019年6月3日~2019年6月9日放送 
北陸放送 ラジオ制作部 沼田憲和

【番組概要】
国内外から年間200人以上の観光客が訪れる兼六園は、川から水を取り入れ、その豊富な水が園内を潤しています。この水を使って庭師たちは水音を使った演出を施しました。小さな滝をより大きく感じさせたり、風の動きによって音が変わったり、園内にある自然を模した配置の境界を何気なく知らせたりしています。この水の音の演出意図を探ることで、兼六園を音の世界から紹介します。

【制作意図】
兼六園には、園内の案内アナウンスや玉砂利を踏む音など様々な音に溢れています。その音のすべてが回遊式庭園の魅力を伝える演出でもあります。特に水の音は、加賀百万石の庭師が工夫を凝らして作り出したもので、その演出意図を知ることで兼六園の新たな魅力や江戸時代の作庭技術の高さを伝えたいと思います。

【制作後記】
地元の人間も知らない兼六園の音の世界で、改めて藩主という絶対権力者の力の凄さや庭師の作庭にかける思いの強さを感じました。

2019年5月30日 (木)

星の話をしよう

2019年5月27日~2019年6月2日放送 
山口放送 ラジオ制作部 千田 正秀

【番組概要】
山口県宇部市にあるプラネタリウムは現役のものとしては 国内で最も古いプラネタリウム。 52年前に作られた施設で解説員を務める久幸美雄さん76歳。 アナログの光学式プラネタリウムを操って、訪れたお客さんの年齢や科学の 知識に合わせた星の話をしてくれます。わずか70席ほどの小さな空間で語られる、デジタル式のプラネタリウムでは 真似できない、久幸さんの温かみのある星の話を伝えます。

【制作意図】
「地球ほどきれいなものはない。外の世界(星の世界)を知ることは 自分自身を知ること」と いう久幸さんの言葉を聞き、 久幸さんが語る星の世界をより多くの人に伝えたいと思いました。 「星の下ではすべて平等」、「われらは、はてしない夢とロマンと想像力をもつ りりしい科学者。つねにワクワクドキドキする柔軟な心を持って、 ユーモアあふれ、謙虚で、やさしい、朗らかな宇宙人でありたいと思います」。 これらは久幸さんが作った宇部天文同好会のきまりです。 久幸さんの人柄と語り口、そしてアナログの投映機が作り出す 星の世界の雰囲気を少しの間でも感じてもらえればありがたいです。

【制作後記】
番組内には入れられませんでしたが、実はこのプラネタリウムのある施設は 数年後には取り壊しが決まっていて、プラネタリウムもその寿命を終えることになります。 新たな施設が建設され、プラネタリウムや天体望遠鏡が整備されるとしても 全く新しいものになるでしょう。 久幸さんの名解説が聴けるのも今のうちなので、天文ファンの皆さん、 天文ファンでなくても一度、宇部市に足を運んで、久幸さんが案内する 星の世界で遊んでみてはいかがでしょう?

平和を奏でる音色 ~カンカラ三線からサンレレへ~

2019年5月20日~2019年5月26日放送 
ラジオ沖縄 制作報道局 報道部 杉原 愛 

【番組概要】
三線は沖縄の人々=うちなーんちゅにとって、ただの楽器ではない。何もかも失った戦時中、うちなーんちゅは悲しみや苦しみを紛らわせるため、空き缶やパラシュートの紐など、ありあわせの材料で“カンカラ三線”を制作した。切なくも力強く響くその音色に人々は生きる希望を託した。カンカラ三線の存在は、過去の沖縄の歴史も物語っている。
一方で、今の時代だからこそ誕生した新たな三線もある。ハワイの「ウクレレ」と沖縄の「三線」を融合させた楽器 ”サンレレ” だ。全く異なる2つの楽器が見事に融合して癒しの音色を奏でるサンレレには、様々な文化を受け入れ、世界とつながり独自に発展してきた沖縄の姿が重なるようにも見える。過去を語り継ぐカンカラ三線の音色と平和を喜び歌うようなサンレレの優しい音色。
どちらにも平和を祈る沖縄の心が宿っている。


【制作意図】
三線には“心”が宿ると言われる。それは、時代の流れと共に 常に三線が人々の心に寄り添ってきたからだろう。戦時中に人々の心を支えた「カンカラ三線」は、うちなーんちゅの悲しい歴史を一緒に乗り越えてきた三線。平和な時代の沖縄に生まれた「サンレレ」は、異文化を受け入れ、新たな時代を切り開いてきたうちなーんちゅのおおらかさを表現する三線。生まれた時代は違えど、そこには平和を愛するうちなーんちゅの精神が息づいている。それぞれの三線が奏でるうちなーんちゅの思いに耳を傾けてほしい。


【制作後記】
「カンカラ三線は、本来はあってはならなかったもの」という言葉が忘れられない。戦争を体験した父に収容所での経験を聞いて育ったという、三線店を営む照屋勝武さんの言葉だ。戦時中、何もかも失った最悪の状態でうまれたカンカラ三線は、平和な時代には弾かれるはずのなかった楽器だ。でも、だからこそ、カンカラ三線が奏でてきた当時の人たちの思いは未来にも語り継ぐ必要があると感じる。一方で、サンレレは全てを包み込むような平和を象徴するような音色だ。カンカラ三線の音色には苦しい状況にも前を向き、立ちあがるうちなーんちゅの強さが。サンレレの音色には異なる文化を受け入れて独自に新たなものを生み出すことができるうちなーんちゅの寛容さがあふれている。どちらの音も、次の世代に残していきたい。

 

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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