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2021年12月

2021年12月24日 (金)

山あいに響く懐かしの音

2022年1月3日~2022年1月9日放送 
信越放送 編成制作部 小林徳明

【番組概要】

長野県の南部、東西を南アルプスと中央アルプスに挟まれた山あいの地域を進むリヤカー。そして、郷愁を誘うように響く懐かしいラッパの音。ここでは、北海道から移り住んだ若者が、市街地から離れた場所に住み、コロナ禍で外出を控えているお年寄りたちに、味が自慢の豆腐を届けようと、昔ながらの豆腐の引き売りを行っている。引き売りでは、自然と会話が生まれ、お年寄りたちに、豆腐だけでなく笑顔も届けている。

【制作意図】
豆腐屋さんが鳴らすラッパの音は、自分にとっても子どもの頃に聞いたことがある、懐かしい音です。しかし、いつのころからか聞くことがなくなり、すっかり忘れていた音でした。そのラッパを使って、しかもその音を知らない世代であろう若者が、豆腐の引き売りをしていることを知り、どんな人がやっているのかということに興味を持ったのと同時に、懐かしい音の周りに、どんな人が集まり、どんな時間が流れるのかを知りたいと思い取材を始めました。

【制作後記】
手作りのリヤカーを引き、ラッパを鳴らしながら豆腐の引き売りをしている若者は、物静かな中にも、バイタリティーあふれる若者でした。縁もゆかりもない地に移り住み、母親やおばあさんにあたる世代の女性の中で働きながら、山あいに住むお年寄りたちに豆腐を届けたいという思いには、頭が下がる思いもし、こうした若者のエネルギーが、買った人たちの笑顔になっている様子を見て、爽やかな気持ちで取材を終えました。

落ち葉に映る縄文人~御所野遺跡の清掃活動

2021年12月27日~2022年1月2日放送 
IBC岩手放送 メディア編成局ラジオ放送部 照井達也

【番組概要】
2021年7月世界文化遺産に登録された岩手県一戸町の御所野遺跡。縄文時代中期後半(約5000年前~約4200年前)約800年間、人々が定住したと考えられている集落跡で、ここでは毎年、地元住民が清掃活動を行っています。「縄文人は枯れ葉を集めたのだろうか・・・」そんなことを思いながら、遺跡で落ち葉掃きをする参加者たち。清掃活動は、来場者のためだけでなく、自然と共に生きた縄文人の精神を後世に伝えていこう、という誓いの場でもありました。

【制作意図】
清掃活動には、毎回、地元住民をはじめ、町内外から約200人が参加しています。なぜ、毎回多くの人が参加し、遺跡を支えているのか。参加者の思いが少しでも垣間見られればと思い、世界文化遺産に登録されてから初めてとなる清掃活動を取材しました。

【制作後記】
お話を伺った柴田さんは、「清掃活動に若い人も増えて嬉しい」と話していました。今回、地元の高校生6人が、それぞれ自主的に参加。ある高校生は「いつもは部活で日程が合わなかったが、今回参加することができました」と嬉しそうに話します。遺跡の近くにある小学校では、この日とは別に、毎年、清掃活動や遺跡の調査活動、ガイド活動を行っています。御所野遺跡は、幅広い世代にわたって愛されている所だと実感することが出来ます。

冬のおわら風の盆

2021年12月20日~2021年12月26日放送 
北日本放送 報道制作局報道制作部 岩本里奈

【番組概要】
富山市の山あいにある町・八尾町。町の名前は知らなくても「おわら」と聞けばわかる人も多いのではないでしょうか。ここは、300余年も踊り継ぐ民謡行事「おわら風の盆」の舞台。毎年9月1日~3日にかけて町中のぼんぼりに淡い灯がともり、浴衣姿の踊り手たちが、「おわら節」に合わせて踊りを披露しながら町を流し歩きます。その哀愁漂う優美な姿を一目見ようと、毎年20万人もの観光客が訪れる富山を代表する行事の一つ。しかし、この町も例外なく、新型コロナウイルスの影響により、昨年に続いて今年も開催中止となりました。富山から秋を告げる音が消え、八尾の人たちの心の炎さえも消えかけていた。そんな中、越中八尾観光協会を中心に異例の「おわら特別ステージ」が企画され、今年11月から開かれています。久しぶりに戻ってきた八尾の音、そして待ち望んだ人々の声をお届けします。

【制作意図】
「おわら風の盆」は、県民にとって秋の訪れを告げる行事であり音。その音が、雪国富山でこの時期に聞こえてくるのは異例のこと。「冬のおわら風の盆」とはそれほど馴染みのない言葉です。例年とは違った形での開催となった特別ステージにかける八尾に生きる人々の想い、そしてより多くの人におわらの音を届けたいと思い取材・制作しました。

【制作後記】
私も何度も訪れていますが、幅の狭い道沿いに、肩を寄せ合いながら鑑賞するのがおわらの景色でした。今回初めて開催されている特別ステージでは、室内で椅子に座ってゆっくり鑑賞できる他、踊りの講習やホールに響き渡る音色が特別な時間を演出しています。取材中、町の人からはこの2年間開催できていないことで「伝統が伝統ではなくなっている」という言葉を聞き、ハッとさせられました。新しいものを取り入れながら後世に継いでいく今この瞬間を、より多くの方に感じていただけたら嬉しいです。

木をかえて森をかえる

2021年12月13日~2021年12月19日放送 
東海ラジオ 報道制作局 第一制作部 山本俊純

【番組概要】
岐阜県恵那市で林業を営む「安藤林業」 安藤雅人社長。
安藤氏は本業の傍ら、自社にほど近い森林の伐採と植林の活動に取り組んでいます。
戦後、個人所有の森林の多くに、杉や檜の針葉樹が植えられました。それはもちろん、木材を売り収益を出すためですが、木材価格は下落、奥山の木々は採算が合わずに放置される結果となっています。針葉樹林は、広葉樹林と違い落葉しません。さらに、適切な間伐をしなければ土砂崩れの原因にもなります。奥山の針葉樹林の放置が山以外にも影響を及ぼす現状もあります。安藤さんは、その解決のために赤字覚悟の植林活動を続けている。安藤さんの活動に賛同する地元企業も出てきていますが、安藤さんの言う「100年先の森作り」は、まだまだ始まったばかり。今回は、その安藤さんの思いを 東海ラジオパーソナリティ小島一宏氏のインタビューとナレーションでお送りします。

【制作意図】
安藤社長の活動を取材するために初めて山を案内された際、印象に残った「森の足音」。麓から見れば、針葉樹も広葉樹も豊かな緑ですが、その山の性質は全く違うものです。安藤社長の熱い思いを聞くに連れ、森林保全が決して山のためだけでないことが強く胸に刺さる。これは、戦後の林業行政の問題にも切り込むことになります。この番組が、日本全国が抱える森林を取り巻く、環境・防災・行政・後継者問題などの課題を考える切っ掛けとなればと思います。

【制作後記】
今回は、印象的な「森の足音」と、安藤さんの声を中心に構成しました。安藤さんの話を聞けば聞くほどに、恵那市に限らず全国の森林が抱える課題が浮かび上がります。今回の番組に盛り込めなかった安藤さんの取り組みもまだまだあります。それも全て「100年先の森作り」のため。私自身も、安藤さんの熱意に胸を打たれました。今後も、継続取材を行っていきます。

2021年12月 2日 (木)

笑顔結ぶ、先生の食パン

2021年12月6日~2021年12月12日放送 
ラジオ関西 報道制作部  林真一郎

【番組概要】
神戸の中心・三宮から電車で東へ約5分。動物園やスポーツ施設、そして神戸有数のにぎやかな商店街がすぐ近くにある王子公園駅。駅前にある開店4年目の小さな食パン専門店が舞台です。今では地元をはじめ、電車や車で買い求めに来る人もいるなど、その味を求める人が増えつつあります。店主の山口孝裕さんは元高校の教師で、野球部監督や顧問として甲子園にも出場しました。その後、転職してプロレスの広報担当として勤務しますが、教え子との縁でパン作りを始め、3年前に独立しました。材料にはこだわり、使う素材はハチミツを除きすべて国産。卵やマーガリンも使っていません。毎朝4時半から、すべての素になる生地作りを始めます。無骨なミキサーの機械音。山口さんは「生地を作るミキサーでの作業こそがパン作りの基本で大事だ」と言います。開店後、次々に訪れる客、そして店を支える教え子たち。転職を重ねてたどり着いた、食パン作りにかける山口さんの思いを送ります。

【制作意図】
パンの購入額が全国で最も高いのが神戸市(総務省の家計調査2018~2020年)です。特に神戸の中心地繁華街である三宮や元町には、食パンをはじめとするパンの専門店が乱立。最近では郊外の住宅地にも次々に開店するなど、神戸だけでなく、兵庫県内全体が「一大パン激戦地」です。
そんななか、とある雑居ビルの1階で店を始めて3年となる小さな食パン店。   店主は元高校教諭。2度の転職を経てパン作りを始めました。新型コロナで世の中に閉塞感が漂うなか、下町の食パンからもらえる元気や笑顔を伝えたいと考え、企画しました。

【制作後記】
かつて担当していた番組で「朝はパンですか?ご飯ですか?」をテーマに、神戸市内でインタビューしたことがありました。約8割の方が「パン」と答え、にわかには信じられませんでしたが、その後、次々にパン専門店がオープンしているのをみると、改めて神戸の人はパンが好きなんだと納得させられました。「パン屋さん」は華やかな職場と思っていましたが、作る職人の作業は想像以上に大変だと実感。手作業はもちろん、思った以上に機械が活躍していて驚きました。ただ、機械に入れる素材や混ざり具合、温度・湿度管理などの細かい作業などは、やはり人の目や手がないとできない、そこに機械が合わさって、初めておいしいパンが生み出されると思いました。神戸にあるたくさんのパン屋さんで、きょうも生地をこねるミキサーの音がしている、この音こそが朝の食卓を支えている、そう思うと、食パンの味がより一層、おいしく感じられるようになりました。

 

おばあちゃんの味 かんばもち

2021年11月29日~2021年12月5日放送 
高知放送 ラジオ制作部 手島伸樹

【番組概要】
高知県東部に位置する北川村。村の基幹産業はゆず。幕末の志士、中岡慎太郎が生産を奨励したと言われています。この時期、村はゆず収穫の最盛期を迎えますが、同時に、「かんばもち」作りも始まります。岡島精米所がルーツと言われる「かんばもち」はサツマイモと餅米、砂糖を混ぜた甘いお餅。寒くなるこの時期からの村の代表的な味です。岡島和子さん(78歳)をメインにかんばもち作りに精を出す村の人々の様子を切り取りました。収穫したサツマイモの皮をはぎ、薄くスライスして干す。洗ったイモと餅米を蒸し、砂糖を加えて練り上げればかんばもちの完成です。昔と何にも変わらない「かんばもち」作りは北川村の冬の風物誌です。

【制作意図】
高知県の冬の味覚(おやつ)として、東の「かんばもち」と西の「東山」があります。どちらもサツマイモを使っていますが製法はまったく違うもの。中でも「かんばもち」は北川村の岡島精米所がルーツと言われており、今も岡島和子さん(78歳)を中心に作り続けています。番組ではふるさとの味である「かんばもち」作りの音をメインに構成していますが、仲良く作業しているおばあちゃん達の笑い声、よもやま話の雰囲気が昔はどこにでもあった地域の絆のように思い、制作しました。

【制作後記】

番組内でも笑い声がよく入っていますが、とにかく岡島和子さんは笑顔が似合うおばあちゃん。ですから和子さんの周りには自然と人が集り、そこには笑いが絶えません。”風物誌”と聞くと、伝統的な催しや地域独特のものを想像しがちですが、実はこうした何気ない集まりが、昔はどこでも見られた光景だなと改めて思いました。番組は「かんばもち作りが冬の風物誌」と締めていますが、実は岡島さん達の
笑い声が絶えない集まりこそが北川村の風物誌なんだと再認識しました。

 

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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