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2021年11月

2021年11月19日 (金)

白鳥みいつけた! ~新潟に冬を告げる声~

2021年11月22日~2021年11月28日放送 
新潟放送 情報センターラジオ放送部 齊藤 希

【番組概要】

幻想的な雪景色や雪国ならではの芸術的な除雪作業、雪ざらしや雪まつりなど新潟の冬といえば「雪」のイメージが強いが、その雪が新潟の街に降る前。「冬」という季節を新潟に告げに、遠くからやってくる渡り鳥「白鳥」にフォーカスした。新潟県内でも、白鳥の飛来地で有名な阿賀野市水原地区にある「瓢湖」に足を運び冬を告げるその声と、白鳥を見守る方たちの声を収録。現場の空気感をそのままお送りする。

【制作意図】
新潟県内、田んぼ近くの街はもちろん、新潟市の街中でも飛んでいる姿をみることができる白鳥。「冬の使者」と呼ばれたり、飛来するこの季節になるとニュースで取り上げられたりするが、実際のところどれくらいの時間から活動を始めるのか新潟県民でもよく分かっていない。それと同じように、飛来地である瓢湖から何時に飛び立つのかもよく分かっていない。今回は、瓢湖を拠点としている白鳥の動きを紹介したいと考えた。

【制作後記】
私自身、瓢湖にいって白鳥をみるのが初めてだった。早朝に行くなんて想像もしていなかった。瓢湖を真っ白に埋め尽くす白鳥。その声。そして、飛び立つ際の水面を駆ける音や骨が軋む音がこんなにも激しいとは思ってもみなかった。まさに生命の息吹を体感したと言えるだろう。瓢湖に集まる白鳥。そんな白鳥を見守る人々。それら全てが「新潟の風物詩」なのだろうと思った。私の素直な気持ちが放送を通して伝わることを願う。

2021年11月 8日 (月)

てるはの森の染織職人

2021年11月15日~2021年11月21日放送 
宮崎放送 ラジオ部 宇田津 幸恵

【番組概要】
日本最大級の照葉樹林を誇る宮崎県綾町。
面積の8割を森(てるはの森)が占める自然豊かな町の外れに「綾の手紬染織工房」は佇んでいます。宮崎の手紬「綾つむぎ」を作るため、養蚕から絹糸づくり、染め、織りまでの全ての工程を一切の妥協なしに手仕事で行っているこの工房。作業などそのほとんどが長い歴史の上にある中で、目を惹いたのが若き職人の姿です。番組では、工房での素晴らしい手しごとが生む音を中心に、若き職人の思いを描きます。

【制作意図】
きっかけは、今回ナレーターを担当した薗田潤子さんの「蚕が桑の葉を食べる音って私たちの親世代にとって懐かしい音なのよ」という言葉でした。そこから知った「綾の手紬染織工房」のこと。歴史、技術、思いなど、知れば知るほど奥が深く、どこを切り取っても物語がありました。その中から今回切り取ったのが「手しごとの音」です。宮崎県に職人がこだわり抜いて作る最高の手紬「綾の手紬」があるということ、そして現代の名工のもとで技術を磨く若き職人がいることを知っていただけたらという思いで制作しました。

【制作後記】
今回初めてこのような作品制作に携わらせていただきました。
取材を通して初めて知ることも多く、知ることができる嬉しさの半面、どの部分に焦点を当てるかとても悩んだのが本当のところです。なのでインタビューの中で若き職人の二上拓真さんが言った「作品に自信を持つには作って作っていっぱい恥をかくしかない」という言葉と、その師匠の秋山眞和さんの「面白く仕事をしなきゃ」という言葉を自分に言い聞かせながら制作しました。偶然にもこの放送が宮崎県で放送される日に、綾町で工芸まつりが開催されます。今後工芸作品を目にしたり、手に取ったりする際に、その後ろにある物語に少しでも思いを馳せてくれるきっかけになったら嬉しいです。

ぬくもりに集う~温泉宿のおかみさん

2021年11月8日~2021年11月14日放送 
ラジオ福島 編成局放送部 小川栄一

【番組概要】
福島県田村郡三春町の斎藤の湯温泉・上の湯は長年に渡って地元住民に親しまれる日帰り入浴も出来る温泉旅館です。ラジウム鉱泉を薪を燃やして沸かす湯は「体の芯まで温まる」と評判で、リウマチや神経痛などが「良くなった」と話すお年寄りも多く、親子二代、三代で通う人も少なくありません。女将の伊藤照子さんは約20年前に夫を亡くしてから娘夫婦とともに旅館を営んできました。気さくに声を掛け、温かく客をもてなす女将さんと、夕方になると温泉客が続々と訪れ賑わう上の湯。人々の絆をつなぎ、心身ともにいやしてくれる山間の温泉宿を女将さんやそこに集う人たち声で表現しました。

【制作意図】
新型コロナウイルスの影響で遠出がはばかられる昨今。地元のお年寄りが安心して出掛けられ、くつろげる場所が斎藤の湯温泉・上の湯でした。風呂上りに穏やかな表情で女将さんと談笑する温泉客の姿や温かく客を迎える女将さんの人柄、日帰り入浴客で賑わう夕方の宿の雰囲気など、山間の温泉旅館のぬくもりを音声で伝えたく思い取材制作しました。

【制作後記】
地元農家の方から野菜の差し入れをいただくことも多いという斎藤の湯温泉・上の湯。取材で訪れた日もナスがたくさん入った段ボール箱が玄関に置かれ、女将さんが温泉客に「持って帰って」と進めている姿が印象に残りました。キュウリやカボチャなど食べきれないほどの差し入れをもらうこともあり、おすそ分けすることもたびたびだとか。湯上げタオルと野菜の入った袋を下げ、宿を後にする人の様子もこの旅館ならではかもしれません。また、日帰り入浴(1回入り)の入湯料は330円。初めて訪れた人の中には思わず「安っ!」とこぼしてしまう人も。懐にも優しい?!温泉です。

不思議の森を訪ねて

2021年11月1日~2021年11月7日放送 
和歌山放送 報道制作局報道制作部 黒川綾香

【番組概要】
和歌山県の南の端・新宮市には、国の天然記念物に指定されている「浮島の森」という島があります。この島、「不思議の森」と呼ばれているんです。浮島という名前の通り、水の上にプカプカ浮いているということに加え、本来、新宮のような暖かい地域では育たないはずの寒冷地で育つ植物と暖かい地域で育つ植物とが共生していることからこのように呼ばれています。この番組では、そんな不思議の森の秘密をガイドや地元の子どもたちの話を聴きながら探っていくとともに、森が持つ魅力や私たちに訴えかけるメッセージを読み解いていきます。

【制作意図】
最近よく耳にする「多様性」という言葉。人種や言語はもちろん、考え方や経験、ジェンダー、年齢、身体能力など、幅広い観点から多様性が求められています。和歌山県熊野地方は、古から「癒しと蘇りの地」と言われ、熊野詣を通じて老若男女、身分の差、善悪に関わらず全てのものを受け入れ、人々を蘇らせてきた神秘の世界。人々は神を信じ、自然に身を委ね、勇気と元気をもらい、前に進んできました。そんな熊野地方の入り口、新宮市の湿地に浮かぶ「浮島の森」。この島には、いろいろな動植物が関わり共生している不思議な空間が広がっています。今、新型コロナウイルス感染症拡大で人々の生活が一変しています。さらに、世界各地では紛争や偏見、差別、貧困などに苦しむ人が多く、共生の考えが今問われているのではないでしょうか?番組では、和歌山県の「浮島の森」の汎用性とそれに関わる人々を紹介しながら、共生のあり方を考えます。

【制作後記】
実際に「浮島の森」に足を踏み入れると、たくさんの植物で入り乱れています。番組でもご紹介しているように、熱帯の植物、暖かい地域で育つ植物、寒い地域で育つ植物が共生しています。さらに、そこにはいろいろな昆虫や動物も暮らしていました。和歌山県に住んでいても、新宮市以外に住んでいる人にはなかなか馴染みのない「浮島の森」。しかし、1度訪れるとまた行きたくなる魅力があります。ガイドの方たちや地域の子どもたちの話からも地域では馴染みがあって、大事にされていることがわかりました。こんな珍しい島、他にはありません。ぜひ皆さんにも1度訪れていただき、この島の魅力を感じていただければと思います。

400歳のパイプオルガン

2021年10月25日~2021年10月31日放送 
長崎放送 報道メディア局 報道制作部 戸島夢子

【番組概要】
島原市にある岡崎潤子さんの音楽教室に突然やってきたパイプオルガン。
今ではとても珍しい蛇腹状のふいごを使って空気を送り演奏します。約400年前に実際に使っていたそのオルガンは、パイプまですべてが木でできていて、現代の金属のオルガンとは違い、その音色はリコーダーのような愛らしさがあります。岡崎さんは、コロナ禍で演奏会などが減っていましたが、古楽器を知ってもらうきっかけになれればと、パイプオルガンの音に合わせて読み聞かせや、子供たちに直接触れる機会を作っています。

【制作意図】
音楽教室には、チェンバロやリュートなどたくさんの古楽器がありました。私自身も音楽をしていて、ある程度の楽器は見たことありますが、数ある楽器の中で唯一見たことがなかったのが全て木製のパイプオルガンでした。木でできているため優しいくかわいらしい音がします。皆さんに聞きなじみのあるオルガンとはまた違った音を楽しんでほしかったので取材しました。

【制作後記】
ある古楽器制作者と親交のあった岡崎さん、会話の中で何げなく言った「古楽器のオルガンも見てみたいですね」という一言で、古楽器制作者が突然やってきて驚いている間にその場で据え付けられてしまいました。
現在、岡崎さんの音楽教室にありますが、ほかの人にもたくさん触れてほしいということで、年内中にどこか違う場所に置くことを計画されています。

ミシンの音が鳴り響く町

2021年10月18日~2021年10月24日放送 
西日本放送 報道制作局 報道業務部 アナウンサー 奥田麻衣

【番組概要】
「昔は町のあちこちからミシンの音が聞こえてきたんです。」ミシンの音はこの町の音なんですと話すのは、今年で創業82年を迎える江本手袋株式会社3代目の江本昌弘さん。香川県は「うどん県」として有名ですが、その東端にある東かがわ市は国内の手袋生産シェア日本一を誇る「てぶくろ市」でもあります。かつてこの地域には仕事も資源もなく、「地域の生活を安定させる仕事を作りたい」ともたらされたのが手袋作りの始まりでした。130年に渡って築き上げた技術はトップアスリートからも絶大な信頼を寄せられ、メジャーリーガーやプロゴルファー、今年東京オリンピックで金メダルを獲得したフェンシング日本代表選手のグローブもこのエリアで作られています。しかし、地域の地場産業として栄えてきた手袋産業も時代が移り変わるにつれて多くのメーカーが生産拠点を海外へ。また、手袋職人たちの高齢化も進んでいます。職人たちの仕事は少なくなり、職人を目指す人も減り、かつて賑やかだったミシンの音が町から消えていく・・・。そんな中、手袋職人になりたいという10代の若者が今年50年ぶりに江本手袋に!職人たちの技を守り続け、次の世代の職人を育てていく。また賑やかにミシンの音が鳴り響く町にと奮闘する江本さんの想い、そして手袋職人たちが奏でる「この町の音」をお届けします。

【制作意図】
以前、別の取材で江本手袋を訪ねたときに工房から聞こえてくるミシンの音に心惹かれたのが取材のきっかけです。この手袋職人たちが奏でる様々な音を届けたい!!今もなお手袋づくりを全て手作業で行っている江本手袋。取材を進めてみると、その一つ一つの作業に職人のこだわりが詰まっていました。ところどころ錆つき味の出ている機械は、長年、職人が使い込んだ証。それは、職人の手に馴染んでいる機械だからこそ成せる技、そして音でした。一方で、今年50年ぶりに江本手袋に入社した夏田観可子さん19歳。彼女が奏でる音はまだまだたどたどしく、でもその音からは手袋を縫えることへの喜びや楽しさが伝わってきて、希望に満ち溢れていました。地元生産にこだわった、作り手の顔が見える手袋作り。その魅力を、音で少しでも届けられればと制作しました。

【制作後記】
「手袋を通して、地域の仕事を守る。」社会の変化によって何度も危機的状況に陥りながらも、先代からの想いを受け継ぎ、地元生産にこだわってきた江本手袋。昨年からは新型コロナウィルスによる影響でアパレルブランドや量販店からの注文は減少。再び厳しい状況に置かれています。それでも、手袋職人の継続的な仕事を確保したいとの思いからマスク作りを開始。さらに、手袋づくりの技術を活かしてハンドソックスを開発。新型コロナウィルスの感染拡大により、ドアノブや電車のつり革、パソコンなど特定多数の触った場所に手が触れることへの不安があることを知り、少しでも不安や悩みを解消できればと開発したそうです。「着けた人の気持ちが良くなる手袋を届けたい。」今回の取材を通して、工房から聞こえてきた音に心地よさを感じたのは、その一つ一つの音に手袋職人たちのそういった想いが込められているからなんだと心が温かくなりました。

沖縄の伝統漁船「サバニ」の魅力を伝える造船大工

2021年10月11日~2021年10月17日放送 
琉球放送 ラジオ局編成制作部 上原圭太


【番組概要】
沖縄県本島北部の大宜味村、塩屋湾に面した場所に、沖縄の伝統漁船「サバニ」と呼ばれる木造船を造り、販売だけでなく、クルーズツアーも夫婦で運営する「ヘントナサバニ」の邊土名さん。琉球王朝時代の丸木舟にルーツを持つサバニは、金属の釘や部品などを一切使わず、全て木や竹を使ってできています。もともとは漁船として、1950年ごろまで使われていたサバニ。エンジンや強化プラスチックの登場により、一時は全く受注が無く、沖縄の伝統が廃れるところでしたが、2000年からマリンスポーツやアクティビティ用として、最近では多くのサバニ愛好家が増えました。数年前までは旅行会社に勤め、これまで物作りをしたことが無かった邊土名さん。あることがきっかけでサバニに魅了され、やがて自身でサバニの店を立ち上げました。県内の職人は高齢という中、30代の若さでサバニ大工になった邊土名さん。どうやってサバニが出来上がるのか、そしてサバニの魅力は何かを語ります。

【制作意図】
沖縄に古くから伝わる木造船の「サバニ」は、沖縄県民でもその名を聞いたことはあっても、乗ったことが無いという方が多いかと思います。実際、エンジンや強化プラスチックの登場により、1950年ごろからほとんど使われなくなってきました。一度は途絶えかけたサバニの文化は、今やアクティビティ用として見直されています。しかし、若い職人は県内にはほとんどいません。
そんな時、沖縄県北部の大宜味村に30代の若さでサバニ大工になった方がいるという情報を聞きました。沖縄の文化「サバニ」を邊土名さんがどう伝えているのか、そしてサバニの魅力を知るため、取材をしました。

【制作後記】
切る・彫る・削る、全てを行っている邊土名さん。1艇のサバニを作るのに3か月かかるようです。サバニについて熱く語る邊土名さんは、本当にサバニが好きなんだと感じました。「ヘントナサバニ」の工房のすぐそばには海があり、そして裏には小さい山。自然に囲まれて、ゆったりした時間が流れます。サバニ造りを見学しているだけでも楽しいですが、実際に乗ってみると、少し強い日差しと優しい海の風、そして「ドボンドボン」とサバニを漕ぐ音。遠くからは鳥の声も聞こえ、本当に癒されます。
今は簡単に旅行に行くことが難しい時代になりましたが、いつか沖縄にいらっしゃる時は
沖縄の伝統的な木造船「サバニ」に乗って癒されてみませんか?

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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