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2021年4月

2021年4月 6日 (火)

震災10年・帰れない故郷を思う『大堀相馬焼』

2021年2月22日~2021年2月28日放送 
ラジオ福島 編成局放送部 森本庸平

【番組概要】
福島県浜通り・浪江町の「大堀(おおぼり)相馬焼」は、江戸時代から続く伝統工芸です。ひび割れや二重焼、馬の絵などの特徴は、全国的にも珍しく、地元で親しまれてきました。東日本大震災と原発事故で、窯があった大堀地区は避難区域となり、10年経った今も、放射線量が高く、住むことができません。各地に避難・移転して多くの窯が再開する中、唯一の女性窯元として、避難先で創作を続ける近藤京子さんの故郷と伝統への思いに迫ります。

【制作意図】
大堀相馬焼が焼き上がり、窯が開いた瞬間、まるでオルゴールのような神秘的な音が鳴り響きます。特徴の1つである「ひび割れ」のひびが入る音で、原発事故の後、場所は変わっても、その音が聞こえなくなることはありませんでした。ぜひ全国の皆さんに、大堀相馬焼が生み出す独特の音色を届けたいと思い、取材に出かけました。

【制作後記】
大堀相馬焼そのものは知っていましたが、伝統的な特徴を持った作品だけでなく、コーヒーカップやランプシェードなど現代風にアレンジしたものもたくさんあったことに驚きました。近藤さんが、故郷への思いを語りつつ、「大堀でなくても、今の場所で伝統をつなぐことが大堀相馬焼」と語っていた姿に、近藤さんの葛藤と使命感を感じました。

猫の手も借りたい?!よみがえれ貴志川線 奮闘記

2021年2月15日~2021年2月21日放送 
和歌山放送 報道制作部 柘植義信

【番組概要】
和歌山市のJR和歌山駅と紀の川市貴志川町の貴志駅間14キロ余りを30分で結ぶローカル鉄道、和歌山電鐵貴志川線。大正時代に開設された軽便鉄道が発祥のローカル線。大きな赤字が続き、公募で選ばれた和歌山電鐵が事業を引き継いだ。市民の応援を得て今までの車両を改造していちご電車やおもちゃ電車などを走らせたり、グッズの販売、イベントするなど乗客を増やそうといろいろな取り組みをしている。しかし、この鉄道の起死回生の立役者は一匹のメスの猫から始まったと言っても過言ではない。当時売店の経営者が飼っていた三毛猫のたまが社長の目に留まり、駅長に就任した。猫の駅長の意外性が当たり、たま駅長に会おうと全国各地のほか、アジアなど海外からもやってくるフィーバーぶり。三毛猫のたまは一躍アイドルに。県からは鉄道の再生や観光に大きく貢献したとしてたま駅長に県勲侯爵の称号などが贈られるなど異例の展開に。2015年になくなったが、葬儀には県知事や地元の市長も参列するほどたま駅長の存在は大きい。その後ニタマ駅長が後を継いで6年近くになる。その一方で沿線人口の減少や道路の整備などで利用客は減少している。とりわけ、新型コロナウイルス感染症拡大で乗客は大きく落ち込んで赤字が続いている。猫の手も借りてあの手この手で貴志川線の存続を模索する社長。駅に奉られている名誉永久駅長「たま」も起死回生を祈っているに違いない。

【制作意図】
新型コロナ感染症拡大はこれまでの「当たり前の日常」や社会を一変させている。とりわけ外出の自粛で、鉄道やバスなど公共交通機関の利用者は大きく落ち込んでいる。沿線人口の減少や道路の整備、車の普及で利用者が落ち込んでいる地方鉄道は存続の危機にあるところが多い。和歌山県内を走るローカル線、和歌山電鐵貴志川線もその一つだ。あの手この手で利用客を増やそうと取り組んでいる。当時売店で飼われていた三毛猫を駅長に据えたところ、超アイドルに変身。一匹のメスの猫が鉄道の再生に大きな役割を果たしている。コロナ禍で乗客が減りさらに経営が厳しい地方鉄道。鉄道の再生に果敢に取り組む人や猫の駅長の奮闘の様子を紹介しすることで地方の置かれている諸課題を改めて提起し地方再生の道を模索するきっかけとしたい。

【制作後記】
たま駅長は手でものをつかむようないわゆる「にぎにぎ」が苦手だったとか。それは、仔猫のとき店主のエプロンのポケットに入れられていたからではないかと聞いたことがあります。鉄道再生への道筋は一匹の猫から始まったといっても過言ではないことを今回改めて実感しました。過疎と高齢化、車の普及に加え、コロナ禍が追い打ちをかけ、ローカル線の存続がピンチになっています。猫の手も借りてあの手この手で再生を模索するこの鉄道会社の奮闘は地方が持つ課題解決の一つの取り組みとして注目されるものだと感じます。地方に暮らし、地方から情報を発信する私たちラジオが置かれている状況もコロナ禍で厳しさを増していますが、いろいろなアイデアを駆使して人の集まる場を提供していきたいと気持ちを新たにしているところです。小嶋社長が言う「楽しくないと人は集まらないじゃない?!」一番心に残った言葉です。

明治から伝わる美味しさ、音でも美味しい長崎ちゃんぽん

2021年2月8日~2021年2月14日放送 
長崎放送 ラジオ制作部 藤井真理子

【番組概要】
皆さんは、長崎名物というと何を思い浮かべますか?カステラ・トルコライス・ちゃんぽん・皿うどん・・・。長崎は、海外との関りがとても深い街でその歴史も古く、現在も至るところにその面影が残っています。番組では、中国との関りから生まれた「ちゃんぽん」をご紹介します。「ちゃんぽん」は、明治時代に伝わり、長崎人ならどの家庭でもちゃんぽんを作るほど、現在も変わらず庶民の味として親しまれています。この番組の主人公は、長崎市のどこにでもある小さな中華料理店です。明治から伝わる庶民の味を守り続けています。ちゃんぽん作りの美味しい音を集めました。                         

【制作意図】
明治時代に長崎で生まれたちゃんぽんは、今に至るまで、味も作り方も基本的には変わっていません。ちゃんぽんは、具を炒める所から出来上がりまで、大きな中華鍋ひとつですべてを作ります。中華鍋がたてるちゃんぽん作りの音は、まさに美味しい音。昔から長崎人の食欲をそそる音なのです。
その美味しい音を、大正時代から走る路面電車や出前のバイクの音を交えながら、構成しています。番組を聴いたリスナーが長崎を訪れ、ちゃんぽんを食べたくなるような番組を目指しました。

【制作後記】
長崎県でも、新型コロナウイルスの影響を受け、飲食店は苦戦しています。取材させていただいた中華飯店 三吉も閉店時間を1時間早めました。それでも、64歳の仲良し夫婦は「正直苦しい」と口にしつつ、「やっぱり常連さんのおるけんが、やめられんもんね」と笑顔でお店を続けています。このお店では、いつもラジオが流れています。お二人とも大のラジオファンで、「録音風物詩を聴くのが楽しみ」と話していました。新型コロナウイルスの収束後には、活気あふれるお店の雰囲気と小浜さんの作る美味しいちゃんぽんを全国の皆さんに楽しんでもらいたいです。

老舗染物屋の伝統と新たな挑戦~琴平あい

2021年2月1日~2021年2月7日放送 
西日本放送 ラジオセンター 白井美由紀

【番組概要】
香川県琴平町。
毎年4月には現存する日本最古の芝居小屋 「旧こんぴら大芝居・通称金丸座」で四国こんぴら歌舞伎大芝居が開催され、町は春の華やぎを迎えます。その彩りを演出するのが町中に立てられる色とりどりの幟です。大正10年創業の染匠吉野屋は、こんぴら歌舞伎の幟を第一回から染めている唯一の老舗染物屋で、「讃岐のり染」という手法により、手作業で染められています。昨年は幟完成後にこんぴら歌舞伎の中止が決まり、今年も耐震化工事のため開催はありません。2年連続で琴平の町に幟がお目見えしないという残念な状況の中、新たな挑戦がはじまりました。讃岐正藍染めという大変手間のかかる染め方を、地元の農家の皆さんなどとタッグを組んで琴平町内ですべて作るというプロジェクトに取り組んでいます。その原動力は、「琴平愛」・・・「琴平愛」で「琴平藍」を育てています。

【制作意図】
染物の「音」に、私自身が、大野さんの琴平愛を感じました。3代目のお父さんと4代目がそれぞれ、この染め物という世界で、地元を盛り上げていきたいという思いを伝えたいと思いました。後世に、この染色の技術を受け継いでいってもらうためにも、たくさんの人に聴いてもらいたいです。

【制作後記】
実は、吉野屋では、藍染め用の甕-かめ-が敷地に埋まっていたことから、その昔には藍染めもしていたことがわかりました。これまでの伝統を大切にしながら、この技術を伝えていきたいと、話してくださいました。現在、藍の抗菌効果を期待して、藍染めのマスクも大人気だそうです。ただ、一点一点手作りで、大量生産できないので、なかなか入手困難だとか・・・。

元気に育て!-よっぱらいサバと浜家さんの愛情物語-

2021年1月25日~2021年1月31日放送 
福井放送 報道制作局 制作部 國松 希位太

【番組概要】

福井県小浜市、田烏(たがらす)地区。若狭湾を望む漁村に、浜家直澄(はまいえただずみ)さんの声が響きます。呼びかける相手はいけすにいるサバ。浜家さんは養殖されているサバに、声をかけながら餌やりを行っています。温度変化に弱いサバの養殖。最新技術が養殖を支えるなかでも、「何より大事なのは愛情だ」と、屈託のない笑顔で浜家さんは話します。酒粕を食べて育ったサバは「よっぱらいサバ」と名付けられ、抜群の鮮度と臭みのなさで人気を博しています。ところが、例年にない猛暑だった昨年。海水温の上昇でサバが大量死してしまいます。どんなに技術が進化しても、勝つことができない自然の変化。それでも、元気に育ってほしいという願いが、浜家さんの声に込められています。

【制作意図】
古くから小浜でたくさん捕れたサバ。その多くは京都に送られ、小浜と京都を結ぶ道は、鯖街道と呼ばれるほどです。しかし、サバは1970年から獲れなくなってしまいました。「サバの町を復活させたい」そんな地元の思いが、浜家さんに託されました。餌やりの時に、サバに声をかける。そんな一風変わった方法で愛情を注がれたサバが、地域の盛り上げに一役買っています。ユニークなサバ養殖の姿を通して、小浜の人々の地域を盛り上げたいという思い、そして、浜家さんの愛情を感じていただけたらと存じます。

【制作後記】
「愛情があれば、ちょっとでもサバが元気に育つんじゃないか」。そう話す浜家さんのひたむきな姿が、今の私たちを元気づけてくれるのでは…。そんな思いを胸にこの番組を作りました。サバは温度変化に弱い魚。昨年の猛暑で、よっぱらいサバは大量に死んでしまいました。我々人間も、コロナウイルスという見えない脅威に振り回され、自然災害に苦しめられています。技術が進化しても、自然の変化に勝てないのは、サバも人間も一緒です。そのような厳しい状況でも、「愛情」があればなんとかなるんじゃないか。浜家さんの姿はそんな風に思わせてくれました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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