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2019年2月

2019年2月15日 (金)

長寿レジスターと道後のいま

2019年2月18日~2019年2月24日放送 
南海放送 メディア本部ラジオ局ラジオ制作部 岡内ひかり

【番組概要】
愛媛県の観光地といえば、松山市・道後。観光客は年々増加し、町は毎日賑わっています。そんな道後の中心地から数分歩いたところにある創業明治19年の老舗酒店「山澤商店」。現在は、6代目社長の山澤満さん(51)が切り盛りしています。店内には地酒やウイスキーがずらっと並びます。昔に比べて手売りは少なくなったといいますが、お店で購入した人だけが聞くことのできる音があります。それは、金銭記録出納機「ゼニアイキ」の音、現代でいうポスレジです。大正初期に作られ、国産として初めて日本国内に出回ったレジスターです。今でもこのレジスターを愛用しているのは、山澤満さんの叔母・山澤康子さん(84)。このレジスターを始め、店内には長年愛用しているもので溢れています。一方で、現在の道後は、たえず新しい事に取り組み、観光地として更に発展しようとしています。その様子を昔から、そして今も変わらず道後の町を支える“本物”の音をお届けします。

【制作意図】
愛媛県で最も観光客が訪れる道後は、女性の1人旅やインバウンドが多くなっています。道後温泉の別館ができ、思わずSNSに投稿したくなるようなスポットが増えています。時代の変化に応じて…。しかし、昔とすっかり変わったわけではありません。それは、道後の町を古くから支える“本物”の存在です。その“本物”と、新たなものとが共存し、道後の町を更に盛り上げています。そして若者と道後で歳を重ねてきた者が皆、一体となっています。今回は、その中でも道後の町を支える“本物”を伝えたいと制作しました。

【制作後記】
「道後に古いレジを使用している酒屋があるらしい」と聞き、取材に伺った「山澤商店」。店の入り口である、木の引き戸をガラっと開けると、故郷に帰ってきたかのような居心地のよさを感じました。出迎えてくれた社長とおばあちゃん。昔の道後の街並みや歴史、そしてこれからの道後について話してくれました。昔の道後についての話は社会人1年目23歳の私にとって驚きの連続でした。そして何より驚いたのは、金銭記録出納機「ゼニアイキ」です。木製のため、家具と馴染んでいてレジスターだとは気づきませんでした。制作メーカーに電話で問い合わせると、思わず電話を耳から離してしまう程大きな声を上げて驚いていました。未だに使用していると確認できたのは、全国で初めてということです。このゼニアイキを使用しながら道後について語る、温かいお店の雰囲気を感じてもらえると幸いです。そして、皆が一緒に作り上げている道後の未来がとても楽しみです。

2019年2月12日 (火)

ハワイアンミュージシャンが山形弁シンガーになった理由(わけ)

2019年2月11日~2019年2月17日放送 
山形放送 報道制作局制作部 新野 陽祐

【番組概要】
将棋駒の生産で有名な山形県天童市に生まれ育ったミュージシャン山口岩男さん(55)。自分の世界を広げたいと、大学進学と同時に上京し、8年後の1989年念願のメジャーデビューを果たしました。ヒット曲には恵まれなかったものの、30代前半に知人の勧めで出会ったハワイアンミュージックのウクレレと出会います。順調な仕事、結婚もして家庭を持ちます。順風満帆に見えた人生。しかし、人生の転機が訪れます。山口さん38歳の時、4歳年下の弟がなくなったのです。最愛の弟を失った悲しみで多量のアルコール摂取する日々。そして、アルコール依存、うつ病、家庭崩壊、そして自殺未遂・・・。うつ病は約12年間続きました。その間、「自分とは何か」「生きる意味とは何か」を自問自答し続けてきました。そしていま、50を過ぎて見つけた自分のアイデンティティ。それは生まれ育った故郷・山形に生まれたこそできるアーティストとしての表現。2018年8月に山形弁シンガーととしてCDデビューを果たしました。ふるさとへの想いと、人生はやり直せるという山口岩男さんのメッセージ性が聞く人の胸を打ちます。

【制作意図】
去年、弊社に1枚のCDが届きました。「かえずのながさはえずばへっで」(標準語で「これの中にそれを入れて」という意味)というなんとも奇妙なタイトル。実際に曲を聞くと・・・思わず笑ってしまうような、けれどその心地よいビートとかっこいいワードの山形弁ソング!?しかも、山形弁のエッセンスを加えただけの曲ではなく、ネイティブ山形人でも、おそらく20代は80%近く聞き取れない方言全開の歌詞。新しいし、斬新過ぎるとすぐ興味が沸いてきました。取材を進めると、山口さんは驚くような波乱万丈な半生を歩んでいました。にも関わらず、いま人生を楽しんでいるという充実感のあるオーラを山口さんの言葉と背中から感じたのです。山口さんの方言ソングを通じて、今みなさんが住んでいる地域の良さを再発見してもらえるきっかけになればと感じるとともに、悩んでいる人や人生はやり直せるということを再確認してもらいたいなと思っています。そして、いまはネット社会で多いとされる「他者叩き」。人生を誤った人への過剰な反応、自分の正義感を振りかざし必要以上に他者を攻撃するような不寛容社会への警鐘にもなればと思っています。


【制作後記】
私が初めて山口岩男さんにお会いしたのは2018年秋。取材ではなく、弊社の「ラジオフェスタ」というイベントにゲストでお越し頂いた時でした。山口さんにゲスト出演を依頼した時、歌ってもらうだけでなく、「イベントが開催される6時間の間にMCや出演者、それにリスナーと一緒に合唱できるようなエンディングソングを即興で作ってほしい」と電話で依頼していました。そのイベントのエンディング・・・YBC1階ロビーに集まった300人ほどのリスナーと出演者全員が大団円!ステージ袖でディレクターをしていた私は泣きそうになりました。実はそれが「さすけねぇ」(標準語で「気にするな」という意味)という曲なんです。山口さんの行動力、人を惹きつける魅力、そしてやさしさが番組を通じて感じ取って頂ければと思います。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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