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2018年6月

2018年6月25日 (月)

伝統工芸 金細工をつないで

2018年6月18日~2018年6月24日放送 
ラジオ沖縄 報道制作部 竹中 知華

【番組概要】
那覇市首里に、琉球王朝時代から続く金細工(かんぜーく)またよしの工房があります。主は7代目の又吉健次郎さん86歳。沖縄で唯一の金細工職人です。琉球王朝時代から続く金細工には、ジーファー(かんざし)や房指輪などがあります。一つの作品が出来上がるまでに1か月以上かかることもあり、作り手には非常に繊細な技術が求められます。そんな伝統のある金細工ですが、現代社会では需要が減少し、健次郎さんは後継者を諦め、伝統ある金細工は健次郎さんの代で終わりをつげようとしていました。そんな中、沖縄で需要が伸びてきたリゾートウエディングの中の琉球結婚式で、健次郎さんが作った伝統ある房指輪を使いたいという声が耳に届くようになってきます。そのことから、房指輪の注文が伸びてきました。そして、その房指輪に興味をもち、健次郎さんの工房で房指輪作りをはじめたのが、宮城奈津子さん38歳。健次郎さんの指導を受け、房指輪の制作をまかされるまでになりました。消えるかもしれなかった琉球王朝の金細工は、健次郎さんから奈津子さんに受け継がれています。

【制作意図】
琉球王朝時代から続く金細工は、交易の時に、アジアなどから入ってきて、沖縄で確立されたものです。他県では見ることが出来ない独特の形と想いが込められています。そんな金細工は、需要が少なくなっていると同時に、同じ物を形を変えずにずっと作り続けることが非常に難しいため、後継者がなかなか育たずにいました。さらに、主の又吉健次郎さんは86歳と高齢のため、いつまで作り続けられるかも分からない状況です。健次郎さんが作る金細工がどのような物で、どういう想いで作り続けているかを伝えることで、琉球王朝の文化を知ってもらい、形を一切変えることなく、新しい需要に答える金細工が、健次郎さんの想いとともにとても良い形で継承されていることを伝えたい。

【制作後記】
又吉健次郎さんは86歳と高齢であるため、取材期間中、体調を崩し、2、3日入院をすることもありました。5年前に取材をしたときには、弟子はいるけれど、後継者と呼べる人はいない状況で、健次郎さんの年齢も考え、本当に、健次郎さんの代で金細工は終わってしまうのかもしれないと思っていました。宮城奈津子さんもまた、5年前にはすでに金細工またよしに弟子として通っていましたが、その当時は弟子になるつもりではなかったといいます。時間をかけ、健次郎さんとコミュニケーションを取り、今では、まるで家族のような関係になっています。自然にいろんなことを受け継ぎ、これまで、大仕事は、すべて健次郎さんが制作していたのですが、安室奈美恵さんに贈呈された県民栄誉賞の金細工の房指輪を奈津子さんが担当したことはとても意味のあることだと思います。現在、奈津子さんは、金細工で一番難しいジーファーは作ることがまだ出来ません。作れるようになるまでさらに取材を続けたいと思っています。

世界でただ一つの音色 ~木のぬくもりが響くオルゴールに魅せられて~

2018年6月11日~2018年6月17日放送 
KBS京都 ラジオ編成制作局制作部 永田和美

【番組概要】
オルゴールに魅せられた木工作家が長岡京市にいます。清水明さん 69歳。市内から車で10分ほど走らせた山の中にある木創舎が清水さんの工房です。仕事をしながら20年以上オルゴールを作り続けているその工房は秘密基地のよう。壁一面に木材や工具が並び、木や金属を加工する機材が所狭しと並べてあります。オルゴールと一言でいっても、その音色は千差万別。オルゴールを設置する箱によって音色が少しずつ変わってきます。木とふれあいオルゴールを作ってきた清水さんは、その木によって違うオルゴールの音色の特徴を理解し、その曲にあった木材を使ってオルゴールを作成しています。高音がキラキラと響く木、低音がより響く木、使い分けることでオルゴールの音色がより深いものになっていきます。オルゴールのことを話し出したら止まらないという清水さん。作り出したオルゴールは娘のようと笑う清水さんのオルゴールに対する愛情がまた、音色に深みを出しているようです。めまぐるしく変わる世の中で、オルゴールの鳴り響くこの工房はまるで時間が止まったような空間です。皆さんもぜひ、急ぎ足の中、少し時を止めて、オルゴールの音色に耳を傾けてみてはいかがでしょうか??

【制作意図】
オルゴールの音色の深みを伝えたいと思い制作しました。取材させていただいた清水さんは仕事をしながらも20年以上オルゴールを作り続けていらっしゃいます。ものづくりが元々好きだったという清水さん。かつては機械関係の会社に就職されていました。この仕組みはどうしたらできるのかといったことを自分自身でとことん調べるという清水さんの姿勢はオルゴール作りにも活かされています。この木はこういうふうに響鳴するからこの音が、、、この音楽は低音を響かせることでより届けられるのではないか。。。清水さんの感覚と理論によって計算されたものがあわさり、世界でただひとつのオルゴールの音色が完成します。清水さんにとってオルゴールは単なる音色を出すものではなく、楽器そのもの。そして時を止めて、楽しむもの。騒がしい世の中で、心地よく心に響くオルゴールの音色は、私たちの中の何か足りないものを充足させてもらえるものかもしれません。

【制作後記】
69歳になる清水さん。車で10分ほど山道をあがる工房に毎日自転車で通っています。「昔は自宅から35分かかったけどね、今は25分ほどで登れるようになった」と笑う清水さんが印象的でした。仙人と呼ぶ方がいるほど、清水さんの生活は自然の中にあります。30年ほど前から集めだし創作途中の木材や工具に囲まれ、電気も通っていない工房はほぼご自身で作られたまるで秘密基地です。前職で得た技術も活かしながら創られるオルゴールは番組内で紹介したもの以外にもたくさん。知り合いの蔵で眠っていた何十年も前の音色をよみがえらせたオルゴールや炊飯器型のオルゴール。すべてに思い入れがあり、清水さんの優しい人柄があふれていました。清水さんが作るオルゴールの魅力を少しでも感じていただけたら幸いです。

2018年6月 4日 (月)

月山和紙 つくるひと つかうひと

2018年6月4日~2018年6月10日放送 
山形放送 報道制作局 制作部 鈴木紫乃 

【番組概要】
月山は山形県のほぼ中央にあり、出羽三山のひとつに数えられる霊峰です。その山麓にあたる西川町・志津は日本でも有数の豪雪地帯。6月中旬まで残雪が見られ、今は雪どけ水のせせらぎが心地よい時節です。清野真由美さんは、月山の自然の恵みがつまった伝統工芸品「月山和紙」を使ってランプシェードを手作りしています。2000年から独学で作り始め、現在では〝月山和紙あかりアーティスト〟として活動しています。清野さんが惚れ込む和紙を作っているのは、西川町・大井沢に工房を持つ三浦一之さん。およそ25年前に月山和紙の後継者として埼玉から移住してきました。以来しばらくひとりで月山和紙を守ってきたのです。月山和紙は国産の楮(コウゾ)を100%使用し、薬品や漂白剤を一切使いません。昔ながらの技法で今も作り続けられています。人生をかけて月山和紙を守る〝つくるひと〟、月山和紙の魅力を伝えたい〝つかうひと〟の想いを伝えます。

【制作意図】
月山和紙あかりアーティストの清野真由美さんには、5年ほど前にテレビの取材をお願いしたご縁があります。作品の美しさに魅了されたのがきっかけでした。実際に取材をしてみて強く印象に残ったのは、清野さんが月山和紙を千切る音です。力強くも優しい音が続き、聞いているだけでも月山和紙の手応えを感じている気がしたのです。制作当初から、音だけの世界で月山和紙の全容を伝えることは難しいと感じていました。そんな中でも、月山和紙とはどのような物なのか、はたまた〝月山和紙あかり〟とは実際にどのような物なのか、ラジオを聞いた方々に興味を持っていただくきっかけを作りたいと考え制作しました。三浦さんの月山和紙も、清野さんの月山和紙あかりも、力強く優しく美しいです。

【制作後記】
月山和紙職人の三浦さんと月山和紙あかりアーティストの清野さんとの関係性が素敵で、何気ないお二人の会話からそれぞれの和紙への愛情が感じられました。どちらも最終的に和紙やあかりに触れる人と魅力を共有したいという気持ちがあり、それがお互いの制作活動の刺激になっているそうです。実は昨年、三浦さんの後継者となる新たな和紙職人が西川町にやってきました。「大井沢から見る山々の美しさに涙が出た」と話す渋谷尚子さんもまた、ひたむきな愛情を和紙に注いでいます。自ら作った和紙で、バッグや名刺入れ等の小物の制作にも取り組んでいます。現代の生活において和紙はさほど身近な存在ではないかもしれません。しかし新たな形で月山和紙の歴史を紡ぐ皆さんを応援したいです。

2018年6月 1日 (金)

レトロが新鮮 ~純喫茶にも、いろいろありまして

2018年5月28日~2018年6月3日放送 
南海放送 ラジオ局 ラジオ制作部 稲田貴志

【番組概要】
イメージでは、“おじさんの憩いの場”“サラリーマンの休憩場所”“流行のシアトル系カフェには壁を感じて…”といったイメージの「純喫茶」。しかし最近、純喫茶が若い女性の間で静かなブームになっている。聞くと、昔ながらの喫茶店にレトロな空気を求めて足を運ぶ女性が増えているらしい。まず、本当かどうか愛媛県内にある昔ながらの「純喫茶」で取材をしてみると…?店のドアを開けた時に鳴るベル、サイフォンで一杯ずつ入れるコーヒーが落ちる雫、静かな空間で流れる女性客の会話…。
しかも、地元ならではのローカルルールも浸透しているとか。そこは、レトロが新鮮に感じる、今と昔が入り混じった空間が新たに生まれていた!!

【制作意図】
地域ならではの音を追いかけたわけではありません。「一周回っておしゃれ」「インスタ映え」などをキーワードに都会で人気が再燃している純喫茶ブームが、地方にも浸透しつつあるということで、取材をしようと企画しました。全国の純喫茶を100軒近く楽しんでいる方からの情報を元に、いくつか地元の店をめぐる中で、”愛媛にしかない!”純喫茶を発見。マスターを軸にした、「会話」をコンセプトの作品作りとしました。

【制作後記】
本当は、女性に人気が出てきた純喫茶の、しっとりとした雰囲気を音で6分30秒描くべくいろいろリサーチや準備を進めていたのですが…。「店の雰囲気も歴史もメニューもザ・純喫茶だけど、純喫茶の範疇を飛び越えている店が1軒だけある」という情報を元に訪れた今回の「フレンド」。マスターの雷のような大声でお客をいじり倒す様子と、その会話を嬉々と楽しむお客のキャッチボールや、今では観光地と化した近所の鍋焼きうどん名店の逆手を取ったメニューなど、意表を突く、しかもネットやガイドブックに絶対乗っていないローカル情報を描くことになりました。
録音風物誌に似つかわしくない作品になってしまったかもしれません…。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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