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2016年9月

2016年9月29日 (木)

自由な空へ

2016年10月3日~2015年10月9日放送
山形放送 報道制作局制作部 新野陽祐

番組コンクール入賞作品 再放送
(優秀賞)

 
【番組概要】
主人公は山形県南陽市の加藤健一さん(35)。加藤さんは全身の筋肉がしだいに衰えていく難病「筋ジストロフィー」に冒され、車いす生活を送っています。病気のため「ひきこもりがちになった」という加藤さんは2年前、障がい者支援の市民団体を立ち上げました。現在の目標は車いすに座ったままパラグライダーに乗り大空を飛ぶことー。そして飛行距離の日本記録を樹立することです。バリアフリーな社会の実現を自由な空に重ねる加藤さんの挑戦を追いました。

【制作意図】
パラグライダーの離陸場・南陽スカイパークは空のキャンバスに色とりどりの機体が舞い、地元の風物詩となっています。この場所で加藤さんは人生を楽しむことをテーマに、バリアフリー社会の実現を体現していました。ハンデがあっても前向きに生きる1人の男性の姿を通して、障がい者への理解を深めてほしいと感じています。

【制作後記】
加藤さんはこれまでに、車いすパラグライダーに2度挑戦。いずれも飛行距離が伸びず、日本記録の樹立には至っていません。現在もチャンスを伺い飛び続けていて、その都度取材を続けています。また、この活動のほかにも旅館などの施設でバリアフリー化のアドバイスを行っていて、今後の活動に幅を広げています。

お遍路~同行二人におもいをつないで

2016年9月26日~2015年10月2日放送
高知放送 ラジオ局ラジオ制作部 池上浩

番組コンクール入賞作品 再放送
(優秀賞)

【番組概要】
四国霊場八十八か所めぐり。四国遍路には春になるとたくさんのお遍路さんがやってきます。元々「遍路」とは辺境の地をめぐる修行のことです。真言宗の開祖・空海も修行のため歩き、その足跡をたどって四国遍路が形づくられたました。日常を離れたお遍路さんはこれまで見えていたのに見えなかった風景、聴こえていたのに聴こえなかった鳥の声に気づきます。そうした自らの変化を体験できるのが四国遍路の魅力と言えそうです。

【製作意図】
放送が4月ということで春らしさを出してお遍路の魅力を取り上げました。花や緑の木々はラジオでは見せることはできませんが音風景があります。この放送を聴いた方が四国遍路に行ってみたい、と思える内容にしたいと思いました。

【制作後記】
地元・高知に住んでいるとお遍路さんは見慣れて、あまり気にもとめなくなります。しかし、今回の取材ではいろんなお遍路さんが悩みもあるのでしょうが、自ら変わろうとお遍路をまわっていることに気づかされました。中でもあるお遍路さんが言った「脳は考えるためのものではなく信号を受けるためのものだ」というのが印象的でした。

2016年9月21日 (水)

録音風物誌 リスナープレゼント

 

番組をお聴きの皆さまにプレゼント 「米の食味(しょくみ)ランキング」で
6年連続の特A評価を獲得した 佐賀県産「さがびより」の今年の新米5キロを5名様に
お送りします。

Saga

(イメージ)


【ご応募方法】

■住所

■氏名

■年齢

■電話番号


■番組の感想、ご要望など

をお書き添えのうえ、お聴きの放送局へはがき、またはkayoukai@radio.or.jp まで、
「録音風物誌新米プレゼント」と明記してご応募ください。
締切りは10月20日です。
当選者の発表は11月上旬の賞品発送をもって代えさせていただきます。

学び舎、最後のマラソン大会

2016年9月19日~2015年9月25日放送
秋田放送 ラジオセンターラジオ制作部  利部昭勇

番組コンクール入賞作品 再放送
(優秀賞)

【番組概要】
秋田県秋田市の市立大正寺(だいしょうじ)小学校は、創立141年目の今年度いっぱいで、少子化などの理由から閉校となります。この小学校の恒例行事、さわやかマラソン大会。地域の商店街の通りを子供たちが駆け抜けます。大会が始まって以来、地域の人たちが沿道から熱い声援を贈る名物行事です。その中に、今年も珍田智さんの姿がありました。子供たち一人一人の名前を呼びあげる実況は、最後まで走り切る力になっているのです。来年春に閉校を控えた小学校の最後のマラソン大会。珍田さんの温かい最後の実況に耳を傾けます。


【制作意図】
少子化や学校運営の経費節減から小学校の統廃合が進んでいます。そんな地域の、小学校の記憶を音像に残したいという思いから、弊社では閉校が決まっている学校の最後の1年を、その学校の校歌とともに記録するという取り組みを始めました。秋田県内で今年度いっぱいで閉校する小学校は14校。今回は、その1エピソードを録音風物誌で紹介したいと考え構成しました。


【制作後記】
このストーリーに登場する珍田さんが話していました。「閉校する前から子供たちは都会に出て行く。都会でもまれることも大切なので止めはしない。でも、都会で疲れた時、ここに、見守って育ててきたふるさとがあることを心の拠り所にしてほしい。いつでも帰ってきて、ひと時、休んでいってほしい。そのために、俺たちは、この地域を守る」・・・地域が果たす役割をあらためて考えさせられた言葉でした。こうした地域の声に、地方局はもっと耳を傾けるべきだと襟を正された思いでした。

2016年9月16日 (金)

青い屋台が涼を呼ぶ~チリンチリンアイス物語

2016年9月12日~9月18日放送
長崎放送 ラジオ局ラジオ制作部 武富茂


【番組概要】
長崎名物「ちりんちりんアイス」は、長崎市内の観光地(眼鏡橋やグラバー園など)やイベント会場で小さな屋台で販売されているアイスです。昭和30年代に屋台を押し、ちりんちりんと鐘を鳴らしながら移動販売を行っていたのがmはじまりで、長崎県内で数十軒あったアイス販売は今では3社まで減ってしまいました。このうちの一つ、昭和35年創業の老舗、前田冷菓は創業当時のままの味を半世紀守り続け、長崎県民のソウルフードとして親から子へ子から孫へ受け継がれています。ちりんちりんアイスの魅力は、さっぱりとした味とシャーベットのような食感と小さなヘラでの独特の盛り付け。ヘラですくわれたアイスがコーンの上で見る見るうちにアイスのバラに早変わり。販売員の赤星力三(あかほし・かつみ)さんはこの道7年。以前は建設会社で働いていましたが、屋台の仕組みに興味を持ったのがキッカケでこの世界に。ちりんちりんアイスの屋台には、懐かしい味を子どもにもと食べさせる地元長崎のお客や長崎観光の思い出にと観光客がやってきます。

 【制作意図】
長崎県にはカステラ、ちゃんぽん、皿うどん、卓袱料理、新鮮な魚介類と食文化が多彩です。これらと比べると一見地味な存在ですが「ちりんちりんアイス」は半世紀以上、変わらぬ味で愛されている長崎の名物スイーツです。その魅力は、変わらない味をヘラを巧みに使って手早くアイスのバラを咲かせる技術。そしてお客さんと交わされる楽しい会話。番組では長崎の観光名所のひとつ、眼鏡橋そばの屋台の雰囲気を通してちりんちりんアイスの魅力をラジオの音の世界で伝えたいと考え取材を始めました。

【制作後記】
眼鏡橋そばの屋台に6月上旬から8月にかけて数回に分けて取材に行きましたが、2時間いるだけで倒れそうな暑さでした。この暑さで一日経ち続けての商売は大変です。「アイス=夏」が一番売れると思っていましたが、暑すぎると人が外を歩かないのでそんなに売れないとのこと。最盛期は過ごしやすい春と秋と聞いて驚きました。因みに気温によって氷に加える塩の量を加減して温度を調整しています。屋台一台で1000個売れることもあるそうで、番組で赤星さんの販売員としてのキャリア7年は若手と紹介しましたが、新人のほとんどが1日もたずに辞めていく厳しい世界です。また中国や韓国などアジアからの観光客が急激に増え、これまで以上に接客のグローバル化も求められています。

 

 

 

 越前和紙 ~1500年の音色

2016年9月5日~9月11日放送
福井放送 ラジオセンター 佐藤正幸


【番組概要】
福井県越前町にある今立地区五箇は1500年と伝えられる歴史を持つ手漉き和紙「越前和紙」の産地。日本一の規模を誇ります。ところが、2014年、手漉き和紙が世界無形遺産に選ばれた際に「越前」は登録されませんでした。しかし、この出来事は保存会の設立につながっただけではなく、「守り、挑戦する」という、青年たちの熱い思いを後押しすることにもなりました。そのうちのひとり、西野正洋さん(43)をはじめとした地元の人の声、和紙づくりの音、紙漉き唄を聴きながら、時代の波を乗り越えて受け受け継がれ、新しくされてきた「越前和紙」のこれからの音色を聴きます。

【制作意図】
ふるさとの音、と聞かれて「越前和紙を漉く音色」を思い浮かべる機会は数多くありました。しかし、その音色がどのようにして受け継がれ、どこに向かおうとしているのかを知ろうとする機会を十分に作っていませんでした。2年前の「世界遺産の出来事」によって、さまざまな意味で注目を集め、心ひかれていた「越前和紙の里」を訪れ、さまざまな音や声、音色を集めてみたい、と思いました。

【制作後記】
取材を通して、1500年という越前和紙の歴史は「守り、挑戦する」歩みであったことが分かりました。どうやって守るのか、時代のニーズにどう応えるのか、どのように発信するのか。西野さんは「もがく」という言葉を使いました。内向きではなく、外に向かって「もがく」。人との出会いが何かを生み出す。改めて、大切なことを学ぶことができた時間でした。

人情温まる、みんなが支える街角寄席

20168月29日~9月4日放送
四国放送 ラジオ局ラジオ編成制作部 小喜多雅明


【番組概要】
徳島市内の商店街の外れの一軒の蕎麦屋。歴史を感じさせる趣のあるお店だが、近年の中心市街地の衰退の影響は例外なくここにもある。そんな中で決して広くはないこの蕎麦屋の店内では、月に一回1300円でお蕎麦付きで大阪からやってくる若手の噺家が落語を披露する寄席が開かれている。寄席には近所に住む一人暮らしのお年寄りや老夫婦などの常連が若手噺家をまるで孫でも見るような優しい雰囲気で応援している。「前より上手になったよ」「もう少しこうした方がいい」など若手の落語を周囲が温かい目で見守り育てている。運営はボランティアの45歳女性が行う。徳島での母のような存在だ。寂しくなる中心市街地の片隅で細々と残る温かい人情と触れ合いを伝える。

【制作意図】
この蕎麦屋のある地域は、かつて商店街やオフィス街として大変栄えました。ところが郊外型のショッピングセンターの出店やオフィスビルの移転などが重なり、人通りの少ない地域となってしまいました。しかし月一回の寄席からは、人々の優しい笑い声が聞こえます。古き良き風情をかすかに残し、そして脈々と残るこの街の人情、私たちが忘れかけているであろうこの宝をもう一度見直して頂ければとこの番組を制作しました。

【制作後記】
まだまだこれからという若手噺家をこの街の人々を中心に自分の孫のように優しく、時には厳しく激励する人情に、なんだか懐かしさを覚えました。インタビューしたお年寄り、そして店の雰囲気といい、祖父母の家を訪ねたような感覚でした。こういう人情や風情をいつまでも残していきたいものです。

下北半島妖怪ハウス

20168月22日~8月28日放送
青森放送 ラジオ局ラジオ制作部 福岡夏希


【番組概要】
青森県むつ市には「妖怪ハウス」なるものが存在する。そんな噂を聞きつけ、不安を感じながらも訪ねてみました。「よぐ来たにし おみやげの店」とかつての名残がある店内には、ゲゲゲの鬼太郎キャラクターの等身大フィギュアや生首(マスク)が何十体も並んでいました。妖怪ハウスを管理しているのはむかいの「飛内旅館」のご主人、飛内源一郎さん。旅館業でありながらプラモデルやSFなどいわゆるサブカルチャーへの愛が止まらずそちらで有名になってしまったというユニークな方でした。今年は青森の珍スポットを巡るバスツアー(参加料10万円!)も組まれ、飛内さんに会いたい若者で旅館は賑やかでした。

【制作意図】
一見変わった人に見える飛内さんですが、お話してみると一本筋の通った考え方をしているとわかります。自分の好きなものにはまっすぐ取り組み、「地域のために」という思いをしたこともあるようでした。かつては周りから理解されずさみしい思いをしたこともあるようです。そんな状況と飛内さんの作品「地獄巡り」が重なり、ぜひ応援してあげたいという気持ちになりました。

【制作後記】
「青森珍スポ巡りツアー」があることをたまたま知り、日程を合わせて取材することができました。飛内旅館以外では新郷村のキリストの墓や、青森市浅虫のある大盛りで有名な鶴亀屋食堂などをまわっていたようでした。「都会にはない青森の”ゆるさ”が面白かった」とのお話から、青森に人を呼ぶ新しい方法が見えた気がしました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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