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2015年11月

2015年11月30日 (月)

すり鉢で聴く珈琲のこころ

2015年11月23日~2015年1129日放送
青森放送 ラジオセンター 山内千代子

【番組概要】
幕末、北方警備のため津軽の藩士たちは蝦夷地(北海道)の宗谷に赴きました。厳しい冬の寒さの下、コーヒーを浮腫病の予防薬として飲んだそうです。当時の藩兵の中には農民なども多く、”日本で庶民として初めて珈琲を飲んだ人たち”と言われています。当時の珈琲を再現し、子の藩士たちの法要を25年続けている青森県弘前市で珈琲店を営む成田専蔵さんの思いをお届けします。

【制作意図】
成田さんによって厳しい冬に先人たちが飲んだであろう「藩士の珈琲」が再現されました。お話を伺ううちに成田さんが珈琲に心から魅せられ、大切にしていらっしゃるということを感じました。その思いが少しでも伝われば幸いです。

【制作後記】
成田さんが珈琲は元気をくれたり、落ち着かせてくれたり、人と人をつないでくれたりする”力”があるよね、と仰っていました。取材を通して私も改めて“一杯のありがたさ”を感じました。全国の珈琲好きの皆さん、弘前でロマンあふれる珈琲、飲んでみませんか?

2015年11月16日 (月)

鉄の音に聞く金沢の茶の湯

2015年11月16日~2015年11月22日放送
北陸放送 ラジオ放送部 内潟堅太郎

【番組概要】
石川県金沢市の茶道釜師宮﨑寒雉さん。宮﨑家は江戸時代から加賀藩の御用釜師として続く家です。宮﨑家では初代が裏千家四代仙叟宗室に釜づくりの指導を受けて加賀藩の御用釜師となり、代々宮﨑家では当主が寒雉を襲名して家業を継いできました。その茶釜は自ら土を積み重ねて形を作った鋳型に1500℃に熱して溶けた鉄を流し込んで作られます。茶釜を制作する音、炉にかけられた茶釜が発する微かな音にリスナーに耳を傾けていただき、茶の世界の伝統と様式の美しさを感じていただければと思います。

【制作意図】
茶会を開く際に亭主は訪れた客に五感の全てで楽しんでもられるように工夫を凝らすといいます。茶釜が湯を沸かす音、炉にかけられて鳴る鉄の微かな音、茶釜をつくる時の音、茶会での語らいなどから、金沢に350年にわたって受け継がれる伝統工芸を表現しようと考えました

【制作後記】
茶室で茶釜が発する音、鋳型として固められた土を削る音、これらの音について寒雉さんは「茶釜は地味な茶道具だし、音も目立たないし…」と謙遜していましたが、注意深く耳を傾けることで、鉄や土の様々な表情が感じられるような気がしました。

Iターン”~ 私たちが田舎に移る理由(わけ)

2015年11月9日~2015年11月15日放送
山口放送 ラジオ制作部 大谷陽子

【番組概要】
瀬戸内の温暖な気候に恵まれた山口県周防大島町。人口は、ここ40年で半分に減りました。2人に1人が高齢者の島です。ところが、近年、島へ移り住む若い人が増えています。三浦宏之さん(41)は3年前、ラジオ番組の制作会社を辞めて、妻とこども2人の家族4人で東京から移住しました。地域おこし協力隊の活動をしながら、お米や麦、大豆などを栽培します。東京でイベントの仕事をしていた山形岳史さん(35)は、6年前に移り住み、ことし念願の果樹園をオープンさせました。安定した収入を捨てても田舎に移りたかった理由とは?田舎暮らしの思いを聞きます。

【制作意図】
過疎化、高齢化が進み、空き家や耕作放棄地が増えていく地方。山口県にいると、常にそんな光景を目にし、話題を耳にします。どのように地域を、ふるさとを守っていけば良いのでしょうか。周防大島町では数年前、島から外へ出る人よりも、島へ移る人の方が多いという社会増の減少が起きました。それも若い働き盛り世代が多いことが目立ちます。都会での生活を捨て田舎暮らしの決断をした人たち。日々の生活やこどもの成長、人とのつながり、社会の構造…自分の人生を見つめ、どのように生きていくべきか悩んだ挙句の選択でした。田舎暮らしには、人が自然と共に生きていく上で大切にしてきた様々なものがあります。そんな価値観を少しでもお伝えできればと思い制作しました。

 【制作後記】
島に移住し、これまでの仕事の経験や知識、IT技術などを生かして、個性豊かな発想と行動力とで、新たな産業、新しい農業に取り組んでいる人たちが、周防大島にはいます。この度取材させていただいた三浦さんと山形さんが、縁もゆかりもない土地ですぐに行動できたのは、受け入れてくれる地域の人の存在があったからです。耕作放棄地の所有者と掛け合い、2人に住まいや農地を工面したのは、吉兼洋一さん(74)。若い人たちの挑戦を心から応援しています。6年前に移住した山形さんは、島に移住してから結婚、長男が生まれました。こどもたちの声が少しずつ地域を元気にしています。農業で生計を立てるには厳しい現状がありますが、これからの周防大島、これからの日本を支える力として応援していきたいと思います。

風土が紡ぐタネの物語~井川在来蕎麦~

2015年11月2日~2015年11月8日放送
静岡放送 ラジオ局編成制作部 寺田愛

【番組概要】
静岡市葵区の井川地区。大井川上流の山深い地域では、4年前から昔ながらの焼畑農法で、在来作物である「井川在来蕎麦」を栽培しています。途絶えてしまう寸前だった井川在来蕎麦のタネを大事に伝えていこうと活動している、そば店店主の田形治さんに出会い、このことを知りました。その出会いをきっかけに、風土に育まれ、守られ、そして続いていくタネの物語をテーマに焼畑の音や、そば打ち教室の様子を取材し、番組にまとめました。

【制作意図】
静岡県には、多くの在来作物があります。それは、静岡県の地形や、多様な気候によるものだと、在来作物の調査・研究をしている静岡大学教授の稲垣栄洋さんが教えてくれました。改良された作物と違い、複雑で深い味わいを持つ在来作物。ただ、改良されていない分、育てるのに手間がかかり、環境の変化や、生産者の減少でタネが途絶えてしまうことが多いと聞きます。そんな在来作物を守ろうとする人たちのつながりや、その想いを伝えたいと思い、番組を制作しました。

【制作後記】
井川の人と風土に魅せられ、井川在来蕎麦を次の世代に伝えたいと活動している田形さん。井川在来蕎麦の話をする時のキラキラした表情がとても印象的でした。便利さや効率だけでは、得られないものがある、と田形さんの表情を見ていて思いました。この番組を聴いて、土地に根付いた在来作物のような「効率化できない豊かさ」の大切さに気づいてもらえたら嬉しいです。

2015年11月 6日 (金)

夫婦で仕立てる思い出の日傘

2015年10月26日~2015年11月1日放送
中国放送 RCCフロンティア  村山太一

【番組概要】
映画の街、坂の街、古寺や古民家が数多く残る風光明媚な街、尾道。そんな尾道の中心・尾道駅のホームから見える場所に、昭和41年から傘を作り続けている店があります。竹原商店。御主人の竹原和義さんと奥様の勝子さんは従業員が減り、たった2人になった今でも傘作りをやめないといいます。その理由を探りました。

【制作意図】
尾道は今は「尾道帆布」や「尾道デニム」など、布製品のモノ作りの町としても脚光を集め始めています。それは元を辿ると、近畿と九州、山陰と四国をむすぶ「瀬戸内の十字路」として繁栄した歴史から来ているのかもしれません。尾道のモノ作りの歴史を支えた職人の音を伝えたいと考えました。

【制作後記】
和義さんのことを勝子さんは「仕事をはじめたら、他には目もくれずコーヒーも淹れない人です。」と笑います。インタビューをさせてもらっても、和義さんは傘を作ることに対して多くを語りません。ですが勝子さんは常に和義さんの作業に目を配り、作業が止まらないように声をかけ、手を動かし続けます。お2人の長年培われた「あ、うん」の呼吸は、ずっと見ていたくなるような快いやりとりでした。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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