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2014年7月

2014年7月30日 (水)

涼やかな風を運ぶ~静かに熱い情熱で

2014年7月28日~2014年8月3放送
西日本放送 ラジオセンター 白井美由紀

【番組概要】
うちわの生産量全国90%をほこる香川県丸亀市。丸亀うちわは国の伝統的工芸品に指定されています。13年前から、丸亀うちわづくりをされ、伝統工芸士に認定された若い職人が、これからの丸亀うちわを背負っています。エアコンや機械では感じられないうちわの涼しさ。特にプラスティックではなく竹の柄のうちわはその「しなり」でやさしくふんわりとした風を運びます。決して口が達者なわけでもない職人さんが丸亀うちわの魅力を静かに語ってくれました。

【制作意図】
お気に入りのうちわはありますか?うちわってなかなか大切に扱われていないかも・・・そう思い、丸亀うちわのことを取材させていただくことにしました。涼しい風を運ぶうちわですが、情熱は熱く、そして静かに語ってくれる感じをありのままに伝えたいと思いました。お話はすべて作業をしていただきながらの「まま」の音を使いました。

【制作後記】
お気に入りの1本を見つけました。柄も気に入り、あおいだ時の風がいちばん心地よいものを選びました。1本1本手づくり、竹のしなりも少しづつ違うので、また持ち手の感触も重要です。1時間かけて選んだ竹うちわは私の宝物です。今年は涼しく夏をエコにすごせそうです。

愛情いっぱい、母ちゃんの手作り桶

2014年7月21日~2014年7月27日放送
ラジオ福島 編成局 放送制作センター 石田久子

【番組概要】
森林の国、日本。代表的な器である桶や樽。考えられたのは平安時代と言われ、一般に普及されたのは室町時代といわれています。いわき市は海にも恵まれ寿司屋も多く、温泉地でも桶が使われ、みそ、つけ物といった生活を支える他日常的に使われていました。かつてはどの地区にも桶の職人がいて、気軽に注文に応じていたそうです。

【制作意図】
全国でも数少ない、女性の木桶職人が、いわきの山間の町にいらっしゃると聞き、”1つの桶ができるまで”の作業をぜひ音で表現できないかと伺い、いくつかの工程の中から”たが締め”と”底入れ”を中心に制作しました。

【制作後記】
日本の手仕事は後継者不足という深刻な問題があり、手仕事の仲間同士で作品を展示する展示会も行われています。遠藤さんを慕う若い手仕事職は、今年遠藤さんの桶をイギリスや東京・愛知でも展示し好評だったと聞きました。初めて遠藤さんの桶をハワイアンズで手にした時「優しい」という言葉が心に浮かびました。内側はすべすべ、外側はつるつる、手で持ちやすく”味”のある存在感。遠藤さんお手製のみそもつけものも絶品だったことを付け加えさせて頂きます。

2014年7月14日 (月)

音になる前の音を聴け ~かるた王国・福井

2014年7月14日~2014年7月20日放送
福井放送 ラジオセンター 前田智宏

【番組概要】
小倉百人一首を使い、詠まれた上の句と対になる下の句の札を瞬時に取る、競技かるた。福井県は競技かるたが盛んな地で、「かるた王国」と称されるほど。多くの人が幼いころから学校や地域でかるたを学び、全国大会では、毎回福井県勢が上位に食い込みます。
そんな競技かるた、鍛錬をつむと「音になる前の音」が感じられるようになるのだといいます。普段の生活は感じ取れない、繊細な音の世界へご案内します。

【制作意図】
「音になる前の音」=0コンマ数秒の音の世界に挑む、
競技かるたの奥深さを伝えたいと思い企画しました。また、番組中に聞こえてくる歌を詠んでいるのは、現在全国にたった7人しかいない“専任読手”と呼ばれる読み手のお2人です。選ばれし詠みのプロの美しい響きも是非じっくりと味わっていただきたいと考えながら、制作しました。

【制作後記】
20年来のかるた選手!という友人がいます。
彼の熱い話を聞くうち、私もどんどんとかるたの魅力に引き込まれ、その面白さを伝えたいという一心で取材を続けました。初めて生で見るかるたの試合は、その張りつめた空気と、札を勢いよく取る迫力、まさに静と動が行き交うもので、興奮しました。「かるた、やってみたいな…!」と本気で思う今、まずは百首の覚えなおしからスタートです……。

2014年7月 9日 (水)

”鉄”にかける青春~はたき続けた58年~

2014年7月7日~2014年7月13日放送
東北放送 ラジオ局制作部 菊池修司

【番組概要】
宮城の伝統工芸品、仙台箪笥。希少で高価なことでも知られますが、その理由や作業工程はあまり知られていません。仙台箪笥の錺金具を作る職人、八重樫榮吉さん(78)は毎日工房で一人鉄を打ち続けています。まず惹かれるのは、その鉄を打つ音。一人前になるまでは、その音を聞いて師匠である父親は身が入っていないと叱ったといいます。一定のリズムの中でみるみるうちに立体的な金具が仕上げられていく様子は、感動すら覚えます。そこに襲いかかる東日本大震災や後継者の不在。しかし、そんな状況にあっても、榮吉さんは変わらず”青春”の日々を歩んでいるのです。

【制作意図】
間違いなくその土地でしか聞くことのできない「音」である、榮吉さんの鉄をはたく「音」。その「音」がそこに携わる人や風景を想像させ、それにより歴史や伝統にまで想いを馳せることができるという体験を新鮮に味わっていただきたく制作しました。

【制作後記】
職人さんといえば、科目で少し怖いイメージがあるかもしれませんが、八重樫榮吉さんはそういう枠にはまりません。話すのは苦手と言いながら、とても人が好きな印象を受けました。サブタイトルの”はたく”という表現は、榮吉さんの言葉です。一人工房で鉄をはたき続けるというのは、想像してみるとかなりの重労働なはずです。けれども、榮吉さんは「自分に合っている」と楽しく仕事を続けています。榮吉さん、そして奥様の仁子さん、その二人三脚はまだまだ美しい仙台箪笥を作り上げていくと思います。

加賀獅子~つなぐ歓び~

2014年6月30日~2014年7月6日放送
北陸放送 制作局ラジオ放送部 田村 七瀬

【番組概要】
祭りの時期の風物誌のひとつ、獅子舞。全国では獅子を聖獣として扱い、躍動的に舞う「踊り獅子」が主流となっています。ところが、石川県民の多くはそのことを知りません。なぜなら、棒ふりといわれる男が獅子を退治する、いわば格闘型の獅子舞「加賀獅子」がこちらでは一般的だからです。今回は金沢市にある堅田町みどり獅子保存会にお邪魔し、一子相伝で棒ふりの型を教える風景や、今は珍しくなった三味線や尺八(尺六)の練習風景をご紹介します。時にシビアに、時に楽しく、堅田町の伝統を守る人々の様子をお聴きください。

【制作意図】
今回お邪魔した堅田町では、「みどり獅子」という伝統は、日常生活の一部となり溶け込んでいます。守らなければというプレッシャーや、煩わしさは全く感じられません。しかし、一人ひとりがその担い手であることをしっかり自覚し、楽しみ、そして感謝しながら、次の世代へと伝えていました。伝統がつながっていくその瞬間を、「この地域の音」ともいえる心躍るお囃子のメロディーに乗せてお届けしたいと思い、今回制作しました。

【制作後記】
練習風景にお邪魔すると、にぎやかなお囃子と威勢のいい掛け声が出迎えてくれました。マイクを向けると、最初は緊張していた皆さんも、お話をするうちに、次第に笑顔を見せてくださるようになりました。獅子舞にかける真剣な想いや、楽しい思い出話など、様々お伺いするうちにまるで自分もこの地域の仲間に入れてもらえたかのように感じました。この仕事をしていて良かったと思える幸せな時間をいただきました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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