2024年9月19日 (木)

ここはふるさと~ゴッタンが奏でる島立ちの唄~

2024年9月30日~10月6日
南日本放送 ラジオセンター音声メディア部 岩佐清太郎

録音風物誌番組コンクール 最優秀賞受賞 再放送


【番組概要】
鹿児島県の西部、東シナ海に浮かぶ甑島列島。この島で幻の楽器「ゴッタン」を復活させ、島に音楽文化を根付かせようと活動している人々がいる。そのグループ「ゴッタン甑の会」のオリジナル楽曲「ここはふるさと」は島を離れる子どもとその親の気持ちを歌った曲である。甑島には高校がなく、島の子どもたちは中学校を卒業すると実家を出て、鹿児島市などの本土で暮らしながら高校に通うことになる。この別れは「島立ち」という。15の春に新たな一歩を踏み出す子どもと送り出す親の気持ちを素朴で優しいゴッタンの音色とともにお届けする。

【制作意図】
島立ちは離島の多い鹿児島県だからこそ起こりうる巣立ちの儀式だが、15の春に故郷を離れ、親元を離れるのは子どもにとっても親にとっても寂しいこと。そして甑島には音楽文化が根付いていなかったため島の事を思い出すことのできる島唄がなかった。ゴッタン甑の会のオリジナル楽曲「ここはふるさと」は甑島の島唄として島立ちを経験する子どもたちの支えになってほしいと思うと同時にゴッタンで奏でるこの唄を甑島の住民に限らず、同じように故郷を思う人々にも聴いてほしいと思い制作しました。

【制作後記】
はじめての1人取材、はじめての離島、さらに取材日の鹿児島は春の嵐が吹き荒れており、船の欠航もちらつき・・・始まる前からどうなるかわからないドキドキの状態でした。ゴッタンを通しての交流の場・演奏の場は年々増えており、島の文化として着実に根付き定着していると感じました。多くの人が癒されている素朴で優しいゴッタンの音色を生の演奏で聴いてほしいです。4月に島立ちを控える親子にインタビューをさせていただきましたが、生まれ育った故郷を離れなければならないという過酷な現実を決して悲観することなく前向き捉えており、新しい生活を楽しみにしていると答えてくれました。私も微力ながら何らかの形で甑島出身の子どもたちを応援していければと思います。

靴職人は世界旅行に想いを馳せる

2024年9月30日~10月6日
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 大石怜香

録音風物誌番組コンクール 優秀賞受賞 再放送


【番組概要】
宮崎県宮崎市にある靴修理のお店「飯干製靴店(いいほしせいくつてん)」。このお店を営むのが靴職人の飯干畩二さんと奥さんの久美子さんです。畩二さんは、小学校1年の時に小児麻痺にかかり、左足に麻痺が残りました。足が不自由だから座ってできることを、と思い靴職人の道に進みました。しかし、10年前に脊柱管狭窄症を患ってしまいます。それでもなお、畩二さんは奥さんや相棒の足踏みミシンとともに靴修理を続けます。そんな畩二さんが靴に託す想いとは・・・

【制作意図】
飯干畩二さんは、82歳です。まずはじめに、この歳まで靴修理のお店を続ける理由が率直に気になりました。さらにお店には、130年物の足踏みミシンや靴に使う革をすく革すき機など、今ではあまり見られない機械が並んでいます。この足踏みミシンや畩二さんが打つ力強い金槌の「音」を録音風物誌で皆さんに聴いてもらいたいと思い制作しました。

【制作後記】
靴職人と言っても、分業制で大きく2つの職人に分けられるそうです。一つが靴をデザインし、靴の甲の部分を作る甲革師、もうひとつが靴底をつくる底付師です。畩二さんはそのどちらも修行をして一人で靴を作る職人になりました。靴を作るすべての工程が分かっているからこそ、その人に合った、靴に合った修理ができるのだなと今回の取材で感じました。また、畩二さんは「今は、修理の靴を手がけることでいっぱいいっぱいだが、いつかオーダーメイドの靴をまた作りたい」とも話していました。そ
して「第一号を作るなら、奥さんの靴を」と決めているのだそうです。この話を聞いて、ほっこりしました。とても心温まる靴修理のお店でした。

明日へのエール・ミュージックサイレン~平和を願う音

2024年9月23日~9月29日
大分放送 OBSメディア21 吉田薫

録音風物誌番組コンクール 優秀賞受賞 再放送


【番組概要】
大分県大分市中心部のまちなかでは、毎日3回、朝昼晩に大音量で音楽が流れます。8階建ての老舗デパートの屋上から聞こえてくるミュージックサイレンです。昭和29年(1954)に1号機が産声をあげて来年で70年。戦後、平和の象徴として鳴り始めたそのサウンドは、大分市中心部に暮らす人々の日常の音として長く愛されてきました。子どもの頃から聞き続けてきた自転車店の店主は、決まった時間に流れるそのミュージックサイレンを「遊びに行く合図、お昼ご飯の合図、遊びを終える夕ご飯の合
図」と懐かしみ、カフェのオーナーは「お昼の音は、ランチタイムの繁忙に向けてスイッチを入れてくれる大事な合図」と熱弁し、老舗食堂の女将は「世の中が苦しいとき、あの音楽がお互いのためのエールになった」と微笑んでくれました。当たり前のように日常の中で聞こえてくるミュージックサイレンは、人々の時計代わりになり、人生のエールにもなっています。現在、国内で稼働しているミュージックサイレンは数台となりましたが、平和を願うその音色は、今日も日常の生活に溶け込み、時を刻み、人々をやさしく包みこんでいます。

【制作意図】
大分市中心部の人々にとって、あまりにも日常的過ぎる音「ミュージックサイレン」。昭和29年に1号機が産声をあげて来年で70年を迎えます。昭和50年、2号機に受け継がれた平和を願う音は、世界が激動する中にあって、現在でも当たり前のように変わりなく、午前10時、正午、午後7時と、毎日3回流れています。その独特のサウンドは、日常の何気ない平和を無意識に感じさせてくれる貴重な存在だと感じています。現在、メーカーのメンテナンス部門がなく、故障すれば修理が難しい状況にあり
ます。この音が聞こえなくなる前に、少しでも多くの人々にミュージックサイレンの音を意識して聴いて欲しいとの思いから、大分市中心部で暮らす人々とのあたたかな関係も含めて取材しました。ミュージックサイレンが聞こえる何気ない日常の平和。そんなシーンが、全国の皆様の身近にも、形を変えて存在するのではないでしょうか。ぜひ見つけてみていただきたいとも思います。

【制作後記】
今回、朝昼晩と流れるミュージックサイレンの音色を、まちなか各所で録音しました。また、音源に近い場所から録音したいため、設置場所である老舗デパートに無理をきいていただき、日頃立ち入ることのできない屋上からも特別に録音させていただきました。海からの風を浴び、眼下の大分市街地を眺めながら、響き渡るミュージックサイレンを録音。いつもなら日常の中に溶け込む音が、目の前で存在感をあらわにした瞬間、子どもの頃に今は亡き両親とまちなかで買い物をした記憶が読みがえってきました。なんともノスタルジックな気持ちに浸れた時間でした。こういうことがあるから、取材って楽しいんですよね。

93歳プレゼンツ月1回のゆんんたくサロン

2024年9月16日~9月22日
琉球放送 メディア本部ラジオ局ラジオ制作 森根尚美

【番組概要】
沖縄本島中部の東側に、沖縄本島と道路や橋でつながる4つの離島があります。離島の1つ、宮城島は周囲12キロ、およそ600人が暮らす風光明媚な島で独自の文化・芸能が豊か。宮城島で元気に暮らす93歳の上門シズさんを中心に、島で暮らすおばちゃんの楽しみを紹介します。毎月、上門さんの自宅では 「ゆんたくサロン」(平成7年スタート)が開催されます。「ゆんたく」とは沖縄の方言で「おしゃべり」のこと。この会が地域の世代間の交流の場ともなっています。普段は「ゆんたく(おしゃべり)」だけですが、今年の夏は民謡歌手の仲宗根創さんを招き、手拍子、足拍子、歌で一緒に盛り上がり、さらに上門さんも所属する宮城島の祭祀舞踊ウシデークの保存会メンバーが太鼓演舞を披露し仲宗根さんを歓迎しました。猛暑の沖縄で、元気に活動的に暮らす島のおばあちゃんの様子をお伝えします。

【制作意図】
島しょ地域で暮らす93歳の上門シズさんを中心に地域の定例の集まりを通して高齢者の普段の生活から見えてくる元気の秘訣などを紹介します。上門さんが中心の「ゆんたくサロン」はおしゃべりが中心。また「ゆんたくサロン」参加者の多くは島の祭祀舞踊「ウシデーク」の担い手で、その起源は定かではなく、伝統舞踊として、太鼓と謡で踊られます。上門さんは18歳から踊りに加わり、現在は歌で参加します。取材した回には沖縄で活動する30代の民謡歌手・仲宗根創さんがゲストで招かれ、暮らしの中で息づく歌と歴史ある歌が、世代を越えて共有されました。うたの島「沖縄」ならではの文化の奥行きの広さも表現します。

【制作後記】
普段は「ゆんたく=おしゃべり」だけで過ごす「ゆんたくサロン」この日は、おばあちゃん達のアイドルと化する民謡歌手の仲宗根創さんが来るとあってかなり楽しみにこの日を待っていました(病院の予約もずらすなど)歌が始まると手拍子から足拍子 足で床を踏み鳴らし後は、踊りだす方も。中でもお元気なのでが93歳の上門シズさん お話もしっかりされていて、毎回、会の始まりにはシズさんの号令、挨拶があるそうで、この日もなかなか長い、ご挨拶がありました。(とにかく声も大きく饒舌)島の食材を使った手料理、差し入れも豊富でお店から取り寄せたかのようでした。創さんの歌と皆さんのおしゃべりは3時間近くになるほど 「また、明日きても良いからね~」と皆さんの笑顔。戦中、戦後を生き抜いた女性達ですがそれを忘れさせるほど。おばあちゃん達の語りも含め芸能は島の風物誌だと実感した取材でした。

今までもこれからも まちのオアシス湊河湯

2024年9月9日~9月15日
ラジオ関西 デジタル戦略局デジタル戦略部 守山智秋

【番組概要】
神戸市兵庫区にある「神戸の台所」として親しまれている東山商店街のすぐ近くには湊河湯(みなとがわゆ)という銭湯があります。戦後まもない1949年に開業後、95年の阪神淡路大震災も乗り越え営業を続けてきましたが店主がお亡くなりになり存亡の危機に。それを若い世代が受け継いでリニューアルを行い2023年に営業再開させました。ロビーではレコードが流れ、おしゃれなグッズを販売。そしてバーカウンターもあるなど、古き良き銭湯の面影をしっかり残しつつも若者も親しみやすい空間に生まれ変わりました。さらに浴室で音楽イベントを行うなど珍しい催しもされています。地元に根付きながら新しい試みで新規の若者の心をを掴む湊河湯の音を、お客さんのインタビューや店長さんの思いと共にお送りします。

【制作意図】
私は元々銭湯が大好きで、湊河湯を経営されている「ゆとなみ社」の銭湯に行ったり、系列店での音楽イベントにも足を運んでいました。湊河湯も訪れたことがあり、以前からカルチャーと銭湯が融合したスタイルと地元に根付いている雰囲気に興味を持っていたため、今回取材させていただきました。

【制作後記】
以前からの常連さんと湊河湯の新しい雰囲気に惹かれて来た若者が共存する空間が非常に素敵でした。また、店長の松田さんやスタッフの方々とお客さの交流の様子から地元に愛されている銭湯であり、なくてはならない存在であることが分かりました。取材をさせていただいてさらに銭湯が好きになりました。湊河湯さんでのイベントにはまだ行ったことがないのでまた伺わせていただきます。

鉄瓶婆(ばばあ)、店をつぐ

2024年9月2日~9月8日
IBC岩手放送 ラジオ放送部 中村好子

【番組概要】
奥州市に「スナック喫茶チロル」というレトロな店がありました。南部鉄器の職人が集まる憩いの場として50年の時を刻んできましたが、店のママは今年6月末での引退と閉店を周囲に宣言し、実行します。ところが、店が消えることに待ったをかける人物が現れ、事業承継に取り組むことに。自らが創作した「鉄瓶婆(ばばあ)」というキャラクターを演じながら南部鉄器をPRするその人物、異色の地域おこし協力隊、太田和美さんの新たな決断と挑戦を追いました。

【制作意図】
大谷翔平選手が5月にInstagramで紹介したことで、世界から注目された南部鉄瓶。その産地が、今回紹介する奥州市水沢羽田町です。この町で半世紀、職人たちに愛されてきた「スナック喫茶」は、ある意味、文化を支えてきたと言えるかもしれません。「作品を作る上で一番大切なものは、取り巻く環境。いつも同じ時間、同じ場所で、いつものアレを食べて、いつものメンバーと語り合う。そして時には、若者や初めて会う人からインスピレーションを受けたり。そうした交流が当たり前のように営まれてきた場があったからこそ、南部鉄器という伝統が今まで受け継がれてきた」と、太田さんは言います。事業承継を決断した彼女の思いに迫ります。

【制作後記】
去年9月、「地域おこし協力隊」になって3か月で、「南部鉄器まつり」のPRに来られた太田和美さんに初めてお会いしました。白塗りの「鉄瓶婆(ばばあ)」に扮した小柄なその人の印象は強烈で、ずっと注目していましたが、それから1年たたずして今度は事業承継にチャレンジとは!本オープンを前に、すでに訪れるお客さんの層がだいぶ幅広く変化している様子。これからどんな展開が待っているのか、目も耳も離せません。

ハードでスローな名物せんべい

2024年8月26日~9月1日
TOKAI RADIO 制作局編成制作部 山本俊純

【番組概要】
岐阜県大垣市。日本列島のほぼ中央に位置し、かつては中山道や美濃路が通る交通の要衝であったことから、東西の経済・文化の交流点として栄えた。そんな大垣市の名物といえばぷるんとした食感が特徴の「水まんじゅう」。今回は、そんな地域の名物とは真逆を行くもう一つの名物、その硬さが話題の「味噌入り大垣せんべい」にスポットを当てる。1枚1枚手焼きで製造する「田中屋せんべい総本家」その伝統を守るために奮闘する6代目田中 裕介さんに話を聞いた。

【制作意図】
せんべいを手焼きする工房内の音、硬いせんべいを割り・齧る音。名物とはいうものの、それをどう残していくのか、奮闘する6代目の、意外な過去。当社レギュラー番組の企画をきっかけに出会った、地域の残したい音・人にフォーカスしてお送りします。

【制作後記】
取材を終えてやはり印象に残ったのは「50年続けるために」「名物と知っているが地元の人に買ってもらえない」という言葉でした。自分自身も岐阜県大垣市に在住していますが、口にすることがどのくらいあるだろうか。地域の魅力というのは、いつも目の前にあるのに見えていないものなのだと痛感するとともに、そんな「名物」を残すために強い思いを持って取り組む裕介さんの姿に胸を打たれました。名古屋からJR東海道本線 快速電車で40分弱の「水の都」。ラジオで届けきれなかった、ゴマと味噌の香りを楽しみに、あなたも大垣に来てみませんか?

一本に込める思い ~東北でたった一人の竹刀職人~

2024年8月19日~8月25日
東北放送 ラジオ局アナウンス部 玉置佑規

【番組概要】
子どもからお年寄りまで幅広い世代に愛される剣道。そんな剣道に欠かせない「竹刀」を手作りする職人は全国に十数人しかいません。東北ではたった1人の竹刀職人である加藤明彦さん(仙台市)にお話をうかがいました。使い手の気持ちに寄り添い、一本一本丁寧に作られる竹刀の魅力や加藤さんの思いに迫りました。

【制作意図】
制作した私自身、小学生から剣道を続け、剣道歴20年以上になるものの「手作り竹刀」は耳にしたことがありませんでした。というのも、武道具店などで流通している竹刀のほとんどは機械で量産する外国産で、竹刀職人の存在自体も知らなかったからです。しかし今回、職人である加藤さんに出会い、「ケガをする心配の少ない安全な竹刀」を目指して作るその姿、思いに感銘を受けました。過去には、稽古中に剣道の竹刀が割れて目に入るなどしてケガをしたり、死亡したりする事例もあると言われています。加藤さんの竹刀作りのこだわり、そして工房に響く心地よい竹を削る音を多くの人に聞いていただきたいです。

【制作後記】
加藤明彦さんには、全国各地から多数の注文が入る竹刀作りの合間を縫って、音声の収録にご協力いただきました。私も取材後、竹刀を1本作っていただきましたが、これまで使用してきた竹刀と比較すると、打突時の手ブレが少なく、何より丈夫だと感じました。加藤さんが込めた思いを感じながら大切に使っていきたいです。この番組を通じ、竹刀職人の存在、「安全な竹刀」をより多くの方々に知っていただき、剣道界発展の一助となれば幸いです。

木で包む、もくめんって知っていますか?

2024年8月12日~8月18日
高知放送 ラジオ制作部 手島伸樹

【番組概要】
高知県中部に位置する土佐市。ここに日本で唯一、木毛(もくめん)を専門に製造している会社、戸田商行があります。もくめんは、木を薄く細く削った緩衝材。森林率84%の高知県の原木を使用し、職人たちが丁寧に加工したものです。緩衝材という商品性質からどうしても安価になりがちで、全国にあった木毛業者は次々に廃業していきました。そんな中、戸田商行は生活の様々な場面で木の商品と共に暮らし、木の文化に親しんでもらおうと、今ももくめんを作り続けています。

【制作意図】
引き出物で頂いたフルーツなどの周りに緩衝材として使われている木毛(もくめん)を一度は見たことがある方が多いと思います。しかし、この商品がどこでどのように作られているのかは意外に知られていません。決して主役ではない商品ですが、その制作現場では、1本として同じものの無い原木から、如何に美しい木目のもくめんを創り出していくのか、日々、研鑽している職人たちがいます。日本一の森林率84%を誇る高知県だからこそ、”最後のもくめん屋”として今もモノづくりを大切にする戸田商行を取材しました。

【制作後記】
工場に並ぶ、もくめんを削る機械は創業当時(昭和36年)から使用しているものも。まるで工業遺産の趣です。緩衝材と言えば、いわゆるプチプチと呼ばれるケミカルなものが主流ですが、改めて、もくめんの持つ木の柔らかさ、温かさは、日本人ならではの木の文化を感じさせてくれました。原木を削り、端材はもくめんを乾燥させる熱源に利用するなど無駄のない持続可能な商品は昔から続いているものですが、SDGsが注目を浴びる現在に相応しい商品と改めて感じました。



2024年8月 1日 (木)

ふるさとの言葉をつないで~都路の方言ばあちゃん

2024年8月5日~8月11日
ラジオ福島 編成局 小川 栄一

【番組概要】
地域ぐるみで地元の言葉や方言を大切にしている田村市都路町。そこで30年以上に渡って方言を伝承する活動を続けているのが渡辺美智子さん(86)です。地元のお年寄りたちと協力して「都路方言かるた」や「方言集」「民話集」などを作り、地元小学校やこども園での読み聞かせは今も続けています。そんな渡辺さんのふるさとの言葉への思いと、授業などを通じて地元方言を学ぶ子どもたちの取り組みを「都路弁」を散りばめ表現しました。

【制作意図】
福島県の中通りと浜通りの境に位置し、山間部にある都路町は昔からの言葉がいまだ多く残る地域の一つです。しかし、東日本大震災時の東京電力福島第一原子力発電所事故で町の一部に避難指示が出された影響などもあり、町の人口は減少の一途をたどり、今では約1900人と、震災前の3分の2にまで減ってしまいました。唯一残る小学校も全校児童は30人です。そんな都路町に伝わる言葉や方言を絶やさず伝承しようと努めている渡辺さんの取り組みや学校の活動を紹介したく思い取材制作しました。

【制作後記】
福島県で生活して30年近くなり、様々な方言に接してきましたが、今回は取材中に初めて耳にする方言もたくさんありました。中でも、こじる=鳥が抱卵する フッツェ=自然と芽が出る は都路独特の方言で、共通語ではその状況を一言で表現することが難しい言葉です。こういった言葉は身近にそのような現象が多く存在していたからこそ、生まれ、受け継がれてきたわけで、そう考えると、自然豊かな都路にはこれまでどれくらい多くの自然にまつわる方言が存在し、使われていたのだろうかと興味深くなりました。方言を守り伝えることは、ふるさとの生活や文化を後世へ継承することにもつながります。取材を通して方言が持つ大切な役割を学びました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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