2021年4月22日 (木)

春の山・ペンションのオルゴール

2021年4月12日~2021年4月18日放送 
IBC岩手放送 ラジオ放送部 滝村知大

【番組概要】
岩手県八幡平市は豊富な森林資源を使った工芸や木細工が有名な地域です。ペンション安暖庭(あんだんて)では地元の木々を使って手回しオルゴールを作成、夕食時にやわらかなメロディを奏でています。あたたかな音色に乗せてオルゴールをめぐる人と人とのつながりを描きました。

【制作意図】
海外では「ストリートオルガン」とも呼ばれる手回しオルゴール。100%木で作られるものはとても珍しいと聞きます。その音色はリコーダーの様でオルガンの様でなんとも形容しがたい音色でした。ペンションオーナーの安井さんは音楽経験が全くなく、最初はチューニングもうまくいきませんでした。しかしいまでは聞く人を圧倒する名曲の楽譜がうずたかく積まれています。優しい木の音色に乗せて、かけがえのない友人とのストーリーをお伝えしたいと思いました。

【制作後記】
3オクターブ・37本の笛を備えるオルゴールは小さなパイプオルガンの様にも見え不思議な迫力を感じさせます。写真で見たその楽器に最初は「どんな音がするのだろう」という興味だけで取材を開始しましたがお話をうかがうと、オルゴールがいまの形に至るには大切な友人との関りがありました。オルゴールの楽譜にあたる「ブック」の制作は地味な作業で、堅い厚紙を2ミリ、3ミリ単位で刻み続けます。それでも少しずつ楽譜を切り続ける安井さん。友人が残した楽譜すべてをメロディにしたいという強い想いに感銘を受けました。

2021年4月 6日 (火)

明日、晴れたら~サンドイッチがつなぐ私toマチ~

2021年4月5日~2021年4月11日放送 
北日本放送 報道制作局報道制作部 岩本里奈

【番組概要】
「1つのサンドイッチで、1人でも街を歩いてくれたら」。そんな思いから、三輪自転車に乗ってサンドイッチを販売するお店があります。富山県富山市にある「トマチサンドイッチ店」は、“カーゴバイク”と呼ばれる三輪自転車に乗って販売する移動型のサンドイッチ店です。出店するのは月に1回~2回の晴れた日だけ、時間と場所は当日の朝にお店のSNSでお知らせ。予告はせずにSNSを上手に使い、富山市中心街を練り歩きます。店主の針山佳奈恵さんは、結婚を機に富山へ。「街を歩いている人が少ない」。その光景を目にし、職を辞めて自分が大好きなサンドイッチを持って外にでることを決意しました。なぜ、街に人を呼びたいのか。そこには“まちづくり”ではない針山さんの思いが色濃く出ていました。

【制作意図】
出会ったのは1年前。針山さんのお人柄、そしてそのお人柄が滲みでたような優しい味わいのサンドイッチに私も何度か買い求めに行っていました。SNSで居場所を見ながら探すも見つけられない日があったり、でも見つけたときは興奮したり!いつもそこに必ずあるわけではない存在にドキドキワクワク。次第に興味が高まり、移動販売車ではなく“移動型”である意味とは。針山さんの奥底にある人物像とは。新型コロナウイルス感染拡大防止のため離れることが求められている世の中ですが、出会いを求めて歩き続ける針山さんの思いと、お供のカーゴバイクの音から、富山の音をお届けします。

【制作後記】
今年は大雪に見舞われ、天気予報に雪マークが混在する中とても気持ちの良い晴れた日でした。早朝に本日出店するとSNSに投稿し、歩き始めて数分で1人のお客さん。「さっきインスタで見てこの辺歩いていたから」と来てくれました。他にも遠くから見つけて駆け寄ってくるお客さんや、通りすがりで新たな出会いをしたお客さんの笑顔を目にし、入口は様々だけど、人との“繋がり”を感じることができました。途中、居場所を投稿するために何気ない街の風景を撮影したり、春の陽気が感じられる風景を撮影したり、店主の針山さんにとってサンドイッチがつなぐ出会いを大切にしているのだと思います。私も久しぶりに市街地をゆっくりと歩いてみて、春の富山の風景を感じました。

大人になるということ2021

2021年3月29日~2021年4月4日放送 
東海ラジオ 報道制作局第一制作部 源石和輝

【番組概要】
愛知県犬山市で毎年1月に開かれる「犬山二十歳の集い」。二十歳になる犬山市民が自ら企画、運営しています。2021年は新型コロナウイルスの影響で開催が危ぶまれましたが、感染対策を万全にして1月10日に決行。山田拓郎市長も「実行委員の決断を理解、応援、共有する」と背中を押しました。集いは2001年、「荒れる成人式」が社会問題化するなか市主催の式典が廃止され、新成人たちが自ら立ち上げたのが始まり。以来ホテルの宴会場を使ってパーティ形式で行われていましたが2019年にホテルが閉館。2020年から市のホールで実施しています。実行委員長の岩村恵吾さんはコロナ禍で計画変更やリモート会議を余儀なくされながらも、ソーシャルディスタンス、二部制による密の回避、二次会禁止を呼びかけるなどして本番を迎えました。「二次会が好きだが実行委員なので我慢した」と語る副委員長の若山幸人さんらと支えあいながら集いは成功。市内に二十歳の感染者は報告されませんでした。山田市長は「集いをやったことが財産」と二十歳の市民をたたえます。今回のテーマは「支援」。若山さんは「今後の人生のテーマになる」、岩村さんは「自分たちにしかできない経験ができた。伝えていかねば」と振り返ります。支えられながらやりとげた集いを通して、やがて支える側に回ることを誓い、大人の自覚を高めていました。

【制作意図】
初春の風物誌ともいえる愛知県犬山市の「犬山二十歳の集い」。2001年「新成人の集い」としてスタートしたときから取材を続けています。セレモニーからパーティーに転換することで新成人同士が互いに成長を祝いあうスタイルが確立され、その影響は他の自治体にも及んでいます。あれから20年、成人式をめぐる環境は激変。成人年齢の18歳への引き下げ、少子化による新成人人口の減少、新型コロナウイルス感染拡大による開催の是非。さらに犬山市では会場だった大型ホテルの営業終了がありました。そんななか、2021年の集いは感染対策を万全にして開催。そこには当年度の実行委員たちや歴代の実行委員たちの努力、市長をはじめとする行政の尽力、そして市民たちの協力がありました。番組では現在と過去の集いの音源、実行委員や市長らのインタビューを通して、全国に誇れる犬山ならではの「大人になる通過点」を描き出してゆきます。

【制作後記】
奇しくも「集い」自体が二十歳の節目。正直ここまで追いかけるとは思ってもいませんでした。初年度は準備期間わずか3ヶ月。ゼロから作り上げたパーティに涙がこぼれそうになったのがきのうのようです。毎年その年代にしかできない集いを見せてくれましたが、コロナ禍の今回は初回以来のピンチだったと言っていいでしょう。1年半かけて準備しても無駄に終わるかもしれない恐怖。プレッシャーのなかギリギリまで迷った末に開催を決断。やはり集いは時代を映し、変わる環境の中で進化していました。実行委員たちを支えた47歳の山田市長は「年齢は違っても同じ大人。逃げたり隠したりごまかしたりせず、正直、丁寧、本気で向き合った。世代による感性の違いを異質と遠ざけず、刺激しあいながら価値を生み、社会を豊かにしていきたい」と若い大人たちに期待を寄せます。正副実行委員長として互いを支えあった岩村さんと若山さんは同じ中学の親友同士。ともに夢は教員になることです。今回の経験はきっと子どもたちにも伝わっていくことでしょう。冒頭に2年連続中止となった犬山祭の音を使用したのは、放送週に開かれるはずだった祭へのオマージュであり、祭のように集いが次代へ受け継がれることへの願いでもあります。

ねえちゃんの駄菓子屋

2021年3月22日~2021年3月28日放送 
ラジオ関西 報道制作局報道制作部 山本洋帆

【番組概要】
神戸市兵庫区にある老舗の駄菓子屋「淡路屋」。令和の時代に駄菓子屋なんてと思う人もいるかも知れないが、地元の子どもたちから絶大な人気を誇る、ホットスポットだ。クレープが得意な店主の「ねえちゃん」が守り続ける、子どもたちの大切な場所。時代が移り変わっても、変わらない駄菓子屋の風景を切り取る。

【制作意図】
コロナ禍で移動を規制されるなか、子どもたちの伸び伸びとした姿が集まる場所があった。駄菓子屋というプラットフォームで、出会い、交わり、時にぶつかる。そんな、昔から変わらない、懐かしくてあたたかい景色を「音」で記録したいと思い、制作した。

【制作後記】
子どもたちから絶対の信頼を得ている、店主の伊藤さん(=ねえちゃん)。コロナ禍で、伊藤さんを心配した”かつての子どもたち”が、代わる代わる様子を見にきてくれたそうだ。春はまた新しい小さなお客さんがやって来る季節。苦しいニュースが多い時代だが、ねえちゃんと話す子どもたちの顔は、キラキラと輝いていた。

健やかに育て、大空に舞う土佐フラフ

2021年3月15日~2021年3月21日放送 
高知放送 ラジオ編成制作部 石田佳世

【番組概要】
高知県では、端午の節句のお祝いに、鯉のぼりと共に大漁旗のような旗『フラフ』が揚げられます。そのフラフは、染め物工場で職人の手によって一枚一枚手作りされています。高知の伝統芸能の一つ、フラフ作りを御紹介します。

【制作意図】
フラフ制作は、一枚仕上げるのに2ヶ月ほどかかります。布に、糊で絵柄の輪郭を描き、染料で染め、川で洗い、乾かす。その工程はすべて手作業。五月の節句前に届けるために、2月・3月は制作のピークを迎えます。「寒染め」言われる寒い中での作業だからこそより美しく仕上がります。100年以上続く染物工場の職人のこだわりと伝統を紡ぐ思いを伝えるべく制作しました。

【制作後記】
3代、4代と続く老舗の染め物職人のこだわりはもちろんですが、高知県民の『フラフ』に托す子供への思いというのを改めて強く感じました。親や祖父母が跡継ぎができた時の喜び、地域の皆さんにも祝ってもらいたいという気持ちの表れが『フラフ』。贈る人の絵柄のこだわりとそれに応えて描こうとする職人。フラフにはやさしい思いがたくさん込められているのだということを多くの方に知って頂く機会になればと思いました。

おらちの除雪は日本一! ~雪国十日町の夜明け~

2021年3月8日~2021年3月14日放送 
新潟放送 ラジオ放送部 関口芳充

【番組概要】

新潟県十日町市は積雪が3メートルにも達する豪雪地帯。一晩で数十センチ積もり、市民生活を直撃する。深夜から早朝にかけて、道路除雪を担うのが建設会社だ。冬場に本業がなくなることから重要な稼ぎ口でもある。勝負は、通勤通学が始まる午前7時までの数時間。除雪車が放つ力強いエンジン音や除雪車内での作業員の声を織り交ぜながら、豪雪地帯の暮らしを支える縁の下の力持ちたちの一夜を伝える。

【制作意図】
私たち雪国に住む住民でも、除雪車のことは余り知らない。夜中に降り積もっても、朝にはきれいに除雪されている。住民は、「雪が降り積もる音が聞こえる」と話す。その音をかき消すのが、早朝にかけて響く除雪車のエンジン音だ。地鳴りのような爆音も市民にとっては、欠かせない音。それを操る作業員の熟練の技。市民の生活を守る除雪車内の様々な声を知りたいと制作した。

【制作後記】
大雪の日の早朝、外から聞こえてくる除雪車のエンジン音は何気ないものだった。しかし、実際に取材して作業員の声を聞き、除雪車の操り方を知ると、彼らがいかにプロ意識を持っているかがわかった。除雪が実施されるのは、新たに10センチ以上の積雪があった場合。豪雪地ではほぼ毎日のことだが、取材予定日の数日間は比較的、天候が安定していたため、空振りに終わるのではと気をもんだ。



祭り馬と共に~12年後は赤いちゃんちゃんこで~

2021年3月1日~2021年3月7日放送 
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部 假屋幸一郎

【番組概要】

宮崎県東臼杵郡美郷町に、平安時代中期から続く伝統農耕行事「御田祭おんださい」この祭りに欠かせない神馬「祭り馬」を長年飼育・調教してきた、町外の馬主が、高齢と健康上の理由により、引退すると・・・このままでは、祭りの存続が危ぶまれる・・・同町出身の大野英樹(48才)さんは、30歳の時、Uターンし、和牛繁殖農家を。子供のころに祭りで見た「大きな馬」が、神田の中を駆け回る勇壮な姿が忘れられず、帰郷後も御田祭の馬の乗りてとして、祭りに関わってきた。祭りを存続させたい、その一心で、美郷町西郷では実に50年ぶりとなる「祭り馬」の飼育を決意。その矢先での、このコロナ渦。また、この年の御田祭は中止となり、馬の祭りデビューもできなかった。しかし、12年後が御田祭1000回目(つまり1000年目)、そして、自身還暦を迎えることとなることから「赤いちゃんちゃんこを着て、自分が育てた馬に乗り、神田を駆け回りたい」と、2頭の馬も同じく、その瞳を輝かせている。

【制作意図】
この「御田祭」には、ラジオ制作の仕事を始める前に、会場の音響として何度か、携わったこともあり、また、取材対象者も、当時、同業者で、幾度か、県内外の現場で一緒になることがありました。その後、彼が、Uターンし、また、祭りに、地元人として、関わっていることは知っていましたが、今回、 祭り馬の飼育も始めると聞き、その胸の内を聞いてみると、伝統を守る、続けることへの厳しさ、でも、故郷の為に、自分の為に、そして馬へ思いも、話してくれました。宮崎県内には、数々の、伝統ある祭りがありますが、高齢化、人口減少、担い手不足、様々な問題があり、途絶えていくものも少なくありません。この番組を聞いて、少しでもお役に立てたらと思ってます。

【制作後記】
何といっても、コロナ渦につきます・・・取材予定の令和2年度の祭りは中止に。                       また、令和3年1月7日には、県独自の緊急事態宣言が発令され、局としての取材活動ができなくなりました。取材対象、番組変更なども検討しましたが、取材ができないので同じこと。大幅に番組構成を変更、取材対象者へリモート取材、現場ノイズは、対象者に、機材を預け、牛小屋や馬小屋、そして、放牧場に、録音機を設置してもらい収録、祭りの音源は、過去のものを再編しました。どの局もそうでしょうが、コロナの事で、新たな番組制作の方法が、こんなこともできるんだ~と、業界30年にいて、また、勉強させられました。あと、ラッキーなことが一つ、2頭の馬の嘶きが綺麗に録音できていました。きっと、私たちが伺ってマイクを向けても、警戒したでしょう。以前にも、収録でかなり苦労した経験がありますが、その嘶きから、大野さんを信頼していることも感じさせられました。

震災10年・帰れない故郷を思う『大堀相馬焼』

2021年2月22日~2021年2月28日放送 
ラジオ福島 編成局放送部 森本庸平

【番組概要】
福島県浜通り・浪江町の「大堀(おおぼり)相馬焼」は、江戸時代から続く伝統工芸です。ひび割れや二重焼、馬の絵などの特徴は、全国的にも珍しく、地元で親しまれてきました。東日本大震災と原発事故で、窯があった大堀地区は避難区域となり、10年経った今も、放射線量が高く、住むことができません。各地に避難・移転して多くの窯が再開する中、唯一の女性窯元として、避難先で創作を続ける近藤京子さんの故郷と伝統への思いに迫ります。

【制作意図】
大堀相馬焼が焼き上がり、窯が開いた瞬間、まるでオルゴールのような神秘的な音が鳴り響きます。特徴の1つである「ひび割れ」のひびが入る音で、原発事故の後、場所は変わっても、その音が聞こえなくなることはありませんでした。ぜひ全国の皆さんに、大堀相馬焼が生み出す独特の音色を届けたいと思い、取材に出かけました。

【制作後記】
大堀相馬焼そのものは知っていましたが、伝統的な特徴を持った作品だけでなく、コーヒーカップやランプシェードなど現代風にアレンジしたものもたくさんあったことに驚きました。近藤さんが、故郷への思いを語りつつ、「大堀でなくても、今の場所で伝統をつなぐことが大堀相馬焼」と語っていた姿に、近藤さんの葛藤と使命感を感じました。

猫の手も借りたい?!よみがえれ貴志川線 奮闘記

2021年2月15日~2021年2月21日放送 
和歌山放送 報道制作部 柘植義信

【番組概要】
和歌山市のJR和歌山駅と紀の川市貴志川町の貴志駅間14キロ余りを30分で結ぶローカル鉄道、和歌山電鐵貴志川線。大正時代に開設された軽便鉄道が発祥のローカル線。大きな赤字が続き、公募で選ばれた和歌山電鐵が事業を引き継いだ。市民の応援を得て今までの車両を改造していちご電車やおもちゃ電車などを走らせたり、グッズの販売、イベントするなど乗客を増やそうといろいろな取り組みをしている。しかし、この鉄道の起死回生の立役者は一匹のメスの猫から始まったと言っても過言ではない。当時売店の経営者が飼っていた三毛猫のたまが社長の目に留まり、駅長に就任した。猫の駅長の意外性が当たり、たま駅長に会おうと全国各地のほか、アジアなど海外からもやってくるフィーバーぶり。三毛猫のたまは一躍アイドルに。県からは鉄道の再生や観光に大きく貢献したとしてたま駅長に県勲侯爵の称号などが贈られるなど異例の展開に。2015年になくなったが、葬儀には県知事や地元の市長も参列するほどたま駅長の存在は大きい。その後ニタマ駅長が後を継いで6年近くになる。その一方で沿線人口の減少や道路の整備などで利用客は減少している。とりわけ、新型コロナウイルス感染症拡大で乗客は大きく落ち込んで赤字が続いている。猫の手も借りてあの手この手で貴志川線の存続を模索する社長。駅に奉られている名誉永久駅長「たま」も起死回生を祈っているに違いない。

【制作意図】
新型コロナ感染症拡大はこれまでの「当たり前の日常」や社会を一変させている。とりわけ外出の自粛で、鉄道やバスなど公共交通機関の利用者は大きく落ち込んでいる。沿線人口の減少や道路の整備、車の普及で利用者が落ち込んでいる地方鉄道は存続の危機にあるところが多い。和歌山県内を走るローカル線、和歌山電鐵貴志川線もその一つだ。あの手この手で利用客を増やそうと取り組んでいる。当時売店で飼われていた三毛猫を駅長に据えたところ、超アイドルに変身。一匹のメスの猫が鉄道の再生に大きな役割を果たしている。コロナ禍で乗客が減りさらに経営が厳しい地方鉄道。鉄道の再生に果敢に取り組む人や猫の駅長の奮闘の様子を紹介しすることで地方の置かれている諸課題を改めて提起し地方再生の道を模索するきっかけとしたい。

【制作後記】
たま駅長は手でものをつかむようないわゆる「にぎにぎ」が苦手だったとか。それは、仔猫のとき店主のエプロンのポケットに入れられていたからではないかと聞いたことがあります。鉄道再生への道筋は一匹の猫から始まったといっても過言ではないことを今回改めて実感しました。過疎と高齢化、車の普及に加え、コロナ禍が追い打ちをかけ、ローカル線の存続がピンチになっています。猫の手も借りてあの手この手で再生を模索するこの鉄道会社の奮闘は地方が持つ課題解決の一つの取り組みとして注目されるものだと感じます。地方に暮らし、地方から情報を発信する私たちラジオが置かれている状況もコロナ禍で厳しさを増していますが、いろいろなアイデアを駆使して人の集まる場を提供していきたいと気持ちを新たにしているところです。小嶋社長が言う「楽しくないと人は集まらないじゃない?!」一番心に残った言葉です。

明治から伝わる美味しさ、音でも美味しい長崎ちゃんぽん

2021年2月8日~2021年2月14日放送 
長崎放送 ラジオ制作部 藤井真理子

【番組概要】
皆さんは、長崎名物というと何を思い浮かべますか?カステラ・トルコライス・ちゃんぽん・皿うどん・・・。長崎は、海外との関りがとても深い街でその歴史も古く、現在も至るところにその面影が残っています。番組では、中国との関りから生まれた「ちゃんぽん」をご紹介します。「ちゃんぽん」は、明治時代に伝わり、長崎人ならどの家庭でもちゃんぽんを作るほど、現在も変わらず庶民の味として親しまれています。この番組の主人公は、長崎市のどこにでもある小さな中華料理店です。明治から伝わる庶民の味を守り続けています。ちゃんぽん作りの美味しい音を集めました。                         

【制作意図】
明治時代に長崎で生まれたちゃんぽんは、今に至るまで、味も作り方も基本的には変わっていません。ちゃんぽんは、具を炒める所から出来上がりまで、大きな中華鍋ひとつですべてを作ります。中華鍋がたてるちゃんぽん作りの音は、まさに美味しい音。昔から長崎人の食欲をそそる音なのです。
その美味しい音を、大正時代から走る路面電車や出前のバイクの音を交えながら、構成しています。番組を聴いたリスナーが長崎を訪れ、ちゃんぽんを食べたくなるような番組を目指しました。

【制作後記】
長崎県でも、新型コロナウイルスの影響を受け、飲食店は苦戦しています。取材させていただいた中華飯店 三吉も閉店時間を1時間早めました。それでも、64歳の仲良し夫婦は「正直苦しい」と口にしつつ、「やっぱり常連さんのおるけんが、やめられんもんね」と笑顔でお店を続けています。このお店では、いつもラジオが流れています。お二人とも大のラジオファンで、「録音風物詩を聴くのが楽しみ」と話していました。新型コロナウイルスの収束後には、活気あふれるお店の雰囲気と小浜さんの作る美味しいちゃんぽんを全国の皆さんに楽しんでもらいたいです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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