2022年2月 2日 (水)

豪雪地の雪下ろし~空から冷蔵庫が降ってきた!

2022年1月31日~2022年2月6日放送 
山形放送 アナウンス部 門田和弘

【番組概要】
≪これが豪雪地の雪下ろし!≫                                                                                                                                                                                                                                                                                        山あいに、20件もの旅館が肩を寄せ合うように立ち並ぶ肘折温泉。上を見上げると屋根には2mもの雪の塊が・・・。昨年12月25日から連日のドカ雪となった大蔵村肘折では、今年1月4日には積雪が2m超に。氷点下4℃、この日も もっさもっさ と雪の降りしきる中、朝から夕方まで 「雪下ろし職人」に密着しました。ここでは地元の有志によるいくつかのグループが、旅館や民家の雪下ろしを行っています。肘折では雪下ろしに使う特有の道具があります。それは、ノコギリ!                                         ①ノコギリを使い、屋根に積もった2mの雪を切り出しスノーダンプで運んでいく。                        ②安全確認後、1つ200kgもの雪の塊を、軒先から下に放り出す。                      この作業が何度も何日間も繰り返され、肘折の冬の暮らしが守られています。豪雪地・肘折の雪下ろし現場、その最前線に潜入です!

【制作意図】
≪豪雪地ならではの音風景の発信≫                                  初めて冬の肘折を訪れたのは30年前。温泉街に入ったとたん、一瞬目を疑いました。「空から冷蔵庫が降ってきた」 のです。そのイメージが強く、タイトルに入れました。肘折を訪れると雪下ろしのイメージが覆ります。音風景も豊富です。                           ○ 「どっしゃーん」「ずばばばーん」 と耳をつんざく雪の落下音                  ○ ノコギリを使い、雪を切り出す音                                  ○ 雪を運ぶ職人の息遣い                                        いずれも厳しい自然と闘っている中で生み出される音なので、緊迫感があります。       いつかこの音をラジオで番組にしたいと思っていました。                       冬の関東地方は太平洋高気圧に覆われよく晴れます。一方、肘折はまるっきり違う世界です。このあと雪は2月下旬まで増え続け、必死の雪下ろし作業は春先まで続きます。                                                                                                                                                                                                                                      

【制作後記】
≪過酷な取材でした≫                                                      雪が無ければこの取材は難しくなります。去年の暮れから天気予報を気にしてソワソワしていましたが、年末から年始にかけて寒波が来襲、順調に雪が増えました。今年の私は「雪下ろし」 が仕事始めです。肘折に着くといきなり雪塊しぶきの洗礼が!雪まみれになりながら、まずはこの迫力ある爆音をどう収録するのか?悩みました。200kgの雪塊は大変危険です。落ちてくるギリギリの所にマイクを立て、上手く職人にコントロールしてもらい、収録に臨みました。あまりにも激しい音なので、ひずみが生じ、半分以上が使えませんでした。旅館の屋上では、ノコギリ音に挑戦です。高さ15mの屋上は風も強く、体が芯から冷え、雪の積もったマイクはぶるぶる震え、いい音が録れているか不安でした。そして、氷点下の凍て付く世界から40℃のポッカポカ温泉へ。入浴シーン収録後も皆 「あ~」「う~」「ふぅ~」。過酷な取材も全て忘れ、最高の1日となりました!

笑顔あふれる、ダンスのまちへ

2022年1月24日~2022年1月30日放送 
東北放送 ラジオ局制作部 小野寺穂実

【番組概要】
宮城県の南部にある亘理郡山元町は、2011年の東日本大震災の津波で大きな被害を受けました。震災からまもなく11年目を迎えようとしていますが、まちづくりが進み、地域の交流拠点として新しく整備された施設では、笑いの絶えない、楽しいコミュニティが生まれています。そこでは、小さな子どもからシニア世代まで、多くの方がダンスを楽しんでいます。ダンスを教えているのは、元々仙台市でインストラクターをしていた上野協子さん。津波で被害を受けたまちを元気にしたいという想いから、震災後、山元町でもダンスを教えています。上野さんの想いに共感した、3人のインストラクターとともに、チアダンス・ヒップホップ・ズンバ・ヨガ・よさこい、と幅広いジャンルのダンスをレッスンし、およそ130人へ踊ることの楽しさを伝えています。仲間とともに明るいリズムに乗せて、楽しく体を動かすと、自然とそこには笑顔が生まれます。上野さんが目指す、『ダンスのまち・山元町』が、ダンスを楽しむ人々の笑顔であふれている様子を取材しました。

【制作意図】
東日本大震災からまもなく11年目を迎えようとしている宮城県亘理郡山元町。新しいまちづくりが進む中、少しずつでも元気を取り戻し、笑顔が増えている様子が伝わればと思います。そこには、山元町を元気にしたいという強い想いを持った上野協子さんや、その想いに共感した方々による、ダンスという誰もが楽しめる明るい取り組みがありました。ダンスには、小さな子どもからシニアの方々までおよそ130人が取り組み、その一人ひとりに笑顔が生まれていました。ダンスを通じて生まれる笑顔には、前向きになれるパワーがあり、大きく連鎖していくように感じました。それらの様子と、東日本大震災からの復興を重ね合わせてお伝えできればと思います。

【制作後記】
取材へ行き、レッスンを受けている方へインタビューをすると、皆さん口をそろえて、 ”踊ることがとにかく楽しい” “元気になれる” と笑顔でおっしゃっていたのが印象的でした。子どもたちはダンスの魅力に気がつき、早くもチアリーダーを目指したり、シニアの方々は健康な体を目指して、ダンス仲間とともに定期的に体を動かすなど、それぞれが目標をもって楽しく充実した様子でした。取材でお伺いした私も、思わずその中に加わりたくなる、楽しいコミュニティでした。これを作り上げた、インストラクターの上野協子さんの「ダンスで山元町を元気にしたい」という強い想いは、レッスンを受けている方々にもしっかりと伝わっていました。これからも『ダンスのまち・山元町』を目指して、笑顔で踊り続けてほしいと思います。

白い杖は、わたしの〝目″

2022年1月17日~2022年1月23日放送 
南海放送 メディアセンター 和氣孝治

【番組概要】
愛媛県で唯一、視覚に障害がある人のための学校、愛媛県立松山盲学校で、通常の授業と合わせ、生徒が「社会の中で自立して生きていく」ため実施されているカリキュラム「自立活動」。その中で、‶白杖(はくじょう)″を使い、1人で地域を歩くための技術を学ぶ授業、「歩行訓練」がある。生徒は白杖をどのように使って周囲の状況を確認しているのか?そして、交通事故を防ぐため、ドライバー側に知ってもらいたいサインとは?1本の白い杖が紡ぎだす音にのせて紹介する。

【制作意図】
エフナン南海放送ラジオでは2021年7月から月に一度、愛媛県立松山盲学校を紹介するラジオ番組、「学校ラジオ~愛媛県立松山盲学校の時間です」を制作・放送していて、私もスタッフの1人として携わっています。実は私の両親も視覚障害があり、松山盲学校を卒業しているのですが、実際に取材すると息子の私は知らなかったことの連続!一般の高校と違ったカリキュラムで「社会の中で自立して生きていく」ための教育が実施されていることに驚き、感動しました。私たちが普段何気なく行っている「歩く」ということが、どれだけ大変で集中力を必要とすることなのか。誰もが、少しでも暮らしやすい社会にするためのほんのちょっとの気づきになればうれしいです。

【制作後記】
初めて「録音風物詩」を担当させていただきましたが、‶音だけ″のラジオだからこそ、視覚に障害がある人が感じている世界を想像してもらえるのではないか…そして、障害に甘んじるのではなく、1人の社会人として生きていくための努力を少しでも伝えたい…そう思い今回の制作に臨みました。ただ、クリアな白杖の音をうまく拾えない、思うようにインタビューできない、伝えられない。ラジオマンとしてまだまだ素人であることを痛感しました。そしてそれ以上に、「こうすればもっと伝わるのでは」という改善点がたくさん見つかりました。「盲学校」には我々がまだ知らない、知ってほしい活動や、何より生徒・先生たちの前向きな笑顔があります。これからもそんな彼らの姿を伝えていきたい。私のライフワークになるかもしれません。

雨畑硯 匠の誇り

2022年1月10日~2022年1月16日放送 
山梨放送 ラジオ局ラジオ制作部 佐藤かおり

【番組概要】
山梨県早川町雨畑地区は古くから硯づくりが息づく集落です。その歴史は古く伝説では700年前にさかのぼり、明治時代の最盛期には90人もの職人がいたと伝わります。しかし一世紀を経て、現在雨畑の硯職人は65歳の望月玉泉さん、ただ一人となりました。20才でこの道に入り40年余。望月さんを魅了し続けるのは地元で採れる硯石「雨畑真石」。番組では、他の地域にはない、まさにふるさとの宝と向き合う望月さんの硯づくりを、現場の音に乗せてお送りします。

【制作意図】
雨畑最後の職人、望月玉泉さんの言葉は、静かでありながら硯石に対する誇りと愛情があふれています。40年余りこの石と向き合い、石を知り尽くした望月さんのインタビューと硯づくりの音から、書道や硯という日本の文化を長く支える人々の努力とものづくりの情熱を感じてもらえるような番組制作を心掛けました。

【制作後記】
文化庁の無形文化財に書道が登録されるというニュースもあり、県内の文房四宝で番組ができないかと思ったところ雨畑硯が浮かびました。今回の取材で望月さんが硯づくりを行う町の博物館「硯匠庵」を訪れると、館の皆さんが雨畑硯に誇りを持ち、その存続に真剣に向き合っていらっしゃる姿がありました。そして現在も全国から日々発注が舞い込むほど愛好家や書道専門店の信頼を得ている雨畑硯。実際に墨をすると驚く速さで墨が下り、私もファンになるとともにこれからも残ってほしいという思いを強くしました。 



2021年12月24日 (金)

山あいに響く懐かしの音

2022年1月3日~2022年1月9日放送 
信越放送 編成制作部 小林徳明

【番組概要】

長野県の南部、東西を南アルプスと中央アルプスに挟まれた山あいの地域を進むリヤカー。そして、郷愁を誘うように響く懐かしいラッパの音。ここでは、北海道から移り住んだ若者が、市街地から離れた場所に住み、コロナ禍で外出を控えているお年寄りたちに、味が自慢の豆腐を届けようと、昔ながらの豆腐の引き売りを行っている。引き売りでは、自然と会話が生まれ、お年寄りたちに、豆腐だけでなく笑顔も届けている。

【制作意図】
豆腐屋さんが鳴らすラッパの音は、自分にとっても子どもの頃に聞いたことがある、懐かしい音です。しかし、いつのころからか聞くことがなくなり、すっかり忘れていた音でした。そのラッパを使って、しかもその音を知らない世代であろう若者が、豆腐の引き売りをしていることを知り、どんな人がやっているのかということに興味を持ったのと同時に、懐かしい音の周りに、どんな人が集まり、どんな時間が流れるのかを知りたいと思い取材を始めました。

【制作後記】
手作りのリヤカーを引き、ラッパを鳴らしながら豆腐の引き売りをしている若者は、物静かな中にも、バイタリティーあふれる若者でした。縁もゆかりもない地に移り住み、母親やおばあさんにあたる世代の女性の中で働きながら、山あいに住むお年寄りたちに豆腐を届けたいという思いには、頭が下がる思いもし、こうした若者のエネルギーが、買った人たちの笑顔になっている様子を見て、爽やかな気持ちで取材を終えました。

落ち葉に映る縄文人~御所野遺跡の清掃活動

2021年12月27日~2022年1月2日放送 
IBC岩手放送 メディア編成局ラジオ放送部 照井達也

【番組概要】
2021年7月世界文化遺産に登録された岩手県一戸町の御所野遺跡。縄文時代中期後半(約5000年前~約4200年前)約800年間、人々が定住したと考えられている集落跡で、ここでは毎年、地元住民が清掃活動を行っています。「縄文人は枯れ葉を集めたのだろうか・・・」そんなことを思いながら、遺跡で落ち葉掃きをする参加者たち。清掃活動は、来場者のためだけでなく、自然と共に生きた縄文人の精神を後世に伝えていこう、という誓いの場でもありました。

【制作意図】
清掃活動には、毎回、地元住民をはじめ、町内外から約200人が参加しています。なぜ、毎回多くの人が参加し、遺跡を支えているのか。参加者の思いが少しでも垣間見られればと思い、世界文化遺産に登録されてから初めてとなる清掃活動を取材しました。

【制作後記】
お話を伺った柴田さんは、「清掃活動に若い人も増えて嬉しい」と話していました。今回、地元の高校生6人が、それぞれ自主的に参加。ある高校生は「いつもは部活で日程が合わなかったが、今回参加することができました」と嬉しそうに話します。遺跡の近くにある小学校では、この日とは別に、毎年、清掃活動や遺跡の調査活動、ガイド活動を行っています。御所野遺跡は、幅広い世代にわたって愛されている所だと実感することが出来ます。

冬のおわら風の盆

2021年12月20日~2021年12月26日放送 
北日本放送 報道制作局報道制作部 岩本里奈

【番組概要】
富山市の山あいにある町・八尾町。町の名前は知らなくても「おわら」と聞けばわかる人も多いのではないでしょうか。ここは、300余年も踊り継ぐ民謡行事「おわら風の盆」の舞台。毎年9月1日~3日にかけて町中のぼんぼりに淡い灯がともり、浴衣姿の踊り手たちが、「おわら節」に合わせて踊りを披露しながら町を流し歩きます。その哀愁漂う優美な姿を一目見ようと、毎年20万人もの観光客が訪れる富山を代表する行事の一つ。しかし、この町も例外なく、新型コロナウイルスの影響により、昨年に続いて今年も開催中止となりました。富山から秋を告げる音が消え、八尾の人たちの心の炎さえも消えかけていた。そんな中、越中八尾観光協会を中心に異例の「おわら特別ステージ」が企画され、今年11月から開かれています。久しぶりに戻ってきた八尾の音、そして待ち望んだ人々の声をお届けします。

【制作意図】
「おわら風の盆」は、県民にとって秋の訪れを告げる行事であり音。その音が、雪国富山でこの時期に聞こえてくるのは異例のこと。「冬のおわら風の盆」とはそれほど馴染みのない言葉です。例年とは違った形での開催となった特別ステージにかける八尾に生きる人々の想い、そしてより多くの人におわらの音を届けたいと思い取材・制作しました。

【制作後記】
私も何度も訪れていますが、幅の狭い道沿いに、肩を寄せ合いながら鑑賞するのがおわらの景色でした。今回初めて開催されている特別ステージでは、室内で椅子に座ってゆっくり鑑賞できる他、踊りの講習やホールに響き渡る音色が特別な時間を演出しています。取材中、町の人からはこの2年間開催できていないことで「伝統が伝統ではなくなっている」という言葉を聞き、ハッとさせられました。新しいものを取り入れながら後世に継いでいく今この瞬間を、より多くの方に感じていただけたら嬉しいです。

木をかえて森をかえる

2021年12月13日~2021年12月19日放送 
東海ラジオ 報道制作局 第一制作部 山本俊純

【番組概要】
岐阜県恵那市で林業を営む「安藤林業」 安藤雅人社長。
安藤氏は本業の傍ら、自社にほど近い森林の伐採と植林の活動に取り組んでいます。
戦後、個人所有の森林の多くに、杉や檜の針葉樹が植えられました。それはもちろん、木材を売り収益を出すためですが、木材価格は下落、奥山の木々は採算が合わずに放置される結果となっています。針葉樹林は、広葉樹林と違い落葉しません。さらに、適切な間伐をしなければ土砂崩れの原因にもなります。奥山の針葉樹林の放置が山以外にも影響を及ぼす現状もあります。安藤さんは、その解決のために赤字覚悟の植林活動を続けている。安藤さんの活動に賛同する地元企業も出てきていますが、安藤さんの言う「100年先の森作り」は、まだまだ始まったばかり。今回は、その安藤さんの思いを 東海ラジオパーソナリティ小島一宏氏のインタビューとナレーションでお送りします。

【制作意図】
安藤社長の活動を取材するために初めて山を案内された際、印象に残った「森の足音」。麓から見れば、針葉樹も広葉樹も豊かな緑ですが、その山の性質は全く違うものです。安藤社長の熱い思いを聞くに連れ、森林保全が決して山のためだけでないことが強く胸に刺さる。これは、戦後の林業行政の問題にも切り込むことになります。この番組が、日本全国が抱える森林を取り巻く、環境・防災・行政・後継者問題などの課題を考える切っ掛けとなればと思います。

【制作後記】
今回は、印象的な「森の足音」と、安藤さんの声を中心に構成しました。安藤さんの話を聞けば聞くほどに、恵那市に限らず全国の森林が抱える課題が浮かび上がります。今回の番組に盛り込めなかった安藤さんの取り組みもまだまだあります。それも全て「100年先の森作り」のため。私自身も、安藤さんの熱意に胸を打たれました。今後も、継続取材を行っていきます。

2021年12月 2日 (木)

笑顔結ぶ、先生の食パン

2021年12月6日~2021年12月12日放送 
ラジオ関西 報道制作部  林真一郎

【番組概要】
神戸の中心・三宮から電車で東へ約5分。動物園やスポーツ施設、そして神戸有数のにぎやかな商店街がすぐ近くにある王子公園駅。駅前にある開店4年目の小さな食パン専門店が舞台です。今では地元をはじめ、電車や車で買い求めに来る人もいるなど、その味を求める人が増えつつあります。店主の山口孝裕さんは元高校の教師で、野球部監督や顧問として甲子園にも出場しました。その後、転職してプロレスの広報担当として勤務しますが、教え子との縁でパン作りを始め、3年前に独立しました。材料にはこだわり、使う素材はハチミツを除きすべて国産。卵やマーガリンも使っていません。毎朝4時半から、すべての素になる生地作りを始めます。無骨なミキサーの機械音。山口さんは「生地を作るミキサーでの作業こそがパン作りの基本で大事だ」と言います。開店後、次々に訪れる客、そして店を支える教え子たち。転職を重ねてたどり着いた、食パン作りにかける山口さんの思いを送ります。

【制作意図】
パンの購入額が全国で最も高いのが神戸市(総務省の家計調査2018~2020年)です。特に神戸の中心地繁華街である三宮や元町には、食パンをはじめとするパンの専門店が乱立。最近では郊外の住宅地にも次々に開店するなど、神戸だけでなく、兵庫県内全体が「一大パン激戦地」です。
そんななか、とある雑居ビルの1階で店を始めて3年となる小さな食パン店。   店主は元高校教諭。2度の転職を経てパン作りを始めました。新型コロナで世の中に閉塞感が漂うなか、下町の食パンからもらえる元気や笑顔を伝えたいと考え、企画しました。

【制作後記】
かつて担当していた番組で「朝はパンですか?ご飯ですか?」をテーマに、神戸市内でインタビューしたことがありました。約8割の方が「パン」と答え、にわかには信じられませんでしたが、その後、次々にパン専門店がオープンしているのをみると、改めて神戸の人はパンが好きなんだと納得させられました。「パン屋さん」は華やかな職場と思っていましたが、作る職人の作業は想像以上に大変だと実感。手作業はもちろん、思った以上に機械が活躍していて驚きました。ただ、機械に入れる素材や混ざり具合、温度・湿度管理などの細かい作業などは、やはり人の目や手がないとできない、そこに機械が合わさって、初めておいしいパンが生み出されると思いました。神戸にあるたくさんのパン屋さんで、きょうも生地をこねるミキサーの音がしている、この音こそが朝の食卓を支えている、そう思うと、食パンの味がより一層、おいしく感じられるようになりました。

 

おばあちゃんの味 かんばもち

2021年11月29日~2021年12月5日放送 
高知放送 ラジオ制作部 手島伸樹

【番組概要】
高知県東部に位置する北川村。村の基幹産業はゆず。幕末の志士、中岡慎太郎が生産を奨励したと言われています。この時期、村はゆず収穫の最盛期を迎えますが、同時に、「かんばもち」作りも始まります。岡島精米所がルーツと言われる「かんばもち」はサツマイモと餅米、砂糖を混ぜた甘いお餅。寒くなるこの時期からの村の代表的な味です。岡島和子さん(78歳)をメインにかんばもち作りに精を出す村の人々の様子を切り取りました。収穫したサツマイモの皮をはぎ、薄くスライスして干す。洗ったイモと餅米を蒸し、砂糖を加えて練り上げればかんばもちの完成です。昔と何にも変わらない「かんばもち」作りは北川村の冬の風物誌です。

【制作意図】
高知県の冬の味覚(おやつ)として、東の「かんばもち」と西の「東山」があります。どちらもサツマイモを使っていますが製法はまったく違うもの。中でも「かんばもち」は北川村の岡島精米所がルーツと言われており、今も岡島和子さん(78歳)を中心に作り続けています。番組ではふるさとの味である「かんばもち」作りの音をメインに構成していますが、仲良く作業しているおばあちゃん達の笑い声、よもやま話の雰囲気が昔はどこにでもあった地域の絆のように思い、制作しました。

【制作後記】

番組内でも笑い声がよく入っていますが、とにかく岡島和子さんは笑顔が似合うおばあちゃん。ですから和子さんの周りには自然と人が集り、そこには笑いが絶えません。”風物誌”と聞くと、伝統的な催しや地域独特のものを想像しがちですが、実はこうした何気ない集まりが、昔はどこでも見られた光景だなと改めて思いました。番組は「かんばもち作りが冬の風物誌」と締めていますが、実は岡島さん達の
笑い声が絶えない集まりこそが北川村の風物誌なんだと再認識しました。

 

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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