« 2022年2月 | メイン | 2022年4月 »

2022年3月

2022年3月29日 (火)

「東京ジャーミィ」多文化共生社会・東京のイスラム教寺院

2022年4月4日~2022年4月10日放送 
文化放送 コンテンツディベロップメント部 髙橋隆真

【番組概要】
日本には現在約20万人ものイスラム教徒がいると推定されており、そのうち約3万人が東京に住んでいると言われています。全国で110箇所以上あるイスラム教寺院(モスク)のうち、最大級のものが、東京都の渋谷区にある『東京ジャーミィ』です。1938年に設立された東京の伝統あるモスクです。本作では、イスラム教の集団礼拝の日である金曜日にお邪魔し、「東京ジャーミィ」の広報担当の日本人イスラム教徒の下山さんや、礼拝に来ていた人たちへのインタビューをイスラム教の礼拝の神聖な[音]と共にお届けします。

【制作意図】
私は、東京出身ではなく、大学進学を機に上京しました。そんな私が、東京で過ごしている中で強く感じていたのは、「沢山の文化・宗教・国籍の人々が共生する都市」であるということでした。東京にはイスラム教寺院だけでなく、ユダヤ教の教会もありますし、タイ仏教の寺院だってあります。もちろん神社もたくさん。東京で生まれた日本人にとって、東京が“故郷”であれば、私を含め様々なバックグラウンドを持った人たちにとっても“第二の故郷”であるはずです。ですが、このような人たちに偏見を持っている人も多いのが現実です。それはやはり、メディアの責任もあると思います。「起こった出来事」を伝えることは我々の役割ではありますが、それだけでなく「日常」を伝える時間があっても良いかなと思います。まずは、イスラム教寺院の日常の音を聴いてもらって、興味を持っていただければ、少しでも優しい気持ちになっていただければと思います。

【制作後記】
これだけ多くの民族・言語・文化を持った人たちが集まるところは初めてで、驚きました。礼拝に来た方だけでなく、見学に来た大学生、結婚相手を探しに来た人、いろんな人が集まって、「アッサラーム アライクム」「ワライクム サラーム」(アラビア語/イスラム教徒共通の挨拶)と、コミュニケーションを交わす光景は非常に印象的でした。音声だけでは伝えきれませんでしたが、「東京ジャーミィ」はトルコ風の建築で見た目も非常に美しいです。「東京ジャーミィ」広報担当の下山さんをはじめ、ここにいる方々は親切に接してくれますので、是非行ってみてください。


市電の呼吸に全集中

2022年3月28日~2022年4月3日放送 
熊本放送 ラジオ制作部 中村レン

【番組概要】
熊本市電が登場したのは98年前。地元の私たちには欠かせない交通手段のひとつです。
コロナで外出自粛になるまでは、この市電に年間300日以上乗ってきたという中村弘之さん(85)は、毎回独自の「乗車メモ」を取り、運転士の名前とともにその運転技術やアナウンスなど「勤務評定」的なものをつけています。この中村さんがある日出会ったのが「いつ止まったか分からないくらいのブレーキ技術」をもった江崎運転士。他にも「カーブの帝王」や「新幹線並みのスムーズな発車」など職人肌の運転士が揃っています。およそ100人いる運転士は、乗客の安全と快適さのために日々技術を磨いていました。日頃気づくことがない「当たり前の安全」に力を尽くす運転士。100年近い歴史のなかで脈々と受け継がれている運転士の誇りが垣間見えます。

【制作意図】
きっかけは地元新聞の読者の投稿欄。番組にもご出演いただいた中村弘之さんの「びっくりするほどブレーキがうまい運転士がいる」というものでした。市電に乗るお客さんの事情は様々。お年寄りはもちろん、その日具合が悪い人もいます。足が悪くても席がなく立っている人もいます。そんな人たちのために可能な限り優しい運転をしている運転士と、そこに気づいた乗客。見えない交流が素敵だなと思いました。中村さんの投稿が載った後、別の高齢女性からも「その運転士は私も知っています。本当に静かに止まるのです。」というメッセージが新聞に掲載されました。これはホンモノだ!と思って取材しました。


【制作後記】
市電に慣れ親しんでいる熊本市民にとっては、空気ブレーキの音にはなじみがあり、情景がありありと浮かぶのですが、市電が走っていない地域に暮らす人たちにどこまで想像してもらえるだろう?という点に悩みました。乗客の命を預かっている運転士が目指しているのは「安全であたりまえ」を超える快適さ。それが一か所ごとの停留所や信号での優しい停車や揺れのないカーブ、それに静かな加速につながっています。取材後、すっかり市電のファンになった私は、休日など日に3~4回乗車し、そのたびに運転士の名札を確認するようになってしまいました(笑)

 

春を告げる馬踊り~鹿児島神宮・初午祭

2022年3月21日~2022年3月27日放送 
南日本放送 ラジオ部 馬場 薫

【番組概要】
毎年、旧暦1月18日午の日を過ぎた最初の日曜日に行われる鹿児島神宮の「初午祭」は、室町時代から続いている伝統行事です。国指定の無形民俗文化財で、例年10万人を超える見物客で賑わいますが、昨年はコロナ禍のため神事のみが執り行われました。この「初午祭」で毎年、先頭をきって奉納する御神馬は、加治木町木田地区の馬がつとめています。一番馬にかける集落の人々の思いを、祭りの音とともに紹介します。

【制作意図】
新型コロナウイルスにより、多くのイベントや伝統行事が中止となる中、今年の「初午祭」は規模を縮小しての開催となりました。その華やかさと馬の元気な姿に、地元の人々は春の息吹を感じるのです。関わる人々の熱い思い、祭りの躍動感を伝えたいと思い、テンポよくまとめるよう工夫しました。

【制作後記】
有名なお祭りですが、実際にその場で見たのは初めてでした。コロナ禍では、これまで当たり前にあったことのありがたさをあらためて知ることになりましたが、時代を超えて、世代を超えて地域に息づく文化を継承していくことの大切さ、祭りができる平和な日常…いろんなことを記録していくことが私たちの使命なのだと、あらためて感じるひとときとなりました。                    


2022年3月16日 (水)

良い音出すなら皮を張れ!三味線の生命線

2022年3月14日~2022年3月20日放送 
KBS京都 ラジオ編成制作局制作部 大坪右弥

【番組概要】
京都は祇園にある「松崎三弦店」は、三味線の販売・修理を180年以上になってきたお店です。歌舞伎、長唄、民謡など様々な文化と共に発展してきた日本の伝統的な音楽に欠かせない楽器、三味線。そんな三味線は「天神」(糸倉)、「棹」(ネック)、「胴」(ボディ)で構成されているのですが、「胴」の修理が多いと言います。「胴」には四角い木の枠に犬や猫の皮が張られているのですが、皮の自然な伸び縮みはもちろん、天気に左右されて音が悪くなったり、緩んだり、破れたりします。そんな皮に向き合っているのが、6代目松崎善之さん。お客様の要望に合わせて皮の張り具合を変えていく様子や音を聞き分ける繊細で緻密な仕事に迫りました。

【制作意図】
木の枠を削る音と皮の表面を削る音、木栓を打つ音と楔を打つ音、張る前の皮を叩く音としっかりと張れた皮を叩く音、三味線のチューニングと演奏している音・・・。似ている音でも素材や重さや張れ具合などで大きく変わってくるという違いを感じてもらえるように制作しました。また、音を聞き分ける繊細な仕事の様子や6代目松崎善之さんの思いも合わせて伝えたいと思いました。

【制作後記】
「お客様が演奏して良い音を奏でるまでが修理」という思いを持って三味線に向き合っているように感じました。お客様の要望に合った三味線の状態に仕上げていくための繊細な作業とそれを見極める眼差しには緊張感がありました。また、皮の張り替え過程を音声だけで伝える事に試行錯誤しましたが、三味線の修理にはたくさんの音に溢れていたのが意外でした。

沖縄のそばにいつも三線を

2022年3月7日~2022年3月13日放送 
ラジオ沖縄 制作報道部 當銘真喜子

【番組概要】
那覇市泊にある「沖縄そば すぅ~ぎぃ~じぃ」。お店の中を見渡すと、店内の至る所に三線が置いてあります。実はこの三線は、お客さんが注文の際に鳴らして、店員に合図を送る呼び鈴の役割をしています。ポロロンと鳴る三線の音がお店の中で響いてくるという一風変わった取り組みをしている沖縄そば屋の店主に三線への想いを伺いました。

【制作意図】
店内に入ると家族連れ、カップル、友人、観光客などそれぞれが思い思いに鳴らす様々な三線の音が聞こえてきます。ちょっと恥ずかしそうに鳴らす人、しっかりと弦を弾いて1音1音響かせる人、初めて三線を鳴らす人、地元のおじい・おばあが弾く演奏に合わせてカチャーシーを踊る人など沖縄の文化をすぐそばに感じられる場所です。実際に三線に触れることができるということで県内でも珍しいスポットです。三線の良さを1人でも多くの人へ伝えるべく、斬新なアイデアを採用した店主の三線への熱い想いを綴りたいと制作しました。

【制作後記】
お店のあちらこちらに店主の三線への愛があふれていて、三線を店内に置き呼び鈴にすること以外にも、店名を古典音楽の歌詞から名付けたり、店内BGMに古典音楽を流していたりなど様々な角度から魅力を伝えていたところに心惹かれるお店です。そして、インタビューに答えてくれたお客さんたちの三線を鳴らせて楽しいという姿が印象に残っています。沖縄では学生の頃に授業などで三線を弾くという学校もありますし、三線教室に通っている人もいますが、私はそういった経験をしたことがありませんでしたので、そんな県民にとっても新鮮な経験ができる場所だと思います。取材を通して、改めて沖縄のことが大好きな自分にも気づかされました。

いつでも、いつまでも食べたい お母さんの焼きそば

2022年2月28日~2022年3月6日放送 
青森放送 制作局ラジオ制作部 工藤凪紗

【番組概要】
青森県青森市。この街では市民にひそかに愛され続けているソウルフードがあるんです。それは…焼きそば!今回は50年前から続けている「焼きそば 後藤」を取材しました。雪の中、重い扉を開けると二代目店主の毛利久美子さんが出迎えてくれました。久美子さんはお客さんから「お母さん」「ママ」と呼ばれ親しまれています。そんなお母さんが作るメニューは「焼きそば」と「卵焼きそば」の2つのみ。人気なのは、卵焼きそば!キャベツとお肉を焼き、中太ストレート麺とこだわりの自家製のソースを絡め、その上にカリカリに焼いた薄焼き卵を乗せたら完成です!!油と卵がはじける音はお客さんに「魅惑の卵」と称されるほど魅力的な音。美味しい焼きそばとお母さんの明るいキャラクターを音でお届けします。

【制作意図】
県外出身の私。青森の食べ物と言えばりんご、せんべい汁、マグロなどのイメージでした。しかし実際に青森県に住んでみると、煮干しラーメンや味噌カレー牛乳ラーメン、つゆ焼きそば などなど麺類が多いこと!特に青森市では焼きそばが有名だということを会社の先輩方から教わりました。お店によって味つけや麺の太さなどバリエーションが豊かな青森市の焼きそば。青森市民には、お気に入りの焼きそば屋さんが人それぞれあり、中には子供の頃から50年間通い続けている方もいらっしゃるのだそうです。そんな青森市民にとってソウルフードと言っても過言ではない焼きそばの魅力と、中でも「お母さんに会いに来ている」と店主が魅力的な焼きそば後藤を取材し、愛され続けている理由を伝えたく、今回制作しました。

【制作後記】
取材をしていて印象的だったのは、お店の重い扉を開けづらく苦労している人がいたら、協力し合って開けていたり、お店の対応で出来上がりが遅くなったりしても怒ることなく待っているお客さんの姿。
焼きそば後藤の店主、久美子さんは「うちのお客さんは本当に良い人たちばかり」と話していましたが、どんなときも元気に明るく働いている久美子さんを見ているときっと久美子さんのお人柄がそうさせているのではないかと思いました。久美子さんの大盛りの焼きそばと笑顔に、きっとごちそうさまを言うころにはちょっぴり笑顔になっているはずです。そんなお客さんとお母さん、久美子さんの関係性も伝われば幸いです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

ブログ powered by TypePad