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2021年9月

2021年9月27日 (月)

ブリかな、タイかな、タイじゃい!タイじゃい!~唄が育む郷土愛~

2021年9月13日~2021年9月19日放送 
大分放送 OBSメディアワーク コンテンツ制作部 尾上 裕明

【番組概要】
大分市の東部に位置する佐賀関。沖合の豊予海峡は好漁場として知られています。早い潮の流れは身のしまった海の魚を育み、とくにアジとサバは「関アジ」「関サバ」としてブランド化され、全国に向けて発送されています。この港町「佐賀関」に元禄時代から伝わる「関の鯛つり唄」。古くは漁師たちによって唄われ、その後、振りもつけられ、佐賀関の民謡として大切に受け継がれてきました。関の鯛つり唄保存会の舞踊部長である岩津千津代さんは、この唄を、踊りと共に次世代の心と身体に伝承しています。

【制作意図】
ある日、テレビを見ていると、全国各地の様々な伝統行事が今年も中止になるというニュースが流れていました。その時、これらの伝統行事の伝承活動はどうなるのだろうか…とふと思いました。コロナ禍で伝統を受け継ぐという行為も難しくなる中、工夫をして伝えようとしている人たちもいるはずだと、取材対象を探しました。大分県にも様々な伝統行事がありますが、こんな時代だからこそ、明るくエネルギッシュなものをテーマにしたいと考えていたところ、この唄と出会いました。

【制作後記】
タイトルの通り、少しユニークな掛け声が印象的なこの「関の鯛つり唄」。鯛が釣れた漁師の喜びを表す「タイじゃい、タイじゃい」の掛け声を懸命に出す子供たちがとても微笑ましく、取材中、私自身元気をもらっていました。しかし、子供たちは小学生くらいの年頃になると、照れを感じ始め「タイじゃい、タイじゃい」の掛け声がだんだん小さくなると聞き、その話もまた微笑ましく思いました。照れはあったとしても、取材当日の子供たちの表情は真剣そのもので、しっかりと伝統の重みを感じ、郷土への愛情を持っていることを証明していました。

2021年9月 6日 (月)

えち鉄に笑顔をのせて~ふるさとへの恩返し~

2021年9月6日~2021年9月12日放送 
福井放送 報道制作局制作部 藤井友香

【番組概要】
 
福井県嶺北を走る「えちぜん鉄道」は、「えち鉄」の愛称で県民に親しまれています。福井市中心部の福井駅を拠点に、九頭竜川に沿って山間部を走る「勝山永平寺線」と、芦原温泉を経由して、東尋坊がそびえる日本海側に向かう「三国芦原線」からなります。利用客の多くが高齢者で無人駅も多いことから、通勤時間帯を除くほぼすべての列車に、アテンダントと呼ばれる女性乗務員が乗車し、切符の販売や観光案内、乗り降りの補助などを行っています。アテンダントの一人、猪部 光留(いのべ・ひかる)さんは入社3年目。東京での学生生活を経て、高校時代に毎日利用していた「えちぜん鉄道」を通して、ふるさとへの恩返しがしたいと就職を決めました。そんな猪部さんの「ステキな笑顔とおもてなし」の原点は、高校時代に所属していたチアリーダー部にありました。コロナ禍での変化や葛藤を抱える中で、高校時代の恩師の言葉を胸に、アテンダントに励む姿をお送りします。

【制作意図】
 
コロナ禍で移動が制限される中、「えちぜん鉄道」で働く方の思いを届けたいと取材を始めました。そこで出会ったのが「アテンダント」と呼ばれる女性乗務員です。アテンダントは車掌とバスガイドの中間のような役割で、お客さんに寄り添った「おもてなしの心」を大切にしています。移動が制限され、人との触れ合いが少なくなる中、お客さんと電車をつなぐアテンダントの姿に「コロナに負けない!」という強い気持ちを感じました。猪部さんのチアリーダー仕込みのハツラツとした声や明るい表情、車窓の景色などを通して「えち鉄」のほのぼのとした空気感を音で伝えられたらと思い、制作しました。

【制作後記】
 
田園風景の中を走る1両編成の電車。乗ってみると、当たり前ですが天候や季節によって見える景色が違います。取材をしたのが季節の変わり目ということもあり、セミの鳴き声が小さくなっていたり、稲刈りが始まり、トンボが飛び始めていたりと、違った風景を見ることが出来ました。乗車中、猪部さんが笑顔で「最近、空が高くなってきましたね」「ここ、秋の花が咲いてるんですよ」と話しかけてくれることがありました。車内の空間はもちろん、車窓から見える景色も含めて「えち鉄」のことが心から好きなのだと感じました。電車とすれ違う時、猪部さんが窓ガラス越しに手を振ることがありました。馴染みのお客さんが目を合わせてくれたので手を振って挨拶をするんだそうです。体を揺らしながら、全身で嬉しさを表現する猪部さんの姿に心が温かくなりました。
 

刃物全般お任せあれ~野鍛冶職人の誇り

2021年8月30日~2021年9月5日放送 
四国放送 ラジオ局ラジオ編成制作部 近藤英之

【番組概要】
日常生活で使う包丁や農具、山林工具などを作る職人は「野鍛冶」とも呼ばれます。徳島県勝浦町の鍛冶職人、大久保喜正さん69歳。半世紀に渡って野鍛冶の道を歩んできました。包丁ひとつとっても、包丁の本体に当たる軟鉄と刃(やいば)になる鋼を叩いて一体化させる「鍛接」という作業に始まり、槌で叩いて出刃や柳葉、刺身など様々な形に形成するなど昔ながらのやり方を踏襲しています。一方で古くなったクワやスキなどの農具の修理も広く手掛けています。徳島県南部は全国有数のタケノコの産地とあって、タケノコ掘り専用のクワの修理の注文も数多く舞い込みます。土壌の固さの違いや、使う人の年齢や癖によってクワの角度や長さが異なってくるため、微妙な調整が欠かせません。市販品にはない、きめ細かな対応に県内はもとより全国にファンがいるといいます。大久保さんは2018年、卓越した技能を持つ技術者として、国から「現代の名工」に選ばれました。大久保さんが考える「もの作り」とは何かをマイクで追いました。

【制作意図】
大久保さんに「技術の確かさ」とは何かと尋ねた時に帰ってきた答えは「器用な人が作る道具が必ずしも良い道具ではない。正解に1ミリでも近い方に一生懸命寄っていく人が作った道具が結果的に良いものになる」というものでした。そして「使う人が刃物をどう使うか」を一生懸命イメージすることの大切さが肝心だと言います。そんな野鍛冶職人の思いを少しでもマイクで伝えられたらと思い、取材に取り組みました。

【制作後記】
大久保さんの工房で、完成した包丁を使って試しにキュウリを切らせてもらった時、力を入れてないのにスッと刃が入り、断面は瑞々しさで光っていました。野菜の繊維質が押されて潰れるのではなく、断ち切られているので切ったあとの鮮度が市販の包丁とは全く違うそうです。今回の取材で、野鍛冶職人の技術の素晴らしさと誇りに触れた思いがしました。

未来につなぐ鉦の音 ~花輪ばやし 想いの伝承~

2021年8月23日~2021年8月29日放送 
秋田放送 編成局ラジオ放送部 井谷 智太郎

【番組概要】
秋田県北東部、鹿角市花輪地区に800年余り続く花輪祭の屋台行事「花輪ばやし」。日本三大ばやしの1つとされ、屋台は豪華絢爛、引退制を設けているのが特徴で男性の数え年42歳がそれにあたります。番組では、花輪ばやしの長い歴史の中で、旭町という町内で正式に引退した女性を取材。花輪ばやしのお囃子は太鼓、三味線、篠笛、摺り鉦で構成され、彼女はすべての楽器を使いこなせるとは言うものの、オーケストラの指揮者にあたる役目の摺り鉦を任せられるのは珍しいといいます。技術の継承にはこれまで取り組んでいましたが、少子化による担い手不足と新型コロナウィルスによる祭り中止の2重苦。苦肉の策で、祭り本番の雰囲気を少しでも再現したい思いで開催された月1回のイベント「花輪ばやし 実演披露」。師匠からの直接指導により培う演奏の感覚は、祭りの本番を重ねなければ身に付きません。祭りの熱は地域の人々の心をひとつにしてきました。卒業してから見えた祭りの景色、祭りが開催されない街の景色を見てきた彼女が、いろいろな新しいカタチを模索しながら伝承しようとする花輪ばやしへの想いに迫りました。

【制作意図】
花輪ばやしの主役は屋台とお囃子です。お囃子の太鼓は幼少期から習い、その後師匠から三味線や笛を習って技術を磨いていきます。取材を重ねるごとに、お囃子の1つ摺り鉦の重要性に気づかされました。見物客の盛り上がりを観察し、お囃子全体を鉦のリズムでコントロールする役目があるため、演奏技術だけではなく町内の人からの信頼も必要とされます。その町内で初めて鉦を任された女性が、少子化とコロナ禍による祭り中止の現実に向き合い葛藤する花輪ばやしへの想いを紹介することで、花輪地域の良さ、何かを残すためには何かを犠牲にせざるを得ないのか、先人たちが大事に継承してきた祭りの未来について考えるキッカケになればという思いで制作しました。

【制作後記】
花輪ばやしの主役は屋台とお囃子です。お囃子の太鼓は幼少期から習い、その後師匠から三味線や笛を習って技術を磨いていきます。取材を重ねるごとに、お囃子の1つ摺り鉦の重要性に気づかされました。見物客の盛り上がりを観察し、お囃子全体を鉦のリズムでコントロールする役目があるため、演奏技術だけではなく町内の人からの信頼も必要とされます。その町内で初めて鉦を任された女性が、少子化とコロナ禍による祭り中止の現実に向き合い葛藤する花輪ばやしへの想いを紹介することで、花輪地域の良さ、何かを残すためには何かを犠牲にせざるを得ないのか、先人たちが大事に継承してきた祭りの未来について考えるキッカケになればという思いで制作しました。

イルカにもらった やさしい時間

2021年8月16日~2021年8月22日放送 
北陸放送 ラジオ開発部 中川留美

【番組概要】
七尾湾は、日本海に飛び出た能登半島が能登島を抱えるような形の内湾です。冬でも波が穏やかな七尾湾に野生のミナミバンドウイルカが棲んでいます。野生のミナミバンドウイルカの出現地としては最北端の場所、珍しいことに1つの家族としてイルカが生息しています。20年前、2頭の野生イルカが最初に棲みついたころ、イルカに出会った坂下さとみさん。幼い孫と二人で生活していくことに不安を抱えていた坂下さんにイルカが生きる力を与え、新しい人生の一歩を踏み出すきっかけとなりました。多くの人が元気になり、気持ちが癒される時間を過ごしてもらいたいという思いから、4年後、イルカに初めて会った能登島の海沿いの場所でカフェを開き、イルカウォッチング、ドルフィンスイムのガイドを行っています。人生で挫けそうになったときに救ってくれたイルカ達は坂下さんにとって家族のような大切な存在。イルカたちの行動を見守り続けた坂下さんの思い、大好きなイルカたちと対話しながら暮らしている様子を取材しました。

【制作意図】
人が誰かとの出会いによって人生が変わっていくように、偶然の野生イルカとの出会いが一人の女性の人生を大きく変化させました。生きる力を与えたイルカたちと20年に渡って、成長を見守り続けた坂下さんとの間に響き合う感覚をエピソードを入れながら、音で表現したいと思いました。

【制作後記】
毎朝、坂下さんはイルカたちの姿を探して、能登島の入り江のあちこちを回り、イルカたちを見つけると必ず、イルカたちに声をかけている姿は、愛しい家族を見ているようでした。その坂下さんの言葉が聞こえているかのように、イルカたちが息を吐きながら空気の輪を作ったりジャンプをしたり、ヒレを使ってバシャバシャと音を立て応えている様子は、お互いの気持ちが分かっているかのようでした。坂下さんとイルカたちとの時間に心を和ませてもらいました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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