えち鉄に笑顔をのせて~ふるさとへの恩返し~
2021年9月6日~2021年9月12日放送
福井放送 報道制作局制作部 藤井友香
【番組概要】
福井県嶺北を走る「えちぜん鉄道」は、「えち鉄」の愛称で県民に親しまれています。福井市中心部の福井駅を拠点に、九頭竜川に沿って山間部を走る「勝山永平寺線」と、芦原温泉を経由して、東尋坊がそびえる日本海側に向かう「三国芦原線」からなります。利用客の多くが高齢者で無人駅も多いことから、通勤時間帯を除くほぼすべての列車に、アテンダントと呼ばれる女性乗務員が乗車し、切符の販売や観光案内、乗り降りの補助などを行っています。アテンダントの一人、猪部 光留(いのべ・ひかる)さんは入社3年目。東京での学生生活を経て、高校時代に毎日利用していた「えちぜん鉄道」を通して、ふるさとへの恩返しがしたいと就職を決めました。そんな猪部さんの「ステキな笑顔とおもてなし」の原点は、高校時代に所属していたチアリーダー部にありました。コロナ禍での変化や葛藤を抱える中で、高校時代の恩師の言葉を胸に、アテンダントに励む姿をお送りします。
【制作意図】
コロナ禍で移動が制限される中、「えちぜん鉄道」で働く方の思いを届けたいと取材を始めました。そこで出会ったのが「アテンダント」と呼ばれる女性乗務員です。アテンダントは車掌とバスガイドの中間のような役割で、お客さんに寄り添った「おもてなしの心」を大切にしています。移動が制限され、人との触れ合いが少なくなる中、お客さんと電車をつなぐアテンダントの姿に「コロナに負けない!」という強い気持ちを感じました。猪部さんのチアリーダー仕込みのハツラツとした声や明るい表情、車窓の景色などを通して「えち鉄」のほのぼのとした空気感を音で伝えられたらと思い、制作しました。
【制作後記】
田園風景の中を走る1両編成の電車。乗ってみると、当たり前ですが天候や季節によって見える景色が違います。取材をしたのが季節の変わり目ということもあり、セミの鳴き声が小さくなっていたり、稲刈りが始まり、トンボが飛び始めていたりと、違った風景を見ることが出来ました。乗車中、猪部さんが笑顔で「最近、空が高くなってきましたね」「ここ、秋の花が咲いてるんですよ」と話しかけてくれることがありました。車内の空間はもちろん、車窓から見える景色も含めて「えち鉄」のことが心から好きなのだと感じました。電車とすれ違う時、猪部さんが窓ガラス越しに手を振ることがありました。馴染みのお客さんが目を合わせてくれたので手を振って挨拶をするんだそうです。体を揺らしながら、全身で嬉しさを表現する猪部さんの姿に心が温かくなりました。
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