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2018年8月

2018年8月29日 (水)

プールの思い出は静岡おでんとともに

2018年8月27日~2018年9月2日放送 
静岡放送 ラジオ局編成部 鈴木保

【番組概要】
静岡県のソウルフード「静岡おでん」。今ではB級グルメとして全国的に認知されるようになってきましたが、静岡市民にとって静岡おでんは夏休みの思い出の一つでもあります。静岡県静岡市にある大浜プールの目の前には駄菓子屋さんが並び、夏休みになると子供たちで毎年賑わいます。静岡市民は暑い夏、プールに入ったあとに静岡おでんを食べるんです。静岡の大浜プールの目の前にある駄菓子屋さんでどんなやり取りがあるのか、プールのあとに静岡おでんを食べる文化が今も続く様子をお聞きください。

【制作意図】
全国的に「おでん」といえば冬の食べ物ですが、静岡おでんは、夏のプールの後にも食べられてきました。今でもおでんを食べる文化が残っている理由は何か?今の小学生が大浜プールに行っておでんを食べている光景は、他の地域の方が見たら変わった光景ですが、静岡にはおでんの味が夏のプールの思い出とともに思い出される光景を伝えたいと思いました。

【制作後記】
私は静岡出身で、静岡おでんの事はある程度知っているつもりでしたが、取材を通して知る事も多くありました。今回は大浜プールで食べる静岡おでんに着目しましたが、大浜以外にも観光客向けに静岡おでんのお店が新たに開店しています。今回の番組を通して、県外の方に静岡おでんの魅力が伝わって欲しいのは勿論ですが、静岡の人にこそ、当たり前だからこそ意識しない静岡おでんの魅力を再認識してもらえればと思っております。

ふるさと・広島フォーク村~あの日も、今も、これからも~

2018年8月21日~2018年8月26日放送 
中国放送 ラジオ局ラジオ制作部 大森美空

【番組意図】
今から50年前、日本が高度経済成長期の真っただ中にあったころ。
広島に『広島フォーク村』という音楽を愛する若者たちの集いが存在しました。後にスターとなる吉田拓郎氏、浜田省吾氏もアマチュア時代に「村民」のひとりだったフォーク村。ピーク時には400名の村民が在籍し、コンサートを開催するたびに満員の観客を集めていましたが、人気絶頂の中、わずか2年で解散を選びます。村民にとって、フォーク村とはどんな居場所だったのか?たった2年きりの居場所だったのか?フォーク村年少メンバーだった竹本さんにお話を伺いました。

【制作意図】
「『広島フォーク村』いうんが、あったんよ。」・・・村?どこに?フォークソングってそもそもなに?音楽も広島もまだまだ知識が浅い私にとって、フォーク村は未知の世界。知れば知るほど、聴けば聴くほど今の私と同世代である、50年前の村民たちの熱い想いに心打たれ、ここ広島にフォーク村がったことを伝えたいと感じました。自分の青春をふと振り返りたくなるような内容になっていればと願います。

【制作後記】
ナレーション担当のアナウンサーも私も、平成生まれ。レコードは入社するまで触ったことも、見たことすらありませんでした。竹本さんにレコードプレーヤーの使い方を教えていただき、おどおどしながら針を落とした後の「プツプツ・・・」、そして流れ始めたイントロには鳥肌が立つような感動がありました。そんな私たちの隣で目頭を押さえながら音楽に耳を傾ける竹本さんの姿も、とても印象的でした。形ある場所だけがふるさとではないのだと、一音一音、歌詞の一行一行をなぞりながら、感じました。

2018年8月10日 (金)

たまにはぼんやりしませんか?

2018年8月13日~2018年8月19日放送 
秋田放送 ラジオ制作部 加賀屋晃太

【番組意図】
秋田県男鹿市船川港にあるお寺、大龍寺。
日本海と奥羽山脈を望むこともできる歴史ある日本庭園では、四季折々の趣のある風景を楽しむことができます。お寺離れが進む中、大龍寺では独自の取り組みを行って、気軽にお寺に足を運んでもらえるよう取り組んでいます。ある日、大龍寺の住職 三浦賢翁(けんのう)さんが訪れたのは秋田市の歓楽街にあるビル。ここでは月に1度、お坊さんを招いて一緒に一般客とおしゃべりをするイベント『ぼんやりバー お坊さんといっしょ』が開かれています。鐘の音や、寺に流れる湧水の音などお寺にある様々な音に耳を傾けてぼんやり。『ぼんやりバー』でお坊さんとお話しながらぼんやり。

忙しい世の中、たまにはぼんやりしませんか?

【制作意図】
もともとは『ぼんやりバー』の取り組みを知ったことがきっかけで、大龍寺に取材に行きました。すると、お寺ならではの豊富な音や、ユニークな取り組みをしていることがわかりました。その取り組みや、『気軽に足を運んでほしい』という住職の思いを多くの人に知ってもらうべく制作にあたりました。

【制作後記】
正直なところ、取材がなければお寺に足を運ぶことも少ないままだったかと思います。しかし、実際に訪れてみると豊かな自然や、独特のゆったりした時間に魅了されました。番組中には盛り込めなかったのですが、早朝の坐禅会にも参加してきました。坐禅と言えば、警策という、肩を『バシッ』とたたく平たい棒のイメージがありますが、初体験してみると音のイメージよりも重い一撃が…おかげで日ごろの業務もシャキッと頑張れそうです。ぜひお試しください。

 

希望の鐘

2018年8月6日~2018年8月12日放送 
熊本放送 ラジオ局ラジオ制作部 久島健一

【番組概要】
熊本県合志市にある国立ハンセン病療養所菊池恵楓園の鐘。
強制隔離政策の中にあっても病気を治し、ここを退所されていった人たちがいました。
昭和26年から、鐘が老朽化する昭和40年代まで、退所者が園を出て行くときに打ち鳴らされていたそうです。高さ22mの塔に設置されていたこともあり、その近辺の方たちからすると一つの風物詩でもあったようです。その鐘が昨年復元され、また鐘の音がよみがえったのですが、当時の「希望の鐘」の持つ意味とは、入所者の方は現在は意味合いが違うと感じられていました。
その話を、広大な菊池恵楓園の鐘の前で、一度、社会復帰され、その後、病気の再発で園に戻らなければならなかった方に、見送られる側と見送る側の気持ち、そして、復元された鐘の音を聞いてどう聴こえるかを伺いました。

【制作意図】
国立ハンセン病療養所菊池恵楓園に昔存在した、社会復帰される人を見送る時に鳴らされていた「希望の鐘」が復元されたと言う話を知りました。この4月に10年ぶりにラジオ局に異動してきて、どこの放送局もそのことを取り上げていないことを知り、これを伝えるのはラジオの役目だと感じたのがきっかけでした。番組の尺の問題で伝え切れていない部分はありますが、「音」というものは、その時の状況、立場、様々な要因で「同じ音も違う風に聴こえる」と言うことを、苦労された元ハンセン病患者の言葉と共に、リスナーの皆さんと共有できればと思い制作しました。

【制作後記】
音数が多いほうが番組の趣旨には合うのかと思いましたが、最後まで迷い最終的に「自分が純粋に伝えたいことをやろう」と言う思いでこのテーマにぶつかることにしました。
軽々には扱えない内容ですので、マイクを持たず元患者さんのところに通い、納骨堂から、全宗派の仏壇が並ぶ葬儀場、誹謗中傷の葉書、目に見えるものは全て見せて頂いた上で、「希望の鐘」の話をうかがうことが出来ました。広大で自然豊かな静寂の中にある施設ですので、鐘以外目立った音はありませんが、広大な中にある「静寂」を録れればいいと思い、番組の中に封じ込めたつもりです。
私自身、勉強になりましたし、ラジオがこうやって伝えていくべきものがまだまだあるのではないかと感じることができる番組制作となりました。

なんでもないからなんでもある~里山の食堂繁盛記

2018年7月30日~2018年8月5日放送 
信越放送 ラジオ局編成制作部 小森康夫

【番組概要】
長野市南西部、信州新町の山間部に位置する信級地区。かつては信級村として人口1,300人余りが暮らし、小学校も郵便局もあったこの地区は近年過疎化が進み、人口は120人余りに減少し、学校も廃校になるなどいわゆる「限界集落」と呼ばれるようになってしまいました。しかし山野の恵みと勤勉な村の人々の耕作による農産物の生産がもたらす確かな地域づくりが徐々に都市部からの新たな移住者を引き付けている地域として注目を集めつつあります。ここに昨年、一軒の食堂がオープンしました。元の精米所で土壁の誰も使っていなかった建物を借り受け、地元の人々の手と知恵を借りて「食堂かたつむり」として改装、、営業を始めたのが、長野市の出版社オフィス・エムの代表取締役・寺島純子さん。寺島さんは信級の出身ですが、子供の頃に引っ越してしまって以来、信級には親戚演者が残るのみ、という関係でしたが、「中山間地域の可能性を探りたい」と出版業の傍ら、信級に通い、自ら調理場に立ち、料理を提供したり、ユニークなイベントを様々企画し、信級へさらに人々の関心を引き付けるべく奮闘しています。

【制作意図】
山岳県である長野県。人口は他県同様、都市部へと移動、集中し、残された中山間地域には高齢者が暮らすのみ。店舗や行政機関は撤退し、インフラや山林の整備も住民任せ。いざ災害が発生すると、数少ないアクセスが寸断され「孤立化」するなど、様々な悪循環が生まれています。しかし信級地区の人々は昔からの人と人のつながりを大切にし、水路や山林の整備はもちろん伝統の神楽を守り続けるなど、「人」を力とした地域づくりを続けており、その魅力に引き付けられ、少しずつではありますが、若い人々が都市部から移住し、炭焼きの技術を生かした玄米コーヒーの生産や服飾デザインなど新たな展開も生まれてきました。この信級の人々の絆をさらに深め、さらに広く発信しているのが、今回取材した「食堂かたつむり」です。この取り組みは長野県のみならず広く全国で同じような悩みや迷いを抱える地域にも一つのヒントになるのでは、と考え番組として制作しました。

【制作後記】
「食堂かたつむり」の寺島さんはさらに近隣で耕作しなくなった畑を借り受けて綿花やウコンの栽培を始めました。「綿花で綿を取り、食堂で使う座布団を作りたい」「ウコンを使って健康増進の食事を作り食堂で提供したい」と意欲満々。さらに先日は出版を通じて知り合った仲間たちの手を借りて食堂横に井戸を掘ろうと掘削工事も行いました。これからさらに稲の収穫、ブルーベリーの収穫、さらには盆踊り大会の復活など四季に応じて、様々なイベントや企画を用意し発信して、多くの「信級ファン」を作りたいとしています。寺島さんを応援する信級の皆さんも高齢者の方はもちろん、移住してきた若手の方まで着実に増えつつあり、新たな中山間地域の在り方として限界を超えた「限界集落」が生まれるのでは、と大いに期待されています。引き続きこの地域に足を運び、山岳県長野県のラジオ局としての番組制作を続けてみたいと考えています。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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