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2018年8月10日 (金)

なんでもないからなんでもある~里山の食堂繁盛記

2018年7月30日~2018年8月5日放送 
信越放送 ラジオ局編成制作部 小森康夫

【番組概要】
長野市南西部、信州新町の山間部に位置する信級地区。かつては信級村として人口1,300人余りが暮らし、小学校も郵便局もあったこの地区は近年過疎化が進み、人口は120人余りに減少し、学校も廃校になるなどいわゆる「限界集落」と呼ばれるようになってしまいました。しかし山野の恵みと勤勉な村の人々の耕作による農産物の生産がもたらす確かな地域づくりが徐々に都市部からの新たな移住者を引き付けている地域として注目を集めつつあります。ここに昨年、一軒の食堂がオープンしました。元の精米所で土壁の誰も使っていなかった建物を借り受け、地元の人々の手と知恵を借りて「食堂かたつむり」として改装、、営業を始めたのが、長野市の出版社オフィス・エムの代表取締役・寺島純子さん。寺島さんは信級の出身ですが、子供の頃に引っ越してしまって以来、信級には親戚演者が残るのみ、という関係でしたが、「中山間地域の可能性を探りたい」と出版業の傍ら、信級に通い、自ら調理場に立ち、料理を提供したり、ユニークなイベントを様々企画し、信級へさらに人々の関心を引き付けるべく奮闘しています。

【制作意図】
山岳県である長野県。人口は他県同様、都市部へと移動、集中し、残された中山間地域には高齢者が暮らすのみ。店舗や行政機関は撤退し、インフラや山林の整備も住民任せ。いざ災害が発生すると、数少ないアクセスが寸断され「孤立化」するなど、様々な悪循環が生まれています。しかし信級地区の人々は昔からの人と人のつながりを大切にし、水路や山林の整備はもちろん伝統の神楽を守り続けるなど、「人」を力とした地域づくりを続けており、その魅力に引き付けられ、少しずつではありますが、若い人々が都市部から移住し、炭焼きの技術を生かした玄米コーヒーの生産や服飾デザインなど新たな展開も生まれてきました。この信級の人々の絆をさらに深め、さらに広く発信しているのが、今回取材した「食堂かたつむり」です。この取り組みは長野県のみならず広く全国で同じような悩みや迷いを抱える地域にも一つのヒントになるのでは、と考え番組として制作しました。

【制作後記】
「食堂かたつむり」の寺島さんはさらに近隣で耕作しなくなった畑を借り受けて綿花やウコンの栽培を始めました。「綿花で綿を取り、食堂で使う座布団を作りたい」「ウコンを使って健康増進の食事を作り食堂で提供したい」と意欲満々。さらに先日は出版を通じて知り合った仲間たちの手を借りて食堂横に井戸を掘ろうと掘削工事も行いました。これからさらに稲の収穫、ブルーベリーの収穫、さらには盆踊り大会の復活など四季に応じて、様々なイベントや企画を用意し発信して、多くの「信級ファン」を作りたいとしています。寺島さんを応援する信級の皆さんも高齢者の方はもちろん、移住してきた若手の方まで着実に増えつつあり、新たな中山間地域の在り方として限界を超えた「限界集落」が生まれるのでは、と大いに期待されています。引き続きこの地域に足を運び、山岳県長野県のラジオ局としての番組制作を続けてみたいと考えています。

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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