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2018年4月

2018年4月12日 (木)

兵庫いかなご譚~春を運ぶ漁師たち~

2018年4月16日~2018年4月22日放送 
ラジオ関西 報道制作局報道制作部 山本洋帆

【番組概要】
春になると、当たり前のように食卓に現れる「いかなご」。兵庫・播磨灘の地域では冬が終わると、そこかしこの家から、いかなごの釘煮の甘辛い匂いが漂い、まさに「風物誌」と言えます。しかし、ここ数年はいかなごのシンコの漁獲量が減ってきており、価格の高騰もすすんでいます。そこで番組では、垂水の海で行われていたいかなごのシンコ漁に密着し、港に春を運ぶために奔走する漁師さんの姿を収録しました。

【制作意図】
「いかなごが減ってきているらしい」そんなニュースが数年続いていることは知っていましたが、実際に現場でその問題に直面している方たちの存在まで意識せずに聞き流していた気がします。シンコの数が減っても、変わらず海に出る漁師の方たちの姿を知りたい……そんな思いで取材させていただきました。いかなごが、地域に愛される名物であり続けるためにも、いま改めて漁師の方たちの漁と向き合う様子を、少しでも伝えられていればと思います。

【制作後記】
今回初めて漁を間近で見ることができ、あらためて神戸という街が、いかに海と密接にあるかということを実感することができました。「いかなごの釘煮」は、播磨灘を中心とした兵庫の地域において、まさに”ソウルフード”と呼べる名物です。そのいかなごを、これからもこの兵庫の食卓から消してしまわないように、食べつづけていけるように。漁師の方たちの届けてくれる春を、地域の皆さんに伝え続けられる放送局でありたいと思います。

イレブンとともに 俺たちのコバルトブルー

2018年4月9日~2018年4月15日放送 
東北放送 ラジオ局制作部 阿部航介


【番組概要】

宮城県の北東部、太平洋沿岸に位置する街、女川町。2011年の東日本大震災の津波によって甚大な被害を受け、今でも街の至るところで復興工事が続けられています。人口6,500人あまりのこの小さな港町には、Jリーグへの参入を目指すサッカークラブ「コバルトーレ女川」があります。2011年には震災を受け一年間の活動休止を経験したものの、今季からアマチュアサッカーリーグの最高峰JFLに昇格し、日本全国を舞台に戦い続けています。4月1日は、ホーム開幕戦の日。地元女川の住民たちを中心に全国各地からサポーターが応援に駆け付け、声援を送りました。サポーターの中心人物で、コールリーダーを務める工藤貴之さんの思いを中心に、コバルトーレ女川が女川の人たちにとってどんな存在なのかを描きます。


【制作意図】

コバルトーレ女川は、プロではなくあくまでアマチュアのサッカークラブです。選手たちは女川で生活をしており、仕事を終えた後にサッカーの練習をしています。街の人々からの理解と支援がなければ到底出来ないことだろうと思います。別の取材で練習風景を見学させてもらった際、選手たちは仕事で疲れている素振りなど全く見せずに本当に楽しそうに練習に励んでおり、選手それぞれの顔が非常に輝いて見えました。その姿を目の当たりにして、女川という小さな街に住む人々が、コバルトーレ女川をどんな風に思い、どんな風に支えているのか、そして何を与えられているのかを描きたいと思いました。

【制作後記】

4月1日の開幕戦には、女川町内外から1,300人を超える観客が集まりました。女川町の人口が6,500人余りであることを考えると、これだけでもコバルトーレ女川がいかに街の人やサポーターに支えられているかがわかります。試合は惜しくも1対3で敗れてしまいましたが、戦いを終えた選手たち、そして相手チームにもサポーターから惜しみない拍手が送られました。「Jリーグへ行こう 道は厳しくとも 俺たち(おらだぢ)のコバルトーレ みんなで行こう」コバルトーレ女川の応援歌の一節です。この一文に、女川の人たちとサポーターの思いが込められていると思います。

 

名古屋に響く三線(さんしん)の音(ね)

2018年4月2日~2018年4月8日放送 
東海ラジオ放送 制作局報道部 村上和宏


【番組概要】
沖縄県知事任命の「美ら島(ちゅらじま)沖縄大使」である名古屋市在住の浜盛重則さんは、東海ラジオでの沖縄発信やエイサーグループ運営など、故郷沖縄の文化をこの地方に広めようと精神的に活動している。沖縄に対する差別と闘いながら、沖縄を理解してもらうことこそが偏見や誤解をとくカギだとの新ねんで生きる浜盛さんの姿をエイサーを通じてお伝えする。

【制作意図】
NHK朝の連続ドラマ「ちゅらさん」放送後、沖縄ブームとなり昔と比べれば沖縄に対する差別や偏見は減ったというが、基地問題に象徴される様にまだ完全になくなってはいない。謂れのないない差別と闘ってきた「ウチナンチュー」が日本各地で沖縄を何とか理解してほしいと様々な活動をしている中で名古屋の沖縄人代表ともいえる浜盛さんの「差別をなくすには闘うのではなく、理解を深めてもらうこと」という姿を取り上げることで、一切内容は表現しないが沖縄のアイデンティティーを訴えたかった。

【制作後記】
エイサーの練習に取材で初めて足を運んだが、沖縄出身者、名古屋生まれの人、様々な人達が互いに教えあいながら本当に楽しそうに演舞している姿に感動した。エイサーシーズンを前に練習にも熱が入っていて、今年は更に素晴らしい演舞を見せてくれると確信した。

2018年4月 6日 (金)

源泉かけ流し!愛が溢れるあきしげゆ

2018年3月26日~2018年4月1日放送 
宮崎放送 ラジオ局ラジオ部  小倉哲

【番組概要】
新燃岳の活発な火山活動で知られる霧島連山。その裾野にあるが「あきしげゆ」です。柚木成子さん(76歳)が、たった一人で運営する日帰り湯。野趣溢れる温泉とトロトロの泉質、そして成子さんの人柄を慕ってたくさんの入浴客が訪れます。霧島という大自然の恵みであると同時に亡きご主人の想いが詰まったあきしげゆ。地元の公衆浴場少しづつ減っていく中で、成子さんはどんな想いで温泉を続けているのでしょうか?

【制作意図】
温泉や公衆浴場で耳をすませば聞こえてくるさまざまな音。かけ湯の音や休憩室に響く笑い声は、心の調律を整えてくれる癒やしの音色です。全国的に小さな温泉や地元の公衆浴場は、オーナーの高齢化によって運営維持が難しくなり、その数は徐々に減り始めています。古い温泉街を擁する宮崎県えびの市も例外ではありません。温泉に込められた湯主の思いや人々の交流を音に託して後世に伝えていきたい。そんな想いでマイクを向けました。

【制作後記】
リスナーが聞き終わったあとに「よし!温泉でもいくか!」という気分になってくれるかどうかが勝負。湯船にざぶんと浸かる臨場感や、浴場でかけ湯する情景を想い浮かべてもらえるよう心がけて取材にあたりました。ワイドFMでの放送を意識してステレオ録音に挑戦。慣れない音像でミキシングに苦心しましたが、音の世界が新たにひろがったように感じました。

また折しも取材・編集のタイミングで新燃岳が噴火。取材先に影響はありませんでしたが、巨大な噴煙を間近に見て大自然の恐ろしさ、そして同時にその恩恵を感じることができました。



2018年4月 2日 (月)

春を待ちわびて~福島の伝統行事~

2018年3月19日~2018年3月25日放送 
ラジオ福島 放送制作センター 山地美紗子

【番組概要】
福島市で300年以上続く「暁まいり」の中で行われる「大わらじ奉納」。重さ2トンの巨大なわらじをかついで、福島市内を練り歩き、その後、信夫山の山頂にある羽黒神社を目指します。担ぎ手たちの思いと祭りの音に注目しました。

【制作意図】
福島市では市民に浸透している大わらじ奉納ですが、県外出身の私からすると、とても珍しく感じました。福島のようなお祭りを大切にしてきた地域でも、人出不足に悩み、外からの協力もあって祭りが成り立っています。復興と重なる部分があり、番組にしたいと思いました。

【制作後記】
地域住民や福島市民にとってはすっかり当たり前になっていたお祭りですが、あらためて、その祭りの魅力を私自身が強く感じました。祭りを通して多くの人がかかわり、地域を見つめなおす、福島の復興を考える機会になっていると実感しました。また、取材を通して、祭りには様々な音があることを発見しました。

世界遺産をPR 御神犬 すずひめ号

2018年3月12日~2018年3月18日放送 
和歌山放送 報道制作部 柘植 義信

【番組概要】
和歌山県の北部高野山の麓、かつらぎ町天野地区にある丹生都比売神社は世界遺産紀伊山地の霊場と参詣道の一つとして登録されている。高野山の開祖弘法大師が2匹の犬に導かれ高野山にたどり着いたという導きの伝説にちなんだ神社。高野山と神社の関係は深い。今年は戌年。昨年末一匹の紀州犬が御神犬として神社に奉納された。名前はすずひめ号。1歳の雌犬。毎月16日の祭礼には神殿で祈祷を受け、参拝者の前に姿を現す人気者。神社をPRするシンボルになった。世界遺産に登録されるまでは交通の便の悪い山里でもあり、参拝客もまばらだったが最近は周辺の自然環境とともに良さが見直されて参拝客も増えてきた。このブームを一過性に終わらすのではなく、導き伝説にあやかり、広く世界遺産をPRしたいと神社や地元の人はすずひめ号は活躍に期待を寄せる。番組では、すずひめ号の活躍や、関係者の取り組みを紹介しながら、寛容な世の中と人々の心のあり方について探る。

【制作意図】
紀伊山地の霊場と参詣道という世界遺産は、一つの寺院や地域にこだわったものでなく、紀伊半島の多くの部分を占める広大なものだ。特に、高野山と麓の丹生都比売神社との関係は、神道と仏教という別々の宗教認め合う存在になっていて、独自の文化を構築している。自らの考えと反する意見を認めないといった風潮や世界観が今日特にクローズアップされている。こうした動きに反して1000年以上前からこの地域では、寛容の精神が根付いて文化を形成してきた。番組に登場する紀州犬すずひめ号の活躍を通してこうした精神文化を知ってもらい、広く平和や寛容な世の中を考える一助になることを目的としている。

【制作後記】
この御神犬すずひめ号の起用を考えた、丹生都比売神社の丹生晃市宮司は世界遺産登録の前からこの神社にやって来た。地元で紀州犬を育てている日本犬保存会会員の豊岡由行さんの協力で御神犬をシンボルにしたいと考えた。いろいろな災難から身を守るという女神を祭る神社と雌犬の御神犬の融合。1980年代後半から麓の九度山町から高野山まで道案内をするゴンという名物の犬がいたが、今回のすずひめ号の登場で、ゴンの存在も改めてクローズアップされ、導き犬伝説が定着するのではと丹生宮司は期待を寄せている。対立やぎすぎすしたことが後を絶たない今の世の中で、古くから紀伊半島にある「世界遺産」が融和と寛容の文化を発信していたことを改めて感じた。山々の自然に囲まれた山里の神社から蘇りと癒しの文化がさらに発信できればと思い、地元の放送局としてもその取り組みに寄与していきたい。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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