海から届いたふるさとの調べ
2024年12月9日~12月15日
青森放送 ラジオ制作部 大野和
【番組概要】
久しぶりに故郷の海沿いの町、青森県野辺地町(のへじまち)に戻ってきました。
懐かしい風景のなか、夕方5時のチャイムを聴きます。幼い頃に親しんだ野辺地祇園まつりが近づき、町全体が熱気に包まれます。聴こえてきたのは、どこか懐かしいメロディー。
それは、夕方のチャイムと関係がある祇園囃子の旋律でした。
そして、小学校では、子どもたちが一生懸命に練習した演奏を聴きます。
それは合奏曲「祭り日」。実はこの曲が、夕方5時を知らせるチャイムの「調べ」です。
祇園まつりや子どもたちの合奏を通して、この町の文化が脈々と受け継がれていることに
気づかされます。そして、夕方のチャイムの持つ意味。それは単なる時間の合図ではなく、人々の暮らしや心のつながりを象徴するものだと改めて理解しました。
故郷の海の音とチャイムを聞きながら、この町の文化がこれからも途絶えることなく、
次の世代へと引き継がれていくことを願いました。
【制作意図】
かつて大阪・京都から日本海を通って交易していた「北前船(きたまえぶね)」。
その船が青森県野辺地町に寄港していたことから、町には上方文化が根付きました。
その一つが「祇園まつり」です。祭りが継承されるなかで、祇園の囃子は合奏曲とチャイムという新たな形として受け継がれています。人になるとただ時間を知らせるチャイム、と思う人もいるかもしれませんが、子どもたちは今もその音を楽しみ、町の文化を守っています。この番組を通して、
合奏曲とチャイムに込められた町の人の思いを伝え、自分の住んでいた場所や日常の中の大切なものに気づいてほしいという意図で制作しました。
【制作後記】
「祭り日」は、昭和40年代ごろに野辺地小学校で音楽を教えていた
渕沢和子(ふちざわかずこ)さんが、野辺地祇園まつりで子供たちが演奏する祇園囃子
「祇園(ぎおん)」「渡り」「夜神楽(よかぐら)」「剣(けん)」「楽(がく)」の5曲を
鍵盤ハーモニカやリコーダーなどで演奏できるメロディにアレンジした曲です。
直接お話を聞きたかったのですが、ご高齢のためお話を聞くことができず残念でした。
自分で題材を決め、自分で取材をして番組を作ることになったら一度紹介したいと思っていたのが、野辺地町のチャイムでした。どこか哀愁のある独特なメロディーですが、このチャイムを聴くたびに自分が子どものころに演奏した祭り日や祇園まつりの記憶が蘇り、懐かしく温かい気持ちになります。
番組の中ではご紹介できませんでしたが、子供の頃祭り日を演奏したという町の方は、
自分が担当した楽器や当時何人で演奏したかなどを覚えていたり、自分の子どもが祭り日の演奏をしたのを観に行って覚えていたり…
長い間野辺地町で祭り日が愛されているのを知ることができてとても嬉しかったです。
コメント