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2024年12月

2024年12月24日 (火)

遠州織物と紡ぐふるさとのぬくもり

2025年1月6日~2025年1月12日
静岡放送 ラジオ局オーディオコンテンツセンター 寺田愛

【番組概要】
静岡県の西部・浜松市を中心とした遠州地方は、綿織物の日本三大産地として知られています。豊かな水と温暖な気候のおかげで、古くから綿花の産地として栄えていた遠州地方。江戸時代には綿織物の製造が始まり、その後明治時代に豊田佐吉氏(トヨタグループ創業者)によって小幅力織機が発明され、生産量は飛躍的に増加しました。
遠州地方で織られたものはすべて遠州織物と呼ばれています。
地域に根ざした産業の一つとなっていた遠州織物ですが、時代の変化などにより現在は厳しい状況に置かれています。
そんな中、地域の誇りとしての「遠州織物」を未来につないでいこうと活動している桂川さんに出会いました。今回は、桂川さんのベイビーボックスの活動を中心に、地域に残る伝統技術と職人の思いを取材し番組にまとめました。

【制作意図】
赤ちゃんグッズをまとめたベイビーボックスを制作している桂川さん。グッズ一つ一つに「遠州織物」の技術が使われています。それぞれの得意分野を持った職人さんたちとコミュニケーションをとりながら、物事を進めていく姿が印象に残りました。ご自身の子育て経験も踏まえて誕生した「ベイビーボックス」。桂川さんの、素晴らしい伝統技術を地域で育つこどもたちへ繋いでいきたいという願いを番組を通して伝えたいと思い制作しました。

【制作後記】
この取材をするまでは、「遠州織物」について、名前を聞いたことがあるくらいで漠然とした知識しか持っていませんでした。どんな布で、どこがどんな風に素晴らしいのか…桂川さんをはじめ、取材したみなさんがいきいきと語ってくださり、「遠州織物」の魅力をより理解できました。まだまだ奥が深い「遠州織物」。この技術が地域の方たちの誇りとして、途切れることなく未来へ繋がっていくよう願っています。


唄いやんこ~私の山中節~

2024年12月30日~2025年1月5日
北陸放送 ラジオ開発局 中川留美

【番組概要】

日本三大民謡のひとつに数えられる「山中節」。毎年全国コンクールや認定審査会など、緊張する場が多い中、もっと気軽に楽しく唄い合おうという思いから始まった「山中節唄いやんこ」があります。“唄いやんこ”とは、山中弁で“唄いあいっこ”のこと。山中節の愛好家たちが県内外から集まり、好きな歌詞をそれぞれの思いで唄い合います。40年続く「山名節唄いやんこ」は唄の上手下手は関係ない。参加する人が楽しんで唄う場です。

【制作意図】

唄を競い合うこともない、結果を気にすることもない、好きな山中節を思うままに唄い合っているのを聞きながら、山中温泉で大切に唄い継がれてきた歴史を感じました。参加した人の歌声と山中節の歌詞について触れながら、40年続いてきた「山中節唄いやんこ」の様子を伝えたいと思いました。

【制作後記】

“唄いやんこ”という言葉の可愛さに興味を持ちました。取材前は、山中節ばかりが繰り返し唄われることに飽きがくるのではと心配していましたが、全く飽きることはありませんでした。その場で「山中節唄いやんこ」を聴いていると、歌詞から伝わる山名温泉の自然や情景、温泉を訪れた旅人の様子まで思い浮かんできました。哀愁のある曲調に聴き入りながらも、「はぁ~」という歌い出しは、まるで温泉に浸かったときの気持ち良さから出たような声のようにも思えました。山中温泉の自然や人があってこその山中節。ひと節だけでも覚えて、私も山中節を唄ってみたくなりました。

どんぐりピアノ~70年目の音色~

2024年12月23日~12月29日
南日本放送 音声メディア 美坂理恵

【番組概要】
鹿児島県霧島市牧園の三体小学校で70年にわたり引き継がれ、「どんぐりピアノ」の愛称で親しまれる古いグランドピアノがあります。このピアノは終戦直後の物のない時代、三体小や旧三体中学校の児童生徒や地区住民らが協力し、近くの山からドングリの実200キロを拾い集め、5万本のクヌギの苗木に育て、それを植林して得た資金で購入しました。当時、どんぐりを広い集めた女性と、「どんぐりピアノ」の歴史を伝えようと活動するピアニストにお話を伺いました。実は二人は・・・。70年目を迎えた「どんぐりピアノ」の澄み切った音色とともにお伝えします。

【制作意図】
現在、三体小学校の児童数は5人。数年後には休校になるのではという話も聞こえてきます。今年はどんぐりピアノが三体小にやってきてちょうど70年であること、子どもたちの声とともにあるどんぐりピアノの音色を記録し、録音風物誌で多くの方に聴いていただきたいと制作しました。

【制作後記】
どんぐりピアノの音色はとても艶やかでクリア。丁寧に調律されていることが伝わってきます。この古いグランドピアノを調律できる方は県内にはもう1人しかいないそうです。番組の中で子どもたちが歌っている「どんぐりピアノの歌」は当時の教頭が作詞したものだったり、どんぐりピアノの歴史を子どもたちに伝えたいと保護者が中心となって手作りした絵本があったり・・・「どんぐりピアノ」を通して子どもたちへの温かい思いを感じる取材となりました。

今宵、白馬で逢いましょう

2024年12月16日~12月22日
熊本放送 ラジオ制作部 高野泰宏

【番組概要】

八代市にあるキャバレーニュー白馬は日本でも数少ないキャバレー。ステージに生バンド。シャンデリアにミラーボールと雰囲気は昭和のまま。しかし、不景気、キャバクラ、スナックの台頭でキャバレーは姿を消していきました。このニュー白馬で初舞台を踏んで日本を代表する歌姫となった地元出身の女性歌手がいました。昨年末に急逝した八代亜紀さんです。社長の池田義信さんによると今年になって八代さんの聖地巡礼として来店する人が急増したそうです。八代さんは里帰りする際にはここを訪れ、経営継続を訴えました。池田さんは「昔からの客には懐古を新規客には新しさ」をコンセプトに営業を継続しています。

【制作意図】

放送が年末であったということと昨年末に八代亜紀さんが亡くなったということもあり、彼女のデビューの地である一説には日本唯一といわれるキャバレーを取りあげるしかないと思いました

【制作後記】

番組で使用した曲は1ッ箇所を除いて、八代亜紀さんの曲です。また、八代亜紀の部分は弊社のテレビ番組から流用したものでラジオテレビ兼営局のメリットができたかなと思います。参考までに料金は80分、飲み放題、歌い放題5500円です。


海から届いたふるさとの調べ

2024年12月9日~12月15日
青森放送 ラジオ制作部 大野和

【番組概要】

久しぶりに故郷の海沿いの町、青森県野辺地町(のへじまち)に戻ってきました。
懐かしい風景のなか、夕方5時のチャイムを聴きます。幼い頃に親しんだ野辺地祇園まつりが近づき、町全体が熱気に包まれます。聴こえてきたのは、どこか懐かしいメロディー。
それは、夕方のチャイムと関係がある祇園囃子の旋律でした。
そして、小学校では、子どもたちが一生懸命に練習した演奏を聴きます。
それは合奏曲「祭り日」。実はこの曲が、夕方5時を知らせるチャイムの「調べ」です。

祇園まつりや子どもたちの合奏を通して、この町の文化が脈々と受け継がれていることに
気づかされます。そして、夕方のチャイムの持つ意味。それは単なる時間の合図ではなく、人々の暮らしや心のつながりを象徴するものだと改めて理解しました。
故郷の海の音とチャイムを聞きながら、この町の文化がこれからも途絶えることなく、
次の世代へと引き継がれていくことを願いました。

【制作意図】

かつて大阪・京都から日本海を通って交易していた「北前船(きたまえぶね)」。
その船が青森県野辺地町に寄港していたことから、町には上方文化が根付きました。
その一つが「祇園まつり」です。祭りが継承されるなかで、祇園の囃子は合奏曲とチャイムという新たな形として受け継がれています。人になるとただ時間を知らせるチャイム、と思う人もいるかもしれませんが、子どもたちは今もその音を楽しみ、町の文化を守っています。この番組を通して、
合奏曲とチャイムに込められた町の人の思いを伝え、自分の住んでいた場所や日常の中の大切なものに気づいてほしいという意図で制作しました。



【制作後記】

「祭り日」は、昭和40年代ごろに野辺地小学校で音楽を教えていた
渕沢和子(ふちざわかずこ)さんが、野辺地祇園まつりで子供たちが演奏する祇園囃子
「祇園(ぎおん)」「渡り」「夜神楽(よかぐら)」「剣(けん)」「楽(がく)」の5曲を
鍵盤ハーモニカやリコーダーなどで演奏できるメロディにアレンジした曲です。
直接お話を聞きたかったのですが、ご高齢のためお話を聞くことができず残念でした。
自分で題材を決め、自分で取材をして番組を作ることになったら一度紹介したいと思っていたのが、野辺地町のチャイムでした。どこか哀愁のある独特なメロディーですが、このチャイムを聴くたびに自分が子どものころに演奏した祭り日や祇園まつりの記憶が蘇り、懐かしく温かい気持ちになります。
番組の中ではご紹介できませんでしたが、子供の頃祭り日を演奏したという町の方は、
自分が担当した楽器や当時何人で演奏したかなどを覚えていたり、自分の子どもが祭り日の演奏をしたのを観に行って覚えていたり…
長い間野辺地町で祭り日が愛されているのを知ることができてとても嬉しかったです。

 

じいちゃんのしめ縄は唯一無二! 孫プロデューサー奮闘中

2024年12月2日~12月8日
南海放送 メディアセンター 平野和子

【番組概要】
愛媛県の米どころ西予市宇和に生まれ育つ上甲清(じょうこう・きよし)さん88歳。米作りの傍ら作るしめ縄が評判になり、産直市などへ出荷するように。
仕事で愛媛の特産品を販売していた孫の智香さん27歳は、商品として見た祖父のしめ縄の可能性を感じ、仕事をやめて、祖父のしめ縄作りのプロデュースを始めた。今では全国にファンが増えている。じいちゃんを尊敬し、広く知って欲しいと活動する孫との二人の師走を伝える。

【制作意図】
失われつつ米文化を継承しようとする祖父と孫。SNSなどを駆使し、新たな繋がりを作りながら、米農家の生き様、農村文化を伝えようと奮闘する2人の様子を追った。

【制作後記】

12月14日㈯から東京で上甲清さんの展示会が行われる。
「米と藁。しめ縄職人 上甲 清 展」
・2024年12月14日㈯~26日㈭ 10:00~19:00
・21_21DESIGN SIGHT

問い合わせ 
株式会社 メソッド
info@wearemethod.com

https://www.2121designsight.jp/gallery3/rice_and_straw/



未来へ!世界へ!海を渡る船箪笥

2024年11月25日~12月1日
山形放送 報道制作局制作部  神保 美帆

【番組概要】

山形県酒田市にある木工店の4代目・加藤渉さん(50)。釘などを使わずに木材を組み合わせる「指物(さしもの)」の技術を継承し、現在は伝統工芸品「酒田船箪笥」も製作しています。
江戸時代から明治時代にかけて、寄港地で商品を売買しながら航海をしていた北前船。
船の中で金品などを保管する金庫のような役割をしていたのが「船箪笥」です。
酒田は新潟県・佐渡、福井県・三国と並ぶ船箪笥の三大名産地の1つですが、需要の減少や職人の高齢化と担い手不足により近年では新たな船箪笥は製作されていませんでした。港町の伝統を復活させたい、という思いのもと酒田船箪笥の“復興”にチャレンジをしている加藤さんを追いました。



【制作意図】

酒田船箪笥は指物、漆塗、装飾金具と各職人が分担して製作をしていますが、装飾金具だけは酒田市内で作り手を見つけることができないでいました。
そんな時、地元高校の工業科の生徒から「船箪笥の装飾金具を作ってみたい」と声がかかりました。次の時代に伝統工芸品を繋いでいきたいという加藤さんの思いと、高校生たちの取り組みをたくさんの人に届けたいと思い、取材しました。



【制作後記】

加藤さんは後継者不足と認知度不足が課題だと感じ、製作の傍ら様々な場所で船箪笥について発信を続けてきました。「伝統を繋いでいきたい」という思いが高校生に届き、「地元の作り手の力で船箪笥を製作する」という加藤さんの夢の実現に近づいた瞬間を傍で見ることができ、私もとても嬉しかったです。
地元の高校生たちも、酒田船箪笥や酒田の歴史については知らない部分も多く、装飾金具作りは地元の歴史を見つめ直すきっかけにもなったそうです。時々苦戦しながらも、楽しそうに金具作りに取り組んでいる高校生の姿が印象的でした。

 

点と点が繋がって

2024年11月18日~11月24日
RKB毎日放送 オーディオコンテンツセンター 樋口かおり

【番組概要】
点字が考案されて来年で200周年。街中に点字が溢れている中、今回は点字ボランティアにスポットを当てた。昨今人員不足の影響もあり、点字の翻訳作業を1人1人ばらばらで行う図書館も増える中、福岡市立図書館は、数十年に渡って、毎週グループで集まって点訳の作業を行っていることを知り、取材を決めた。サブタイトルにもあるように点字本を作るボランティア同士の繋がり、その本を利用する人への繋がり・そしてそれが街から全国の図書館に広がっていくそのコミュニティの存在の中心が点字であることから、すべてが繋がっていく“点”を意識して制作を行った。

【制作意図】
昨年私が目を怪我した時に、視力がほぼ無く、街中の音を頼りに日常生活を送った経験がある。いざ自分が見えない状況に置かれた時に、音声ガイドや点字などいくつかの読み取る選択肢が与えられていることのありがたさを再認識した。
一方で音声案内は他の音と混ざって聞き取りにくく不便だったこともあり、自分のペースで自分の感覚で空間・物事を認知できる点字の素晴らしさに改めて気付かされた。
点字が考案されておよそ200年という背景もあり、点字の継承に携わっている地元の点字図書館とボランティアたちにスポットを当てたいと考えた。

【制作後記】
今回取材を行うために、予め図書館と電話やメールで頻繁にやり取りをしていたものの、担当者と直接会ったのは、取材当日が初めてだった。その時、視覚障害があるということを知った。改めて自分の視野の狭さに気付かされると共に、障害の有無にかかわらず、日頃から自分自身が人に寄り添うコミュニケーションが取れているのか省みる機会になった。
またボランティアというと多種多様で、1回きりというものもある中、毎週1回誰かのために尽力し続けている点訳ボランティアの生き方に尊敬の念を抱いた。
地方の図書館という事もあり、ボランティアは数名で小さな活動と言われるとそれまでだが、この活動が数十年続いてきて、確かに誰かの支えになってきたという事実に胸を打たれた。これからも規模の大きさに関わらず、熱い想いを持つ人に取材したいし、私もそんな人になりたい。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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