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2018年2月

2018年2月22日 (木)

自然の力で 「島の再生」を

2018年2月26日~2018年3月4日放送 
西日本放送 営業局ラジオセンター 堀部直子

【番組概要】

香川県小豆郡土庄町にある豊島(てしま)は、1980年代初めに車の破砕ごみなどが不法投棄され「ごみの島」と呼ばれるほどの社会問題となりました。その不法投棄された産業廃棄物の無害化も進み、今、豊かな島を取り戻すための「島の再生」が叫ばれています。そんな中、海水と風と太陽の力だけでつくる天日干しの塩づくりに挑戦しているのが、5年前に東京から移住してきた門脇湖さんです。どんな塩がここ豊島で産まれているのでしょうか?

【制作意図】

自分たちが住む愛する島に、突然大量の有害廃棄物が持ち込まれ、自力で住民運動を始めた豊島の住民。30年以上、有害な産業廃棄物による公害に島民が苦しめられてきた、通称「豊島問題」ですが、住民の努力が実を結び、無害化が進みつつあります。新しい豊島、いや、かつての豊かな島を取り戻すため、「島の再生」をかけ声に奮闘する島の今を、自然の力だけで塩づくりに挑戦している門脇湖さんを通して伝えたいと思いました。

【制作後記】

「てしま天日塩ファーム」の門脇湖さんが、豊島で塩づくりをはじめて1年。取材をとおしてて、自分が納得できる塩をつくるため、毎日、休むことなく塩づくりに励んでいる姿に頭が下がるばかりでした。「自然と人とでしかつくれない塩だからこそ、意味がある。」と話す門脇さんのつくるお塩は、自然の恵みと作り手の愛情がいっぱいつまった美味しいお塩でした。

 

こどもたちの落語会

2018年2月19日~2018年2月25日放送 
長崎放送 ラジオ局ラジオ制作部 中島千夏

【番組概要】
こどもたちがたった一人で高座に上がり落語を披露する「佐世保かっちぇて落語っ子の会」。佐世保市で起きた小6女児同級生殺害事件に心を痛めた放送作家・海老原靖芳さんの「ふるさとのこどもたちの為に何かできないか」との思いから始めた落語会です。ネタは全て佐世保の地名や方言を使った、海老原さんのオリジナル。人情味あふれる佐世保の人々も登場します。それぞれの個性にあわせたネタを託されたこどもたちは、熱心な自主練習と定期的な稽古でしっかりと頭に叩き込み、緊張の一席に臨みます。予定外の出来事もなんのその。立派に高座をやり遂げ、たくさんのあたたかい拍手をもらったこどもたちの笑顔は、どこか誇らしげです。海老原さんの思いは、確実にこどもたちに届いています。

【制作意図】
落語ブームと言われる昨今。噺家の巧みな話術とネタの面白さに、改めて注目が集まっていますが、「佐世保かっちぇて落語っ子の会」の魅力は地元を感じられるネタと、ひたむきに「笑い」と向き合うこどもたちの姿にあります。番組ではこどもたちの緊張の一席と、落語を通してふるさとのこどもたちに「笑い」を届けたいと願う放送作家・海老原靖芳さんの思いを描きます。

【制作後記】
あぐらをかいたり、あくびをしたり。稽古場で自由に振舞うこどもたちにはじめは少し驚きましたが、高座に上がるとその姿は一変。目はしっかりと客を見据え、力強い声でネタを披露する堂々とした様は頼もしく、笑いの世界に一気に引き込まれました。あたたかい笑顔とウィットに富んだ口調でこどもたちと向き合う海老原靖芳さんにも、大いに笑わせていただきました。もしかしたら、取材中だということをうっかり忘れた私の声が番組の中に入り込んでいるかもしれません。

名人たちによる技の競演 勝山年の市

2018年2月12日~2018年2月18日放送 
福井放送 ラジオセンター 制作担当 松村和也

【番組概要】
福井県勝山市の冬の風物詩となっている「勝山年の市」が1月28日、市中心部の本町通りで開かれる。手作りの木工品や民芸品、伝承料理など市内外の50店がずらりと並び、寒さが厳しい奥越に活気を呼び込む。年の市は江戸時代に山村の農家の人たちが自分たちで作った副業製品を売るため、路上で市を開いたことが始まりとされる。「ないものは馬の角だけ」と言われるほど品ぞろえが良かったという。現在は勝山本町通り商店街振興組合が毎年1月の最終日曜日に開催している。約400メートルの通りに地元の飲食店や農産物加工グループなどが露店を設置する。伝統の保存食「鯖の熟(な)れ鮨(ず)し」、アマゴやアユの加工品、かき餅などを販売。きねや臼、まな板などの木工品、木炭など手作りの逸品も並ぶ。恒例の「むらの達人」コーナーでは、ござ帽子やわら・竹細工、報恩講料理など3人が製作、調理した品を販売する。

【制作意図】
江戸時代から続く、勝山 年の市。毎年県内外から多数の来場者が訪れる市の魅力は?もちろん、むらの達人として認定を受ける伝統工芸の品々は魅力的だが、それほどの需要があるとも思えない。でも、人を集める魅力はどこにあると思い、調べるうちに、市に出る皆さんがそれぞれの分野で名人となり、その名人の品を求めて、人が集まることに気づきました。むらの達人は名人の代表ではあるが、普通に生活をする方が名人であり、地域の宝である子供たちが今後名人になる、そんな思いを表現できたらと制作しました。

【制作後記】
子供の声が響き渡る。雪深い、福井県勝山市は今年は特に雪が多く、一日一日生活を続けるのが大変です。そんな冬のこの季節に「勝山 年の市」は開催されます。そして、この市は子供たちの声が響きます。子は鎹。元気な子供たちは地域の宝。この「勝山 年の市」すべての人たちが名人であり、将来名人になりうる人たち。そして、何十年後もこの賑わいを続けてほしいと切に思います。

2018年2月 2日 (金)

真冬に新茶のできる里

2018年2月5日~2018年2月11日放送 
四国放送 ラジオ編成制作部 林敬

【番組概要】
徳島県最南端の海陽町(かいようちょう)の山間集落には、古くから「寒茶」(かんちゃ)という独特の茶が伝えられている。十分に育った冬の茶葉を使うのが最大の特徴であり、今年も地元の主婦らによる茶摘みが始まった。茶摘みの後は手作業で少しづつ加工され、少量の寒茶ができる。全国でも珍しい「真冬の茶摘み」を音で取材し、山里の環境や生産者の思いを伝える。

【制作意図】
地域に伝わる独特の製茶文化を紹介し、それを生み、伝えてきた山間部の暮らしや自然環境、そしてそこに生きる人の心にスポットをあてることを意図している。

【制作後記】
背丈より高く繁る茶畑にまず驚かされた。葉も不揃いで、とにかくワイルドだった。しかし冬の茶葉こそ栄養を蓄えているので茶に甘みがあるとの説明は説得力があった。またこの時期の寒風こそが、できた茶の乾燥にうってつけだとのことで、長年の山の暮らしから生まれた知恵を感じた。寒茶づくりを通し、地元の人自身が改めて「山の豊かさ」に感謝している様子が印象深かった。

津軽弁の日30年 ~方言詩人のにぎやかな法事~

2018年1月29日~2018年2月4日放送 
青森放送 ラジオ局ラジオ制作部 齊藤暢

【番組概要】
毎年10月23日、青森県青森市では「津軽弁の日」というイベントが開催されます。青森市や弘前城と桜で有名な弘前市、立佞武多で知られる五所川原市など、青森県の西側にあたる地域を津軽と言い、そこで使われている方言が津軽弁です。10月23日は、津軽弁の詩集を著した高木恭造さんの命日。高木さんの事を多くの人たちに覚えていてもらいたい、方言を残していきたいという思いで、方言詩人・伊奈かっぺいさんとその仲間たちが手弁当で行っているのが「津軽弁の日」です。この日は県内外から1,000人以上の人たちが集まり、津軽弁で書かれた詩や川柳、体験記などを楽しみます。津軽の人たちに秋の深まりを感じさせる存在になった津軽弁の日は、今年で30周年。にぎやかな法事はこれからも続いていきます。

【制作意図】
 私が生まれる前から続く「津軽弁の日」は、30年という節目を迎えました。長い間、一般から津軽弁の作品を募集して開催されてきましたが、スタッフの高齢化により募集は終了することになりました。しかし、「津軽弁の日」そのものが終わるわけではありません。形を変えて、高木恭造さんの功績、津軽弁の面白みをこれからも伝えていきます。私自身そうですが、方言を話せる人間というのはどんどん減っています。これは、文化の損失なのではないでしょうか。この放送が、自分たちが生まれ育った場所の言葉について、改めて考える機会になればと思いました。

【制作後記】
伊奈かっぺいさんの「方言を失うのはもったいない」という言葉を聞いて、祖母の事を思い出しました。祖母はネイティブな津軽弁だったので私には聞き取れず、母の通訳が無ければ意思疎通が困難な事がよくありました。当時は笑っていましたが、今思うとこれが方言を失う寂しさなんだと思います。
 津軽弁が持つニュアンスは津軽弁でしか表現できません。これは、どの方言にも言える事だと思います。共通語で表せる事は微々たるものです。私のリスニング力も幾分マシにはなりましたが、今回の編集中に精進が足りない事がはっきりと分かったので、もっと津軽弁を聞く機会を増やしたいと思います。
 

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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