« 2014年9月 | メイン | 2014年11月 »

2014年10月

2014年10月21日 (火)

おばあちゃんの相撲甚句 

2014年10月20日~2014年10月26日放送
RKB毎日放送 RKBミューズ 三輪肇

【番組概要】
福岡県飯塚市(いいづかし)の八木山(やきやま)小学校では、今なお古くから化粧まわし姿で四股を踏み、すり足で踊り、女子は相撲甚句を歌います。歌のお手本になっているのは、地元の米農家のおばあちゃん。おばあちゃんの相撲甚句が児童たちに伝えているのは宮相撲の伝統のみならず、八木山という土地の文化そのものだったのです。

【制作意図】
代々、入学すると、全員が四股名を与えられ、女子は相撲甚句を覚えるという・・・。私たちのエリアにこの様な伝統を持つ稀な小学校があり、それを伝えるおばあちゃんの歌声。そのルーツには穀倉地帯である米作りの文化、またその実りを、未来を担う子供達に託す、地域の人々の姿を伝えたいと思い制作しました。

【制作後記】
本編に登場していない方々へも取材でお会いしましたが、皆さん地域愛に満ちた方々ばかりでした。この地域は高原地帯の為に、平地より数週間早くお米の収穫が行われます。出来たお米をうれしそうに見せてくださったり、「四股名」を持つ事で八木山のことを思い出して欲しいという、いつまでもふるさとを思う気持ちが印象的でした。

2014年10月15日 (水)

耳をすませば 運河育ちの元気声

2014年10月13日~2014年10月19日放送
ラジオ関西 報道制作部 西口正史

【番組概要】
神戸港の発展を支えた「兵庫運河」は、いまは時折ジェットスキーが通る程度で静かにたたずんでいます。そこではじまった、真珠の養殖プロジェクト。子供も大人も、アコヤ貝も?、毎年、運河を通して成長しています。週に一度の手入れ作業では、にぎやかな子ども達の声が響きます。

【制作意図】
ミナトばかりが注目される神戸ですが、運河もなかなか大したもんでしょ。そんな気持ちでつくってみました。運河でいま学んでいるのは子ども達だけじゃない。大人もまた、運河を学びなおしている。運河は一つの近代化遺産だということが伝わればと思います。

【制作後記】
最初に取材したのが2013年12月。そこから毎月ではありませんが、活動に併走させていただきました。外にいるのにゲーム機が手放せない子ども達が目に付く昨今。ぼくはいいたい。「ゲーム機を棄てて運河に出よう」。アコヤ貝の世話をするみんながかっこよかったのだ。

2014年10月 3日 (金)

ようお帰りなさいました

2014年10月6日~2014年10月12日放送
山口放送 ラジオ制作部 大谷陽子

※2014年度録音風物誌番組コンクール入賞作品
最優秀賞受賞 再放送です。

【番組概要】
本州の西の端、山口県。日本海を臨む長門市仙崎の港は、終戦後、在外邦人の引揚げ港となりました。終戦の翌月から1年間で41万人の引揚げ者が上陸(博多、佐世保、舞鶴などに次ぐ全国5番目の引揚げ者数)、仙崎の町は一丸となって引揚げ者の援護をしました。当時21歳だった(なか)()貞女(さだめ)さんは、本土の地に降り立った引揚げ者を温かいお茶で迎え、宿も提供しました。それから68年。89歳になった中谷さんは当時を偲んで訪れる人に現地を案内し、依頼があれば講演にも出向きます。引揚げ港仙崎の歴史と思いやりの風土を伝え残したいという中谷さんの思いを綴ります。

【制作意図】
長門市仙崎は、古くは鯨漁で賑わった港町です。童謡詩人・金子みすゞのふるさとでもあります。終戦後、人口8,000人の町は、およそ1年の間に41万人もの人を迎える引揚げ港としての役目を果たしました。そこに生きた人々の歴史と経験が風土や気風として受け継がれていることを財産として伝えていきたいと制作しました。

【制作後記】
「よう お帰りなさいました」とは、「本当によく帰られましたね」という相手への気持ちを込めた山口弁の表現です。中谷さんの会話には、相手へ心を寄せる山口弁が度々使われます。放送の中でも出てくる「のんた」も代表的な山口弁で、「のー、あんた」と親愛の気持ちを込めて語りかける言葉です。温もりの響きを持つのは、相手に思いを馳せる思いやりの心があるからこそと、中谷さんの姿を見て学びました

カッパと孫助さんの約束

2014年9月29日~2014年10月5日放送
青森放送  ラジオ編成制作部 山本鷹賀春

※2014年度録音風物誌番組コンクール入賞作品
優秀賞受賞 再放送です。

【番組概要】

青森県八戸(はちのへ)市を流れる新井田(にいだ)川にはメドツが棲むといわれています。メドツとは、カッパのことです。何百年も昔、そのカッパと、地元の庄屋の孫助さんがある約束をしました。それは、地域の子どもたちを水難事故から守るため、孫助家ではある物を一切食べないという取り決めです。しかも子孫代々にまで守らせるという厳しい条件でした。孫助さんの家は代々「孫助」を襲名しています。そして、現在の孫助さんも、その約束を厳格に守り続けています。その後、新井田川は護岸工事が行われました。川は子どもたちにとって、さらに危険な場所となり、そして、孫助さんの家も今、立ち退きを迫られています。

【制作意図】
「どんな約束でも、約束は約束。守るべきもの。たとえ相手がカッパでも守るべきもの。」孫助さんの言葉です。何百年も続く旧家の家訓のように聞こえます。新井田川は、昔と姿を変え、周辺は都市化が進んでいますが、それでも約束を守り続ける人間の姿をカッパの視点で制作しました。何百年も前の庄屋さんと孫助さんに共通する、地域への想いを伝えたいと思います。

【制作後記】
この番組は、生中継で収録された音を録音構成にしたものです。カッパの声とナレーションを担当している十日市秀悦が以前「子どもの頃メドツを見たことがある」と発言したことから始まった番組でした。事前取材中、カッパ伝説の起源の一つが八戸であること、メドツとは水の神「ミヅチ」から来ていることなど、次々と明らかになりました。しかしそれ以上に、孫助さんの存在は、私たちにとって大きな衝撃でした。そして八戸の「糠塚きゅうり」(昔きゅうり)の味も忘れられないものでした。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

ブログ powered by TypePad