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2017年10月

2017年10月20日 (金)

薩摩に伝わる幻の竹笛~天吹(てんぷく)~

2017年10月23日~2017年10月29日放送 
南日本放送 編成局ラジオ制作部 立和名 梨絵

【番組概要】
「てんぷく」と呼ばれる尺八に似た竹笛「天吹」。天吹は、長さ30センチ、三つの節と五つの孔(あな)からなり、尺八よりもやや高い澄んだ音色を出します。名前の由来は、「天(あま)の八重雲を吹き放つ事の如し」という古文書の詞からとったとされ、現在は鹿児島にだけ伝承されています。
天吹の起源は未だにはっきりしていませんが、昔の武士や明治時代のハイカラな学生たちの嗜みとして愛用されていたようです。時代とともに天吹は廃れていき、今では「幻の笛」とも呼ばれています。
その幻の笛「天吹」を絶やしてはいけないと結成されたのが「天吹同好会」。昭和56年に結成され、天吹の楽しさ・面白さを若い世代に伝えています。指導するのは白尾国英さん。白尾さんは、母校である姶良市立加治木中学校1年生の子どもたちに天吹の楽しさを伝えています。子どもたちは白尾さんの指導のもと、11月の文化祭で発表する天吹演奏に向けて、練習を頑張ります。天吹に触れた子どもたちの感想、白尾さんの思い、そして素朴な天吹の音色をお届けします。

【制作意図】
とある番組で天吹奏者と出会い、つい時間を忘れてしまいそうなほど癒される演奏を聞いたことがきっかけで取材を始めました。天吹は鹿児島だけに伝わり、市販もされていません。完全に手作りの楽器で、材料となる竹は、自分たちで竹林に行き探しにいきます。まるで宝探し。伝承曲も7曲しかなく、演奏者も本当に限られている楽器です。リコーダーでも尺八でもない「素朴な音色」と、その音色を奏でるみなさんの思いを伝えたいと思い制作しました。

【制作後記】
今回の取材を通して感じたことは、同好会のみなさんが本当に天吹を愛しているということです。ある日の練習にお伺いしましたら、すでに私専用の「天吹」を作ってくださっていました。温かい雰囲気の中、私も会員の一人となって、取材の傍ら練習スタート。シンプルな楽器なのに音を出すことがとても難しく四苦八苦。一音出すので精一杯でした。練習中、会員のみなさんが天吹を気持ちよさそうに吹く姿には感動しました。吹けば吹くほど味わい深い「天吹」をもっと多くのみなさんに知ってほしいなと思いました。きっと天吹の虜になるはず!


松山・道後の新名所 太古のロマンに浸かる場所

2017年10月16日~2017年10月22日放送 
南海放送 ラジオ制作部 三瀬 雄一

【番組概要】
9月26日松山市道後地区にオープンした「道後温泉別館 飛鳥乃温泉(ゆ)」聖徳太子が入浴したとされる歴史を元に、飛鳥時代の建築様式を取り入れた松山市民期待の施設です。大浴場を彩る壁画は、銭湯などでおなじみの富士山ではなく、地元の風景が描かれています。それも愛媛を代表する陶磁器「砥部焼」の陶板にかかれた風景。番組では、作者である女性陶芸家、山田ひろみさんに注目。独自の技法「ブラッシング」を駆使した壁画が完成した時、山田さんは何を思うのでしょうか。

【制作意図】

愛媛・松山の観光の顔、国指定の重要文化財「道後温泉本館」も、建築から120年以上が経過し、耐震工事の必要性に迫られています。工事期間中の観光客の減少が懸念される中、新たな温泉施設の建設が始まりました。それが「道後温泉別館 飛鳥乃温泉」です。愛媛の伝統文化のショーケースをテーマにしており県内の伝統工芸品が館内にふんだんに取り入れられています。その中で最大のもの、そして温泉施設である以上誰もが必ず目にするであろう壁画と、それを手がける女性陶芸家に注目。彼女が駆使する技法「ブラッシング」へのこだわりと、壁画作成への思いを伝えられないかと制作しました。

【制作後記】
今回取り上げた砥部焼は、今年、誕生240年目の節目を迎えます。砥部焼に限らず、長い歴史を積み上げてこられたのはなぜかと考える時、従来の方法にとらわれない、新しい発想を持った人が出現し、
産地をもりあげてきたに違いないと思うのです。山田ひろみさんも確実にその一人。とにかくパワフルで、繊細で、作品に向かえば妥協することがない…
自身を振り返って、見習うところばかりのすてきな方でした。



2017年10月11日 (水)

紡ぎ、紡がれ~錦織りなす北限の絹~

2017年10月9日~2017年10月15日放送 
山形放送 報道制作局制作部 新野 陽祐

【番組概要】
舞台は山形県鶴岡市。江戸時代、この地域を治めていた庄内藩の藩士たちが明治維新の後、刀を鍬に持ち替えて土を耕し、カイコのエサとなる桑の木を植えました。この時、国内最北限の絹産地が誕生しました。そして、140年余りが経過したいま、一つの産地でカイコを飼育する養蚕から、私たちの手元に届く商品になるまでのすべての工程が存在する、日本で唯一の絹産地になりました。絹が生まれる時、その工程の中でどんな音が生まれているのでしょうか。そして、人と歴史はどんな音を奏でてきたのでしょうか。そこに暮らす人々の風景とともにお届けします。

【制作意図】
絹に音はありません。そう思った時、絹ができるまでにはどういう音が存在するのだろうと、ふと思ったのが取材のきっかけでした。侍が刀を鍬に持ち替えて養蚕を始めたというストーリーにも惹かれました。豊かな歴史と文化がはぐくんだ絹産地の魅力をぜひ多くの人に知ってもらいたいと思っています。そして、絹産業にはこんなにも多くの工程があり、支えている人たちがいるということを知ってもらい、絹自体の魅力も再認識してほしいと思っています。

【制作後記】
取材を始めたのはいまから7年前2010年にさかのぼります。以来、年に数回は絹産業の会社やそこに携わる人たちの取材を続けています。カイコが桑の葉を食べる音、糸が作り出される音、機織り機の音・・・目で見るとすぐ分かるはずの音が、耳だけになるとまったく違った音に聞こえ、より効果的にラジオとして聞いてもらえるようにするのは苦労しました。7年の間に、加藤さんは亡くなり、番組には反映できませんでしたが、製糸会社も火事にあいました。それでも一生懸命に絹産業を支える人たちをこれからも応援していきたいです。

2017年10月 3日 (火)

古楽器に魅せられて~古の音色が響く森

2017年10月2日~2017年10月8日放送 
大分放送 ラジオ局アナウンス部 平川侑希

【番組概要】
大分県北部に位置し豊かな自然に囲まれた杵筑市山香町。田園風景の中現れる小さな森の工房で古楽器の制作を行っているのは松本公博さん(68)。大学卒業後ピアノの調律しをしていた公博さんは、ピアノの前身であるチェンバロを制作したのを機に古楽器づくりの道へと進み、以後約60種類、数千にも及ぶ古楽器を制作してきました。公博さんがつく角は中世ヨーロッパ時代に存在した古楽器。実物はもちろん設計図もないため、設計、制作、調音そして時には材料尾となる木の伐採まですべて自分の手で行っています。古楽器の魅力を多くの人に伝えようと、妻のてるさん、息子の未來さん、長女の舞香さんと共に一家で演奏活動を行っています。工房がある森には、いつも古楽器が作る音、そして美しい古楽器の音色が響いています。

【制作意図】
古楽器の制作には、材料となる木の伐採から調音まで様々な過程がありますが、その中でも公博さんが大切にしているのが木の乾燥です。伐採後、短いものでも3~4年、長いものでは100年以上乾燥が必要なものもあります。当然自分たちが生きている間に使わないものもあり。公博さんは、古楽器が存在していた過去、そして自分が伐採した木が使われる未来にも思いを馳せながら日々古楽器づくりを行っています。そんな公博さんの楽器へのこだわりや強い思い、そして古楽器が奏でる音色の素晴らしさをお伝えできればと思って制作しました。

【制作後記】
公博さん工房がある森では、毎年松本さんの息子未來さんと、長女舞香さん主催で「Sing Bird Cocert」というイベントを行っています。古楽器の演奏や、アーティストによるライブ、古楽器づくりが体験できるワークショップ等が行われ、今年も県内外から200人を超える人々が訪れました。今は家族4人で古楽器を奏でている松本さん一家ですが、今年の春にはお孫さんが誕生しました。公博さんは、いつか孫も加わっての演奏が出来ればと夢を膨らませていました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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