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2013年6月

2013年6月27日 (木)

もう一つの灘の酒

2013年6月24日~6月30日放送
ラジオ関西 放送制作部 井上正之助


【番組概要】
日本酒と云えば灘の酒所として神戸・東灘界隈の造り酒屋が全国に知れ渡っています。ところが、神戸の隣町、明石の西部地区も「灘」と呼ばれ、江戸時代初頭から良き湧き水と播磨平野の良質のお米によって灘の酒として名声を博していました。今この造り酒屋では海外からも見学者が訪れ、今人気のシングル・モルト・ウイスキーはフランス、オーストラリア、香港などに輸出されている。日本酒は秋冬に、焼酎は春先、今はシングル・モルト・ウイスキー造りが始まっている。

【制作意図】
ベンチャー企業、これは今に始まったことではなく各地で古くから起業家たちが努力を重ねてきた。その中にはすでに消えていった企業もあるが、ここに登場するのは江戸時代に端を発し、小さな所帯ながら日本酒、焼酎、ウイスキー、ワインの総合酒類メーカーとして発展させている。製造量は増やさずに時代を乗り切っている。ネット通販にも取り組んでいる様子など、これからの活路を聞いてみたい。

【制作後記】
社長は技術屋さん、それにジャズの演奏が趣味。笑顔いっぱいでのお話楽しいひとときでした。取材は外国からの見学者が来られる日に合わせオーストラリアからのウィスキーバーの若い経営者ご夫婦とバイヤーさん、酒造りにはモーツァルトとか所々固有名詞でしゃべっている中身を想像。そのためか、こちらではジャズの生演奏をウィスキーの樽のそば、テイスティング・ルームで聞かせるとか。外国での人気が嬉しかった。

 

2013年6月18日 (火)

過去と未来をつなぐ糸

2013年6月17日~6月23日放送
北日本放送 報道制作局報道制作部(ラジオ) 熊野智元


【番組概要】
富山県西部、南砺市城端で毎年5月に開かれる「城端曳山祭り」。この祭りは、この城端で440年続く「絹織物」によって育まれ、かつての交易先だった京都・江戸の文化を色濃く残しています。しかしいま、城端の絹織物は衰退の一途を辿り、大正時代に25軒あった機屋もいまは3軒を残すのみ。その中の1軒、松井機業(まついきぎょう)は136年続く老舗機屋で、「絓絹(しけぎぬ)」という特別な絹を織っています。この会社の六代目が、松井家の三女、28歳の紀子さん。
五代目の父の下、お世辞にも楽観できない状態の中、決して下を向かず、絓絹の新しい可能性と、新たな販路を精力的に開拓する彼女の姿を追いました。

【制作意図】
父と子、先達と後進、過去と未来。この街は、無数のつながりの「糸」で織りあがっている。ある父と子の「いま」を垣間見ることで、この街で絹織物が織られてきた440年の時間を、「伝統」や「歴史」というただの「言葉」ではなく、もっと血の通った、過去にこの街で生きていた人々の「人生の連続」として描きたいと思いました。この松井家のような「伝承と変化」が、いつの時代にもきっと起きていて、そのひとつひとつが積み重なったものが、結果的に440年という時間になったんだと思うのです。

【制作後記】
松井紀子さんは、現在独身。ご両親からは「嫁に行ってもいいが、会社は残してくれ」と言われているそうです。紀子さん本人も「会社に通える範囲なら…」ということ。私自身も、父の文一(くにかず)さんには取材中に、唐突に「あんた、独身け?」と聞かれ、この事案が松井家にとって切実な問題であることが伺えます。ちなみに大変雪深い地域のため、夫の条件に「雪かきができる」は外せず、自分の絓絹で作ったドレスで式を挙げることが、目下の紀子さんの夢です。

2013年6月10日 (月)

愛知のパナマ運河”に響く鐘 ~愛西市、船頭平閘門(せんどうひらこうもん)

2013年6月10日~6月16日放送
東海ラジオ放送 制作局制作部 北 敏明

【番組概要】
閘門とは水位の異なる河川の間で、その水位を調整して船を通行させるための施設。“パナマ運河”がその代表例です。船頭平閘門は明治期に木曽川と長良川を繋ぐ水路つくる際、両河川の水位が違うことからつくられました。2000年には重要文化財に指定されています。 通行しようとする船は、予約も必要とせず、自由に通ることができます。 船が来たことを知らせるのは、門の上に取り付けられた鐘。 鐘の音をはじめ、門の開閉音、通過する船舶など背景の音を交えて閘門のしくみを紹介する他、作業員の心意気をお伝えします。

【制作意図】
 かつて木曽川、長良川、揖斐川のいわゆる木曽三川は下流にあたるこの地域で複雑に合流していました。このため水運が栄える一方で、頻繁に洪水の被害に遭ってきました。その対策として明治期にこの三つの川を分流する工事が行われたことは広く知られていますが、その中でこのような施設がつくられたことはそれほど知られていません。携帯電話が普及した現代でも鐘の音で開閉を知らせることに惹かれ、文化財でありながら今も機能しているこの閘門を知っていただければと思い取材しました。

【制作後記】
 予約がないということは、いつ船が通過するかわからないということで、天気のよい休日に1往復する観光船を頼りにゴールデンウィーク期間での収録となりました。準備から3日目、収録ができたこの日は晴天に恵まれた絶好の行楽日和で、おだやかな川のように時間がゆっくり流れているようでした。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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