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2025年1月

2025年1月31日 (金)

誰もが自分らしく働ける「多様性カフェ」

2025年2月3日~2025年2月9日
四国放送 ラジオ編成制作部 芝田和寿

【番組概要】
徳島駅前の商業ビルにあるカフェ「tabi no otomo」。
接客するのは、窓口の小さなロボットだ。車いすのスタッフが自宅から遠隔操作でお客とやりとりしている。キッチンでは車いすのスタッフがフルタイム勤務で調理にあたる。知的障害のある
スタッフは、デザートの下準備などサポート役に回る。ここは誰もが自分らしく働ける「多様性カフェ」。車いすでも作業しやすいよう什器の配置や高さを考えた。言葉で伝わりにくいスタッフには、絵や図を用いてコミュニケーションを繰り返した。「できないではなく、どうすればできるかを一緒に考えています」と話すのは代表の榎本峰子さん。そうするうち、支える側がいつの間にか支えられる存在であることに気付く。カフェは多様な個性を持つスタッフが支え合い認め合う「共生社会」。
みんなの居場所だ。

【制作意図】
榎本さんは約20年間、介護や福祉に携わる中、障がいがある人には生き方を決める選択肢があまりにも少なく、あきらめざるを得ない現状を痛感した。「ならば自分がその選択肢を増やせばよい」榎本さんは独立してカフェや民宿も経営。介助が必要でも気兼ねなく泊まれる宿として県外からわざわざ足を運ぶ障がい者と家族は多いという。諦めていた仕事や旅を少しの力を借りる事で、無数の選択肢が生まれていくように。その可能性を徳島から、全国に発信したい!
一人ひとりのニーズや思いに寄り添い、支援する榎本さんとスタッフを見つめた。

【制作後記】
オープンは2023年8月。駅前ビル5階の奥まったわかりにくい場所にもかかわらずここを探してくる人は多い。中学・高校生、親子連れ、サラリーマンまで。口コミやSNSには「一度くればまた来たくなる不思議な場所」と出ていた。私も同感。中川さんやお福ちゃんらスタッフとの会話がなんとも心地よい。いつの間にか色んな世代の人がやってきては、おしゃべりやスイーツを楽しんで・・
ゆるりとしたカフェの空気の中、スマホを見ながらうつむいている姿は見られない。昔の家族が集うような錯覚をするのは私だけではないハズ。

アロハイサイ! ~沖縄とハワイ、125年のつながり~

2025年1月27日~2025年2月2日
ラジオ沖縄 制作報道局 報道部 當銘真喜子

【番組概要】
沖縄でフラスタジオの代表を務める仲本大樹(なかもと・たいき)さん。
高校生の時に「ハワイに親戚がいるよ」と母親から何気なく聞かされ、ハワイへ渡りました。そこで感じた沖縄ハワイ移民たちの沖縄を想う気持ちに動かされ、移民の歴史について継承するために様々な取り組みを行っています。その中のひとつが、去年12月中旬に行われたイベント『ハースー』です。フラの動きを取り入れたストレッチを行い、最後はみんなでフラを踊ります。参加者は小さな子どもからシニアまで男女問わず、青空の下でフラを楽しんでいました。
イベントでコラボレーションした北中城村は、沖縄ハワイ移民2世の比嘉太郎トーマスさんのゆかりの地です。比嘉太郎トーマスさんは、沖縄戦にアメリカの通訳兵として従軍し、沖縄の人々を救ったり、戦後の沖縄救済運動を行った人です。イベントでは、沖縄でフラを踊ることの意義や移民の歴史を参加者へ伝えています。沖縄ハワイ移民の歴史継承のために奮闘する仲本さんの活動への想いを綴っています。

【制作意図】
今年、沖縄からのハワイ移民は125周年の節目を迎えました。
沖縄はハワイの他にも、南米や北米などへ移民が渡った歴史を持ち、世界中に沖縄県系人がいます。沖縄県は、移民県民や県系人も含めた沖縄に関わる全ての人々の繋がりを継承するため、毎年10月30日を「世界のウチナーンチュの日」とし記念日としています。この日沖縄にやってきた沖縄県系人たちが「ただいま!」と涙をする姿を見て、先人たちの沖縄を想う気持ちが世代をこえて受け継がれているんだなと感じています。私は、ハワイへ行ったことはありませんが、現地で聞こえる沖縄の方言(ウチナーグチ)やエイサーなど沖縄らしさに出会うことを想像するだけで嬉しくなります。
沖縄ハワイ移民が初めて海を渡ってから125年経ちましたが、ハワイで脈々と受け継がれてきた先人たちの故郷を想う心や地元に対する愛情、誇り、繋がりについて知るきっかけになればと企画しました。ぜひ皆さんの地元や移住地など愛着のある場所を思い浮かべながら聞いてほしいです。

【制作後記】
当時18歳の仲本さんが、母親から「ハワイに親戚がいる」と聞き、親戚に会いに行ったことは、人生を動かすほどのターニングポイントとなりました。仲本さんは、現地の人々と交流を重ね、フラを習って沖縄へ持ち帰りスタジオを開くことに繋げていてその行動力にも驚かされました。仲本さんの沖縄とハワイへの大きな愛に触れた取材でした。イベント「ハースー」には、県内外のフラ経験の有無を問わない参加者、およそ20人が、リラックスした様子で体を動かしていました。イベントで比嘉太郎トーマスさんの話がありましたが、知っている人は全体の1割程度。認知度は高くありません。
イベント後に参加者へ話を伺うと仲本さんの沖縄とハワイの歴史と、先人たちの故郷を思う心を少しでも知ってもらいたいという気持ちが届いていると感じました。仲本さんは今年、新たな取り組みとして移民をテーマにしたフラや移民劇を行うということなので活動を継続して取材していきたいです。

2025年1月16日 (木)

べっこう夫婦と海の宝石

2025年1月20日~2025年1月26日
長崎放送 報道メディア局 報道制作部 戸島夢子

【番組概要】
江戸時代、日本で唯一貿易の窓口だった長崎の出島に、中国より伝来した「長崎べっ甲」。
しっとりとした艶、空気のような軽さ、深みのある光沢。その美しさから、「海の宝石」と呼ばれ、国の伝統工芸品にも指定されています。その一方で、ワシントン条約によって1993年にタイマイの輸入が禁止されると、べっ甲業は材料不足に加え後継者不足にも頭を抱えることとなりました。
全盛期には200社ほどあったべっ甲業者も、今では20社ほど。「長崎べっ甲」の歴史と技術を守り継ぐべく、日夜作業台に向かう仲睦まじい職人夫婦を取材しました。

【制作意図】
長崎の港には、大きな客船が毎日のように寄港し、海外の旅行客で賑わっています。かつて長崎土産として人気を博した「長崎べっ甲」は、”絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約=ワシントン条約”により国外への輸出入が禁止されました。海外旅行客がお土産として「長崎べっ甲」を持ち帰ることも、原材料となるタイマイの甲羅を海外から仕入れることも出来ないのです。
原材料は残りわずか。後継ぎも業界全体で減少していることを知りました。べっ甲業界は大きな問題に直面しています。「長崎べっ甲」がこれからも長崎の伝統工芸品として残り続けてほしい、
少しでも多くの人にべっ甲の良さを伝えたいと思い制作しました。

【制作後記】
取材した「有限会社 安田 安龍工房」の二代目・藤原慎二さんと佳美さん夫婦。おふたりともとても明るく、終始笑いの絶えない現場でしたが、べっ甲の話となると真剣な表情に。苦境の中にあっても、べっ甲への愛と情熱、新しいデザインを創り出す探究心を忘れずにお持ちなのだと、私も胸が熱くなりました。べっ甲細工職人とそれを支える方々に守られてきたこの技術が、これからも10年、20年と受け継がれていくこと、”長崎べっ甲”が末永く愛される長崎の工芸品であることを心から願っています。

100円モーニングがもたらす希望

2025年1月13日~2025年1月19日
KBS京都 ラジオ編成制作部 西村佳恵

【番組概要】
築50年、190戸中およそ4割が65歳以上の一人住まいという西京極大門ハイツ(京都市右京区)では、自主管理組合の運営のもと敷地内の集会所で毎週日曜8時半から「日曜喫茶」を開いています。
淹れたてのコーヒーとトーストに、ゆで卵が付いてたったの100円。
ボランティアの住民が交代で運営し、毎回30~40名が集う憩いの場となっています。
高齢化が加速し、ますます高齢独居者が増えていく中で、一つ屋根の下、日曜喫茶を通してつながりを深め、「おひとりさま」が明るく暮らしている様子をお届けします。

【制作意図】
今回取材した「西京極大門ハイツ」は築50年で西京極という決して便利ではない駅から徒歩10分のマンションにも関わらず、資産価値が下がらないと話題のマンションです。その理由の一つとして、住民が日曜喫茶やマンション内で開催されるイベントを通して、良好なコミュニティを築いているため、マンション管理の話し合いでも適切な合意形成がなされ、快適な住環境が維持できているそうです。
マンションが古くなるにつれ、住民も老いていく。“人と建物の老朽化”というネガティブな印象を感じさせないマンションの取り組みが気になり、今回取材をさせて頂きました。

【制作後記】
トーストにゆで卵、コーヒーが付いて100円とはお得なモーニングだと思われますが、取材に行くと意外とコーヒーだけ注文する方も多く、皆が皆、朝食目的というわけでもないようです。集会所ではおしゃべりに花を咲かせる人たちもいれば、新聞を読んだり、テレビを見たり、過ごし方は人それぞれ。それでも、ひとり家に籠っているのではなく、ちゃんと身だしなみを整えて、人に会いに行くということを大切にされている印象でした。日曜喫茶は最初隔週開催でしたが、毎週開催に変えた後の方が参加率が高いそうです。管理組合の理事長は週に1回、100円玉を握りしめて来れば、住人の健康確認ができると仰っていましたが、それにより生きがいができたという方もいて、自分もこんなマンションに住んでみたいと思いました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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