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2023年3月 8日 (水)

世界に1つだけの子供平和記念塔

2023年1月16日~2023年1月22日放送 
四国放送 ラジオ編成制作部 芝田和寿

【番組概要】
昭和23年、徳島の子どもたちが世界中に呼びかけて作られた平和の塔が徳島市にある。それが「子供平和記念塔」。高さは約4,6メートル。てっぺんにある噴水用のブロンズから地元では「小便小僧」の塔として知られる。表面に散りばめられた小石は国内の小中学生だけでなく、アメリカの子供たちからも贈られたもの。日本とアメリカの子供による平和共同プロジェクトだったが、数年後には経費がかかるとの理由から噴水の水は止められる。傷みはすすみ、茶色い錆に覆われた塔の存在は忘れ去られていく・・「子どもたちの手による平和記念塔は世界平和と友情の象徴、世界でも例がない」と
訴えるのはカナダ出身のモートン常慈さん(徳島大学准教授)。日本文化と歴史の専門家で、塔が建設された詳しい経緯を調べるも手がかりはなかなか得られない。コロナ禍でもアメリカの図書館などのデジタル検索で糸口をたどり、論文にまとめた。原動力となったのは、日本軍の捕虜となった祖父アルバートさん。「死の鉄道」と恐れられたタイ・ビルマ鉄道の建設に従事、 その生活を小さな手帳に
記していた。終戦まで耐え抜き、帰国を果たした祖父。「人への敬意と友好の精神が不可欠」との言葉が平和記念塔の精神と重なる。 

【制作意図】
ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ紛争や虐待、暴力や差別のニュースは毎日のように。
人間はなぜ、他人を価値のないようなものとして扱えるのか・・・
平和塔の重要性を訴えながら、関係各所をあたって調査を続けるも、なかなか成果が得られないモートン先生を見つめるたび、70年以上の年月とともに、戦争は人々の心の中でも「風化」していることを痛感する。戦争の悲惨さ、平和のありがたさ、そのための国際友情の大切さが叫ばれている今こそ
徳島に遺され、忘れ去られた子供平和記念塔の意義を再認識する時であると考える。

【制作後記】
コロナ禍で思うような調査ができないでいたが、国会図書館のデジタルアーカイブ検索で新たな発見があったほか、アメリカの図書館、赤十字とのやりとりもようやく再開した。
今後、小石を送ったアメリカ人へ徳島県知事が送ったとされる礼状や、石の輸送保管に関わる資料が発見されれば、塔建設のいきさつが劇的に解明される可能性がある。私にはこの塔が、オスカーワイルドの短編小説「幸福の王子」の像と重なる。像を飾る金箔や宝石を悲しみや苦労の中にある人に分け与えた末、汚れてみすぼらしくなってしまった像は市民によって取り外され、溶鉱炉で溶かされてしまう。
子供平和記念塔もそうならない間に・・
年月とともに、心の中で「風化」しかけた平和の誓い、国際友情の証を
今後もモートン先生と追い続け、 伝え続ける。

 

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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