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2023年3月 9日 (木)

継承される競り人の声-越前がにの要石-

2023年1月24日~2023年1月29日放送 
福井放送 報道制作局制作部 増谷寧々

【番組概要】
日本海に面する福井県越前町。越前ガニの最大漁港です。ここでは福井が誇る冬の味覚の王者、越前がにの競りが行われ、解禁されたあとは、特に盛り上がります。競りをするのは、越前町漁業協同組合の職員のみ。年々数も減って、今は4人しかいません。30代の競り人が多い中で、今、この町で生まれ育った26歳の八田航さんが、先輩の姿を追っています。競りには教科書がなく、見て盗む。そして経験。2年目の今、責任を感じながら、漁師が命がけで獲った魚やカニを、仲買人にどれだけいい値段で売り渡すか、かけひきの場に立っています。特に毎年11月7日「おりぞめ」と呼ばれる初競りの日は経験を積んだ競り人でも緊張します。さまざまな基準をクリアしたカニだけに与えられる称号、最高級の越前がに「極」は特に注目が集まります。越前町には料亭も多数あり、料亭を営む人たちにとっても越前がには無くてはならない存在で、ふるさとの宝として大切に守られています。この時期に威勢の競り人の声がないと、越前がにが届かない。この声がないと越前町ではないと言っても過言ではありません。思いをのせた声が今日も漁師まちに響きわたっています。

【制作意図】
福井といえば「越前がに」。全国にも名を轟かす冬の食の恵だが、毎年メディアで報道されるのは越前がにそのものです。その裏に隠されているのは命がけで戦う海の男たち。漁師はもちろんだが、なかなかスポットが当たらない競り人も越前がにという福井のブランドを絶やさぬように盛り上げています。町で取材をしていても、「競りの声がないと越前がにが届かない」という意見が。高齢化も進み、売り手・買い手も年齢層が高くなる中、20代の若き競り人が地元を盛り上げたいと立ち上がりました。「野球で言うと競り人はピッチャーだ。自分で采配をふる責任のあるポジションである」と話していました。1人ひとりがプライドをもって戦う様子、町を、声を継承していく様を感じていただけると幸いです。

【制作後記】
競りの声は、福井で生まれ育った私が聞いても何と言っているのかわかりません。聞き取れるのは単語くらい。ただ、わからなくても、情熱だけは不思議と伝わってきます。するどい目つき、激しく威勢のいい声、緊張感。まさに競り人と仲買の戦いの場で圧倒されます。コロナ禍でなかなか声を出すのが制限される中、前を向いて継承していく様子を見て、守っていくべき宝だなと感じました。

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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