朝日差す丘からサミットへ~3セクワイナリーの挑戦~
2022年10月31日~2022年11月6日放送
山形放送 制作部 佐藤嘉一
【番組概要】
山形県朝日町は、町の中心を流れる最上川沿いの河岸段丘を生かした、果樹栽培が盛んな地域です。この町のブドウでワイン作りが始まったのは、太平洋戦争末期の1944年。ワインの滓や樽の内壁に結晶化する酒石酸が、潜水艦や魚雷などを探知する水中聴音機の部品の原料として軍需物資になりました。このため国は、ワイン作りを奨励。このとき全国で新たに作られたワイナリーの1つが、のちの朝日町ワインです。敗戦で、軍需物資は不要になり、大手メーカーにポートワインの原料として買い取ってもらうなどしましたが、ワインブームの盛衰により会社も大きく左右されます。町内のブドウ農家を守るため、町と地元農協の出資で第3セクター方式に転換。高品質なワインを作るため、町ぶどう生産組合と話し合い、研さんを続け20年。品質の向上で数々のワインコンクールで入賞。2016年の伊勢志摩サミットでは、各国首脳に提供する赤ワインに選ばれました。毎年10月、町の未来を担う中学生と保護者がブドウを収穫。6年後の成人の集いで出来上がったワインが手渡されます。
【制作意図】
軍需物資の増産という、いわば国策から始まった山間の小さな町のワインが、サミットのひのき舞台で、先進各国の首脳に飲んでもらう日本を代表するワインの1つにまでなった。町のワイナリーの草創期を知る人たちが、どんどんいなくなる中、貴重な本人のインタビューと、町の未来を担う子供たちの取り組みを通じて、「まじめで、ひたむきなモノづくり」の大切さを感じてもらいたい。
【制作後記】
報道制作の現場でも、主に報道、しかもテレビが中心の部署で仕事をして来たので、音だけで伝える難しさを改めて感じる取材現場となりました。収録の場所や、マイクなど機材を変えみたり、ワインの仕込みの工程ごとに通って収録し、分かりやすい音を探して見たりと、時間の許す限りやってみましたが、まさに「沼」の状態を体感させていただきました。ワイン仕込み最盛期の一年で最も忙しい中、お付き合いいただいた朝日町ワインの皆様、生産者の皆様には、感謝の言葉しかありません。中学生たちには、6年後の成人の集いでワインを受け取った時に、この番組が、思い出の一コマになっているといいなと思っています。
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